案の定ルミホとのお出掛けはスッパ抜かれたが、ポケモンにしか興味ない説が出ていたツカサが女性と出掛けているのに安心する者が九割を占めていて問題にはならなかった。
どちらかと言えば憑いている幽霊少女の腕がツカサの肩から垂れているのが写っている事の方が騒ぎになっていたりする。
「『あのカロスチャンピオンの恋人!?』って。姉さんにモザイクかけられてるのだけが救いかな」
「気になる映画を観てからツカサの知ってるブティックでプレゼントしてもらって、外食しただけなのにね」
「ね。とりあえず明後日には帰るから、今日はカントーの幼女パイセンにお別れと最後の指導してもらってくる」
「捕まらないようにね」
朝ご飯を食べてルミホをメイクイーン+ニャン2まで送り、開店時間まで町を見て回っていた。
「店頭のホットドッグの置物に顔がある店、いつか入ってみたいなぁ。まぁ、次に来た時でいいかな」
カロスに帰るとツカサが自由に動くのを封じる為にリーグ側が看護師としての教育を終えたラッキー、タブンネ、プクリン、ハピナスを与えようと動いているのでしばらくはカロスからは出られなくなる。
寧ろ嬉しくて仲を深める為に自ら出掛けなくなる可能性がある諸刃の剣だったりも。
「タマムシは中心部からサイクリングロードとヤマブキにはすぐ行ける距離なのが不思議。この電気街とか中心部からちょっと離れるだけでどっちにも遠いし」
「ピカー、ピカピ。ピカピカチュ」
「あー……お前がサイクリングロードで自転車の籠から落ちそうになってぶら下がってるの見て笑ってたら、わざと手を離して顔面に突っ込んできたんだよな。顔は痛いし目の前は黄色いし、よく無事に降り切れたと思う」
ピカチュウが顔にしがみついている男が坂道でブレーキをかけるも止まれず華麗に降っていく光景を撮影していた者もいて、それを見た者が冗談でまたお騒がせなカロスチャンピオンじゃね?というコメントを残すくらい凄い光景だった。
尚、そのコメントが事実だと知れ渡るのに一日もいらなかった。
「ピカ~」
「お互い必死だったもんなぁ……」
まだ朝早く誰もいないからいいものの、ピカチュウと喋る姿は悲しく見えてくる。
そして開店時間が来て……
「幼女パイセンと遊んでお別れの挨拶をしたら泣かれてそのまま抱きつかれて、騒ぎになって警察の方を呼ばれるという悲劇。婦警のカタギリさんが幼女パイセンの話を聞いてくれなかったら大惨事だったなぁ」
今は解放されて電気街を歩き回っており、精巧なポケモンのフィギュアを見たりして過ごしている。
「バチュルが其処彼処にいて可愛い」
「チャァ……ピカピ!」
「……ん? お?」
ピカチュウが何かに気づき空を指差したので見上げると、大きく綺麗な色をした鳥ポケモンが通り過ぎて行く姿が見える。
しかしここは欲望が渦巻く街、ツカサとピカチュウ以外それを見ていなかった。
「あれは……ホウオウ? カントーチャンピオンが捕まえたって聞いてるけど」
ふわりふわりとにじいろのはねが落ちて来て、ツカサが伸ばした掌に乗って綺麗に輝いている。
「これは最高のお土産だわ」
自分へのお土産だと鞄からジップロックを取り出し、そのまま中に入れて大事そうに鞄の中へと仕舞い込んだ。
他にもカントーに来て早朝ランニング中にスイクン、ライコウ、エンテイを一日置きに見かけたりと伝説運は相変わらずかなりよかった。
捕獲はしないからバトルをして貰えないか話しかけて許可を得て戦い、カロスを旅した面々とピカチュウで快勝している。
またいつかどこかで出会えたら仲間になってくれると約束をし、薬で怪我を癒してから別れて今に至る。
「ピッカァ!」
「……雲行きが怪しいけど台風直撃しないよな。明後日逃したら次にピカチュウが乗れるチケット買えるの二週間後なんだから勘弁してくれよ」
「ピカ!?」
「最悪ボールに入ってもらう事になる」
「ピーカー!」
カロスに転送される為に嫌々入ったのが最後で、もう絶対に入りたくないとツカサの脚にしがみついていた。
「姉さんは寧ろこの話をしたら台風直撃祈願って言ってたから困る」
ルミホは近々開かれるサイホーンレースでツカサを騎手にしたいのと、まだ一緒に暮らしていたいので台風直撃を願っていた。
ツカサは小さな頃から大人っぽく自分と遊んでくれたルミホを二つくらい離れた姉と考えているが、実際はルミホが数ヶ月早く生まれただけの同い年だったりする。
ツカサが必死になっていた二年間でイッシュに留学して飛び級で卒業、その時にちょっとした出会いもあったらしい。
戻って来て一応体裁の為に学校に通ってはいるようだが、基本的にオーナー兼店長として日々楽しく過ごしている。
「ピィカ?」
「てか姉さんは何歳なんだろ。誕生日は知ってるけど聞いた事なかった」
異性よりもポケモンで今でも姉としてしか見ていないツカサとは違い、ルミホは弟のように可愛がっていたツカサを一緒に暮らす内に異性として見始めていた。
同い年なのに同年代の男子よりも大人っぽく、からかうつもりで下着姿を見せても紳士的に持って来ていた上着を着せて来たりと逆にドキドキさせられている。
その日から少しずつ意識し始め、その姿を目で追っては今まで見た事のない一面を見つけてキュンと来ていた。
完全にLIKEからLOVEに堕ちるのは時間の問題であり、普段のスキンシップ過多がそれを更に加速させて今に至る。
最近は寝静まったのを確認してからマスターキーで部屋に侵入、ベッドで一緒に寝ているピカチュウをそっと反対側に移しその位置に収まったりもしている。
「ピカピカ?」
「うーん、私の王子様はこんな近くに居たってなんなんだろう。……はい?」
ピカチュウと話していると肩をポンポンと叩かれ、振り向くと笑顔のジュンサーさんと婦警さんが立っていた。
「さっきは小さな女の子に抱きつかれて泣かれてて、今度はポケモンと話す危ない男がいるって通報があったのよ」
「ピカピカ」
「確かに怪しいってお前が話しかけてくるからで……あ、ジュンサーさんもカタギリさんもお疲れ様です」
「とりあえず行こっか。ちょっとお話を聞くだけだから」
「はい、乗った乗った。署の方で身分確認とかはするからね」
ミニパトで二人で来ていたらしくさっさと乗るよう促し、ピカチュウもスルリとツカサの肩に乗っていた。
………
……
…
カロスチャンピオンなのも分かりあっさり解放、ジョーイさん達と写真を撮らされてから帰って来ていた。
「カタギリさんの下の名前を聞いたら身体が震えちゃったぜ。俺はサナエって名前に恐怖を覚えているのか……」
帰って来る途中の公園で休んでいると女の子と目と目が合って即逸らしたがバトルを挑まれ、カントーではまだ珍しいニンフィア無双をしてから戻って来ていた。
「ピカピカ」
「フィーア」
『警察署内って初めて見た!』
「また捕まりそうだから絶対に答えないぞ」
ツカサ(カントーでの姿)状態ではポケモンと喋っていたら捕まるのが理解出来ており、ルミホの言う通り外では喋らず声が聞こえないようにしていた。
結局すぐにぶらぶらするのに飽きたらしく、高架下にある業務用スーパーで買い物をしてから昼時に未来ガジェット研究所を訪ねている。
「フゥーハハハハ! やはり今日も来たかデンジャラスマァッドドクター!」
「その呼ばれ方だとカロスのやべー奴みたいで嫌なんですが」
「でもツカサ氏は他のポケモンドクターがやらない術式をぽんぽんやり出すって書いてあったから、マッド扱いも強ち間違いじゃないと思われ」
「ハシダさん、それはまぁ……あはは」
「これは特別に誂えたドクターのユニフォーム……そう、白衣! さぁ、早く着て共に背を合わせて立とうではないか!」
「あ、それはちょっとやってみたい」
「狂気のマッドサイエンティストと闇のマッドドクターの共演……ダル、写真の準備だ!」
闇のマッドドクター扱いが割と的を射ていて否定できなかった。
背中合わせから始まり、二人で様々なポーズを決めては写真を撮ってもらっている。
「マッドドクターをラボメンNo.X-0に任命する!」
「オカリン、なぜにエックスゼロなん? 普通にラボメンNo.4でよくない?」
「何故か頭に浮かんだからだ。特別感もある」
「おー、何かカッコいい」
「まぁ、ツカサ氏が満足してるならいいんだお」
「とりあえずお昼作りますねー」
白衣を脱いでエプロンを付けると昨日作り置きしておいたクリームシチューが食べられているのを確認し、今日は米だなと米を研いで炊飯器にセットしている。
二人の胃袋を既に掴んでいてそわそわしているのが分かり、先にサラダを食べるよう言って水洗いをして適当に千切ったレタスとトマトに千切りにしたキャベツを器に入れて出していた。
「ダル、ツカサが帰った後の俺達の食生活が不安だな」
「昨日のクリームシチューは野菜も肉もたっぷりで絶品だったお」
「ああ。俺は昨晩作り置きしてあったクリームシチューとサラダに切っておいてくれたバゲットでちょっと洒落た夕食だった」
料理人でもあるズミが訪ねてきた時に習った作り方を試したかったらしく、市販のルーは使わずに一から作ってみせてそれが大好評だった。
二人の反応を見て昨晩のルミホとの夕食がクリームシチューになったのは言うまでもなかった。
「今日は手抜きになっちゃいますけどねー。玉ねぎ、鶏肉、卵……それと入ってるのが好きな紅い方のかまぼこに刻み海苔」
「親子丼だとぅー!?」
「オカリンテンション上がりすぎ」
「フェイリスが散々自慢していたあの親子丼、聞くだけで涎が出そうだったアレが!」
「あー……自慢の弟が作ってくれたーってフェイリスたんが言ってた」
滞在四日目くらいに作った親子丼がルミホにクリティカルヒットしたらしく、兎に角自慢しまくっていたらしい。
「言ってくれさえすればいつでも作りましたよ?」
「ルカ氏といいツカサ氏といい、男なのが不思議だお」
「ああ、それには同意する。炊事洗濯掃除と進んでやってくれるから最近はラボが快適すぎるな」
「あ、そうだ。昨日階下のテンノウジさんにシチューのお裾分けに行った時に家賃の支払いも済ませておきましたよ」
もし女として生まれていたら献身的に貢ぎ尽くすツカサは間違いなくダメな男に捕まっている。
「ミスターブラウンがやたら俺に探りを入れていたのはそういう……流石にそれは立替てもらった事にするぞ」
「姉さんがいつもお世話になっているみたいですし、これくらいはさせてください。無駄にお金だけはあるので」
これくらいで向こう十年は支払わなくていい家賃を現金一括で支払っており、弱味を握られてるんじゃないかと心配されたりしていた。
娘さんとはピカチュウを通じて仲良くなっており、今ピカチュウとニンフィアと一緒に階下で遊んでいる。
「フェイリスたんの妹だったら今頃萌え死んでたお」
「男ですからねー」
それから二人に腹一杯食べさせてから自身も食べ、お茶を淹れて三人で食休みをしていた。
「美味かった……もう兎に角美味かった」
「順調に胃を握られている件」
「おやつはプリンですよ」
「ダルよ、ダメ人間が出来上がる」
「女の子だったら間違いなくフェイリスたんの次に好きになってたお」
ほぼ同年代の男友達が初めて出来たのが嬉しくて自然に尽くしていた。
レッドとグリーンは幼馴染だからノーカンらしい。
「午後は何します?」
「久しぶりにゲームでもやるのはどうだ?」
「ツカサ氏が物珍しさからポテトで買って来たゲーム機で遊ぶん?」
「デンジャラスドクターがファミコン、スーファミ、64と大量に買って来たからな」
一人でぶらつかせると必ず何かしら買って来るらしく、先日はウエハースの欲しかった弾をダンボールで買って来てラボの隅に積まれていたりする。
「呼び方変わってません?」
夕方になりルミホが迎えに来るまでゲームで遊んだり、発明品を見て説明してもらったりと楽しんでいた。
その途中でダルが用事があると帰ってしまい、ラボに二人だけになっている。
「またカントーに来たら我がラボに寄るがいい。デンジャラスドクターはもう立派なラボメンだからな」
「オカベさん……」
「違う! ホウオウイン キョウマだ!」
「キョウマさん……」
そんなちょっといい話で締めようとした二人だが、誰かが階段を駆け上りラボの扉を全力で開けて飛び込んで来て驚いていた。
「ツカサおじさん!」
「ファッ!?」
「あっ、オカリンおじさんもいるじゃん」
髪型と頭にバンダナを巻いていない事を除けば昔のハルカまんまな格好の少女が立っており、モンスターボールに何かを戻すのをツカサは凝視していた。
「おじさんではないしオカリンでもない! だぁれだお前は! まさか……貴様ッ、機関の者か!」
「いや、ちょっと待ってキョウマさん……今君がボールに戻したのセレビィじゃないの? 何で君がセレビィを?」
「ツカサおじさん……んんっ! あたしはツカサおじさんを助けて未来をほんのちょっと、みんなが幸せになるようにする為に来たんだ」
「まるで意味がわからんぞ!」
「キョウマさん、セレビィは時を超えられる……って話なんです。俺もセレビィは見た事があるだけですから詳しくは分からないですけど」
森でわたぼうと遊んでいるのでよくご飯を与えているが、まだそこまで仲良くはないので分からないらしい。
「時間がないから単刀直入に言うけど、明後日の飛行機に絶対乗っちゃダメ。絶対だよ! ……もう限界みたいだね。セレビィ、お願い!」
「ちょっ、君の名前は!」
「あたしは鈴羽! ツカサおじさん、オカリンおじさん! 未来で会うこの世界のあたしによろしくね!」
ボールから出たセレビィが何かをするとラボに閃光が走り、二人が目を開くとそこには誰も居なくなっていた。
思わず二人は無言でラボの中を調べ回ったが本当に跡形もなく消えていて、冷蔵庫からドクぺを二本取り出しソファに座って気を落ち着かせている。
「……未来が変わったらあの娘は居なくなるんじゃないのか?」
「ここが分岐点なんでしょうね。俺が予定通りに帰ると何かしら起きてあの子の居る未来、帰らないと未知の未来に」
「これが運命石の扉の選択か……いや、マジで初めての不思議体験すぎて頭がついていかない訳だが」
「うーん……台風も近づいているしリーグの人には悪いけど忠告に従おうかな」
「それならば明日のプロアマ問わずのチームバトルの大会に共に出ようではないか! まゆりでもよかったのだが、我が右腕のダルと我が左腕であるツカサがいるのならば勝てるぞ!」
「チームバトル……はい!」
「ふっ、もう敬語も敬称もいらんぞ。フェイリスと話す時のように砕けた喋り方で構わん!」
「はい、じゃなくて分かったよ」
「俺の手持ちはエースのポリゴンゼェット! メタグロス、ユンゲラーだ。ツカサ達のような本職のトレーナーではないから三体を育てるのが限界だ」
「あー、確かに沢山いたら普通の人は育てるの大変かも。それでキョウマはユンゲラーは進化させないの?」
「ダルに見栄張って進化させられなかったんです、どうかこの私めのユンゲラーをフーディンに進化させてください」
「あはは……いいよ。しかしポリゴンZにメタグロス、なかなかエグい」
味方にすると頼りになる二体のポケモンがいてホッとしていた。
「ちなみにダルはポリゴン2、ハピナス、ドリュウズだ」
「なんとまぁ……俺は出すならゲッコウガ、リザードン、ニンフィア。ルカリオは最近頼り過ぎてるからお休みにしたいし、ピカチュウはちょっと癖がある、最後の奴は出したらちょっとした騒ぎになるから」
………
……
…
ルミホとスーパーで買い物をしてから帰り、夕食後にソファに並んで座りテレビのニュースと天気予報までバラエティ番組を見ていた。
「姉さん寄りかかるのはいいけど寝たらダメだよ。運べるの借りてる俺の部屋のベッドしかないし」
「寝ないよ。明日の夜までしか一緒に居られないんだもん」
「あ、そうだ。俺、明後日の席キャンセルして二週間後に帰る事にしたから」
「ニャ!?」
「ビックリしながらも腕の中に転がり込んでくるって器用。あ、姉さんいい香りがする」
「それなら後二週間一緒に暮らせるんだよね?」
「うん、でもキョウマに誘われてるしラボにお泊まりも」
「ダメ」
「え? いや、でも男だけのお泊まり会とかも」
「絶対ダメ。ツカサは私と一緒に居るの」
「ね、姉さん……?」
今までなら仕方ないと送り出してくれたルミホの変貌に動揺し、腕の中からジーッと目を見てくる姿に少々恐怖を覚えている。
「ツカサがお泊まりに行っちゃったら、お姉ちゃんお家に一人になっちゃうんだよ?」
「それは……」
「だから、ね?」
「う、うん……」
「全くダメダメな王子様なんだから」
やっと見つけられた自分の王子様が残り少ない一緒に居られる時間を、知り合ったばかりの男友達と過ごそうとするのが受け入れられなかったらしい。
ちょいちょいと腕を身体に回すようにジェスチャーで指示され、それに従い両腕を身体に回してルミホを抱き締める形にしていた。
「う、密着するとさっきよりもいい香りが……」
「小さい頃にツカサが好きって言ってくれた香水だよ。当時は背伸びしてつけてたんだけどね」
「あー、あれかぁ……」
「懐かしい思い出話はお風呂入ってからベッドでしましょ」
「え、今日も一緒に寝るの?」
「今日も明日もだし、帰るまでずっと」
こうしてツカサはまた一人自分を狙う者を増やしてしまっていた。
ちょっとこの面々使うのが楽しくてカントーまだ終われなかったです。
姉枠じゃなくて実は同い年ヒロイン枠だったり、セレビィの助けで飛んでくる未来形ヒロインがいたり。
オカリンのヒロイン枠のセレセブはまだ出会ってないしイッシュだからね、出なくても仕方ないね。
三犬やカントーチャンピオンのとは別個体なホウオウから羽の贈り物を貰ったりとジョウトフラグも立てておくスタイル。
ドリボ夢アチャモ預けてドリボ夢キモリ狙ってるけど全然来ないなぁ。
後はこいつだけで御三家夢ドリボ揃うのに。
ネロ祭り必死に金リンゴ齧って回ってる。
塩川尊師が今後クソ不味くするのが分かってるから、クッキーを必死に集めないといけない。
髄液がボックスに欲しかった。