ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

48 / 56
一気に飛んで最終日

色々あったチャリティ大会も最終日、募金も例年より多くなっていた。

 

そしてほぼ毎回映るツカサの大控え室での光景が地味に好評になっており、昼休憩の時間に垂れ流しにされていたりしていた。

 

「最後が統一リーグチャンピオンかー……」

 

「ほんとおかしいレベルで強いよねー。それより昨日聞いたツカサくんの幼馴染の一人ってヤバくない?」

 

「ブルーさんの事は本当勘弁して。レッドとグリーンさんが旅立って少ししてから旅立った時にモンスターボールめっちゃ投げて来たの本当トラウマなんだよ……旅立ったはずなのに朝起きて目を開けたら無表情で覗き込んでた時は心臓が止まるかと思ったし」

 

現在消息不明でホッとしている反面いつ再会するか分からない恐怖にも苛まれている。

 

「えぇ……」

 

「今何処に居るんだろうなぁ……。姉さん以外の俺の知り合いの女性は残念な部分が強烈なの本当勘弁してほしい」

 

「ピーカ」

 

「俺も残念だから引き分けとか言ってくれるなピカチュウくんよー」

 

膝に乗って丸くなっていたピカチュウを撫でながら呟いていた。

 

「あはは、なんだ類友なんじゃん」

 

「ねー」

 

大控え室にほぼ全地方のチャンピオンが揃っており話を聞いていた近くの者達が笑っていた。

 

「言っておくけどこの大控え室にいるみんな残念な仲間だからね。みんなキャラ濃すぎるし早くカロスに帰りたいわ」

 

「一番濃いのがなんか言ってるし」

 

「ツカサ君はそのピカチュウだけで私を倒したり、コンテストに出てたアイドル衣装を着たピカチュウのせいでピカ厨とか言われてるもんね」

 

「ありがとう、最高の褒め言葉だ」

 

「ピッカァ」

 

大控え室で楽しそうにじゃれ合う姿が何度も流れていた事もあってピカ厨呼ばわりされ始めていた。

 

 

「だけどやっぱツカサくんの子供人気がダントツなのは納得いかなーい」

 

「私はツカサ様が子供人気があるのは当然と思いましたわ」

 

「あ、居たんだ。一昨日までハルカ様ーハルカ様ーって騒いでてツカサ君を敵視しまくってツンツンしてたのに掌大回転したよね」

 

「バトル終わったらすげぇ勢いで走って来て滅茶苦茶怖かったんだよなぁ……逃げたら追いかけてくるし、タックルしてくるし」

 

癖の強いチャンピオン達の中でも更に癖の強い三人と仲良くなったらしくキャラの濃すぎるグループになっていた。

 

普段交流しない人達と交流しなさいとツカサに言われたハルカ達もそれぞれ仲良くなったチャンピオン達と居て側に来れないでいる。

 

「本気で逃げていないのが分かったから仕掛けましたの」

 

「百合系お嬢様チャンピオンとかいう属性盛り過ぎなのが割と素早い動きで追って来る恐怖を分かってもらいたい」

 

「みんな刺される!って思って見てたよね」

 

「怖くて誰も止めに入らなかったのは面白かったし」

 

「私はハルカ様のバトルスタイルが美しく、それに憧れていただけで女性が好きという訳ではありませんのよ」

 

勘違いが重なってそう思われてしまったようで本人はその事実のように語られるそれをどうにかしたいと常々思っている。

 

「ツカサくん大好きを押し出せば両刀くらいには思ってもらえるんじゃん?」

 

「俺を都合良く使うのはやめてくれよなー頼むよー」

 

「使いませんわ。それより昨日の公園で捕まえていたヘラクロスはどうなさいましたの?」

 

「あれか……お姉さんがカリスマギャルでアイドルだって話す元気な女の子と交換したよ。ヘラクロスを探してた時に捕まえたっていうズバットと」

 

空のボールを暇潰しに高く投げてはキャッチを繰り返していた所にヘラクロスが突撃してきたらしく、そのまま捕獲成功というミラクルでツカサを含めそれを見ていた者達みんながえ?という顔になったのは言うまでもなかった。

 

「ズバットなんてそこらで夜に捕まえられるのに割とレアなヘラクロスと交換しちゃったの?」

 

「いや、もうヘラクロスはいるから別にいいかなって。寧ろ色違いのズバットだったからこれ以外のと交換した方がいいんじゃないかって何度も言ったんだよ」

 

「でもズバットは個体数が多くて群れの中に一体は色違いがいるから特に珍しいわけじゃないよね」

 

狙って捕まえるのは大変だがそこまで珍しい色違いではないらしい。

 

「へー、そうなんだ。グラサンしてたのにカロスチャンピオンだって見抜いてきたし中々やりおる少女だった」

 

「ピカチュウが近くにいるだけでツカサ君の事バレバレなのに分かってない所が本当可愛い」

 

「何か言った? それと空のボールにサインを貰うのが流行ってるらしくてサインもしてあげたけど……」

 

「あ、それあたしも欲しい」

 

「私も欲しいな」

 

「私も戴きたいですわ。今日勝てば名実共に世界の頂点に立つ事になりますもの」

 

「いや、バトルフロンティアがあるから違うっしょ。最近バトルフロンティアを制覇した頭おかしい新進気鋭のトレーナーがいるって掲示板に書かれてたし、ツカサくんも制覇してそいつ倒さないと頂点じゃないし」

 

「制覇した頭のおかしいトレーナーなら目の前の殿方ですわよ」

 

「いやぁ、試行錯誤しながら全部制覇するの超楽しかったです。全部三周くらいしちゃった」

 

「うん、普通に引くわ」

 

「私も」

 

「何で!?」

 

一つでも突破するのが大変な施設を全て突破しただけでもおかしいのに、更に三周もしているのを知ってドン引きしていた。

 

「流石です、ツカサ様」

 

「君だけが味方だよ。……あっちで手を振るお姉様方の一人、ゴスロリのマリリンさんは戦法がえげつなかった。顔芸チャンピオンの意味は理解出来たけど別に普段可愛いならいいと思うんだよなぁ」

 

追い詰めた時に顔芸をされたが特に引きもせず試合後も普通に接しており、連絡先の交換もツカサからお願いしていたりとえげつない戦い方を吸収しようとしていた。

 

 

「ツカサ君、あれでも私達より一回りくらい上だからね。可愛いは作れるんだよ」

 

「ツカサくんは割とピュアだから心配。あのおばさんにフラフラ付いて行きそうだし」

 

「昨日早速付いて行ってご飯をご馳走になっていましてよ」

 

「美味しかったし次も機会があれば誘ってくれるって。カップルでしか買えないイーブイの限定ペアパジャマもマリリンさんのお陰で買えたし本当感謝してる」

 

流石に有名になりすぎてマリリンとデートしていたことがすぐに話題になっており、よりにもよって相手が一回り上の顔芸チャンピオンだからか趣味が本当に分からないとツカサの好みのタイプ考察が捗っていた。

 

 

「だからあのおばさん今日は朝からご機嫌だったんだ。ちょっとスキップしてたし」

 

「今度から連絡くれれば私が一緒に行ってもいいよ?」

 

「いやそれだけの為にカロスまで来れないでしょ。……統一リーグチャンピオンのコトネは何であんなボサボサな髪でブツブツ言いながら目が血走ってんの? めっちゃ怖いし、初日はお洒落でお化粧してたよね」

 

「何か三角関係に近かったライバルと幼馴染がくっついたんだって」

 

「それは……」

 

「ちなみに男と男だって。昨日ウキウキして食事に行ってカミングアウトされたみたい」

 

多かれ少なかれチャンピオンは悲しみを背負うものらしい。

 

「それはああなるわ。てか何があったらくっつくんだよ……普通は統一リーグチャンピオンを取り合うとかじゃないの?」

 

「取り合って、チャンピオン業務が忙しい間に育んで……ご覧の有様ですのよ」

 

「きっと自分は二人から選べるから婚期は大丈夫とか思ってたんだろうね」

 

「悲しいなぁ……」

 

………

……

 

注目のツカサの全勝を賭けたラストバトルだが、自暴自棄になった見た目も恐ろしいコトネの強さに皆が引いていた。

 

「どうせ貴方も……!」

 

「事情は聞いているが今は俺だけを見てもらいたいな統一リーグチャンピオン」

 

「えっ……だ、騙されないんだから! どうせホモなんでしょ!!」

 

「ないです。普通に異性が好きに決まってるでしょ」

 

「嘘だ!! どうせそうやってあの実況席のイケメン元チャンピオンとイチャイチャしてるんでしょ!!」

 

「おいやめろ、ダイゴさんに飛び火させんな!」

 

 

『これは酷い』

 

『友人ではありますがそのような関係ではありませんので』

 

 

既にコトネのヨルノズク、ポリゴン2、ギャラドス、マリルリを相手にし終えており、ツカサはゲッコウガ、ルカリオ、ラプラス、ニンフィアとカロスを旅した面々を次々に繰り出して魅せながらも激しく攻め立てていた。

 

『残り二体を倒した時点でカロスチャンピオンが世界の頂点に立つ事になりますがダイゴさんはどう思われますか』

 

『前代未聞の大偉業で歴史に名を残すでしょうね。正直この大会が始まった時よりも更に強くなっていて今も成長している事に少し恐怖を覚えます』

 

ネット上の俺ならこうして倒せる系の書き込みが数秒で無駄になるレベルで成長し続けており、殿堂入り化け物トレーナーとしてたった数日でツカサなら仕方ない扱いにまでなっていた。

 

 

「そろそろ結婚を前提にお付き合いをする頃だって色々準備してたのに!」

 

「きっと大控え室でみんなざまぁって顔してると思う」

 

「せめて大会終わってからカミングアウトしてよ!」

 

「正論すぎる」

 

「半年単位で会わなかったり、会ってもポケモンの話しかしないからって酷い!」

 

「それは自業自得だと思う。俺はポケモンの話とか大好きだから嬉しいけどなぁ……」

 

ツカサは開き直って今後相手が出来なかったら一生ポケモンと過ごす覚悟を決めているからか余裕が生まれている。

 

「『君はポケモンを優先しても笑って許してくれる男性を探した方がいい』って……そんな男性いるわけないじゃない! デートの日にポケモンが病気になってポケモンセンターで付きっ切りになっても許してくれる人とか絶対いない!」

 

「そんな女性もまずいないよなー……」

 

残り二体になった所で爆発したコトネの叫びに会場にいた者達は憐れみの目で見ており、ツカサは分かる分かると頷きながら腰のモンスターボールに手を伸ばしていた。

 

「とりあえず少しスッキリした……よし、やるわよバクフーン!」

 

「バクフーンのあのフォルム可愛いなぁ。さてと……リザードン、やるぞ!」

 

 

同時にフィールドにバクフーンとリザードンが現れ互いに睨み合っている。

 

バクフーンが走り出すのと同時にリザードンは飛び上がり腕を振るってエアスラッシュを放っていた。

 

そのまま縦横無尽に駆け回り紙一重でエアスラッシュを避けると高く跳躍してリザードンの背を蹴り、コトネのハンドサインをチラ見して下にいるリザードンに向かってきあいだまを叩き込んでいる。

 

「まぁ、それは大きなミステイクなんだけど」

 

「え?」

 

ツカサが呟きながら出したハンドサインを見てリザードンはニィっと笑い、放たれたきあいだまに向かって炎を身に纏いながら突っ込んで行った。

 

『これは……カロスチャンピオンまさかの悪手です!』

 

『いえ、これは統一リーグチャンピオンの悪手ですよ。空に跳ばなければ……』

 

リザードンはダメージを受けながらもきあいだまをブチ抜くとドラゴンクローで相手を掴み、そのまま逃げられないようフィールドへ全速力で突っ込んでバクフーンを叩きつけて埋め込んでいた。

 

「ナイスフルコンビネーションアタック」

 

「すっご……じゃなくてバクフーン!」

 

エアスラッシュで牽制、フレアドライブの突撃、ドラゴンクローによる拘束、じしんでフィニッシュの一人連携技を繰り出し一撃でバクフーンを倒している。

 

 

「あ、そっかぁ……ふふふ、失恋したばかりの私に何の躊躇もなくこんな激しく攻め立ててくる理由」

 

「お疲れ様! ……これで次が最後の一体、統一リーグチャンピオンのホウオウか」

 

コトネはダウンしたバクフーンをボールに戻してマスターボールを手に何か小声で呟き始め、ツカサもリザードンとハイタッチしてからボールに戻しガタガタと騒がしいゴージャスボールを手に取っていた。

 

「そうだったのねカロスチャンピオンツカサ。貴方、私を口説いていたってことね!」

 

「ないです。本当そういうのうちの三馬鹿だけでいいからマジでやめて」

 

「成る程、恥ずかしがり屋さんってことね」

 

「お願いだから都合よく解釈しないで話を聞いて!」

 

「でもそう簡単に私は好きになったりしないんだから! 覚悟を決めてアプローチすることね!」

 

「オカリン助けて!」

 

暴走を始めたコトネとガチビビリしているツカサに会場に笑いが起きており、一部からオカリンではない!という叫びも聞こえてきたり。

 

「さぁ、現実の女性はそう簡単に靡かないって事を教えるわよホウオウ!」

 

「あぁ、もうめちゃくちゃだよ……待ちに待った晴れの舞台、お手をどうぞクィーン」

 

コトネの投げたボールから現れたホウオウは美しい羽根を広げ会場を軽く一周飛び回り、そのままコトネの前で羽ばたいている。

 

そんな派手な登場とパフォーマンスに会場が沸く中、ツカサはゴージャスボールを手に取り投げずにその場で出していた。

 

『えぇ、私の手を取る事を許します』

 

会場にいる者達は脳に直接響くディアンシーの可愛いらしい声と見た目にざわついている。

 

「ちょい油っぽいのはドーナツをつまみ食いしたからかな?」

 

『違いますサーターアンダギーを……あっ』

 

「つまみ食いはしたのね。後でお説教だからな」

 

『つまみ食いではありません、味見をしただけです』

 

「物は言いようだなぁ……」

 

誰が見ても仲良しでじゃれ合っているようにしか見えず、荒んでいたコトネもほんわかしていつもの調子が戻り始めている。

 

『さぁ、そんな事よりも私の晴れ舞台なのです』

 

「台無しになってる気がする」

 

「それな」

 

「ファッ!?」

 

皆には鳴いたように聞こえているホウオウからの同意の声に思わず驚いていた。

 

「ふふん、そんな可愛いポケモンで私のホウオウは……」

 

「可愛いだけじゃないんだよ。んじゃまぁ……」

 

メガリングZをつけた腕を真上に上げるとその腕全体がピンクダイヤモンドで覆われていき、そのまま勢い良く腕を振り下ろすとピンクダイヤモンドが砕けるように消えてキラキラ輝くピンク色のリングへ変貌している。

 

「改変すんの本当嫌だけどやらないと機嫌悪くなるから……我が愛に応えよキーストーン! 進化を超えろ、メガシンカ!」

 

『はぁぁぁぁぁぁ!!』

 

ディアンシーが首から下げたネックレスに付いているディアンシナイトとリングから激しい光が溢れ出し……

 

「ロイヤルピンクプリンセス……メガディアンシー!!」

 

『……ええ、ツカサの一番で最高のパートナーである私に任せなさい。ふふん』

 

光の繭を吹き飛ばして現れたディアンシーはドレスを着ているかのような見た目に変わり更に美しさに磨きがかかっていた。

 

「その一番とか喧嘩になるからやめてほしいんだよなぁ……」

 

「……はっ! ホウオウ、せいなるほのお!」

 

「メガ……ディアンシー、まもるで受け止めろ!」

 

『ホウオウ、私の盾は厚いですよ!』

 

ホウオウが放った物理的な威力を持った清らかな炎がメガディアンシーに襲い掛かるも巨大なピンクダイヤモンドで出来た六角形の盾で完全に防いでいた。

 

だが聖なる炎の強さに皹が入り防ぎ切るのと同時にピンクダイヤモンドの盾が砕け散り、バトルフィールド中に散らばってキラキラ輝いている。

 

「ホウオウ、ゴッドバードで仕留めなさい!」

 

 

『これはカロスチャンピオン大ピンチ!! 統一リーグチャンピオンのホウオウはゴッドバードの体勢に入っています! しかしキラキラと幻想的な光景ですねダイゴさん』

 

『ええ、散らばったピンクダイヤモンドが光を反射……あぁ、彼はこれを狙っていたのかもしれませんね』

 

『だ、ダイゴさん、どういう事でしょう? ただ防ぎ切って限界が来て砕けたのでは』

 

『砕け散ったはずのピンクダイヤモンドが空中に止まっているんです。しかも大きさは程良くダメージを与えられるくらいで』

 

 

「砕かなければ良かったのにな。ホウオウ、逃げ場はねーぞ」

 

『ツカサ!』

 

「ディアンシー、綺麗なだけじゃないって所を見せてやれ! ダイヤストーム!」

 

『私が命じます、ツカサと私の為に貴方は地に堕ちなさい。はぁぁぁぁぁ!!』

 

ディアンシーがホウオウに向けて両手をかざすとピンクダイヤモンドが次々と現れ、物凄い勢いでホウオウへと射出され始めた。

 

更に砕け飛び散ったはずのピンクダイヤモンドもフィールドの全方位からホウオウに向けて殺到し、ゴッドバードの体勢を維持できず逃げる事も出来ないまま蹂躙され……

 

 

『ホウオウ戦闘不能です! ……おめでとうカロスチャンピオン! 君が全世界のトレーナーの頂点であり、チャリティ大会初の全勝無敗記録保持者だ!!』

 

白眼を剥いて倒れるホウオウに審判が戦闘不能と判断、会場は地響きが起きる程の歓声に包まれていた。

 

「好き!」

 

「倒したら即好きになるとかチョロすぎて不安になるわ」

 

『やはり私がツカサの一番のパートナー。これはもう公然の事実になるのでは?』

 

「ヤバイヤバイ。モンスターボールがすっげぇガタガタいってる、ハッキリわかんだね」

 

勝ち誇るディアンシーに抗議の声をボールから上げているらしくガタガタ動いていた。

 

「やっぱり昨日のあれは今日運命に出会う為だったってことね!」

 

「ないです」

 

 

そのまま大控え室に帰ろうとしたが記者に囲まれもう何度目かも分からないインタビューをされていた。

 

誰にこの喜びを伝えたいか等の質問に答え、そろそろ終わりかなと思っているとプライベートな質問が飛び出していた。

 

止めようとした大会の責任者に構いませんからと伝え、ツカサはその記者の質問に答えようとしている。

 

「見目麗しいチャンピオン達の中で誰が一番好みでしょうか」

 

「マリリンさんですねー」

 

「えっ……」

 

絶対ないと思っていたまさかの答えに固まり、会場もあの顔芸見てるのに?といった困惑した空気が流れている。

 

「何か?」

 

「あ、いえ、その……どんな所が好みですか?」

 

「お互いにポケモンが好きで会話が弾むので。本当何時間でも話せますし、彼女の話を聞くのも面白いですから」

 

尚渦中の人物は大控え室でドヤ顔で勝ち誇っており、呪詛の言葉を吐かれても負け犬の遠吠えが気持ちいいと煽りに煽っていた。

 

「じゃあ、異性として見てるとかは?」

 

「見てますねぇ!」

 

「見てるんですね」

 

「綺麗な方ですから」

 

「あの追い詰められ時にする顔芸についてはどう思いますか?」

 

「ギャップがあっていいと思いますけど」

 

ねーよ!の声が其処彼処から上がってザワザワと会場が別の意味で盛り上がり始めていた。

 

「あ、ありがとうございました……」

 

この記者はハルカ、ヒカリ、メイの三人の誰かの名前が上がると思っていたらしく、まさかの人気ランキングの下から数えた方が早いチャンピオンの名前が上がって動揺して質問を切り上げている。

 

 

会場から聞こえる○○にしとけって!という数多の声を背に手を振りながら大控え室へと帰って行った。

 

………

……

 

閉会式の準備が整うまで大控え室で待機になりドリンクを手にのんびりしている。

 

「何か帰って来たらダーリン呼びでマリリンさんにすげぇ纏わり付かれたんだけど」

 

「ちなみにツカサくんがインタビュー受けてる間に先に帰って来た統一リーグチャンピオンとあのおばさんで取っ組み合いの大騒ぎしてたし」

 

「何やってんだあいつら……」

 

「ハルカ様がちょっとした幸せになる為の『お話』をして落ち着かせていましたのよ」

 

「俺にも幸せになるお話をしてほしいんだけど?」

 

「可愛かったり綺麗だったりするからきっと幸せなんじゃないかな」

 

「よく分かんないけども。帰って来る時にスポンサーの偉い人達が私の娘と結婚を〜とかいう冗談を言ってきたよ」

 

あらゆる面でツカサが欲しくて仕方がないらしく半ば本気で言っていた事には気がついていない。

 

聞き耳を立てていたチャンピオンズはシーンと静まり返り、ツカサは何が起きたのかとキョロキョロ見回している。

 

「断ったんでしょ?」

 

「当たり前だよなぁ。てか5歳とか6歳の時点で無理でしょ。そんな小さい頃から将来おっさんと結婚するとか可哀想だし、知らない人すぎて嫌だわ」

 

「それならよかったー」

 

尚水面下でツカサの両親が許可を出して結ばれ、無事婚約者になっているのはゆるふわほんわかに父親譲りの腹黒が追加された亞里亞な模様。

 

「それより閉会式で会場から空高くにモンスターボール投げろって言われたんだけど」

 

「それなら投げて落ちて来たボールをキャッチしてポーズを決めておしまいですわ」

 

「えぇ……」

 

………

……

 

その後の閉会式は恙無く進行したが……

 

『世界チャンピオンツカサ、どうした事でしょう投げたボールをキャッチするもポーズを決めません』

 

『あっ、前代未聞です! ボールを投げました……あぁぁぁ!?』

 

かなり高く投げてキャッチしたが手の中で揺れていたらしくらカチッという捕獲音を聞き、また何か勝手に捕まったと投げて確認していた。

 

「ファッ!? あの時のホウオウ……?」

 

「私好みのイケメンが居たから折角羽根を落としたのに全っ然会いに来ないから来てあげたの! だけどあの高さまでボールを投げてアプローチしてくれるなんて……ずっと見てたけどイケメンで強いのね! 嫌いじゃないわ!」

 

「リリース、リリースしたい。おっさん声が精神にヤバい」

 

『世界チャンピオンが最後の最後でまたやらかしたぁぁぁ!!』

 

「逃すから、逃すからもう一回やらせて!」

 

「もう私はあなたのモ・ノ。これから毎日楽しくなりそう!」

 

「もうやだぁぁぁ!!」

 

最後の最後までツカサが騒ぎに騒がせたチャリティ大会だった。

 




新年初投稿です。
もう一年の三分の一過ぎてるのが怖い。



FGOに飽きてグラブルにハマったけど結局ハムスターな事に変わりはないっていう。
エイプリルフールのるっ!リアスキン本当面白いし、復刻エイプリルフールのジンさん好き。
某はヴァンピィ殿のけんぞくぅ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。