裏庭に設置されたテーブルで優雅なコーヒーブレイク中。
「ピーカ」
「ふっ、ブラックは大人の味なんだよ……あっ、ちょっ!」
違いの分かる舌を持つツカサはピカチュウにドヤっていたが、それを見ていたマホイップが苦いのは美味しくないだろうとあまーいホイップクリームを大量にブラックコーヒーに投入していた。
「まぁ、甘いのも好きだからいいけどさ」
ドヤってるマホイップを撫で、お茶菓子のクッキーを齧ってのんびりしている。
「チャァ……ピカ、ピカピカピカ?」
「ああ、レイナちゃんの授業参観に行けないので許可は得ているから行ってもらえないかって言われたんだよな」
「ピーカチュー?」
「予定見たら3時間目から5時間目まで、お昼は学校の給食が用意されるみたい。お嬢様校らしいから給食もシェフが沢山居て用意してるって。大半はお弁当とか昼になったら従者と食べに行ったり、持ってこさせたりしてるらしいけどね」
「ピカ、ピカチュ」
「サプライズだから当日まで秘密にって言われたよ。後何年お兄ちゃんって慕ってくれるかね」
年頃になれば距離を置かれるだろうと考えており、それまでは兄代わりとして可愛がる事にしていた。
ツカサのドクターとしての強烈なヒーロームーブが彼女の根幹となっており、まだ幼いが明確に夢が出来始めていたりする。
「ピカ、ピカチュウ?」
「あー……色んな伝説やら幻のポケモンの写真とレポートを書いて、ルガルガンの黄昏の姿についても色々書いてオーキド博士に送ったらすぐに電話来て驚かれたよ。シワシワピカチュウの写真が混入してたみたいで爆笑してたけど」
「ピカ!?」
「はじめてピカチュウと俺を会わせた時はボールに入る入らないで喧嘩してでんきショックをくらっていたのが嘘みたいじゃなって」
「ピーカー……」
「しんみりしてる所で悪いんだけど二人の会話が何の参考にもならない事が分かったわ」
セレナはポケモンと会話をするのを見て学習しようとしたらしいが、理不尽なまでに何を言っているか分からなかった。
「でしょうね」
「ピカピカ」
「ツカサの子供にはその力は遺伝するのかしら」
「多分しないと思う。ディアンシーの謎パワーを間近で見てたらこうなったわけだから」
「ツカサだけの力ってわけね」
「他にも似たような人はいると思うけどね」
「あ、そうだ。そういえばさっき倉庫で妙な本がガタガタ動いてたけど……」
「あー……あれはちょっと曰く付きっぽいから。古書店で買った日から夢に白のロリータファッションの女の子が出て来るようになってね。何か最近は黒のゴスロリ少女と夢でブッキングして喧嘩になったし、とりあえず倉庫に隔離してからはゴスロリ少女しか出て来なくなったけど」
本の上にポケモンの雑誌を載せ、出来るだけ動かないようにハードカバーを沢山重石代わりにしていたりする。
ある意味時限爆弾を作ったようなものだが、夢の中で騒がれるよりはいいと判断したツカサの悪手だった。
………
……
…
リーグのチャンピオン用待機室で色々なスケジュールを確認し、カロス以外はほぼカントーでのテレビ関係だなぁと呟きながら父親であるシュウからいきなり郵送されてきた手帳に記入していた。
笑わせてもらいましたよという手紙もついており、まさか生放送を見ていたのかと少し恥ずかしくなっていたりも。
「いやー、第二弾凄く面白かったよー」
「レアコンテナ見つけて開けたら綺麗なOガンダム入ってた時は大興奮だったなー」
「中身が壊れてて動かないと知ってショックで崩れ落ちてたよね」
「GNドライヴがちゃんと使えるくらいで残りは張りぼてとかなぁ……」
ツカサのAIは倉庫に放置されているGNドライヴなしのOOにOガンダムのGNドライヴを積み、後はツカサが気がついた時にエクシアリペアのGNドライヴを積もうと考えて黙っていたりする。
牧場入口に体育座りにしたOガンダムが鎮座しているが、街の人達はまた何かやらかしてるなと軽くスルーしていた。
「呪われてるんじゃないかってくらい壊れてるのしか出ないよね」
「父さんがちょいちょい何かしてるんだとは思う。第三弾はもういいよね」
「寧ろやらなかったらクレームがくると思うけど。あれ? ゲーム内で旅行出来る!ってウキウキして出かけた先の町を散策中にガソリンスタンドでゾンビが出て来て……って所で終わらせたじゃない」
「あれ怖いからやめたいんだけど……ゾンビに戸惑って逃げ惑ってたらガソリンスタンドからいきなりお兄さんとお姉さんが出て来て驚いてたら早く乗って!って車に乗るよう言って来て、乗らなきゃいいのに乗っちゃって」
「行き先が安いからって選んだのが失敗だったね」
「羽生蛇村、皆神村、日上山、朧月島、サイレントヒル、ラクーンシティとか安くて一番都市っぽいとこ選ぶでしょ。皆神村、日上山、朧月島は選んだらカメラ貰えたっぽいけど高かったからなー」
何処を選んでも地獄を見る模様。
「何かどれ選んでもダメな気がして仕方ないラインナップだけど」
「ゾンビよりはマシだと思うけど」
「ゾンビより厄介なのが出てくるかもしれないよ」
「それは嫌。てかゾンビ出て来たから銃使うんだろうけど苦手なんだよなぁ」
「チュートリアルみたいな感じで旅行前に撃ち方学んでたけど、何度か的に当たりもしなかったのに『大体分かった』って言ってから精密な射撃をし始めてみんなドン引きしてたよ。忠実に再現してるらしいから反動とかもあって難しいはずなのにって」
ロボゲー部分の白兵戦でも使えるらしくまず当てる事が難しいリアル仕様。
「動いてないから出来たんだよなぁ」
「それでも的に当て続ける難しさはみんな分かるよ」
「まぁ、銃は持ってないから拾った鉄パイプでどうにかするしかないんですけどね」
「この前見せてくれた破邪剣征・桜花放神ってやつなら行けるんじゃない?」
仲良しなツカサ担当の職員はやー、と手にしていたタブレットを振り下ろす仕草をしていた。
「曾祖母ちゃんから教わった秘密の必殺技だし、霊力的な意味でゲーム内じゃ使えないと思うの。お墓参り行かなきゃなぁ……お盆にまた色々言われちゃうし」
幼い頃に少しの間預けられた時に発現してしまった霊力を安定化させる為、過剰な分を放出するのに教わったらしい。
同時に剣術も学んでいたようだが、自宅に帰って引き継いだ幻海の体術の方が肌に合ったらしく今じゃ訛りに訛っている。
尚見えて話せて触れるツカサはお盆になるとご先祖様達のお世話役に自然となってしまい、流行りの洋菓子を供えて欲しいだの恥ずかしいから隠してある恋文を処分してほしいだの忙しい。
「あれは凄く綺麗だったけどあの施設の壁をあんな綺麗にブチ抜くとは思わなかったよ。解体するから好きにしていいって言ったけどさ」
「昔はあれだったのよ、でっかい樹を揺らすくらいの力しかなかったの。まさかあんな破壊力あるなんて……」
一直線に貫く桜色の閃光、過ぎ去った後に舞う桜の花弁のような霊力は美しいが破壊力も半端なくなっていた。
「ゲームでも使えたらホラーゲームが無双系になっちゃうね」
「そっちのがいいわ」
「あはは、とりあえず第三弾は決定だからがんばって」
「ゾンビは本当やだなぁ」
………
……
…
瞬間移動を我が物としてからは頻繁に遊びに行くようになった幻想郷。
初めて来た時から次元が違うレベルで成長したツカサは博麗神社で霊夢を相手に話をしていた。
「本当早苗の鬱陶しさが上がって仕方ないんだけど」
「俺に言われてもなぁ」
土産にと持って来た手作り団子を摘みながら愚痴を聞き、煎れて貰ったお茶を飲んでいる。
「見た目はいいけど色々地雷だったからツカサさんには犠牲になってもらおうって人里の男達は満場一致してたみたいよ」
「まぁ、責任は取らないといけないからお仕事終わりに毎日様子を見に来てはいるけどね」
こちら側にも亞里亞の家の交渉の手は伸ばされており、ツカサの逃げ場は世界中の何処にもなくなりつつある。
「あれだけ避けてたのに」
「とりあえずブレザーっていいなって」
外にいた時の制服を着てデートしたりと落ち着いた早苗に対してはガードが緩くなっており、中身は変わりない事からは目を逸らしている。
「ツカサさんは髪型と服装に拘るわよね」
「メイド服で桃色の髪のツインテールが一番好き」
「はいはい自慢のお姉さんの事ね」
「最近は緑色の髪のストレートもありかな」
「もう完全に早苗を受け入れてるじゃない」
「たまにおかしな行動を取ったりする以外は好みだから……」
「変な女を惹き寄せる何かがありそうね」
「早苗だけでお腹いっぱいなんだけど……」
ツカサの中では産まれる前から愛していた系小悪魔は普通のカテゴリーらしい。
「私以外の幻想郷の面々は変人だらけよ」
「腋出し巫女服なのに?」
「それはそれ。ちなみにツカサさんも変人の仲間よ」
「えぇ……」
「地底に連れて行かれて暇だからってウロウロ、ちょっかい出して来た鬼達を真正面から倒して行ったりしたでしょ」
「あぁ、空ちゃんがいきなり俺を拐って行った時の話ね」
「何で抵抗せずに拐われたのかしら?」
「何か凄い嬉しそうに拐っていくから……めっちゃ首辺りに顔を押し付けて来てスーハーしてたからくすぐったくて仕方なかったよ」
空は早苗がしているのを見ていてやってみたかったらしく、それでハマってしまったようで戻る時に洗濯に出したまま忘れて来たシャツを洗われる前に回収して寝巻き代わりに使っていたりする。
「男の人の匂いを積極的に嗅ぎたいとは思わないわ。早苗達はちょっとおかしいんじゃないかしら」
「分かる。汗臭いとか脂の不快な匂いだと思うのに」
「まぁ、好きになった男の人の匂いならいいのかもしれないわね」
「そうなのかなぁ……匂いって言えば風見さん、花の香りがするし笑顔も綺麗だし相変わらず素敵な方だよね」
「は?」
「風見さんの家にキマワリとかヒマナッツの健康診断をしに行ったり、花の種を貰ったりしてるんだよ」
「あの幽香が?」
「俺にはみんなが言うような方とは思えないんだよなぁ。一緒に料理してて食材を取る時に手が触れ合うと恥ずかしそうにするし」
「それは幽香の偽物ね、間違いないわ。そんな乙女みたいな反応するはずがないもの」
「凄い言われよう。あんな優しいのに」
「大丈夫? 永遠亭行く? 送りましょうか?」
「何でガチで心配されてるのか……」
扱いにくい存在とも仲良くなるからか里では便利屋みたいになっており、タブー扱いの厄神への供物を届けたりもしている。
「あいつは危険なのよ」
「紫の時みたいに躓いて押し倒しちゃった時は顔真っ赤にして首が取れそうな強さのビンタくらったから分かる」
本来なら軽く首が離れる程の強さだがツカサは何回転かして倒れ、そのまま土下座に移行していたようだが。
「それはちょっと見てみたかったわ」
「油断してたからグルングルン回ってドシャっと落ちてそのまま土下座よ。八雲さんちの紫ちゃんみたいな反応だったけど、風見さんのがパワーは上だった」
「だからあの日は頬に紅葉が出来てたんですね。諏訪子様はお腹抱えて笑ってましたけど」
当たり前のように現れた早苗が密着するように隣に座り、まだ慣れず身体が勝手に動くのか少し距離を置いていた。
「急に現れるわね」
「なかなか帰って来ないので探しに来たんですよ。諏訪子様がまだ帰ってこないーって騒ぎ始めましたので」
「早苗が落ち着いたと思ったら諏訪子様が落ち着かなくなったのが本当もう」
あれだけ距離を置かれたりスルーされていた早苗がツカサに受け入れられ、更にナチュラルにイチャつく姿を見せられて何か暴走が始まったらしい。
「諏訪子様はツカサさんを気に入ってますから。私が気づかなかったら昨晩はサーッ!とお薬を入れたアイスティーを飲まされる所でしたよ」
「初めて会った時の早苗の焼き直しなんだよなぁ……早苗が抑える側になっただけっていう」
「一族的に相性がいいから早苗を見て自分も!ってなったんじゃないの?」
「そんな漫画とかアニメみたいな事はない」
「漫画みたいな男が言ってもね」
「私は諏訪子様の気持ちが手に取るように分かりますけどね」
ただ散々妨害された意趣返しに自分も妨害する側に回っているだけだった。
「真面目な顔で超サイヤ人になってる写真を持ち歩くの本当やめてほしい。てかなんで123、ロゼ、ゴッド、ブルー、潜在能力解放とフルコンプしてるのかも知りたい」
3に関しては見せてもらってしばらく研究してなれるようにはなったが、燃費が悪すぎると全くならなくなっている。
逆に燃費はかなり良いが見た目の変化がない潜在能力解放も滅多に使わない贅沢具合。
「文が一部欲してる相手に販売してるからでしょうね」
「輝夜かな?」
「輝夜さんは割と本気で50年待つからって嬉々として永遠亭に部屋用意してますからね」
「紫も似たような事を言って部屋用意するって藍に任せてたわよ」
何十年後かにこちら側に来たら人里の外れに住みたいなとツカサが慧音に相談しているのを皆はまだ知らない。
「そう言えば白玉楼に行ったら若返った曾祖母ちゃんが居たんだよ。魂魄さんと剣術の稽古してたけど思わず二度見したわ」
「あの長い黒髪に赤いリボンに桜色の和服の綺麗な方ですか?」
「潜在霊力が凄まじいから転生するのにも時間がかかるし、なら白玉楼預かりにしましょうって事だったらしいわよ」
「なるほどなー……ほぼ同年代の容姿で生前と変わらず接してくるから反応に困る」
小さい頃に可愛がられていたからか頭を撫で、お茶を飲みながら膝枕で子守唄と完全に当時の扱いをされていた。
「一度お会いしてご挨拶しないといけませんね」
「若返ったから剣術指南してくれるって。出来るなら曾祖父ちゃんみたいな二刀流がいいけど私じゃそれは無理だからーって」
「……ツカサさんのご両親どちらの家系図も見てみたいですね」
「絶対面白いと思うわ。というか現在進行形で面白いわ」
「母方の爺ちゃんはサラリーマンで婆ちゃんは主婦だったみたいだから面白くはないよ。夏とかはサバイバルの事を実践して教えてくれたりね」
「絶対裏があると思います」
「爺ちゃんは身のこなしが凄かったくらいだよ。婆ちゃんは射撃系のゲームがめっちゃ上手かったくらいだし」
楽しかったからかサバイバル系の知識や技術をモリモリ吸収しており、パオズ山で何日かサバイバル生活をしてみたりもしている。
「ツカサさんはそれも吸収したのね」
「技術の集大成ですね!」
「うーん……?」
静かなる狼、嗤う牝豹とか呼ばれていたりいなかったりする祖父母である。
………
……
…
「この子どうなってんだ……」
「捨てられてたモンスターボールに入ってたんだって。呪われてるんじゃないかって怖がって置いていったんだよ」
ガラルから迷い込み喰われたトレーナーが落としたボールのようで、ツカサが出してみるとウオノラゴンが出て来て唖然としていた。
「ツカサー、あーもーいい匂いー」
「諏訪子様どうにかなりません?」
「毎日毎日ツカサとの子供を早苗と同時期に孕んで仲良く育てる妄想を聞かされるんだよ……だから今くらいは受け持って」
「いやでも……お? おぉ?」
ウオノラゴンはツカサが新しいトレーナーなんだとハッと気づいたらしく、背中に抱きつきクンカクンカしている諏訪子を咥えて引き離しぶら下げたままドヤ顔を決めていた。
「ちょっとー!」
「いい子だね」
「目を逸らしたくなるくらいのセクシーランジェリーが丸見えなんですけど」
逸らすとは言ってない。
「ギャップで攻めるって昨日から準備して、さっき着替えてたよ。で、目は逸らさないの?」
「どうせならあの紐みたいなのより縞々のがいいなぁ」
「あぁ、だから早苗は一時期八雲紫に縞々の下着が欲しいって……」
「はーなーせー!」
ウオノラゴンはツカサの指示待ちで諏訪子を咥えたまま待機していた。
一時間後
「ほらツカサ縞々だよー」
「境内なのに堂々と見せて来て恥じらいがない0点」
「ツカサがなかなかに辛辣で面白いね」
ウオノラゴンと話をしてツカサが世話をする事を決め、そのまま二柱の神とダラダラ過ごしていた。
「あのー、ツカサさんにってこれ預かって来たんですけど……」
「何で早苗さんがまともになったら神様の方がおかしくなってるんですか? あ、これ私も預かって来ました」
「なるほど盟友は縞々が好き……私も仲間達から預かって来たよ!」
そんな中ワイワイと仲良さげに入って来た早苗、文、にとりがそれぞれモンスターボールを差し出していた。
「もう嫌な予感しかしないんだけど……ほら何か可哀想なやつー」
受け取ったボールをそれぞれ投げてみるとパッチルドン、パッチラゴン、ウオチルドンとガラルの化石ポケモン達が境内に現れていた。
どうやら喰われたトレーナーのモンスターボールが散らばったり持ち去られたりしていたらしく、ツカサはアップデートした図鑑から情報を複雑そうな顔で見ている。
「凄いポケモン達ですね……」
「これ何で復元出来たんだろう……てか何で組み合わせて復元しようとしたんだろう」
「最近私達妖怪よりも人間のが何考えてるか分からないから怖く感じますよ」
「盟友、この子は何で頭が逆さまに付いてるんだろうね」
「とりあえずボールに戻して中に入ろう。早苗待ってたから外に居たんだし」
ポケモン達をボールに戻すと皆でワイワイ騒ぎながら母屋に入っていった。
新年初投稿です。
ガラル化石達はこうするしかなかった。
正式な姿も出してくださいなんでもしますから!