ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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五番道路での出会い

カフェ・ソレイユに向かうとセレナが入り口に立ってツカサを待っていた。

 

「ちょっといい?」

 

「ああ、いいよ」

 

そのまま二人で店内に入ると中にフラダリと一人の女性が話をしている姿が目に入る。

 

「フラダリさんと……もしかしてカルネさん……?」

 

「セレナの知り合い?」

 

「あのね、ツカサ。フラダリさんはホロキャスターって映像データの受信装置を作ったフラダリラボのトップで、カルネさんは知ってるでしょ? 世界的に凄い人気の大女優さんだもの」

 

「うーん、そう言えば一回だけイッシュのポケウッドで見たような……」

 

メイのお願いでリオルキッドやルカリオキッドとして多数出演していた時にすれ違ったようで、目と目があって微笑まれた事を覚えていた。

 

二人が何かのやり取りをしているのを眺めながら、セレナが熱くカルネについて語るのを聞き流していた。

 

 

「おや、ツカサくん。こちらカロスが誇る大女優のカルネさんだ。その演技で多くの人を感動させている……つまり自分以外の誰かを幸せにする為に生きている」

 

「そうなんですか」

第六感的な何かがこいつは危ないと告げているが表には出さず、そのまま返事をしている。

 

「ああ! みんなそのように生きれば世界は美しいのに! ……では失礼します」

そう言うとフラダリはカルネに挨拶をしてカフェから出ていき、すれ違い様にツカサを値踏みするような目で見て行った。

 

 

「ふぅ……それで貴方達は?」

 

「は、はい! アタシはセレナでこちらは……」

 

「ツカサ、ね。さっき聞こえたもの、二人とも素敵な名前! それに何て素敵なポケモンなの! あたしもポケモン育ててるの、いつか勝負しましょうね!」

そう言うとカルネは二人に微笑みカフェから出て行こうとして……

 

「……貴方の映画、素敵だったわ」

 

「ッ!」

すれ違い様に耳元で囁かれ、思わず振り返って見たがそのまま出ていってしまった。

 

 

「そっか……トレーナー同士ならみんなと戦えるんだ。あ、そうだ! ツカサに言いたい事があったの」

 

「え……そ、それって」

少し頬を赤らめるセレナにちょっと告白的な事かと期待している。

 

「ツカサとアタシでどっちが強くなるか競争しない? ツカサはアサメに来たばかりで旅立ったけれどお隣さんだし、競い合うのも面白いでしょ?」

 

「うん、そうだね……」

 

「え、何で元気なくなってるの? とにかくアタシ、負けないからね」

 

「うん、意地でも負けないわ。それじゃあ……」

 

「お茶してから行きましょう?」

そのまま出ていこうとしたツカサの腕を掴み、席に座ってウェイターに注文をしていた。

 

………

……

 

ソレイユで色々と奢り、セレナと別れてミアレを彷徨いている。

 

そのまま次の町に向かおうとゲートに向かうとティエルノからホロメールが届き、五番道路に来ないかと誘われていた。

 

そしてゲートに向かうと案内をしてくれる女性に声をかけ、この先の説明をしてもらっている。

 

「この先は五番道路、別名ベルサン通りですよ」

 

「なるほど」

 

「パルファム宮殿へはこちらをまっすぐお進みください。コボクタウンもこちらからです」

 

「ご親切にどうも」

礼を言うとそのままゲートを抜けてベルサン通りに向かった。

 

 

昼過ぎの陽気に手で太陽の光を遮っていると、見ず知らずのルカリオが向こうから嬉しそうに駆け寄って来た。

 

「うおっ! ル、ルカリオ?」

自分の周りを回り出したルカリオに目を白黒させている。

 

「くうん!」

 

「ちょっとルカリオ!!」

向こうからそのトレーナーと思われる少女が、もう一体のルカリオと共に慌てて近づいてきた。

 

「何か凄いじゃれついて来てるこれ!」

ルカリオが物凄い懐いてきてそれどころではなく、物凄く動揺している。

 

「こら! ……大丈夫でした?」

 

「な、なんとか……」

 

「ルカリオ同士で特訓していたらいきなり……ね、ルカリオ。あなた、どうしたの?」

 

「……」

急にポケモンと話し出した少女を眺め、自分も話してみたいと考えていた。

 

「この人から気になる波導を感じた?」

 

「くうん!」

 

「ふふ、ルカリオったら何だかあなたが気に入ったみたい」

 

「そうなの?」

 

「ルカリオは相手が出す波導を読み取れるポケモンなの! もう一体のルカリオといつも張り合ってるから、強そうなトレーナーを探してるのかも……」

 

「ほう……」

 

「あっ、ごめーん! 自己紹介してなかったね。あたし、シャラシティのジムリーダーをしてるコルニ! あなたがバッジを集めていたらいつか戦えるよね! その時を楽しみにしてる! じゃーねー!」

 

「何か凄い一方的な自己紹介だったなぁ……あれはもしかしてシャラシティで名前を聞くよって事かな?」

 

 

去っていくコルニを見送ると、そのまま近くの草むらで新しいポケモンを探しながらヒトカゲの特訓を始めた。

 

「もう昼過ぎか……ミアレから離れないようにして、今日はポケセンに泊まって明日になったらコボクまで行こう」

そう独り言を呟くとヒトカゲと共に野生のポケモンとの戦いに身を投じ始めた。

 

 

そのまま日が暮れるまで特訓を続けているとヒトカゲにも変化が訪れた。

 

「おっ……? 博士が少し育ててたとはいえ、もうリザードに進化とは早いな」

「グルル」

 

「獰猛な感じがワイルドでいい……けど、めっちゃ頭を手に擦り付けてきて可愛いなぁ」

 

持ちながらは戦いにくそうだとリザードナイトXを預かり、目を細めて擦り付けてくる頭を撫で撫でしながらボールに戻している。

 

 

キリもいいなとポケモンセンターに戻り、ボールをジョーイさんに預けてから宿泊の為のスペースに向かった。

 

「ティエルノからまたメールが……しばらく五番道路にいるみたいだし、数日中に行こう」

 

食事が出来る部屋の隅のテーブルに着き、パスタを食べながらスマホで今日もまたトレーナー専用掲示板にアクセスしている。

 

 

器用に食べながら色々な情報を探していた。

 

先日の雑誌のチャンピオン達に対するインタビュー記事のせいでツカサに関するスレが出来ており、正体不明のトレーナーとして随時情報提供が求められている。

 

 

「……」

 

何故かリオルキッドやルカリオキッドをやっていたという情報が出ており、その情報を見てハチクマンのDVD・BDを借りてファンになった者も多数。

 

それ以外の作品には出ておらず、NGシーンや別EDを納めたDVD・BDは既に生産されておらず高値で取引されている。

 

 

「はぁ……よかった、ネガティブな事はまだ書かれてないし完全にはバレてない」

 

そのままパスタを食べ終え、ホッとしてからログアウトしていた。

 

食後のコーヒーを楽しみ、食休みをしてからシャワーを浴びて部屋に戻っていった。

 

 

部屋でトレーナーカードを眺めながらベッドでボーッとしているとノックする音が聞こえ、身を起こしてどうぞと言うとジョーイさんがそわそわしながら入ってきていた。

 

「あ、あの……」

 

「お疲れ様です。どうかされましたか?」

 

「さ、サインを……」

 

「はい?」

 

「これにサインをお願いしたいんです……!」

バッ!と後ろ手に持っていたハチクマンのDVD、リオルキッド仕様の受注限定生産版とルカリオキッド仕様の当選者限定版を差し出してきた。

 

「え?」

 

「あのツカサさんですよね? 私、あなたのファンで何枚もDVDを買って応募して!」

トレーナーカードのIDを調べられる立場故に知ってしまい、プライベートの時間に我慢できず自宅に帰ってから来てしまったらしい。

 

「ほ、他の人には秘密でお願いしますね。……でもサインしちゃっていいんですか? これどちらも限定品でしょう?」

 

「いいんですっ! 寧ろしてもらえなかったら後悔しちゃいますから!」

 

「あ、はい」

グイグイ来る私服のジョーイさんに思わず引いている。

 

 

そして言われるがままにケースにサインをし、更に鞄から出した色紙にモンスターボールと様々な物にサインをさせられていた。

 

「写真も大切にします! リオル、よかったね!」

 

「きゅうん!」

リオルも自分のモンスターボールに書かれたサインを見て、嬉しそうにジョーイさんにじゃれついている。

 

「まさかのリオルまでファンだった。何にでもファンはいるんだなぁ」

 

「ツカサさん、ありがとうございました!」

リオルをボールに戻すと何度も頭を下げ、嬉しそうにグッズを鞄にしまって部屋から出ていった。

 

「……もう寝よう」

鍵をかけ、寝巻きに着替えてから電気を消して眠りに就いた。

 

もっとしっかり口止めをしておけばよかったのだが、この一連の出来事が嬉しすぎて忘れてしまったジョーイさんにブログで書かれ、居場所が特定されてしまう事をこの時のツカサは知る由もなかった。

 

 

翌朝、支度と朝食を食べ終えて仲間達の入ったボールを受け取りに向かった。

 

すると件のジョーイさんが現れ、手を握られながらモンスターボールを一個ずつ手渡されドキドキしながらもポケモンセンターを後にした。

 

 

「めっちゃ怖いけど、これ出来たらキャー素敵!ってなるんだろうな……よし、やろう。モテたいし」

スケーティングパークに入って見て回り、そう呟くとローラースケートのテクニックを磨き出した。

 

男は度胸、何でもやってみるものさ!と設置されたレールの上に華麗に飛び乗り、何とか落ちずにレールの終わりまで滑っていく。

 

 

「……はぁー。緊張しすぎて思わず息止めてたわ」

まだ心臓がバクバクしており、出来るならもうやりたくないとすら思っている。

 

「もう行こう、何か見られてる気もするし」

 

 

五番道路を進んで行くとティエルノとトロバに出会い、軽く勝負するとあまいミツを渡された。

 

「ダンスが云々、群れがどうこう言われたけど覚えてねぇ……男の言葉は右から左に聞き流しちゃう、はっきりわかんだね」

 

 

そのままベルサン通りを颯爽とスケートで駆け抜け、当初の予定よりも早くコボクタウンに到着していた。

 

「ローラースケートめっちゃ便利だな。ゲコガシラ達の特訓も兼ねて二、三日滞在するか……ついでに残りのポケモンをどうするかも決めないとなぁ」

残り三枠をどうするかまだ悩んでいる。

 

悩みながら町を散策していると看板があった。

 

『コボクタウン 枯れた味わいの町』

 

「ホテルに泊まる余裕はないし、今夜もポケモンセンターだな……カロスのポケモンセンターにはそっくりな姉妹や従姉妹がいるってミアレで言ってたっけ。まぁ、関わらないだろ」

 


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