大有双   作:生甘蕉

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18話 鉄岩


「本当にファミリアになってくれるの?」

「……それは構わないんだけど、ワタシたちがいなくなっても大丈夫なの?」

 質問を質問で返されてしまった。

 いや、答はもらってるけどさ。

 

「こっちの地球は君たちが生まれた地球とかなり違うからね。できればよく似てるはずのあっちで暮らしてほしい。それに、これからいくとこはとっても危険なんだよ」

「アタシ、煌一1人だととっても不安……」

 テニアちゃんに心配されてしまった。カティアちゃんとメルアちゃんもうんうんって頷いてるのは……納得できるけど凹むなあ。

 

 VF-19V、通称VIPカリバーでエリアZiに到着した俺たち。

 着いたはいいが、さすがにゾイドジェネシスなエリアはかなり勝手が違った。

 このまま彼女たちを連れ回すのは危険だと判断してファミリア契約してくれるか相談したわけなんだけど。

 

『煌一には俺がついているから心配ないぜ!』

「ザンリュウさん、煌一さんのことをよろしくたのみますねー」

『おうよ! ねーちゃんたちも元気でな!』

 ザンリュウに頼まれちゃったよ、俺のこと。

 たしかに()は俺オリジナルの6分の1だから弱いけどさ……。

 

 

 

「さみしいなあ」

『今さらなに言ってやがる』

 彼女たち3人は分身の1人、ホワイトのとこへポータルで移動した。

 トゥインクル1社の本社がある島は以前は別の名前があったんだけど、今は北アタリア島って呼ばれている。マクロスの南アタリア島の近くなせいらしい。

 

 ――新西暦179年12月24日。

 L5宙域に突如巨大な物体が出現。連邦軍とジオン公国軍の宇宙艦隊を巻き込み地球に落下しようとしたが、トゥインクル1社によって落下は阻止され南アタリア島に軟着陸。落下物による地上への被害は極めて軽微なものとなった。

 

「マクロスの設定だと地球にすごい被害を与えてるんだけどね。それを阻止したってことでかなりGPが入ったみたい」

『そんなんでも貰えるのかよ』

「シーマ様たちがいい働きしてくれたおかげだね」

『けどよ、売っちゃったのは勿体無くねーか?』

 

 ――T1社は落下物の所有権を連邦政府に売却した。「自社で持っていても危険ですからね。聞けば、連邦軍も極秘に開発していた新型MSをBF団に強奪されたそうですし」とT1社社長は語っている。

 

「スキャンとデコードのついでにトロニウム(やばいブツ)は回収したし、持ってると狙われて物騒なんだよ。最近のマクロスだと統合戦争の原因だからさ。しまいには政府に無理矢理取上げられちゃうかもしれないだろ。それなら最初っから高値で売っちゃった方がいい」

『そんなもんか?』

「Fドライブの売れ行きもいいみたいだ。資金繰りも順調らしい」

 

 ――落下阻止時に使われた技術をコロニー落とし対策としてT1社が発表。エネルギー源は欠陥を抱えたシズマドライブの改良型のFドライブとしている。

 

「1年戦争も終結したしさ、0083の年まではあっちの方が安全そうだ」

『デラーズの紛争って新西暦183年に起きるのか? スーパーロボット大戦αの年は187年なんだろ?』

「そこなんだよな。ポケ戦もαで発生するはずなんだけど、すでにガンダム世界準拠で起こってる。まあ、アレックスは頂いちゃったけどね」

 北アタリア島に無事到着したテム・レイが熱心に調べているみたい。

 他にも記憶を取り戻したキッカ(ゆきかぜ)ちゃんのために、保護者となったフラウ・ボゥにも事情を話して島に来てもらっている。カツとレツも一緒だ。その内ハヤト・コバヤシもきてフラウと結婚するのだろうか?

 

『アムロはどうしたんだ?』

「母親のカマリア・レイを探しだして島によんだ。両親がいればアムロも島で暮らしてくれないかなって」

『味方になりゃいいな』

「そうだったんだけどね、テムは奥さんから逃げるように研究ばっかりでね。このまま別れたら一刀君にアムロママ持ってかれちゃいそうなんだってさ」

『やれやれ、ゲキリュウケンのやつも苦労してそうだぜ』

 一刀君は成現(リアライズ)時に人妻や恋人がいる女性には手を出さないように改竄しているから今はまだアムロママとは清い仲みたいだけどね。

 

「璃々ちゃんも見つかったから、面倒見てくれる人が多いにこしたことはないんでアムロママがきてくれたのは助かってるんだけどね」

 璃々ちゃんは銀鈴の元の職場の仕事で見つかったのをムラサキ経由で紹介され、島で保護している。

 リリ・ボルジャーノとの融合を心配していたけど、誰とも合体はしていないようだ。

 ただし、俺の娘の璃々ちゃんではなく、無印恋姫の璃々ちゃんだ。

 愛娘の方は柔志郎担当の"あっぱれ対魔忍"世界に置いてきて爆発に巻き込まれてないはずだからたぶんこっちにはこないはず。

 

『おっかさんはまだ見つかんねーのか?』

「残念ながらな。俺の嫁さんの方の紫苑でもいいから早く見つかってほしいよ」

『誰か融合しているの予想できねーのか?』

「黄忠で紫苑だろ……第2次スーパーロボット大戦Zのヒロイン、シオニー・レジスもありそうでちょっと不安なんだよなあ」

 今のとこZ系の世界やキャラは確認されてないみたいだけどさ。

 もしZ世界混じってたらシオニーちゃんは絶対に助けるね。

 

『他の嫁さんたちは?』

「ごひってさ、張飛が名前の元ネタだろ。鈴々ちゃんが怪しいけど、ガンダムW世界はまだリンクしてないのか見つかってない。もし見つかったら死んじゃうはずの嫁さんも助けないと」

 俺の嫁の鈴々ちゃんなら死なせないだろうし、万が一の時もエリクサーがあるんだけど、華琳ちゃんと同じ無印恋姫の張飛ちゃんだとエリクサー持ってないもんなあ。

 

「あ、助けるっていえば、栄華ちゃんと融合したフラスト・スコールの故郷のコロニーも危険なのか」

『さすがにあれはスパロボ世界じゃないんじゃねーの? もしやばそうならヒーローに行ってもらおうぜ』

「一刀君の出番か」

 キキちゃんは小説版の不幸イベはおきず、アイナにふられて傷心のシローとくっついたみたいだし、気にする必要はないかもしれないけど。

 でもマリーダだけじゃなく他のプルクローンちゃんたちも救助したい。ネオジオンに潜り込むか?

 

「スパロボは原作じゃ死んじゃう人間が助かることが多いけど、それでも死ぬやつがいる。なんとかしたいよね」

『主にねーちゃんをだろ?』

「否定はしないが、ロリっ子もだ」

 ガン×ソードの双子はなんで助けられないかね? あれもスパロボKの不満の1つだよなあ。

 

『ったく。んで、他に融合してそうなのは?』

「愛紗は何人か怪しいのがいる。BXがくればアイシャ・ブランシェット。そうでなくても種ハモンさんことアイシャがいるし」

『デルタベルンの行かず後家は?』

「ファイブスターはスパロボにはきてないから。ファティマはアイテムであるけどさ。それだったらモスピーダのアイシャの方がまだありえそうだ」

 アイシャさん多いな。早く見つけたい。

 まさか関羽でボトムズのカン・ユーってことはないよね?

 

『名前そのまんまなら流琉もだな』

「ああ、ガイキングLODのルル・アージェスか。髪の色も近いし、スパロボKも混じってるから可能性が高いんだよな。ただ、ダリウス界への行き方がわからん」

 もしも流琉ちゃんだったらダイヤは、ふられることになる。リチャードさんにがんばってもらうしかないだろう。

 ……くそっ、ダリウス界へ行ければルルの母親を死なせないのにさ。

 

「明命はミンメイか? シャムも同じくマクロスのシャミー? (てる)はあっちにいるからマクロス主人公にはならないはずだけど……」

『主人公とヒロインが候補ってのはすげーな』

「まあ、ミンメイはマクロス本編前でも有名な看板娘だったみたいだから、すぐに見つかるはず」

『そうだったらいいな』

 心配なのはカイフンだけどスパロボだと影が薄いし問題なさそう。明命に「兄さん」と呼ばれるのは羨ましいが。

 

「他にもこじつければもっといるだろうけど、こっちでいそうなのは美以ちゃんなんだよな」

『レ・ミィか。でもまだ小さすぎるだろ?』

「そうなんだよなあ。華琳ちゃんから判断するとKの数年前っぽい。……まさかαとKの戦いが同時に勃発するのか?」

『ありえっかもな。ここにくる時の考えるとRとJの同時もありえんじゃねーのか』

「マジか……」

 たしかに俺の担当世界にきた直後、RとJのスタートイベント混じってたみたいだけどさ、αでさえ地球がピンチすぎだろとツッコミ入れたいのに、他にも同時発生? かぶってる登場作品があるとしても、無理ゲーすぎるだろ、それは!

 

「始まる前に問題解決できるとこはしておくべきか。……ディガルドつぶしちゃうか?」

 ゾイドジェネシスの悪役側の組織、ディガルド武国。今はまだディガルド公国か。ここがなくなればゾイドジェネシスの戦いは起きなくなるだろう。

 あ、ディガルドだけじゃなくてそれを支援するソラノヒトも問題か。

 

『おいおい物騒だな』

「だけどそうしとけばレ・ミィの両親は死なずにすむ。ジーンの暗殺を……まさかジーンが曹仁じゃないだろうな?」

『情報が足りなすぎだな』

 そうなんだよな。人手が足りなすぎる。まあ、Jヒロインズがここに残っても情報収集にはあまり役に立ちそうにないから後悔はしてないけど。……寂しい以外はさ。

 

「これから行くアイアンロックで仲間が増えれば、なんとかなるかな?」

『もしコトナ・エレガンスかリンナ・エレガンスがお前の嫁さんだとしても、やっぱり小さすぎなんじゃね?』

「そうなんだよなあ」

 きょっちーやゆきかぜちゃんから判断すると、融合した場合は若い方に年齢が引っ張られる。例が少なすぎるんで合ってるかはわからないけどね。

 

 エリアZiに辿り着いてからは現地の人と接触し、情報を集めながら旅をしている。

 キャンピングカーはここだと違和感ありすぎなのでグスタフというダンゴムシ型のゾイドに擬装している。デルタシャドウも烏型の小型ゾイドということにしているが、ゾイドと同じメーカーの玩具から成現しているせいか、特に目立った様子は無い。

 ちなみに残念ながら俺にはゾイド適性が無かった。

 

 そして、一番近い目的地がアイアンロックだった。

 だけどあそこは、調査する人間が死ぬという"アイアンロックの呪い"と恐れられる集落。

 実際は"マキリ"って忍者みたいな暗殺集団が住む隠れ里なんだけどね。呪いはその一族が手を下しているっていう物騒なとこだ。

 しかも嫁さんかもしれない2人はそのマキリの族長候補だしさ。接触したら危険すぎでしょ。でも会わないわけにはいかないという。

 

 危険すぎるからJヒロインズにはあっちの地球に行ってもらったわけ。そのためにポータルが使えるファミリアになってもらった。

 

 

 

『で、なんでリュウジンオーに変身した上に隠形まで使ってこそこそしてるんだ?』

「しぃっ。マジで危険なんだから。……せっかくだからアイアンロックの地下設備、破壊しておこうと思ってね」

 アイアンロックって滅びの龍(ギルドラゴン)って超大型ゾイドが封印されてて、マキリはそれが目覚めないように守ってる一族なんだよね。で、封印の他に旧文明の設備も生き残ってるんだけど、それをディガルドに利用されてバイオゾイドが量産されちゃうんだよね。

 そんなもの、ぶっ壊しちゃっていいでしょ?

 そう思って、アニメの知識を活かして地下水路からこっそりと潜り込んでるわけだ。変身してるから水中活動も余裕だし。

 

『なんかお前、最近思考がやばくねえ? ねーちゃんたちがいなくなっておかしくなってないか?』

「嫁さんたちのためになら鬼にもなるっての」

 スパロボじゃ出てこないけどギルドラゴンが目覚めたらアイアンロックは壊滅するんだしさ。それに一応、スキャンはしておく。必要になった時に直せばいいでしょ。

 水中から頭だけを出して状況を確認する。

 

「誰かくる。……コトナ?」

 走ってきたのはチャイナっぽいミニスカの少女。コトナだ。美少女だけど桔梗でも斗詩でもなさそう。はずれか。

 

 ってもしかしてもう見つかったのか?

 いくら分身のせいで俺の隠形スキルのレベルも下がってるからって、マキリすごすき。

 ……あれ?

 

『追われてるみてーだな』

「もしかしてコトナ脱出イベント? タイミングがいいんだか悪いんだか……烈風!」

 リュウジンオーの高速技を使ってコトナちゃんを狙って飛んできた苦無をザンリュウジンで弾く。

 

「え?」

「何者!?」

 問いは苦無が飛んできた方向から。姿を現したのは髪型がちょっと違うだけ以外はコトナちゃんそっくりの少女。双子の妹のリンナだろう。やはり俺の嫁さんとは融合していないようだ。

 

「リュウジンオー、ライジン」

 どっちもはずれだったけど、せっかくだからポーズつけて名乗った。

 なのに、名乗りの途中でリンナちゃんは剣を構えて飛び掛ってくるしさ、マナーのなってない子だ。

「怪しいやつめ!」

 うっ、否定できない。リュウジンオーのデザインモチーフは斧と髑髏らしいから悪役っぽくもあるし……。そう思いながらもまだ烈風中なのであっさりと攻撃を回避し、背後に回ってリンナちゃんを捕まえる。

 

「リンナ!」

 今度はコトナちゃんからの攻撃。せっかく守ってあげたのにそりゃないよね。

 大事な妹を不審者が襲ってるように見えるのかもしれないけどさ。

 

『嬢ちゃん、こいつの命が惜しければ武器を捨てな』

「って、なに言ってるのお前!」

『いいからここはまかせろって。早くしねーとこの嬢ちゃんがどうなるか……』

「わ、わかった!」

 武器を捨てるコトナちゃん。

 それを見てリンナちゃんが動揺する。

 

「コトナ、なんで?」

『そりゃお前が死んだら、そこの嬢ちゃんが一族を抜けようとした意味がなくなるからに決まってるだろ』

 ああ、ザンリュウジンはリンナちゃんの誤解をとこうとしていたのか。

 なら俺もネタばらししちゃうか。

 

「マキリの族長は強い方がいい。そして、弱い方はいらない。マキリがいらないものをどうするかは君が一番よくわかっているんじゃないか?」

 族長候補の弱い方を殺すってマキリのやり方さ、どう考えてもおかしくない? リンナちゃんは族長への野心があるわけでもないし……。

「私を生かすため?」

「他に方法がないの!」

 秘密にしたかったことをばらされて叫ぶコトナちゃんにザンリュウジンがツッコミを入れる。

 

『ならいっしょに逃げりゃいーじゃん。面倒ならこいつが見てやるぜ』

 リンナちゃんを残してコトナちゃんが1人で里を抜けたのは、リンナちゃんに長になってもらって新しいマキリを作ってほしかったから。

 なんだけど、結局それはまずい選択なんだよね。

 だから俺はこの別離の前にアイアンロックの設備を壊滅させて、マキリなんて不要にしたかったんだけどなあ。

 

「いっしょにくる?」

「……」

 リンナちゃんを解放してもコトナちゃんは無言でこっちを睨んでいた。

「無理か。いきなり現れたこんな姿のやつについてきたんじゃこっちが不安になるけどさ。じゃあ、保護者の人とお話させてもらおうか。結果によってはここが壊滅するけどね」

 あれ? 姉妹で抱き合って無事を喜ぶのはいいけど、なんで震えているのかな? まだ水路に落ちてもいないのに。

 

『やっぱ煌一、おかしいぜ。華琳ちゃん早く戻ってきてくれよぉ!』

 失礼な。

 

 


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