ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

29 / 56
アローラ観光が後に様々な影響を与える事に

「島キングのハラさんと会っていたら守り神のカプ・コケコがバトルを仕掛けてくるなんて」

 

「引かない所か圧倒して気に入られていたね」

 

挨拶中に強者の存在を察知し、飛び出して来てツカサに返り討ちにされたらしい。

 

「いえ、あのバトルで自分もまだまだ甘いと痛感しました」

 

「ツカサは謙虚だね。あ、それとアローラだとまだツカサはあまり知られていないから過ごしやすいと思うよ!」

 

「やったぜ」

 

ボタンを留めず上半身を露出したアローラシャツに短パンでビーサン、ジーナが選んでくれたサングラスに麦わら帽子のかなり怪しいツカサが爆誕している。

 

「今日は僕の奢りで食べに行こう」

 

「ゴチになりやす」

 

「そして明日からは島を一緒に巡ろう!」

 

「楽しみだなぁ……アローラで捕まえるポケモンは癖のない子だといいなぁ」

 

ピカチュウとニンフィアは砂浜を駆け回って遊んでいて、知らないポケモンも一緒になって遊んでいるのが窓から見えている。

 

「ツカサのニンフィア、話に聞いてはいたけど凄いね。まさかハラさんのハリテヤマのZ技を触覚で捌いて蹴り倒し、そのままムーンフォースで一撃なんて」

 

「あれでも自重して……いや、触覚使って技を捌くのは俺も初めて見ましたけど」

 

「ツカサがカプ・コケコから貰った石でハラさんが腕輪を作ってくれるみたいだけど、あの付けていた黒い腕輪を渡しちゃってよかったのかい?」

 

「ええ、メガリングにも加工すれば組み込めるって聞いたので。一から作るより楽みたいですし」

 

Zリングの機能が付いたメガリングになり、二年後のZリングにキーストーンを組み込む事の出来る仕様に繋がる。

 

 

「そっか。じゃあ、早速食べに行こう!」

 

「はい!」

 

………

……

 

そんなこんなでメガリングZとなった腕輪を装備し、毎日ククイ博士と様々な場所に足を運んでいた。

 

「……」

 

「つ、ツカサ? 大丈夫! いい笑顔のピカチュートだったから! 結構可愛く踊れてたよ!」

 

初めてのZ技を使って踊っている所を観光客に見られ、恥ずかしさのあまりに両手で顔を覆ってしゃがみこんでいた。

 

 

「ピカチュウもあのトレーナーさんも可愛いーとか言われながらも必死に踊ったんだ……写真くらいならいいかって思ったらまさかの動画だった」

 

「うわぁ……」

 

「バトルをするのに邪魔だったからサングラスと麦わら帽子を取ったのが仇に……」

 

「でもなんでピカチュウZを? 試練じゃないけどバトルに勝ったからって色んなZストーン貰ってたよね?」

 

「ピカチュウがずっとやりたいって」

 

「あ、そっか。ツカサはポケモンの言葉が分かるんだっけ」

 

ククイ博士とすっかり仲良くなり、色々と話すようになっている。

 

ククイは技について熱く語っても普通に付いてくるツカサを年の離れた友人と見ており、改めてアローラに招いてよかったと思っている。

 

 

「ええ、オンオフ可能で便利です」

 

「とにかく次に行こう! あ、ボールは足りるかい? かなり捕まえて転送していたみたいだけど」

 

「それは大丈夫です。マオに案内してもらったポケモンセンターで買ったからたくさんあるので」

 

「あれは凄かったね、ツカサの滑って落としたモンスターボールに凄い速さでダイブしてきて捕まったヤトウモリ」

 

「あれは芸術点高かったなぁ。カキさん含めた俺達三人がしばらく何が起きたのか分からなくて固まったくらいに」

 

「ツカサがボールから出してみたら肩にスルスルって登って行ったよね」

 

「ピカチュウが羨ましかったんだって言ってましたねー。今はカロスの私有してる森でみんなと遊んでるんじゃないかなー」

 

「それは気になる……そうだ! ツカサが帰る時に僕もカロスに付いて行っていいかな?」

 

「いいですよ。何なら探検しますか? まだ色々未開なんで」

 

「いいね! 新着の動画が……あっ」

 

「え? ……待って、これ削除申請したい」

 

ククイがスマホを確認して固まったのを見て後ろから覗き込み、まさかの物を見つけて焦っていた。

 

ポケモントレーナー用の公式サイトの一つであるコメント出来る動画サイトにさっきのピカチュートを使ったバトルの動画がアップロードされており、カロスチャンピオンのそっくりさんだと思われているがバレるのも時間の問題だった。

 

 

「『えっ、これ本物?』『カロスチャンピオン何やってんの?』『やだどっちも可愛い……』『これは流行る』……ツカサ、もう身バレしてるよ」

 

「さっきの観光客の女性どこ行った? すぐに消してもらわなきゃ!」

 

これを見たやたら有名すぎる知り合いや友人達が、自身のサイトでこの動画はオススメと紹介したせいで再生数が上がり続けている。

 

 

 

結局観光客の女性は見つからず、見なかった事にして島を二人とピカチュウで再び回り始めている。

 

「ミュウいないかな」

 

「幻のポケモンだね」

 

「三歳くらいの時、よく庭に遊びに来てたんですよ。突然来なくなって寂しかったですけど」

 

「ツカサ、本を書いたらどうかな? 自伝とかを出したら僕は絶対買うよ。間違いなく面白いだろうし」

 

「面倒ですねー」

 

「うーん、絶対面白いと思うんだけどなぁ……」

 

「それよりさっきからこの泣きぼくろのある女の子のピカチュウが俺の脚にしがみついて離れないんですが」

 

「ピカァ」

 

「ピ! ピカ!?」

 

肩に乗ってキョロキョロしていたピカチュウ♂が、ツカサの脚にしがみついて目をハートにしているピカチュウ♀を見て驚いている。

 

メレメレ島でツカサに一目惚れをし、こっそりククイ博士の船に忍び込んでアーカラ島まで付いて来ていた。

 

 

「博士、俺モテてる」

 

「確かにそのピカチュウ♀はツカサ大好きみたいだね」

 

「ただ今はオフにしてるから何言ってるか分からないです」

 

「ピカァ……」

 

「これこのまま歩くしかないんじゃ……下手に刺激したらアバババってなりかねない」

 

ピチュー達が全身にくっついて来た時に地獄を見たらしく、警戒しながらゆっくり摺り足で動いている。

 

やはり歩きにくいと途中で抱き上げ、そのまま左肩に乗せて歩いて行く。

 

両肩にピカチュウを乗せて歩く姿はそれはもう目立ち、観光客だけでなく地元の人達にも写真を撮られる程。

 

 

 

太陽の光が海に反射してキラキラ輝き、ビーチに設置されているチェアに横になってツカサは身体を焼いていた。

 

「うーん、背後に聳え立つホテルは豪華すぎて落ち着かないだろうなぁ。ナマコブシ投げは面白かったけど」

 

「それで今ツカサのお腹に乗ってるナマコブシは? ピカチュウ達が恨めしそうにしてるけど」

 

トロピカル的なドリンクを二つ手に戻って来たククイ博士がツカサの腹の上にいるナマコブシを見て尋ねていた。

 

ピカチュウ達は周囲をうろちょろしてチェアに乗るタイミングを計っており、互いに牽制しあっている。

 

「捕まえました。ヒドイデとスナバァも捕まえてカロスに送りました」

 

「ブシッ……」

 

「僕が少し離れた間に……早業だ! はい、熱中症にならないように水分補給しないとね」

 

「ありがとうございます。しかしククイ博士……鍛えてますね。そのシックスパックが眩しいです」

 

「ツカサも鍛えてるよね。いい筋肉の付き方してるよ!」

 

水着姿の二人は鍛えられた肉体を互いに褒め合い、ピカチュウ♀はツカサの腹筋を見て涎を垂らしている。

 

「トレーナーは丈夫な身体が基本ですから」

 

「多少野生のポケモンにぶつかられても平気じゃないとね」

 

「ですねー」

 

 

サングラスをかけパラソルの下で水着姿の女性を見ていたら気づかれ、手を振られて振り返している。

 

腹の上でうつ伏せで寝そべりスリスリしてきてくすぐったいピカチュウ♀は端から見たら可愛らしく、ビーチの視線を無駄に集めていた。

 

 

「まだ捕まえていないのにこの懐き具合は……お前は最初めっちゃ俺にでんきショックしてきたよなー」

 

「ピ、ピカ? ピカチュウ……?」

 

「そんな事したっけ?って顔してもダメだぞ。仲良く母さんのサイホーンに吹き飛ばされてから、いつかリベンジしようって分かり合ったんじゃないか」

 

「ピカー」

 

「そう言えば……下世話な話になるけど、ツカサって女性に興味はあるのかい?」

 

ピカチュウと話すのをニコニコしながら見ていたククイ博士が気になっていた事を口にしていた。

 

「そりゃありますよ。でもお付き合いするならポケモンを優先しても怒らない女性じゃないとダメだって友人に言われてますが」

 

「あー……昨日もナンパされてるのに女の子が連れてるヤドン可愛がって怒らせてたね」

 

「えっ、あれナンパだったんですか!?」

 

「もう胸元が見えるように強調したり、やたら甘ったるい声で話しかけていたよ。ツカサはヤドンに夢中で全く見てなかったし聞いてなかったみたいだけど」

 

「いや、これでも男ですからおっぱいをそんな強調してたら目が釘付けに……」

 

「気持ちよさそうにひっくり返ったヤドンのお腹をムニムニ触ってたよ」

 

「マジか……見たかったなぁ」

 

「目の前にツカサ好みの女性と色違いのイーブイと普通のイーブイの進化系が全部います。どちらかとだけ話したり触れ合えたりしたらどうする?」

 

「そんなのイーブイズ一択でしょ」

 

「うん、僕もツカサはポケモンを優先しても怒らない女性以外と付き合ったらダメだって言えるよ」

 

「えぇ……」

 

 

 

島を巡り終える頃にはカロスに帰る日が近くなり、一人でブラブラしながら皆へのお土産を物色していた。

 

「母さん達にはちゃんとお菓子やらを送ったし、後はセレナ達に買って帰らないと」

 

「ピーカーチュー!」

 

「フッ……ピカ?」

 

ツカサのピカチュウ♂♀は仲が悪く、どちらがツカサに相応しいかでよく揉めている。

 

「両脚にしがみつきながらケンカするんじゃない。ピカチュウ♀はあまり挑発するなら服作ってあげないぞ」

 

「ピカ!?」

 

「仲良くするならあのアイドルっぽいの作ってあげるから」

 

ポケモン用の服やアクセサリーも最近自作しており、今もピカチュウ♀の耳に可愛らしいリボンが付けられている。

 

 

「お前も最古参の俺の相棒なんだから、少しは余裕を持とうな」

 

「ピカ」

 

「ピカチュ」

 

「フィア!」

 

「最後のやつは大人しくボールに戻ろうね」

 

 

そんな風に騒ぎながら物色していると土産物屋の店主が現れ、ツカサを見てすぐにハグをしてなんでも好きなだけ持って行ってくれと店主自ら売り物の鞄に商品を突っ込み始めていた。

 

「いや、ダメですって!」

 

「他のポケモンドクターから治療は無理と言われた、私の大事な家族のハリテヤマの手術をして助けてくれたんだ! 寧ろこれだけじゃ足りないくらいだよ!」

 

手術をポケモンセンターで行おうとしたが傲慢なポケモンドクターが居り、自分の診断を否定するツカサに対してセンターの治療に関する物の一切の使用を拒否。

 

困っていた所をエーテル財団の職員に話しかけられ、場所を提供してくれるというので付いて行っていた。

 

「流石にそんなには戴けませんって!」

 

「いいからいいから!」

 

助手に付いたエーテル財団の職員達は見た事のない術式と正確で速い執刀に目を見張り、あっという間に縫合まで終えて颯爽と去る姿に慌てて後を追っていた。

 

そしてツカサを是非エーテル財団お抱えのドクターにと勧誘されたが、フリーランスのポケモンドクターとしてやっているのでと断り今に至る。

 

「鞄パンパン、鞄パンパンですって!」

 

「うーむ……よし、それなら先生の自宅に後から送らせてもらうよ! 住所と氏名を……」

 

 

 

手術以上に疲れるやり取りをしてぐったりしながら博士の家に帰り、椅子に座って一息ついていた。

 

「ドクターとしてのサインが欲しいとか初めて言われましたよ」

 

「カロスチャンピオンじゃなければ僕の助手になってもらいたいよ。でもごめんね、今週はツカサ一人でぶらぶらさせちゃって」

 

「平気ですよ、毎日マオが迎えに来て案内してくれてますから。問題は暑いのにずっと手を繋いでいないといけない事ですねー……」

 

四つ下のマオはツカサに一目惚れをしたらしく、メイ程ではないが積極的にアプローチをしていた。

 

メイ以来の積極的な子にツカサもタジタジであり、割と単純で恋人繋ぎを自然にしてくるマオを少し好きになっている。

 

 

「……何だろう、二年後くらいにアローラで修羅場が起きそうな気がする」

 

「怖いっすね」

 

「ツカサが中心にいたりしてね」

 

「ガチでやめてください」

 

「まぁ、ツカサはカロスチャンピオンだから巻き込まれないと思うけどね」

 

「それフラグっぽいんですけど……」

 

 

ククイ博士の手伝いをしながら話をしており、足りない資料もツカサが各博士に連絡をしてメールで送ってもらったりしている。

 

欲しい資料をいいタイミングで持ってきたり、休憩したいなと思った時にアイスコーヒーとお茶菓子が出てきたりと助手に欲しくなっていた。

 

「……これは確かに先輩博士達が欲しがるわけだ」

 

「ククイ博士? これが最近になって本気を出し始めた俺のキュレムです」

 

持って来ていたノートPCで動画を再生するとキュレムが映り、撮影しているツカサがブラックと叫ぶと発光して次の瞬間にはブラックキュレムに姿を変えていた。

 

ホワイトと叫ぶと同じように発光してホワイトキュレムへ姿を変えている。

 

話をしてみると実はフォルムチェンジに遺伝子の楔やゼクロムにレシラムが必要ない事が分かり、最近になって本気を出し始めたジガルデと共にウルトラビーストを含めたバトルの特訓に励んでいる。

 

 

ツカサを慕い仲間になった各地方に伝わる伝説や幻の中で最強の相棒は誰だ議論が行われ、皆が私だ俺だ僕だと名乗りを上げて各々譲らなかったらしい。

 

ホウエンから去る時に付いてきたラティアス。

 

シンオウで色々あって仲間になったダークライにシェイミ。

 

イッシュでメイの代わりに戦い捕まえたキュレム、知らぬ間にマサラタウンまで付いてきていたメロエッタ。

 

カロスで仲間になったゼルネアス、イベルタル、ジガルデ、ミュウツー、そして自らをツカサのパートナーと豪語するディアンシー。

 

かなり昔からツカサを覗き続け、我先にと異世界から現れたUB達。

 

ツカサは気がついていないが、幼い頃にカントーで出会ったミュウもひっそりと住み着いて感動の再会のタイミングをどうするか考えている。

 

 

結局話はまとまらず、各々次に集まる時に己が最強である証を見せるという事で決着がついていた。

 

 

「これがあの……えっ」

 

「はい?」

 

キュレムが戦い始めた相手がミュウツーであり、しかもメガシンカをしてメガミュウツーYへと姿を変えた事にククイは目を疑っている。

 

「……」

 

「?」

 

………

……

 

あれから毎日デートを繰り返す内にマオから呼び捨てにされるようになり、誰よりも後から好意を持ったのに誰よりも一歩先を行く存在になっていた。

 

 

そして……

 

「楽しかったなぁ……」

 

帰りの船の上で呟きながら離れていく島を眺めていた。

 

仲良くなった者達が見送りに来てくれて、マオからはちょっと不恰好だが心のこもったお弁当を貰っている。

 

「また来よう。結局ククイ博士は忙しくなってカロスには来れそうもないのが残念」

 

「ピカ?」

 

「お前は故郷を離れてよかったの?」

 

アローラで毎日ツカサのマッサージを受けて、そこらのピカチュウじゃ敵わないくらいの美しさを得たピカチュウ♀に問いかけていた。

 

「ピカ!」

 

「いいんだ」

 

「ピカー……ピカチュウ!」

 

「ピカピ!」

 

「兄弟分のピカチュウ♂とアローラのピカチュウ♀。♀の方はマッサージ効果でツヤツヤモチモチで触ると最高の感触になってるんだよなー」

 

寝る時はピカチュウ×2とニンフィアが基本になっていて、ポケモン好きには堪らない光景だったりする。

 

 

それからカロスまでの数日、ピカチュート動画の再生数に怯えながら過ごしていた。

 

 

 

 




昨日の夜、石を無くし枕を涙で濡らしていた。

今日の昼、食を犠牲に石買う銭を追っていた。

明日の朝、ちゃちな呼符とちっぽけな課金でガチャをする。

FGOはDWが作った集金箱。

質を問わなきゃ何でも出る。

次回、『爆死』

明後日? そんな先のことは分からない。




色コケコ配信、みんなセブンとかで貰おうね。

前売り券は六枚買うか、初代とカロスの二枚だけにするかで悩むわ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。