ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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色々使い勝手のよい新チャンピオン

裏庭に設置された椅子に座り、テーブルにお茶菓子と紅茶を並べていた。

 

オフの日だからと朝早くから訪ねて来たカルネをもてなしており、庭をイーブイズが走り回るのを見て癒されていた。

 

カルネのサーナイトとツカサのサーナイトは井戸端会議をするおばさんのように楽しそうに話をしている。

 

カルネがツカサのサーナイト用にと誂えたサーナイトナイトのネックレスはカラー違いのお揃いであり、そんな二体のサーナイトは姉妹のように仲が良かった。

 

「ツカサのサーナイトは色違いなのよね」

 

「ええ。色違いの個体は野生だと弾かれやすいみたいで、ラルトスだった時の彼女もそれでしたよ」

 

色違いが持て囃されるのは人間達の間だけであり、他とは違う個体はポケモンであろうとも弾かれやすいようだった。

 

「……見つけたのがツカサでよかったのかもしれないわね」

 

「その手の個体は保護して家族にしてますから。ジョウトではマリルがそうでしたねー」

 

「マリル……可愛いわよね」

 

 

しばらくしてお互いサーナイトをメガシンカさせて写真を撮らないかという話になり、カルネからメガストーンを貰ってから初めてサーナイトをメガシンカさせる事になった。

 

そして……

 

「まぁ!」

 

「おぉ……マジか。メガシンカ後の姿が正反対じゃないか」

 

白いドレスを纏ったような姿の清楚なカルネのメガサーナイト、黒いドレスを纏ったような姿の妖艶なツカサのメガサーナイトが並び立っていた。

 

「ツカサ、写真撮るから並んで並んで! 私のサーナイトは右、ツカサのサーナイトは左に」

 

「はいはい……」

 

「あ、挑発するような笑みを浮かべて……それなら玉座みたいな椅子を用意した方がいいかしら」

 

「いや、凝らなくていいですから」

 

 

 

それから数日が経過し、幾度目かの収録に参加させられていた。

 

「解せぬ。しかも何かこのコンテストの番組のレギュラーになりましたからとか、いきなりカルネさんのマネージャーさんに言われたんじゃが?」

 

「何か私とセットが普通になっちゃったみたいね、新旧チャンピオンって。それと基本的にツカサとの連絡が取れないから私のマネージャーにお願いしてるのよ」

 

「えぇ……」

 

「とりあえずチャンピオンに就任してからリーグにマネージャーを付けてもらうか、なってくれる人を探すしかないわ。寧ろ今すぐ探すべきなんだけど」

 

「ハルカ達はおばさん達がマネージャーやってるらしいしなぁ……」

 

「まぁ、しばらくはあの子が私とセット運用するって言ってるから安心なさいね」

 

「はーい」

 

やたら豊富な知識と技術のあるツカサと聞き上手で的確な質問をするカルネのペアはかなり使い勝手が良く、ギャラが一人ずつ呼ぶよりもかなり高い代わりに視聴率も高くなるのでオファーが殺到している。

 

 

バラエティ番組ではポケモンの言葉が分かるという偽天然不思議キャラアイドルにドン引きし、全くあってない言葉にポケモンもツカサも溜め息を吐く始末。

 

胸が大きいくらいしか評価出来ないなぁと、そのアイドルのパートナーである疲れた顔のプリンを見て思った程。

 

収録後にそのアイドルから許可を得て、プリンを診察してから軽くマッサージをして疲れを取りお手製のポフレを食べさせて元気を出すよう話しかけていた。

 

 

「今日はちゃんとサーナイトを連れて来た?」

 

「ええ。本人は家事があるからって嫌そうでしたけど、カイリキーが任せてくださいと説得してました」

 

 

そして……

 

「よっと!」

 

「フッ!」

 

ツカサとサーナイトのペアは前回のピカチュウとの息の合ったアピールが霞む程であり、かつてのコンテスト覇者の腕が錆びていない事をこれでもかと見せつけている。

 

お互い久々の感覚に楽しくなってしまい、少し古いが当時のアピールを織り交ぜながら見ている者達のテンションを上げていた。

 

「フィナーレだ」

 

「!」

 

アピールをしながらメガリングに触れると光が放たれそのまま二人を包み込んでいく。

 

それすらも組み込んでいたらしく、光が弾き飛ばされると黒いドレスを纏ったメガサーナイトの腰に手を回し最後のポーズを決めていた。

 

 

 

収録も終わりいつものようにカルネの楽屋に呼ばれ、出しっ放しのサーナイトと共に訪れている。

 

「やべぇ、凄く楽しくなってた……」

 

「私、チャンピオンの任期が終わったらコンテストに挑戦してみるわね。女優業と両立してみせるわ」

 

カルネはすっかり魅せられ、カルネのサーナイトもツカサのサーナイトに興奮しながら何かを話しかけていた。

 

「いいと思いますよ。今回は最後にしましたけど、途中でメガシンカしてアピールの仕方を変えると面白いかもしれないです」

 

「でもツカサ、きっと私より大変になるわよ」

 

「権力があれば拒否とか出来そうって期待」

 

「無理でしょうね。広告塔になる為にチャンピオンになったんじゃないかってレベルじゃない? ブリーダーでドクターでチャンピオンで役者でコンテスト覇者とか」

 

「俺はどこに向かってるんです?」

 

「それは私が聞きたいわね」

 

「カロスに来なかったら父さんみたいな医者目指してたかもなぁ」

 

ツカサの父はタツミヤジマの風土病を研究しつつ治療法を確立する為に長くマサラタウンを離れていて、いつか会いに行きたいと思っている。

 

そんな父の性能をかなりマイルドにしたのがツカサであり、マサラタウンの者達も父を基準にしてツカサを見てしまっているから扱いが割と雑だったりした。

 

シラカワ家の大黒柱シラカワ シュウ、世界が世界だったらとんでもない人物だがこの世界では恐ろしい程に有能なだけなのでセーフ。

 

 

「それは人の?」

 

「はい。師事していた方にも人の方も診れるようにならないかと常々言われてましたから……いつでも呼べば駆けつけるって引っ越す前の日に言ってたなぁ」

 

依頼料は貰うがね、と笑いながら言われて苦笑いをしながら握手をしたのをツカサは今でも覚えている。

 

 

そんな話をしながらカルネのマネージャーを待ち、二体のサーナイトは腰を支えられながら抱き寄せられた時の話題で盛り上がっていた。

 

………

……

 

「セレナ、流石に俺の洗濯物と君の下着を一緒に干すのはおかしくない? てか当たり前のように家で暮らしてるよね?」

 

「ダメなの?」

 

「いや、洗濯物は流石に……俺のと一緒に洗ってもらうのも干してもらうのも悪いと思うし。暮らすのはパパさんとママさんが許可してるならいいけど」

 

「許可は出てるし、洗濯は予行練習ですもの。寧ろ洗濯は任せて、私がやるから」

 

最近はシャツを抱き締めてスーハーするのが日課になっており、ピカ子達ツカサLOVEのポケモン達にも分け前を与えて口止めをしている。

 

「お、おう……とりあえずセレナの下着は俺の目の届かない所に干してね。割と目が釘付けになる」

 

「ツカサの洗濯物で挟んでるから、ツカサ以外には見えないから平気よ」

 

「いや、そうじゃなくて……お兄さん、まだあんな黒の透け透けでセクシーなのは早いと思うの」

 

「そう? 想像してみた?」

 

「してないけど」

 

「……ツカサ、もしかして不能なの?」

 

「頭出しなさい、拳骨をくれてやるから。不能じゃねーよ、寧ろ元気で悲劇が生まれたぐらいだわ」

 

鍵を掛けても部屋に入って起こしに来るメイド組に毎朝観察され、風呂上がりにも毎度争いが起きて見られたりと踏んだり蹴ったりな事があった。

 

「まさかポケモンにしか」

 

「違うからね。モモカさんに抱きつかれた時とかそれはもう……」

 

「モモカって誰?」

 

「アリアの家のメイドさん」

 

マネージャーの兼は何故かアリアの両親にも伝わっており、メイド三人組をローテーションでマネージャーにする算段が付いていてツカサは既に詰んでいた。

 

アリアはツカサの様子を聞ける、ツカサは見知った存在がマネージャーで安心、メイド組はアリアが幸せでニッコリのみんな幸せ。

 

サヨコのゲッコウガ、モモカのサーナイト、サクヤのキリキザンとそれぞれのパートナーともツカサは仲良くなっている。

 

「ツカサはメイドさん好きなの?」

 

「シンプルなメイド服が見てる分には好きだよ。負けたら俺にも一日着てもらうって言われたトリプルバトル……」

 

実質1対3で息の合った三人に圧倒され、ゲッコウガとサーナイトは倒すもキリキザンに押し負けて一日メイド体験をしていた。

 

ウィッグとメイクまで施されてヤケクソになり通常のメイドの三倍働き、偶々訪れていたアリアパパの未婚の友人(48)に一目惚れをされてアプローチをされたりとカオスだったが何とか一日体験は終わらせている。

 

尚、一部執事も思いの外似合ってしまっていた姿を見て道を踏み外した模様。

 

 

「えっ、何それ見たい」

 

「見た目から入ろうって言われた瞬間執事達に抑えつけられて、服を脱がされて全身の無駄毛を無理矢理処理された気持ちが分かる?」

 

「どんな気持ちだった?」

 

「マジで怖かった。下手に暴れると首が落ちるかもしれませんな、とか老執事のウォルターさんに言われて身動き取れなくなったし……フォルカさん達に死ぬ程鍛えられたのに鈍ったかなぁ」

 

世界観が違うと嘆きながらも一家に鍛え抜かれ、マサラ人らしい頑強さとぶっちゃけ生身で無双出来そうな強さは得ている。

 

 

「あのはかいこうせんにも突っ込んでいくツカサが怖い……明日は雪かしら」

 

「当たらなければどうという事はないから。夢で金髪ノースリーブグラサンが言ってたんだよなぁ……最初に夢に出て来た時は仮面付けてたけど」

 

レイナと出会った日に初めて仮面で現れ、アリアと再会した日にグラサンで出て来たらしい。

 

 

 

そんな話を延々していると裏庭に続く窓が開き、足拭きマットで綺麗にしてからピカチュウとイーブイズが帰って来た。

 

「ピカ!」

 

「ブーイ!」

 

「フィア!」

 

「イーブイズはモフモフしてるなぁ……夏場だからめっちゃ暑いっす」

 

「真夏にコート着てるみたいになってるわ」

 

ツカサが大好きで親と思っているイーブイズはソファに座るツカサに我先にと群がっていた。

 

「来年の春になったらお前達を進化させるからなー」

 

まだまだ子供だからと進化を先延ばしにしていて、それまでは遊ばせながらバトルの厳しさと痛みを覚えさせている。

 

ニンフィアとピカチュウが指導をしていて、最初は痛みに泣いていたイーブイズも今は反撃をするくらいにはなっていた。

 

ツカサを守りたい、褒められたい、ずっと一緒に居たいと思いながら日々強くなっている。

 

 

「あ、そうだツカサ。メガシンカおやじさんが一度メガリングを見たいって連絡して来てたよ」

 

「げっ、この前の街中で暴れたギャラドスを抑えるのにリザードンとルカリオを同時にメガシンカさせた件かな……」

 

メガシンカおやじにアローラで組み込まれたZストーンを使用する為の仕組みを見せに行った時、考えなしのトレーナーが街中でギャラドスを逃がして大変な事になって止めに奔走していた。

 

たまたま一緒に居たコルニには止められたが時間も戦力も足りないと強行し、キズナゲッコウガまで出して皆の避難が終わるまで抑え続けて最後はぶっ倒れて終わっている。

 

 

「無理したからお説教かもね。キズナゲッコウガまで出して最後は立ったまま気絶、大人しくなったギャラドスも引き取ってるみたいだし」

 

「行きたくねぇ……」

 

「ダメよ」

 

「あのおやじ、説教の後にコルニちゃんと二人きりにするのがなぁ……コルニちゃんも何か最近は近づくとサッと距離を取るし」

 

「はぁ……ツカサはポケモンの心は分かるのに乙女心は分からないのね」

 

「そう言われても……」

 

「汗をかいた状態で異性に近づいて欲しくないのよ」

 

「む? そうなんだ……気にせずに寧ろ抱きついてきたりした奴もいたから知らなかった。メイはマーキング云々言ってたし」

 

「なるほど」

 

「とりあえず今度から気をつけるよ。女心かぁ……」

 

 

 

 




人間のハニトラよりもポケモンのハニトラに掛かりそうなのがツカサ。


CCCイベント、リップが鬼のように強くて令呪使う寸前まで追い込まれるとは思わなかった。
やっぱり殿ヘラは強いなぁ。

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