もうすぐクリスマス。
即ち、バーナード・ワイズマンの命日である。
この世界のバーニィはまだ生きているけどね。
スパロボ世界だからたぶん生き残るとは思うけど、他世界とも融合してるからどう転ぶかわからん。
サイクロプス隊の他のメンバーは死亡する可能性が高いし。
その中に季衣ちゃんがいる。
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争。
中立コロニーであるサイド6に運び込まれた新型ガンダムを奪取しようとするサイクロプス隊の物語だ。
通称ポケ戦。タイトルは0080なのに0079年が舞台。某2010と似たようなもんである。
季衣ちゃんと融合したと思われるミハイル・カミンスキーはMSのコクピットにまで酒を持ち込むベテランさん。
彼が操縦するケンプファーはチェーンマインを持ってるけど、チョバムアーマーを装備したNT-1には通用しなかったし、MS用のハンマーをプレゼントするか?
ジャイアントロボのOVAでバランの使っていた鉄球ってどれぐらいの大きさだったかな。
ハイパーハンマーはゴッグに受け止められていたよな。アンディもハイゴッグじゃなくてゴッグなら死なずにすんだだろうに。
この世界のアンディはまだ生きているけどね。
……NT-1と戦う前に季衣ちゃんを保護した方が確実か。
ついでにサイクロプス隊もスカウトできればいいな。
フラスト・スコールと融合したという曹洪を連れてくる紫が到着したら相談しよう。
フラスト・スコールって誰かと思ったら、機動戦士ガンダムUCのキャラだった。まさかこの時期にUCのキャラが出てくるなんて思わなかったから無意識に除外していたよ。
10歳なのに少年挺身隊としてジオン軍に同行させられていたらしい。マジ人手不足だね、あそこも。
で、連邦の捕虜になっていたのを紫が村雨健二の情報網で発見、助け出したそうだ。
「英雄譚にUCとか、あんまり覚えてないのに」
特に英雄譚なんてぽっと出の新キャラがさも当然のように仲間になってるから余計に覚えづらい。
「
「それはそうなんだけどさ」
ビニフォンに送られてきた曹洪の画像はどう見ても10歳前後の少女だった。
「英雄譚の曹洪って建前じゃなく18歳以上だったよね。融合先のフラストの影響でこんなに小さいのかな?」
今まで合流に成功した華琳ちゃん、孔明ちゃん、ねねちゃん、稟、ミケちゃん、紫は俺が知っている外見だ。融合の影響は中身、精神的なものだけだったのに。
「朱里、ミハイル・カミンスキーは写真と同じ姿なのね?」
「はい。そのおかげで確認がとれました」
ふう。華琳ちゃんも同じ心配したみたい。季衣ちゃんがBBAやおっさんになったりしてないようでほっとした。
「外見が影響を受けたのは栄華と煌一クン……なにか理由があるのかしら?」
「あ、俺もか」
ビッグ・ファイアと融合した俺は髪が白くなっちゃったもんなあ。いくらコールサインがホワイトだからってこれはないよ。
「いまだに記憶も曖昧だし、俺との融合を嫌がってるのかな? テレパシー能力を使う幽鬼に診てもらった方がいいかもしれない」
「はわわ、危険です、ビッグ・ファイアさま」
「そうは言ってもね、いずればれるでしょ。早めに相談しておいた方がいい。一年戦争とマクロスの落下にケリがついたら十傑集とも会わないと」
変に隠して嫁さんたちの捜索を勘ぐられるよりは協力か敵対かをはっきりさせておきたい。
ちょっと、いやかなーり怖いけどね。
紫が戻ってきた。
移動には
バルキリーのエンジンって大気を推進剤として使えるから、大気圏内ではほぼ無限に飛びっぱなしでいられるんだよね。しかもごっつ速い。
メンテナンスはナノマシンで済むようにしてるし、戦闘がなければ無補給でいいんだから単独行動にも向いている。
数ある19系の中でブレイザーを選んでいるのはカナード翼がないんで擬装しやすいから。たいして意味はないかもしれんけど。
「おかえり紫」
「……ああ、彼女が保護した少女だ」
やはり曹洪が小さい。
でもなんか、紫の反応がおかしいな。
「栄華? その姿は懐かしいわね」
「お姉さま!」
紫の後ろに隠れるようについてきていた少女が華琳に抱きつく。
心細かったのかな? 連邦の捕虜になってたらしいし。
「……お姉さま、か」
やはり紫が変だ。井河さんのことでも思い出したのかもしれん。
「紫?」
「ミケは元気か?」
ああ、紫は猫好きだからミケちゃんが気になっていたのか。
……なんか違う。
「ミケル・ニノリッチは敵前逃亡扱いになっている」
「そう。こちらでは敵前逃亡は銃殺ね」
「……そりゃ戦争終結前に軍人さん、しかも最前線から連れてきちゃそうなるか」
でもそれなら一年戦争が終わってから連れてくれば……アプサラスと戦うんじゃ危険すぎるから無理に連れてきた?
「ゆきかぜと凛子が見つかった」
「え」
2人が見つかったのは嬉しいけど、なんでこの話の流れで出てくる?
「ゆきかぜはキッカ・キタモト。ホワイトベースにいる」
「ゆキッカぜ? 駆逐艦が戦闘攻撃機になっちゃったか。……もしかして?」
ちらりと曹洪ちゃんを見ると、紫が小さく頷く。
そうか。ちっちゃくなっちゃってるのか。
「問題なのは凛子の方のようね」
華琳ちゃんにとってはゆきかぜちゃんの変化は問題ではないらしい。
大問題なのに。いくらなんでもキッカちゃんじゃ俺とできないでしょ。小さすぎるってば!
なのにまたも小さく頷いてから紫が口を開く。
「凛子は……アイナ・サハリンのようだ」
「アイナぁ?」
変な声が出てしまった。だってちょっと影が薄い気するけど、第08MS小隊のヒロインじゃないか。
「そう。それでミケを連れてきたのね」
「そうだ。機動戦士ガンダム第08MS小隊とは流れを変えたかった」
「相談してくれればいいのに」
俺は夫なのに頼りにされてないのか……。
「現場の判断と言いたいところだが、すまない。融合した村雨健二の影響かもしれん」
たしかに村雨も味方にも秘密で動いていたり、独自の判断で動いていたことが多かったような……でもそれは支部が違ったらかもしれないし。
「アイナね。もしかしたら凛子の心残りが影響したのかもしれないわね」
「心残り?」
華琳ちゃんがもたらした情報によれば、跳ばされた先にそれも影響するんだっけ。
「凛子の心残りは多分、弟を死なせてしまったこと。弟と兄という違いはあるけれど、死にそうな兄を助けたいのではなくて?」
「ギニアスをか?」
「病の方はエリクサーで治るでしょう。戦いの方は危険ね」
ギニアス・サハリン。
第08MS小隊の悪役でGジェネとかでもラスボスやらされてたりするんだよな。
鬱陶しい友人や試作機の技術者を殺しちゃう妄執者だよな。果ては妹まで撃っちゃう。
それが凛子のお兄さん?
「凛子はまだ記憶が戻っていないのか?」
「たぶんな。戻っていたら連絡は入れるはず」
早く戻ってほしいな。
第08MS小隊の主人公であるシローに持ってかれるわけにはいかない。
というか、俺はキキちゃん派だったので、シローは彼女とくっつきなさい。もしかして凛子もキキちゃん派でそれが心残りだった? んなわきゃねえか。
「アプサラスの開発スタッフがまだ生きているのならほしいわね。ミノフスキークラフトがあればマクロスの受け止めにも使える」
「あれは電力をかなり必要と……そうか! そこでフォーグラードライブか」
「そう。煌一クンが成現した完成形を調べることで研究が進んでいるから間に合うはず」
OVAジャイアントロボの最後で欠陥が解消されたシズマドライブ、核が3つに分裂したあれを成現して
「大型のFドライブとミノフスキークラフト、それに電磁ネットワイヤー発生装置をシーマ艦隊の艦に搭載できれば……」
「大気圏突入ができれば電磁ネットワイヤーの出力次第でマクロスを受け止められますね」
孔明ちゃんと稟がビニフォンを操作してシミュレーションを見せてくれた。
「シーマ艦隊はリリー・マルレーン以外は大気圏突入ができなかったはずだからバリュートシステムも必要か」
「設計が
「アプサラス開発スタッフが味方になってくれなかったり、間に合わなきゃ俺が成現するからマオウ社で造ったことにしてくれ。できればこの世界の技術だけで受け止める方がいいだろう。変に調査されたくない」
スパロボ世界で俺の
「この構想はコロニー落とし対策に考案されたことにするとして、マクロスの落下は事前にどうやって知ったことにするのです?」
「それはほら、ノストラダムスの預言書に書かれてたってことで」
元々マクロスはそうなんだし。
「なるほど。たしかにそのように解釈できる記述もありますね」
あるのか。スパロボ世界のノストラさんスゲえ。
「ならば早速凛子を迎えに行くぞ。煌一、私の時のように凛子の記憶を取り戻せ」
「ま、またキスするの?」
銀鈴ちゃんそこで暴露しないで。華琳ちゃんの目が輝くから。
「キスね。そんな方法で紫の記憶を取り戻したのね」
「私の時は、華琳様の卑猥な姿を想像する言葉を聞かされたのに」
それ、俺だけど俺じゃないから!
抗議する稟の目が怖い。きっと鼻血を噴きながら思い出したんだろう。
「せ、接触した方がテレパシーの通りがよくなると思ってね、いきなりキスしたのは驚いてくれれば心にも隙ができてテレパシーがね」
ここはなんとしても誤魔化さねば。
記憶が戻らない嫁さんを見つけるたびにみんなの前でキスしなきゃいけないなんて恥ずかしすぎる。
「そのわりにはずいぶんと長い口付けだったな。舌も入ってきた」
「次は別の方法考えるから! 握手でもいいし、テレパシーも練習して接触なしでもできるようにするから!」
ううっ、みんなの視線が痛すぎる。
記憶とりもどし装置でも作った方が早いかもしれない。
「ラサ基地の入り口はわかっているのか?」
「マーキング済みだ。オデッサ残党のジオン軍少尉を捕まえて案内してもらった」
「それってもしかして」
「あのエルフが言っていたザクI乗りだ。ゲリラの村に入る前に確保した」
やはりトップか! 生きているならヘンビットが喜ぶな。
「その少尉は?」
「無事にラサ基地に送り届けた」
それって死亡フラグのような……。
基地に潜入するための案内としか見てないの?
いや、案内ってこっそりと後をつけたのか。連邦に見つからないようにフォローしながら。
季衣ちゃんのことはファーストに連絡、華琳ちゃんが応援に行くことになった。
「紫さん、ビッグ・ファイアさまのことをよろしくお願いします」
「任せてくれ」
俺は孔明ちゃんになんとか許可をもらい、紫と現地へポータルで移動、無事に凛子の記憶を取り戻すことに成功する。
「基地を放棄してよかったのか?」
「不完全なアプサラスを完成させてもサハリン家の再興はなるまい。身体が治った以上、焦る必要はない」
あれ? なんかギニアスのキャラが変わってしまったような。エリクサー服用前が精神に異常をきたしていたんだろうけど……。
「ノリスはケルゲレンで行かなくてよかったのか?」
連邦軍にラサ基地が囲まれる前に合流できたため、ケルゲレンも無事に宇宙に上がることができた。T1社に来ることを拒んだ開発スタッフやトップ少尉もケルゲレンで脱出した。
ケルゲレン子は美人だけど、残念ながら恋ではなかったよ。
なのに、なぜかノリス・パッカードも残っている。シローと戦う前だから生きているんだろうけどさ。
「アイナ様を残して行けるわけがない。それにアイナ様の想い人も見極めんとな」
ギニアスよりもノリスが味方になってくれたことは嬉しいけど、アイナの父親代わりなポジションなのでちょっと怖い。
「ありがとう、ノリス」
凛子は見た目も凛子のままだったけど、ギニアスもノリスもアイナとして認識していた。異常が認識されないから世界融合があまり騒ぎになってないのかもしれない。
第08MS小隊主人公の魔の手からはチョーカーが守ってくれたらしい。その時に思い出してくれれば良かったのに。
意図せずに主人公の運命を変えちゃったけど、シローはキキと添い遂げてくれ。
要人護送型に改修されたという設定のVF-19V、通称VIPカリバーで無事に島に帰ってきた。
パイロット以外に5人分の対Gシートを搭載している機体だ。かわりに変形はできなくなっているけど、この世界ではまだバルキリーの変形を披露するつもりがないので問題ない。
VIPカリバーは
便利だと思い、こっちでも追加成現したよ。
俺、紫、凛子がそれぞれ操縦し、ケルゲレンの打ち出しと同時に3機のVF-19Vも基地を出発した。
ただでさえミノフスキー粒子のせいでレーダーが利かない上にアクティブステルス機なので発見されることはない。もし発見されたとしてもセイバーフィッシュに擬装してるし、最高速度マッハ5は追いつかれないでしょ。
T1社にきてくれたアプサラス開発スタッフはVIPカリバーの性能やFドライブに興奮。休憩もほとんど取らずに艦船用のミノフスキークラフトの設計に取りかかる。
ちゃんと休んでほしいけど時間もないし……エリクサーじゃ強すぎるから、体力回復の栄養ドリンク
……なんかヤバイ薬漬けにして利用しているイメージがして、なかなか集中できんかった。
第08MS小隊で星一号作戦とか台詞で出てくるからアプサラスIIIが出てくるのって、12月下旬だと判断しました
違ったら……まあ、一年戦争とは違う世界だってことでごめんなさい