目に映るは巨大な竜巻。
そしてそれが向かう先にいるのは、赤い野球帽をかぶり3段階に奇妙なポーズを取っていく
俺の姿を外から見ている。
なんとなく左手のルーンが熱い気もする。ああ、これが使い魔にご主人様の繋がりというやつか。
ルイズが感じている危機感を使い魔である俺に届けているんだな。
竜巻の向こう側にルイズに似た女性がいた。きっとルイズママだろう。
ということはあれがカッター・トルネードか。
あっちの俺はなにやってるんだ?
……あ、見えなくなった。
まあ、大丈夫だ。
声は聞こえなかったが、あの俺はきっと「天! 地! 人!」とポージングに合わせて言っていた。あれは真空ハリケーン撃ちのモーションだったから。
そう、あの帽子は半分ネタで
魔法無効化等の対策の一つとしても用意していたので、あれならば魔法ではないと言い張れる! ……はずだ、たぶん。
非致死設定と相性がよかったのであれなら死者は出ないだろう。
インベーダーキャップを被れば使えるというものでもないのだが、あれを被って修行すればできるようになると設定したのだ。6分の1の俺でもグレートタイフーンぐらいまでなら使えると思う。
◇
嫁である白蓮と連絡が取れた。
なんか白銀武になっていて、その記憶もあるらしい。
ただし記憶の話を聞く限り、マブラヴ主人公の因果導体の方じゃないようなので、BETAにさらわれて死亡する可能性がある。
タケルちゃんの恋愛原子核もどうなっているか不安だ。
女の子ならともかく、男を引き寄せていなければいいけど。
早めに合流しなければならない。
こっちも戦場なのでポータルで呼ぶわけにもいかないのが困る。
「白蓮もいたんだ」
「ああ。そっちは?」
訓練用のスケスケ衛士強化装備ではなく、訓練校の制服を着て戻ってきた唯ちゃん。
謎のスーパーロボット軍団との接触を済ますために着替えてもらったのだ。嫁のあんな姿を見せるわけにはいかないからね。
唯ちゃんは俺のことは婚約者で、こういう事態のエキスパートだと周囲に説明しているようだ。
「ボクが篁唯依だってなかなか信じてくれなくてさ。そっちから指名したのに嫌になるよ、まったくもう」
「お疲れ様」
むくれる唯ちゃんの頭をなでなで。
顔も髪型も俺の知っているいつもの唯ちゃん。
たしかにこれでは篁唯依と信じられもしないか。
「あの感じ、ボクじゃない篁唯依を知ってると見て間違いないと思う」
やはりそうなのか?
マブラヴ世界の知識持ちということなのだろうか。
白蓮=
ふむ。俺達以外の異物か。
唯ちゃんを指名してきたのは、俺達のことに気づいたんじゃなくてTEヒロインの篁唯依に会おうとした?
でなければおかしい。譜代武家の出身だけどまだ訓練生の彼女を指名するなんて他の理由が思いつかない。
「どんなやつらだった?」
「ガンダムに乗ってたキラ・ヤマト、宇宙人だって言うダバ・マイロード、あと代理の人が来てたけどロミナ姫って折り紙みたいな戦艦のお姫様。こっちも宇宙人みたい」
「……マジか」
スパロボ世界ならおかしくはないが、宇宙人のくせに唯ちゃん指名ってのはおかしい。本人ではないか、マブラヴを知っている人物がバックについている?
飛影は戦闘後すぐにいなくなっていた。いかにも飛影らしいけど、あのパイロットがロミナ姫の代理人にきたのだろうか。
やつは大阪に出現した黒の騎士団のこと知っていたみたいだし、他の連中とも繋がりがあると見ていいだろう。
この世界の
このゼロ魔と繋がったマブラヴ世界が俺の担当世界なのかそうでないのかもまだわからんし、対応に悩む。
嫁を助けるのは絶対なんだけどな。
「今回は顔見せだけだったからまた会うことになったんだけど、その時はお兄ちゃんもお願い」
「そうだな。俺も会っておいた方がよさそうだ」
「ありがと。じゃあ一緒に会ってくれる斯衛軍の人を紹介するね」
唯ちゃんがついてきた女性を紹介してくれた。
真っ赤な服と眼鏡のどっかで見た女性だ。
「月詠真耶だ。天井煌一だな。貴様の正体も気になるが乗っていた武御雷について聞かせてもらおう」
「あ、ああ。あれは譲り受けたものだ。本来の持ち主は既に亡くなっているので詳しいことはわからない」
うむ。胡散臭い。
月詠もそう思っている表情だ。
彼女はマブラヴキャラのままだな。唯ちゃんや白蓮みたいに、名前的には月ちゃんか詠、もしくは真桜になっているかなってチラリと思ったんだけど。
「そんな話が信じられるとでも?」
「だが真実だ。それと操縦席にはこれがあった」
斯衛軍に接収されるとちょっと困るな。偉い人に返せって遺言もなかったし。
説明しても信じてもらえなさそうなのでスタッシュから
「妙な手品を使うな。これは?」
「前の持ち主はあの武御雷と一緒にとある高貴な女性から受け取ったと言っていたそうだ」
言ってたかどうか知らないけどな。
たぶん嘘ではないんじゃない?
「高貴な女性……」
「武御雷ともども預けるから調べてくれないか? 俺も知りたい」
「よかろう」
「武御雷とその刀は特殊な加工をされてる、らしい。OSも画期的な最新型だそうだ」
XM3搭載型だったからこそ俺もあれだけ動かせた。
これ、唯ちゃんなら解析して普及させることもできるかもしれない。
キラもいるしな。ロボのOSならお手の物かも。
本人ならば、だが。
返してもらえるか不安だけど、接収される前に預けるってことにしておくか。
データはスキャンしてあるからあとで造ることもできるしな。固定化の魔法はむこうの俺が覚える予定だから問題はあるまい。
「らしい、ってお兄ちゃんが造ったんじゃないんだ?」
「だから譲り受けたって言ってるだろ。パスワード関係の解除は唯ちゃんも協力してやって」
「ボクも? ……いいけど、こっちのお父さんに会ってね」
「わかった。俺も確認しなければならないことがある」
篁祐唯か。気が重いが会うしかない。
娘さんの状況を説明するとして、理解してくれるだろうか。異世界の人間と融合したなんてさ。
さらにその融合した相手が俺とすでに結婚してるなんて、面倒でしかない。
気が重くなるのも当然といえよう。
だけどなんとしても米軍のユウヤ・ブリッジスに連絡を取ってもらわねば。
もしかしたら唯ちゃんのように俺の嫁さんと融合してるかもしれない。
TE主人公のユウヤは男だけど、白蓮のように性別も変わっている可能性があるのだ。
たしかまだ母親のミラ・ブリッジスが生きている。入院しているはずだが、早くしないと死んでしまう。
できれば助けたい。結花か由真の母親になっているかもしれないのだから。
月詠は武御雷の回収を優先したい。
不審人物よりも将軍色の試作機らしき戦術機の流出の方が大問題なのだろう。
非常時だから忙しいのもあるだろうが。
◇
武御雷を持っていかれた俺はとりあえず尋問は後回しということで、軟禁されているような状況だ。
篁祐唯との面会を待ちながら、それを思うと気が滅入るので別のことを悩む。
唯ちゃんも白蓮もマブラヴキャラと融合してしまった。
今のとこ、華琳ちゃんがあの時に言っていた「名は体を表す」という言葉から、名前繋がりではないかと俺はにらんでいる。
月詠は違ったけど、ユウヤがどうなっているか不安だ。もしかしたら他にも融合した嫁さんがいるかもしれない。
社霞の
御剣冥夜の冥琳はありえるか? そうなると白蓮のように双子の煌武院悠陽も顔が変わりそうだ。
鎧衣美琴は美以……南蛮系は珠瀬壬姫の方が似合いそう。
速瀬水月の月ちゃんは勘弁してもらいたい。NTR的に。
食事も出してもらったが合成食ってのはたしかに残念だった。
でもこの食事のおかげで美人が多いのかもしれない。
……髪が凄い角度で曲がる子がいるのもまさかこの食事のせい?
ふとそんなことを考えてしまった。
あっちの俺は親御さんとの話、うまくいったかな?
いや、ルイズは俺の嫁じゃないんだけどさ。
サブタイトルは恋姫の技名