大有双   作:生甘蕉

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嫁がそばにいないため
だんだん自重しなくなっているファイヤー



21話 着信

 とりあえず見れれば貰えなくてもいいと思っていたゼロ戦から状況が変わったのでポータルで学院に戻って、シエスタを連れてくる。

 

「これを持ってここを通って」

 

「こ、これなんですか? なんか光ってるんですけど……」

 

「大丈夫だから」

 

 ファミリア以外でもポータルを使えるようにと〈成現〉したオーブを渡したあと、手を取ってポータルに突入、タルブへと移動すると一瞬で村のそばの寺院に戻ったことに目を白黒させるシエスタ。

 彼女に目的地へ案内してもらう。

 

「煌一さん、ここがひいおじいちゃんのお墓です」

 

「……白銀武」

 

 墓碑名に刻まれた名前はやはりというモノで。

 でもシエスタの髪も瞳も黒いんだけど。たしか彼は茶系の髪と瞳だったような。

 それに……顔も白銀武と似てない気がする。別の、よく知ってる顔に似ている気がするんだけど。

 

 武御雷の方は黒じゃないからTDAの方からじゃないのか。とするとアンリミテッドの白銀武?

 オルタネィティヴ5を見送った後かな。このハルケギニアに跳ばされて、さぞや無念だったことだろう。

 まあアンリミテッドの方だとすると脳髄シリンダーが末路だったらしいからそれよりはマシだろうけどさ。

 

 スタッシュから取り出した線香にライターで火を点けて墓前に置き、そっと手を合わせる。

 柔志郎担当のあっぱれ対魔忍な世界がゾンビだらけになっちゃってるから、いつでも供養できるようにってスタッシュにたくさん入れてるんだよね、お線香。煙草を吸わない俺がライター持ってるのもそのため。

 

「それは?」

 

「俺とこの人の故郷の弔いの風習。いい香りだろ?」

 

 久しぶりに霊視をONにしてみたが彼の姿は視えない。もうオルタネィティヴ世界に行ってしまったのだろうか。

 んん? 白銀武の死亡で世界リセットしてやり直しってのもあったような。どうなってるのだろう。

 

 いきなり村に帰ってきて驚かれたと言いながらシエスタが曾祖父の遺言を教えてくれた。遺品はないらしい。まあ、あったとしても衛士強化装備ぐらいなので気にはならない。

 で、遺言にしたがってやはり武御雷を受け取ることになってしまった。

 世界が変わってもむこうと変わらず管理が面倒なお荷物だなんて、こいつも可哀想に……。あと「将軍にお返しして欲しい」ってのはなかったみたいだ。タケルちゃんはなにを考えていたんだろうね。

 

 貰ってしまったものは仕方がない。あとでなんとか動かせないか調べてみよう。

 武御雷をスタッシュにしまうとルイズとシエスタが目を丸くする。

 

「あんた、メイジだったの?」

 

「これは魔法と違うよ。使徒ならみんな持ってる能力」

 

 スタッシュはMPを消費しないから魔法ではない。

 ここまで容量を増やすには基本スキルでは足りず、上位スキルの〈スタッシュエリア(大)〉も必要だけどそれも言う必要はないだろう。

 

「あんたなら本当に……」

 

 またルイズが考え込んでしまったので、2人とともにポータルで学院へ帰った。

 寄せ鍋は気になるがマーキングしたので行こうと思えば村にはすぐに行ける。

 

「タルブに日帰りできるなんて思ってませんでした」

 

「これは秘密にしといてね。こんなことができるアイテムなんて信じるやつもあまりいないだろうけど、信じるやつは危険だから」

 

「は、はい。2人だけの秘密ですね!」

 

「わたしもいるわよ!」

 

 ルイズも聞いていたか。

 俺が魔法を使えるのはまだ教えてないけど、その時は彼女も魔法を使えるようにしないとショックを受けて暴走しそうだな。

 ファミリアにしないでも魔法を使えるようにしてみるか?

 

 

 ◇

 

 

 俺たちが留守中に学院は結構な騒ぎになっていた。

 行方不明になっていたモンモランシーが帰ってきたというのだ。正体不明の魔法使いに連れられて。

 その不審者は学院側に身分証明を求められて「世界一の魔法使い」を名乗ったところ笑われたので、笑った風メイジの教師を魔法でぶちのめしてさっさといなくなったという。

 

「コーイチ、無事だったのね!」

 

 俺が使い魔になっていると聞いてルイズの部屋にやってきたモンモランシーにいきなり抱きしめられた。

 

「あなたたちと連絡が取れないって剣士が騒いでいたから、心配してたのよ」

 

「やっぱり俺の知ってるモンモランシーなのか?」

 

「そう、コーイチに助けてもらった私よ!」

 

 あれ?

 セラヴィーのとこから助けたのって俺だったっけ?

 ……ああ、人形になってた彼女たちの前でエリザベスを人間にするという救出のきっかけを見せたからか。

 

「いい加減に離れなさい! ……あんたが助けた?」

 

「ん? ああ、大魔王ってのが一時期悪いやつに騙されててさ、モンモランシーや他の女の子を何人もさらって集めてたんだ」

 

「そうよ。何処とも知れぬ城にさらわれ、しかも人形にされた私たち。会話できるのは同じ人形となった者だけで身体を動かすことはできない。そんな気が狂いそうな状態が何年も続いたわ。それを助けてくれたのがコーイチなの」

 

 へー、人形同士なら会話はできたのか。知らなかった。そうでもなきゃ、本当におかしくなっちゃった子がいたかもな。

 

「だから恩人のコーイチたちが行方不明と聞いて、私たちはみんな心配していたのよ」

 

「俺以外の俺の仲間からの連絡は?」

 

「なかったみたい」

 

「そうか……」

 

 指輪の力を使っても嫁たちとは連絡が取れない。なんとか見つける手段を講じなければいけないようだ。

 

「まさか過去にきてしかもルイズの使い魔になってるなんてね」

 

「やっぱり過去なのか、ここ」

 

「そうよ。変な鏡を使って10年前に戻ってきたのよ」

 

「ああ、そんなアイテムもあったな」

 

 あの鏡を使ったか……モンモランシーのためじゃなくて、どろしーちゃんに会いに行くための口実だろう。

 もういないのか。セラヴィーと一緒にあっちへ戻れれば拠点機能が使えてみんなを探しやすくなったかもしれないのに!

 

「セラヴィーと連絡を取る方法は……ないよな。やっぱり」

 

「ええ。私たちがコーイチたちを探せって騒いだもんだから、きっと鬱陶しくなったのよ、あいつ」

 

「過去に戻ったとか、言ってことがよくわからないんだけど本当にこいつの師と知り合いなの?」

 

 ルイズの問いにモンモランシーが少し考える顔をする。

 

「知り合いと言うより、誘拐犯と被害者ね」

 

「ゆ、誘拐!?」

 

 誘拐犯って言うか大魔王だったからなあ。

 金髪くるくるってだけで異世界までさらいに来てたのか。どろしーちゃんのとこへ行けばよかったのに。……洗脳した魔族が禁じてたのかね?

 

「もう魔法薬はいいのか? セラヴィーに教えてもらってたろ」

 

「目ぼしいところはだいたい覚えたわ。問題はこっちの素材で再現することができるかどうかよ」

 

「そうか。できるといいな」

 

「そうだ、コーイチにお願いがあるんだけど」

 

 え? 俺にお願い?

 モンモランシーが俺に頼むようなことなんてあるのか?

 あ、ギーシュと決闘したことと関係が……ないか。

 

「素材を集めるのに使い魔が必要なの」

 

「ちょっと、こいつはわたしの使い魔よ!」

 

「あなた大当たりを引いたわね。私だってコーイチが使い魔ならどんなに嬉しいか。……私が誘拐されていたという事情を考慮して、特別に使い魔召喚の儀式をやれることになったのよ。だからそれで召喚される使い魔をコーイチに用意してもらえれば、って」

 

 ああ。そういうことか。召喚の呼びかけに応じるやつを俺に〈成現〉させたいと。

 ……いいのか、それ。

 

「そんなことできるわけないでしょ」

 

「できるのよコーイチなら」

 

「あまり俺のことは話さないでほしいのだが」

 

「秘密にするからお願い」

 

 むう。エリザベスを人間にするところを見られたり、俺が元に戻る現場で能力知られたのはまずかったか。

 

「口止め料というわけか。……どんなのがいいんだ? あまり無茶は言わないでほしいのだが」

 

「ラプラスよ! 水系統のメイジにピッタリ!」

 

「ヒトデマンの方がよくないか? 初代ヒロインの相棒だし」

 

 でも本来ならモンモランシーの使い魔はカエルだったからカエル系のニョロトノやガマガル、ゲッコウガの方がいいのか?

 軍曹も捨てがたいよな。

 ……カエルはルイズが嫌がるか。

 

「そっちもいいけれどラプラスでお願い」

 

「大きいから色々と大変そうだけどいいのかい? あと陸地では……もしかしてモンスターボールもコミでか?」

 

「理解が早くて助かるわ。さすがコーイチね」

 

 む。たしかにリアルラプラスなら見たい。というか乗ってみたい。

 モンモランシーの召喚に応じなかったら俺が面倒を見ればいいか。それだったらカイリューでもいいんだが。どっちもプラモ持ってるし。

 

「仕方ない。なにかあったら協力を頼むぞ」

 

「ちょっと、あんたたちなに言ってんのよ?」

 

「聞いたとおりよ。私の使い魔をコーイチが用意してくれるの。私はコーイチの能力を秘密にして彼の頼みを聞く。セラヴィー直伝の魔法薬はすぐには用意できないけれどね」

 

 ちょっと待て。いきなりルイズにばらしてるようなもんなんだが。

 

「こいつの能力って?」

 

 ほらキタ。

 どーすんのよ、これ。

 

「だから秘密よ。知りたければコーイチのファミリアになることね。あ、でもコーイチのファミリアになることは妻になることと同意義だからあなたには無理か。コーイチ、私ならいつでもいいわよ」

 

「妻ぁ!?」

 

「ええそうよ。そう言えば彼女たちは? コーイチが使い魔なんて許さないでしょうに」

 

「逸れた。今は居場所もわからん」

 

 早く会いたい。浮気はしてないだろうけど、スパロボ世界なら洗脳がありえる。チョーカーが頑張ってくれるといいのだが。

 

「そう……。ごめんなさい。早く見つかるといいわね」

 

「なんとかなる。セラヴィーが簡単にこっちにこれるようなら俺にもどうにかできるはずだ」

 

 過去だと言うことが確信できたから、タイムマシンと通信強化のアイテムを〈成現〉すれば連絡もとれるはず。

 

「……わたし、許されないの?」

 

「考えてごらんなさい。夫が他の女性の使い魔になっているなんて許せると思う? コーイチの奥様たちに知られたらあなたは……ルイズもコーイチに嫁入りすることになるのかしら?」

 

「なんでそーなる?」

 

「だってカリンにそう持ってかれたってユマたちが言ってたわ」

 

 たしかにルイズは可愛いから華琳ちゃんもやりかねないけど。

 あと真名は簡単に使わないように。って今さらね。

 

「俺の嫁さんはやさしいから大丈夫だよ。状況を説明すればわかってくれるさ」

 

 たぶん。

 

「今、たぶんって言った!」

 

「ルイズ、慰めにはならないかもしれないけれどコーイチの素顔はとても綺麗だって彼の奥様たちは言ってるの。あとでどんな顔か教えて」

 

「素顔?」

 

「妻だけしか楽しめない特典だってよく自慢されたわ」

 

 そんなことがあったのか。

 まあ呪いが解けるまでは素顔は家族以外には不可能だろう。一応他にも祝福封じの策は施してあるとはいえ、試す気にはなれない。

 

「とにかく、ラプラスは用意する。すぐに儀式をするのか?」

 

「いえ。行方不明の連絡がいってしまって心配しているらしいから家に戻って無事な顔を見せてくるわ。そのあとよ」

 

「そうか。10年ぶりだもんな、家族に会うの。よし、ラプラスはそのお祝いだ」

 

 さらわれて人形にされ、ずっと家族と会えなかったんだ。早く会いたいだろう。

 ちゃんとモンモランシーの使い魔になるように〈成現〉してやらねば。

 

「ありがとうコーイチ!」

 

 もう一度ハグをして、学院に帰ってきたらまたくると言ってモンモランシーは去っていった。

 残ったのはなにか言いたそうにこっちを睨んでいたルイズ。

 

「あんたのファミリアになるには結婚しなきゃいけないっての!?」

 

「い、いや」

 

 待てよ。違うんだけどそういうことにしておけばルイズも俺のファミリアになることを諦めるか?

 

「言わなかったっけ?」

 

「聞いてないわよ!」

 

「そうか。そういうことだからファミリアは諦めて」

 

「くっ」

 

 ルイズが黙ってしまった。チラチラとこっちを見てるけど気にしない方がいいだろう。なにか言うとヤブヘビになりそうだ。

 それにしても衝撃の事実が続くな。

 

 竜の羽衣が武御雷だったのがかなり気になっている。

 もしもハルケギニア(ここ)と繋がってるのがマブラヴの地球だったら才人が無事に生きているのかもわからない。アンリミのさらに数十年後だったら人類の生き残りなんて少ないかも。

 才人よりも先に俺が召喚されたんじゃなくて、才人が存在しないから俺が代わりに召喚された可能性もある。

 

 学院にあるはずの破壊の杖も正体を確認しておいた方がいいかもしれん。S-11じゃなければいいけど。まあ、あれは杖とはいえん形か。

 BETAがこの星に来ないことを祈る。資源採掘という目的なら地球とは違う資源もあるんだよなあ。風石とか。

 ……そっちの問題もなんとかしなきゃいけない。

 

「あんたの師は魔法薬に詳しいの?」

 

「かなりね。きっとモンモランシーの腕も上がってるんじゃないかな?」

 

「でもこっちの素材で再現するのは時間がかかるって言っていたわ」

 

 どんな薬を作るのかちょっと楽しみだな。若返りの薬なんて高値で売れると思う。

 

「原因不明の病気を治す薬はない?」

 

「どこか悪いのか? 残念ながら魔法が爆発してしまうのは薬ではちょっと治せないと思う」

 

「わたしじゃないわ……」

 

 気にしてる魔法のことを言ってしまったのにルイズは怒らない。たぶん姉の病気のことだろう。

 ルイズの姉カトレアは謎の病を患っている。水メイジでも治せない難病だが小説ではエルフの秘薬で治っていたから万能の霊薬(エリクサー)ならたぶん治る。

 

「すごい強力な薬がある。超希少でかなり高価だ」

 

「本当に効くの?」

 

「本来なら再生しないキミの……膜を復活させるぐらいに効果がある薬だ」

 

「なっ、なんに使っているのよ! 希少な薬を!」

 

 だって証拠隠滅するにはそれしかないと思ってたから。結局無駄だったんだけどさ。

 

「俺ができるお詫びはそれぐれいしか……」

 

「も、もうないの?」

 

 泣きそうな顔で聞かれたらないとは言いづらい。

 

「ないわけじゃないけど……」

 

「代金は払うわ。お願い、ちいねえさまを助けて!」

 

 エリクサーのことはあまり知られたくはない。欲しがるやつはいくらでもいるだろう。

 かといって見過ごすのも可哀想だ。エルフの秘薬が必ず入手できるかもわからないし。

 

「しかたないか。これを使ってみてくれ。死んでなければだいたい治るはずだ。本当なら直接診に行って症状を確認したいところだけど、ルイズも授業があるから送るしかないか?」

 

「い、いいの?」

 

 どうせ俺が行っても面倒なことになるだろう。ルイズの両親に会うのも怖いし。チートキャラ(ルイズママ)に殺されそう。

 行かないで済ませたいが口には出さない。

 

「大事な人なんだろ? ただしこの薬はあと1ヶ月くらいしか効果がない。たぶん調査してから使うだろうけど早めに使ってくれ」

 

「あ、ありがとう!」

 

「あと、代金はあのことをチャラにしてくれればいいよ」

 

 純潔を奪ってしまったことをずっと気にしていたんだ、俺。

 それで赤くなってしまったルイズだが、俺を怒ろうともしないでエリクサーの瓶をそっと握り締める。

 

「でもこれって貴重なものなのよね?」

 

「んんー。等価にはならないか」

 

「そ、そうよね……」

 

「ルイズの純潔なら俺が貰いすぎだもんな」

 

 あの時は初めての娘相手にやりすぎちゃったもんなあ。しかも両方で。

 嫁さんたちにバレたら浮気を怒られる以上にそっちも説教されるかもしれん。

 

「コーイチ」

 

「やっと名前で呼んでくれた」

 

「……コーイチだってわたしに素顔を見せないじゃない」

 

「言わなかったっけ? 俺の素顔は呪われているから家族以外には見せられないの。特に女性は嫁になってくれないと絶対に見せるわけにはいかない」

 

 たしか言ったはずだけど。聞いてなかったのかな。

 魔法が使えるかもってことばかり考えていることが多いみたいだもんなあ。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 ルイズにエリクサーを渡してから彼女はさらに誘惑してくるようになった。

 それまで寝袋で寝ていたのに一緒にベッドで寝るように言ってきたのはあからさまで、さすがにこれは誘っていると思って間違いはあるまい。童貞100人に聞けば120人がOKサインだと保証してくれるはずだ。

 

 でも耐える。手を出すわけにはいかん。

 同じ部屋であんな格好で寝られるだけでもツライのに。もっと露出の少ない寝巻きを用意してやるべきか? それはそれで萌えそうである。

 

 学院内ではソロプレイすることもできないので、武御雷回収の旅でマーキングした人気(ひとけ)のない地点にポータルでこっそり移動、目立たないように仮設トイレを設置してそこで欲望を発散すること数日。

 ついにルイズがキレた。

 夢の中、擬似契約空間にて怒りを露にしている。

 

「……なんでしないのよ!」

 

 そりゃしたいけど、したらマズイでしょやっぱりさ。

 

「そんなに魔法を使いたいのか?」

 

「だって、悔しくて……」

 

 ちょっ、泣くのはズルイですよ。

 彼女が周囲からバカにされているのを知っているだけになんとかしてやりたいのも確かなのだが。

 

「だからって俺を誘惑するほどのことか? 処女は大事にしなさい!」

 

「もうコーイチに奪われたもん!」

 

「あれはノーカンだから! 悪い夢を見たと思って忘れてください」

 

 とは言っても簡単には忘れられないのか? トラウマになっていたらどうしよう。

 〈成現〉で記憶を改竄すればいいのかも……でもルイズを虚無じゃなくする手段としてとっておきたいんだよなあ。

 

「ファミリアになるにはコーイチの妻になればいいんでしょう! なってやろうじゃない!!」

 

「なぜそうなる?」

 

「貴族にとって結婚なんて手段でしかないのよ」

 

 ドヤ顔で言うことか。俺はそういうのは嫌なんだってば。

 でもほっといてもルイズは親に結婚相手を決められちゃうんだっけ?

 

「も、もっとよく考えて、ね。ファミリアにならなくても魔法を使えるようになる策を考えてみるから」

 

「コーイチはそんなに……わたしが嫌なの?」

 

 また泣きそうになってるし。なんだこの情緒不安定なのは。

 まさか惚れ薬か?

 今日は学院に戻ってきたモンモランシーと話していたからもしかしたら……でもチョーカーがあれば効きはしないと思うのだが。

 

「どうした、なにがあった?」

 

「どうせわたしはコーイチを使い魔にするメイジに相応しくないわよ!」

 

「モンモランシーになにか言われたのか? 気にするな、俺はキミの使い魔だ」

 

「聞いたわ、コーイチも奥さんたちも魔法使えるんでしょ。魔法が使えないわたしなんて女として見てないんだわ」

 

 俺が魔法を使えることを知ってしまってショックを受けたのか。

 というか、手を出さないのに魔法は関係ないんだけど。

 

「キミは魅力的だよ。俺はただ妻を裏切りたくないだけ。魔法が使えるかどうかなんて些細なことは無関係だ。その証拠にキュルケの誘惑だってのってないだろ?」

 

「あの女にまた誘惑されたの!?」

 

 なんかちょくちょく誘われるんだよね。妻子がいるからって断っているのにさ。

 今日もルイズがモンモランシーのとこに行ってる時に部屋に呼ばれたけど、調べものがあるからって逃げたよ。

 

「なんにもなかったから。魔法が使えることを黙っていたのは謝る。俺のはこっちのと違うから異端扱いされるとまずいんで秘密にしたいんだよ」

 

「先住魔法なの?」

 

「違う。と思うけど先住魔法を見たことがないからなんとも言えない。使い魔が異端なんてことになったらルイズも困るだろ」

 

 まあこっちの魔法も使えるんだけどね。学院で見た魔法はもう覚えたし。使う時は杖を持ってないとやっぱり異端扱いされそう。

 

「わたしのために……」

 

「魔法もきっと使えるようにしてみせるから安心しなさい」

 

「本当?」

 

「約束だ。その時にキミの魔法が爆発してしまう理由を教えてあげよう」

 

 今はまだ虚無だって教えない方がいいだろう。この感じだと暴走しそうで怖い。

 ビニフォンに入ってた小説を読んでわかった。ルイズが魔法を使えないのは虚無だからだけど、ファミリア契約や彼女に〈成現〉しないでも使えるようにする方法はきっとある。

 

 朱色の魔本と魔物の子とか。中の人的にかなり試したい。

 嫁さんがいたら自重か止められただろうけど、こっちにはいないから俺も暴走気味かも。

 

 

 ◇ ◇

 

 

 再びの虚無の曜日。

 今日、モンモランシーが召喚の儀式を行うというので、昨夜のうちにラプラスをモンモランシーの召喚に応えるように設定して〈成現〉、見つからないように学院近くの水場に放してある。

 本物は思った以上に大きかった。波乗りもちょっと試させてもらったけど最高だったよ。

 

 休日ということもあって学生の多くが見物してる中で儀式は成功。無事にラプラスはモンモランシーの使い魔となった。

 新種だって大騒ぎになってるけどね。

 

「あれがコーイチの仕業なの?」

 

「しっ。秘密だからね。俺が使い魔を止める時はルイズにも代わりのすごいのを用意するよ」

 

 サーバルとかさ。ガンダールヴになっちゃうならかばんちゃんの方がいいか?

 むう。悩むところだな。

 

 その後、ガーランドで城下町へ行きデルフリンガーを購入した。

 代金? 真桜やドワーフが作った適当な武器をいくつか売ったよ。予想以上に高値で売れたから店主は見る目があるのかもしれない。

 ……手持ちでは最低ランクの品なんだけどね。魔法もかかってない普通の武器だし。

 

「あれぐらいわたしが出したわよ」

 

「貴族が買うとなるとふっかけられるだろ、値切りたかったんだよ」

 

「でもあんなボロ剣なんて買わなくたって」

 

 デルフリンガーは既にスタッシュに入ってもらっている。でかくて嵩張るしさ。入れる時になんか騒いでいたけど我慢してもらおう。

 

「喋る剣なんて珍しいよ。ルイズを守る武器なら他に持ってるからあれは武器じゃなくてマジックアイテムだと思えばいい」

 

「そんなものなの?」

 

 ゲキリュウケンも喋るからそんなには珍しくないんだけどね。

 特殊能力は気になる。ドワーフに見せるとなんて言うだろうかね。

 

 それからはだいたい小説と同じような展開。

 ルイズとキュルケの勝負になぜかモンモランシーまで参加したのはよくわからんが。

 

 んで、やっぱりゴーレム出現。

 ここでモンモランシーが渡してあったモンスターボールからラプラスを出して戦闘開始。

 

「ハイドロポンプまで覚えているなんてレベルいくつだよ。しかも効いてる?」

 

「効果は抜群よ」

 

 ゴーレムってもしかして地面か岩タイプ扱いなのか?

 倒せはしなかったが、ゴーレムの撃退に成功していた。……こっちを襲ってはこなかったし囮だったのかも。

 破壊の杖はフーケに盗まれていたし。

 

 で、捜索までも小説と同じ。ゴーレムに善戦したからとモンモランシーも追加されてしまったのが違うくらいか。……なんでギーシュはこないんだろ?

 これぐらいの違いなら小説と同じように進むかなと楽観視していたら山小屋への移動中、そいつらと遭遇した。

 

「なによあのゴーレム、あれもフーケの?」

 

「いや、エクサランスとテュガテール……戦っているのか?」

 

 なんでこんなとこで、と思っていたらフーケのゴーレムまでが参戦。時間稼ぎのつもりらしく、その間に山小屋に到着し、破壊の杖を見つけた俺にそれを使えと言うロングビル。

 

「これじゃ無理だ。1発しか使えないのにあっちは2機だし」

 

 というかあんた、俺がガンダールヴって知ってるか疑ってるな。じゃなきゃ使わそうとしないだろ?

 そうなると学院長もか。面倒な。

 

「ルイズたちを頼む、フーケ」

 

 俺がそう呼ぶとちょっと目が怖くなったロングビルだが返事はない。

 彼女のゴーレムはあっさりとテュガテールが召喚したサポート機パテールによって破壊された。

 まあ、勝てるはずもないか。

 ここは俺もロボを使うしかない。

 

 どうせだからとスタッシュから出したのはデモンベイン。

 主人公機と中ボス機との争いを止めるにはこれぐらい必要だろう。

 そしてデモンベインにみんなが驚いているうちにこっそりと、デモンベイン動かすのに必要なアル・アジフを〈成現〉した。

 彼女はルイズが魔法を使うのに協力してくれないかと構想していた手段の1つだったりする。マギウス・スタイルになれれば上手くいくんじゃないかなってね。

 

 でもアルの〈成現〉でMPを結構使っちゃったからアイオーンを出すのは止めた。あっちはMP消費が無茶苦茶だから。

 それぐらいは冷静だよな、俺。

 

「ふむ。フィギュアエディションとでも言うべきか。かような方法で妾を手に入れるとはな」

 

「大丈夫だ、フィギュアだって売ってる古本屋があるから問題は無い! とにかく説明はあとで。協力してくれ」

 

 さすが魔導書というべきか、状況をある程度理解している様子。素直に従ってくれるようだ。

 エクサランスとテュガテールがこっちの様子を見ている間に操縦席についた俺たちは2体に向かって通信を始める。

 

「わかっているとは思うがここは俺や君たちのいた世界じゃない。元の世界に戻りたいなら戦闘を止めて協力してくれ」

 

 エクサランスはともかくテュガテールは無理だろうな、そう思っていたのにあっさり戦闘中断。

 あれ、もしかしてデモンベインやアル必要なかった? ガーランドで通信すればそれでよかった?

 

 魔法の世界だからって調子に乗りすぎたかもしれない。

 どこが冷静なんだか。

 

 

 ◇

 

 

 スパロボR主人公フィオナとヒロインのミズホ、中ボスのティスが仲間になった。ラージはなぜかいなく、ティスの方はいわく「一時休戦だ」だけらしい。「ツンデレ乙」と返しておく。

 

 ついでに土くれのフーケことロングビルも正体を隠すことを条件に仲間にした。

 あの巨大ゴーレムは〈成現〉のベースに便利そうだ。土メイジなら固定化が使えるからロボを固定化するのにも協力してもらいたいし。

 彼女に必要な資金はどうにか用意しよう。

 どうせだったらバートレーもあげちゃおうかな、フーケだし。ライドスーツないと変形はできないけど。

 

 問題はとりあえずのフィオナたちの生活だよな。住居はどうしようか?

 アルは学院の寮で暮らせるように頼まないと……。

 そんなことを学院への帰り道で悩んでいたらビニフォンが鳴り出す。

 この着信音は嫁さんからの電話?

 慌てて電話に出てみると。

 

『お兄ちゃん?』

 

「その声は唯ちゃん! 唯ちゃんなのか!?」

 

『うん! なんかよくわからないけどボクは今、篁唯依で……とってもピンチ! 助けてお兄ちゃん!』

 

 篁唯依ってTEのヒロインの?

 山吹色の機体に乗る……そりゃ唯ちゃんのエプロンも猫目の衣装も山吹色だけどさ!

 そっちはアンリミの数十年後じゃないのか?

 

 




ルイズがツンにならなくて無駄に文量が増えて……
モンモンもなんか違う……

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