ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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お久しぶりです。


色んな事があった三日目

ボロボロの胴着で上はインナーだけのツカサが控え室で横たわっている。

 

「グラサンの司会の人、めっちゃテンション上がってたなぁ……まさかの参加者に死ぬかと思った。クリリンさん、ピッコロさん、悟空さんの順で戦うとか罰ゲームのがマシなレベルだわ」

 

皆で育てる期待の新人扱いで最後はどんなに相手が優勢でも必ず棄権をして次に回し、ツカサは毎回泣きそうなくらい辛い戦いを強いられていた。

 

「戦いながら金の壁を超えたと思ったら更にその上も見せられるし、それよりも強い赤の上には青もある……。姉さんの声が聞こえた気がして負けたくなかったからやるなって言われた神化をして、見様見真似で青になろうとしたら何か薄い桃色になったし。悟空さんが驚いた顔でロゼって言ってたけど何の事だったんだろ」

 

身体へかかるかなりの負担を耐え、これなら勝てるかもしれないと挑むも……

 

「青の界王拳はまず無理。腹に一撃貰っただけで一瞬意識飛んだし普通に死ぬかと思ったし、こっちの攻撃は当たらないしでなぁ」

 

青の強さに手も足も出なかったが適応する程度の能力と薄桃色の力で徐々に戦えるようになっていき、その事に気づいて嬉しそうに笑ったと思ったら今出せる全力を見せると言われフルボッコにされて終わっていた。

 

「もう今日は一歩も動きたくねぇ……」

 

「とりあえずがんばってきてね。その後にあの金髪、赤髪、薄桃髪について詳しく聞くから逃げないように」

 

「……姉さん?」

 

「そうよ。近くの席にいたチチさんとブルマさんに大体の話は聞いたけど、私は本人から聞きたいの」

 

予め渡しておいた関係者用のパスで控え室まで来たらしく、腰に手を当てて寝転がるツカサを見下ろしていた。

 

寝転がったままでは悪いと身体を起こして胡座をかいて向き合い、久々の留美穂を見て癒されながら言い訳を口にし始めた。

 

「最後のはほら、姉さんとお揃いの髪の色だから」

 

「私以外にも岡部さん達だって心配してたんだからね」

 

「だろうなぁ。佐久間さんと島村さんからも心配するメールが来てたし……どうやって二人がプライベート用のアドレスを知ったのかは怖いからスルー」

 

「それより今度私も空を飛んでみたいな」

 

気弾に舞空術に変身と二人のやりたい放題をサタンはトリックで誤魔化していたが、過去の天下一武闘会を知っている者はそれを信じていなかった。

 

「いいけどしっかり捕まってないと危ないからね。それと飛べるようになってからはとりポケモン達が毎朝空中散歩を誘いに来るようになったんだよ」

 

普通に飛べるミュウやミュウツーも来ており、飛びながら森に住むポケモン達に挨拶をしたりして楽しんでいた。

 

ズルいと喚くセレナを抱き上げて一緒に飛んであげたりもしている。

 

「ツカサにぎゅーってすればいいんでしょ? 空ってどんな感じなの?」

 

「それでいいよ、それと空は何か気持ちいいかな。雨の降ってる日にレックウザと雲を突き抜けて雲の上に出てみたり……何かその時に会った黄色いラティアスが懐いて来て、今は赤いラティアスと姉妹のように暮らしてるよ」

 

ラティオスには会えないらしく度々探しているが未だに遭遇出来ていない。

 

「いいなぁ。……この前会った時よりも筋肉ついてる」

 

「最近は鍛えるのが楽しいからね、しょうがないね」

 

「腹筋……」

 

「うちのピカ子がよくペロペロしてくる自慢の腹筋です。くすぐったいんだよね」

 

「何それ羨ま……ダメじゃないの」

 

「えっ、姉さん今羨ま」

 

「言ってない」

 

「でも……」

 

「言ってないから」

 

「……うん。そういえばこの前ちょっと用事があって空港に行ったんだけど、そこでポケモンの卵が二つ捨てられてて職員の方が困ってたんだ」

 

話を変えようと最近問題になっている免許のない自称ブリーダーによって生み出されて捨てられるポケモンの卵の話題を出していた。

 

「最近その手の話をよく聞くけど……」

 

「空港の卵は話をして俺が回収したけど、流石に世に溢れてる卵を全部は無理だね。白いロコンとタマタマが生まれたよ」

 

アローラから持ち込まれ捨てられたようでタマタマは巨大なナッシーに進化して森をノシノシと歩き回っており、白いロコンは自宅か裏庭で過ごしている。

 

「ブリーダーさんに卵をお願いする時の手続きが凄く大変な事に対して同級生が文句言ってたけど、ニュースとか見るとそれは仕方ない事なんだって」

 

「生態系が壊れちゃうから厳しいんだよね。ちなみに受け取り直前にやっぱいらないとかやると、以後手続きだけで一年近くかかるようになるから注意してね」

 

横の繋がりが強いブリーダー間で情報が共有されており、悪質なトレーナーの情報は即拡散されてしまう。

 

「どうしても卵が欲しくなったらツカサにお願いするから大丈夫」

 

「姉さんの為ならいいよ。……さてと、そろそろ着替えておかないと」

 

「午後からもがんばってね。それと……今日までがんばって勝ち続けたご褒美」

 

ツカサの頰に両手を添え流れるように額にキスをし、顔を赤くしながら部屋から出て行ってしまった。

 

「マジか……マジか。これ全勝したらどんなご褒美なの?」

 

ヘロヘロだった身体に活力が漲り、気合いを入れて着替え始めている。

 

………

……

 

ヒカリとのバトルは互いが互いの二手先を読もうとする激しくも静かなバトルが繰り広げられていた。

 

エンペルトがアクアジェットによる高速移動攻撃を仕掛け、ルカリオは紙一重でそれを避け続けている。

 

「エンペルト、ハイドロポンプ!」

 

「ルカリオ、ハイドロポンプごとブチ抜け! インファイト!!」

 

エンペルトらアクアジェットで突っ込みながら口を開き、ルカリオは真正面からそれを迎え撃つ構えを取っていた。

 

エンペルトから放たれた強力なハイドロポンプを受けるも怯まず、そのまま大地を蹴り水を切り裂くようにエンペルトへと迫り……

 

『エンペルトにルカリオ、共にダウンです!

今日まで数多のチャンピオンのエースを葬って来たエースキラールカリオ、ここに来て初のダウンだぁ!!』

 

「エンペルト、お疲れ様」

 

「ルカリオ、お疲れ様」

 

互いに気づいていないが全く同じ動きでボールに戻して同じ言葉をかけ、戻したボールを撫でて微笑む姿まで同じで会場からちょっとした笑いが起きていた。

 

ヒカリとツカサは何で笑われているのか分からず、互いに顔を見合わせて肩を竦める仕草まで同じでますます会場に笑いが起きている。

 

『クールに見えて天然系なシンオウチャンピオンヒカリ、好きなタイプは料理が上手くポケモンが好きでバトルが強い一つ年上の従兄と遠回しに名指しする大胆さ! 一方カロスチャンピオンツカサは追加アンケートの好きな異性の服装にメイド服かエプロンドレスと綺麗な字で書かれていたー!』

 

「いいよね」

 

メイド服やエプロンドレス好きに引くよりも本当に異性に興味があった事への驚きが会場に広がっていた。

 

 

そんな空気を壊すようにヒカリは最後のマスターボールを手にし、ツカサも最後のモンスターボールを手にしていた。

 

「この子はツカサと手を繋い……恋人繋ぎをして一緒に巡ったやぶれたせかいで……」

 

「えっ、何でヒカリは語り始めてるの」

 

「怯えるあたしの手をしっかり指を絡ませて決して離さないでいてくれて……」

 

「よーし……さぁ、出番だゼルネアス!」

 

シンオウを旅した時の事を頬を染めながら思い出して語り始めたヒカリを遮り、ツカサはモンスターボールをフィールドへ投げていた。

 

出された瞬間はリラックスモードだったゼルネアスだが即座にアクティブモードに切り替わり、角が煌びやかに七色に輝き始めている。

 

「貴方の出番よ、ギラティナ!」

 

投げられたマスターボールから飛び出したギラティナはオリジンフォルムと呼ばれる姿で現れ、ゼルネアスを嫉妬の眼差しで見つめて今にも襲いかかる気満々だった。

 

ゼルネアスはチラチラとツカサを見るギラティナを見て察し、フッと勝ち誇った笑みを浮かべて挑発していた。

 

 

「何か俺ギラティナにすげぇ見られてない?」

 

「あたしじゃなくてツカサに捕まりたかったんでしょ」

 

ギラティナもやぶれたせかいからたまたま暇潰しにツカサが成長していくのを見ていたらしく、一緒に旅をして野宿をしたり仲良く水浴びをしたりする妄想に耽っていたらしい。

 

「まぁ、いいや」

 

「ツカサって結構ドライな所があるわよね」

 

「まぁね」

 

 

二人がそんな言葉をかわしている間、ねぇ? どんな気持ち?と言っているかのようにゼルネアスはギラティナの周りをステップを踏むかのように回っていた。

 

「さてと……ゼルネアス!」

 

「ギラティナ!」

 

 

名前を呼ばれるとゼルネアスは華麗に跳び跳ねて襲いかかって来たギラティナの攻撃を避け、そのまま宙に浮いた状態でムーンフォースを乱れ打ちしている。

 

ギラティナはそれを全て避けてチラリとヒカリを見てから影に潜り込み、ゼルネアスは警戒しながら持たされていたパワフルハーブとジオコントロールで自身の能力を高め始めていた。

 

「あ、勝ったわこれ」

 

「え?」

 

ツカサが呟くのと同時にギラティナが影から飛び出しゼルネアスにその巨体をぶち当てて吹き飛ばしていた。

 

「シャドーダイブは悪手なんだよなぁ……ガチなムーンフォース乱れ打ち劇場始まるよ!」

 

「えっ、なにそれは」

 

そのツカサの言葉が会場に響くと吹き飛ばされていたゼルネアスが器用に着地をし、空高く跳び上がり逃げる暇を与えない速度でムーンフォースの乱れ打ちを始めていた。

 

容赦のない乱射に頑強なツカサ側のフィールドがバンバン砕けてその破片がツカサに襲い掛かり、ギラティナも巨体故に避け切れずほぼ全てが直撃している。

 

「凄い、あのポケモン落ちながら乱射してる……」

 

「危ねぇ!」

 

「味方にやられちゃうんだ……」

 

ヒカリが落ちながら乱射するゼルネアスを見ている間、反対側でツカサは飛んで来た破片を叩き落としたり蹴り砕いたり必死になっていた。

 

 

そして……

 

『圧倒的なスピードでの乱射でギラティナダウン! 今回もカロスチャンピオンツカサの勝利だぁぁぁぁ!!』

 

「よし勝った! 次勝ったらイーブイ柄のパジャマを自分へのご褒美に買うぞ!」

 

ゼルネアスの強敵の基準がツカサの家族である伝説、幻、旅をしたエース達という化け物軍団だったのがギラティナの敗因だった。

 

『そして今のバトルで歴代最多連勝の新記録達成です! どうですか解説のダイゴさん』

 

『このまま全地方のチャンピオンを撃破して伝説になってもらいたいですね。まだ幼い彼に将来なりたいものを聞いた時に伝説になりたいと言っていましたから』

 

『やはりカロスチャンピオンツカサは幼い頃からどこかズレていたぁぁぁ!!』

 

ツカサとヒカリの激闘で上がっていた大歓声が一瞬で笑いに変わっていた。

 

「? ……あっ、将来なりたいものって職業とかの事だったの?」

 

「それ以外ないわよ。寧ろ伝説とか言っちゃう小さい頃のツカサ可愛い」

 

………

……

 

ヒカリ戦の後にも幾度か戦い全勝して数時間後、ポケモンセンターで休ませていたポケモン達を受け取ってから連れて行くポケモンの入れ替えを行なっていた。

 

そして再び会場に入ると最前列で手を振るラボメン達に笑顔で手を振り返している。

 

「今日ヒカリとメイって地味にキッツい」

 

「先輩の連勝は私がストップさせちゃおうかなーって」

 

「名前呼びだったのに可愛く先輩呼びとかあざとい。まぁ、負ける気はないけど」

 

「先輩って本当頭おかしいレベルで戦い方が変わるのよね……さっきも勝ち抜きで倒れるまで交代はなしルールを押し付けられたのにピカチュウだけで6体倒すとかいう意味不明な事もしてたし」

 

ピカチュウに覚えさせていた技が上手く噛み合ったらしく、ツカサも思わず笑ってしまうくらい綺麗に倒してしまったらしい。

 

「こんな大観衆の中でピカチュートをやらされた俺の身にもなって」

 

「あの手で耳を作ってパタパタするの可愛いですね」

 

「くっ……」

 

恥ずかしさに顔を赤くしながらツカサは急いで指示された場所へと走って行った。

 

 

 

バトルが始まると相変わらずの一進一退が続き、白熱する会場の空気を感じながら互いのエースを繰り出していた。

 

「お願い、ジャローダ!」

 

「頼んだよ、フォッぷ」

 

ボールから出たジャローダは旅の間世話をしてくれていたツカサを見つけてウインクをし、現れたマフォクシーのフォッぷをジーっと見ている。

 

マフォクシーはボールから出てもジャローダには目もくれず、火のついている枝を振るいツカサの周りにハート型の炎をいくつも浮かばせて大好きアピールをしていた。

 

 

「あ、その子可愛い」

 

「うちの子はみんな可愛いしかっこいいから。フォッぷ、マジカルフレイム!」

 

「ジャローダ、リーフストーム!」

 

マフォクシーが杖を振るうと炎で出来た魔方陣が目の前に現れ、更に杖を振るうとそこから炎で出来た龍が飛び出しジャローダに襲い掛かっていく。

 

ジャローダは驚きながらもリーフストームでその龍の勢いを削り、更にマフォクシーへと攻撃を集中させていた。

 

 

「このままだいもんじで押し切るぞ!」

 

「やっぱり相性が悪いー!」

 

メイはマジカルフレイムとリーフストームで特攻が三段階下がって弱体化したジャローダにアワアワしており、そんなメイを見て相変わらず想定外には弱いんだなぁと思いながらツカサは容赦なくだいもんじを指示していた。

 

『ここでマフォクシーのだいもんじが襲いかかる!! ジャローダ手も足も出ません!』

 

『まぁ、手も足もありませんしね』

 

『あーっとここでジャローダはダウン! 両者共にボールに戻し最後の一体に手をかけた!』

 

マフォクシーの炎捌きは凄まじくまるで鞭のように逃げるジャローダを追い詰め、逃げ場を塞いだ所で宙に浮き空からだいもんじを容赦なく放ちダウンするまで火力をジワジワと上げて倒していた。

 

 

「うー!」

 

「あざとい」

 

うーうー唸りながらメイはマスターボールを手にし、ツカサはモンスターボールを手にして同時にフィールドに投げている。

 

「バリバリダーッ!」

 

「ヒュラララ!」

 

『メイのゼクロムに対してツカサはまさかのキュレム! これは選択ミスか!?』

 

 

「ふふん、私のゼクロムと合体してないからキュレムの実力は出せないね!」

 

「ホワイトキュレム!」

 

胸を張り勝てそうと踏んだメイをスルーし、ツカサはキュレムに変化の指示を出している。

 

それを聞いたキュレムの身体が変化を始め、カッ!と発光したかと思ったらレシラムを吸収した時の姿へと変わっていた。

 

「バァーニキュラムッ!」

 

 

「……え? なんで? それ何?」

 

「何か単独変化は愛の力だってキュレムが」

 

「ずーるーいー! 私がツカサと合体しないとダメなの!」

 

「おい馬鹿やめろ! メイのゼクロムが俺のキュレムとって言わないと変な勘違いされるだろ!」

 

「私はそれでもいいの!」

 

「よくない!」

 

 

旅の途中によくやっていたじゃれあいを始めてしまい、ゼクロムとホワイトキュレムは互いに睨み合いをやめて世間話をするような仕草を始めていた。

 

「とりあえずホワイトキュレム、コールドフレア!」

 

「ゼクロム、らいげき!」

 

指示を出した直後会場を激しい冷気が覆っていき、ゼクロムは凄まじい電気を身に纏いホワイトキュレムへ突っ込むが……

 

「やっぱりパワフルハーブって凄い」

 

「ゼクロム、逃げて!」

 

メイはブラックキュレムでパワフルハーブを持たせてよく使っていたフリーズボルトを思い出し、慌てて逃げるように叫ぶも手遅れだった。

 

「すげぇ痛そう」

 

「何で他人事みたいに呟くの!」

 

ゼクロムが激しい冷気に包まれ苦しみ叫ぶ姿を見て小学生並の感想を呟くツカサにメイが吼えていた。

 

「駄目押ししとこう。今の内にブラックキュレムになってフリーズボルト!」

 

「また勝手に変化させてる! 私としか合体しちゃダメ!」

 

「……はい、そのままドーン!」

 

ツカサの指示を聞いてすぐ宙に浮き、作り出した電気を帯びた巨大な氷塊を冷気で苦しむゼクロムに向かってぶん投げている。

 

………

……

 

勝利を収めたもののツカサはげっそりした顔で誰もいない大控え室に戻っていた。

 

「お疲れ様でー……お、誰もいないや。ピカチュウ、俺が大魔王とか呼ばれ始めてるのおかしくない?」

 

「ピーカピカチャァッ!」

 

「何笑ってんだオラァン!」

 

「ピカ!? ピーカピカチュ!」

 

腹を抱えて笑い転げるピカチュウの腹を撫で回しながらくすぐってじゃれついていた。

 

尚現在この光景が次のバトルの繋ぎに会場で流れている事をツカサは知らない。

 

「ふわふわモチモチ。小さい頃からこうやって遊んでたっけ」

 

「ピーカピカピカピカチュウ」

 

「言っとくけどお前が弟だからな。それにあれだったじゃん、オーキド博士にお前を押し付けられてすぐはめっちゃツンツンしてた」

 

「ピーカ?」

 

「そうだっけ?じゃないよ。一緒に母さんのサイホーンに吹っ飛ばされてから仲良くリベンジを誓って仲良くなったんじゃないか」

 

「ピカー……」

 

「誰かいるかなー……あ、ツカサくんじゃん」

 

「痴女のチャンピオンだ」

 

「どんな覚え方してるのよ! その言い方だとあたしが痴女のトップみたいになるでしょ!」

 

制服姿で学校指定の鞄を持ち丈が凄く短いスカートに胸元をワザとらしく開けた格好をしており、会場で見ている男達はちょっとザワついていた。

 

「似たようなものじゃ……注目されたいからそんな格好なの? それとも油断を誘う為?」

 

「どっちも。てか学校行ってないの? あたしみたいな格好の子何人もいるっしょ」

 

「行ってないからわかんないや。寧ろそんな格好してる子何人もいるとか怖い」

 

「えー?」

 

「それでこんな広いのに何で椅子持って来て隣に座るの? 後課題は家でやった方がいいよ」

 

話しながら部屋の隅に重ねられていた椅子を持って隣に来て、鞄から参加期間中欠席する代わりの課題を出したのを見て告げていた。

 

「こんな広いからこそ離れてたら寂しいんじゃん」

 

「それはよく分からないけど……そんな格好で寒くないの?」

 

「寒いけどこれがあたしの正装みたいなものだからね」

 

「ほーん……」

 

「何で聞いといて興味なさげなのよ」

 

「聞いてから興味ないやって。あ、今は人目に付いてないだろうしこれ着る? なーんて……」

 

「うん、着る着る」

 

冗談半分で着て来た上着を手に言っていたがそのまま取られて着られてしまっていた。

 

「いや、あの、汗臭いかもしれないからやっぱり脱いだ方が……」

 

「えー? スンスン……」

 

「おいバカやめろ! 積極的に嗅ぎにいくんじゃない!」

 

「いーじゃん減るもんじゃないんだし。寧ろあたし達はこんな機会でもないと男の子と触れ合えないんだから。普段歩いてるだけで道の端に避けられる悲しさはみんな分かると思うのよね……女優業してたカルネさんとかは違ったんだろうけど」

 

「女性チャンピオンは大変なんだね」

 

「ツカサくんだって避けられるでしょ」

 

「寧ろ何やったら避けられるの? カフェのテラス席でボーっとしてるだけで知らない人達からもめっちゃフレンドリーに声かけられるよ」

 

「それなめられてるんじゃないの?」

 

「親しまれてるんだと思いたい。それよりその課題間違いだらけだよ」

 

「え、どこどこ?」

 

「まずここが……」

 

そう言って椅子を寄せて教え始めた所で準備が終わったらしくモニターが切り替わっていた。

 




次は最終日まで飛ばしていこうと思う。
フェイリスと髪色がお揃いになるから神化状態からのロゼにしたかった。


四ヶ月近く経過しての投稿。
また次も投稿日は未定。

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