ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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後日談的なお話達
それからのお話


十年ぶりの新チャンピオンだからか、派手なワクワクするバトルを魅せたからか、溜まりに溜まった賞金がツカサにごっそりと入っている。

 

どうしたものかと考えた結果、自宅の裏に広がる広大な森や山を買おうと所持している者を探し出して交渉していた。

 

「あー、しんどい……危ないから丈夫な柵を作って子供達が入れないようにするなら無料で譲渡するって言われるなんてなぁ」

 

ツカサは動きやすいジャージ姿で木槌や柵に使う素材が大量に置かれ、タオルで汗を拭っている。

 

「私も手伝おう」

 

「ありがとうAZ。端から端までやったら権利書やらを正式に渡してくれるっていうからがんばろう」

 

………

……

 

未だ続く取材を受けながらも毎日柵を作り、研究所に預けていたローブシンをオーキドに送ってもらいルカリオと共に手伝ってもらっている。

 

AZも含めた二人と二体で一週間で作り終え、無事に一帯の権利書を貰っていた。

 

同じ町外れで隣のセレナの両親はツカサが何をするのか毎日不思議そうに見ており、セレナは毎日お昼に慣れない手際で作ったサンドイッチと紅茶を入れた水筒を持っていく姿が見られる。

 

権利書をもらって数日が経過してツカサ宅の裏庭が森への入り口になり、町へ迷い込む野生のポケモンが出なくなって安全になっていた。

 

「作業中に襲ってきたストライクを捕まえて、ちょっとした広場を作るのに手伝ってもらってる」

 

森に入ってすぐの所を切り拓いて広場を作り、切った木と柵を作っていた時の余りを使って入り口付近にAZがログハウス風の家を作っている。

 

 

完成したログハウスに招かれツカサが必要だろうと用意したティーセットでお茶を楽しんでいた。

 

「ツカサがこれからどうしたいのか教えてもらいたい」

 

「オーキド博士に預けてるポケモンを引き取って、この山やら滝やら洞窟やらがあるこの土地で過ごしてもらおうかなって。後はどうしてもポケモンを手放さなければいけないって人から預かる形で引き取ったり、お世話したりね」

 

「なるほど。それならば私達にも手伝わせて欲しい」

 

「えっと、あまりお給料出せないけど……」

 

「給料はいらない。作物を育てる肥料や道具、種等を用意してもらえれば自給自足でどうとでもなる」

 

「うーん……わかったよ。チャンピオンとして動き始めたら見れない時もあるだろうし、AZに手伝ってもらうよ」

 

「ああ」

 

 

それから数週間である程度の範囲まで切り拓き、AZの要望した物を揃えてからオーキド博士に預けていた面々も送られてきて自然を楽しんでいた。

 

「キュレムは洞窟に引き篭もってたし、サーナイトは自宅で家事手伝ってくれてるし。大成功だな!」

 

「現実から目を逸らすな」

 

「……いや、だって」

 

赤と黒の鳥のような巨大なポケモンと緑と黒の巨大な蛇のようなポケモンが広場に鎮座しており、ゼルネアスが先程から頻りに脳内に話しかけまくって来ていた。

 

「私達はこれから怪我をしたポケモンがいないか、トレーナーから逃げ出してきたポケモンがいないかを確認しに行かなければならない」

 

「威圧感半端ねぇよ……ポケモンの村にいたミュウツーも今は野生のベビィポケモン達を見てもらってるからいないし、キュレムはゼクロムいないから本気出せないし」

仕方がないとゼルネアスの元へと向かって行った。

 

………

……

 

「話したらどっちもいいポケモンだった。イベルタルもゼルネアスみたいに森で過ごしたいからって言ってボールに入ってくれたし、ジガルデも二体がやらかさないように近くに居たいって言ってボールに入ってくれた。プニプニしたミニジガルデみたいなのを残して、森のどこかにある洞窟に引き篭もったけど」

 

「カロスの伝説を率いるか……」

 

「まぁ、俺が生きてる間は大人しくするでしょ」

 

「ツカサ!」

 

旅をしていた時よりお洒落をしているセレナがバスケットを手に、小川に架けられた橋の向こうから走ってくる姿が見える。

 

「嫁が来たぞ」

 

「違うってば。てかそれジーナさんの時も言ってたし、本人に聞こえるように言ったせいであれから気まずいんだぞ……」

 

「お前の子孫とポケモン達をフラエッテと共にここで見守る、それが私とフラエッテを再会させてくれたお前への恩返しだ」

 

「それはいいけど、誰彼構わず嫁って言うのはやめて」

 

 

そんなやり取りをしているとセレナが到着し、クールだった時の面影があまりない笑顔でバスケットを見せてきた。

 

「お待たせ。今日はこの前ツカサが好きって言ってたフルーツサンドよ」

 

「あれ美味しかったから嬉しいわ。俺、甘い物好きだから」

 

そう言いながらAZの居た場所を見たが、気を利かせたのか既に居なくなっていた。

 

 

広場にある木で作ったテーブルと椅子に座り仲良く談笑しながら食べていると、楽しげな様子に惹かれてきたポケモン達が集まり始めている。

 

「ふふ、可愛い」

 

「カロスじゃ見た事のないポケモンもかなりいるんだよ。プラターヌ博士がアローラのククイ博士に連絡してくれて、俺の図鑑を更新してくれてわかったんだけどね」

 

「今ツカサのカップに何かを垂らしてる木の実みたいな子は?」

 

「この子はアマカジ。ニンフィア達が拾ってきた木の実の中に紛れ込んでて、傷まないように優しく水で洗ってたらくすぐったそうに動き出して驚いたよ」

ズッシリして香りもよかったのでパイでも作ろうとしたらしい。

 

今はツカサのポケモンになっており、広場でのんびり暮らしている。

 

「かなり大きいから気づくと思うんだけど………」

 

「いや、新種かな?って。セレナが危ない目に遭うから、あそこにいるヌイコグマには触っちゃダメだよ。俺とこの森の仲間以外に触られると暴れて大変だから」

 

「ええ、しばらく前にツカサが空高く吹っ飛ばされるのを見ているから触らないわ。………町のみんながツカサに感謝していたわ。野生のポケモンが来なくなって荒らされたりしなくなったって」

 

「そいつはよかった」

 

旅をした面々が様々な方面のリーダーになっており、それを統括するツカサは野生の者達から見れば大ボスのようなものだった。

 

切り拓いた幾つかの広場で木の実や野菜を育てており、食べる物に困った野生のポケモン達はリーダーの誰かしらと共にツカサの元に来るのでワザワザ柵を乗り越えて町に行く者は居なくなっている。

 

稀に入り込もうとする子供達もいるが、ツカサに捕まり教育され子供の味方になったスリーパー達が暗示をかけて帰らせていたりと対策もバッチリだった。

 

 

「そういえばツカサの手持ちのポケモンって今は違うよね?」

 

「連れてきた奴ら含めて今は忙しいからね。あいつらが探してきた子達が今のパートナー」

 

カロスでは珍しいイワンコ、アマカジ、ドロバンコ、コソクムシ、ミミッキュの五体が今のツカサの仲間達だった。

 

野生のドロバンコがカロスに居てツカサのパートナーになっている事にククイは驚き、近い内にカロスへ来ると言っていたりもする。

 

 

「ツカサのポケモン第二世代ってところね」

 

「ここにいる過去の面々も合わされば第七世代かな。後一枠あるけど、そこは追々」

 

「ツカサらしいね………一年前はこんな風に過ごすなんて考えられなかったな」

 

「俺もだなぁ。どっかでドクターかブリーダーとして暮らすものだとばかり思ってたから、カロスでチャンピオンになるなんて思わなかったよ」

 

「属性盛り過ぎチャンピオンって掲示板で書かれてたわ」

 

「聞きたい事がありすぎて、何から聞けばいいのか分からないって言われまくったよ」

 

引き出しが多すぎて一つの雑誌の特集だけでは扱い切れず、様々な雑誌で被りのない事が書かれていて全て集めるのも一苦労な有様。

 

正式な交代間際にはカロス出版オンリーでカルネと一緒の対談も予定されており、発売前なのに予約が殺到して嬉しい悲鳴が上がっている。

 

「カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュでの話に加えてブリーダー、ドクターの話とか………全部見たけど自伝とか出さないの? 下手な小説とかより面白い話になりそうだけど」

 

「そんな時間ないし、そんな事をするくらいならポケモン達とこのやたら広い土地を探検するよ」

 

………

……

 

ある程度して切り拓くのをやめ、本格的に探検を始めていた。

 

探検が始まる前に各地方でのパートナー達がツカサの新パートナーの特訓に付き合い、進化出来る者は大体が進化をしていた。

 

「頼りになるバンバドロの背に乗って探検。アママイコとミミッキュは可愛いし、グソクムシャはかっこいい。ルガルガンは昼の姿って図鑑に載ったけど、夜に進化させたら夜の姿だったのかな」

 

「きゅきゅん!」

 

「みみっきゅ!」

 

アママイコとミミッキュもボールから出てバンバドロの背に乗っており、陽射しが苦手なミミッキュはツカサが作った黄色いレインコートを纏いよりピカチュウに似た姿になっていた。

 

 

「まだ仲間になる前、ミミッキュの中身を初めて見た時は心臓が止まるかと思ったなぁ……鋼の心臓と呼ばれてる俺じゃなかったら止まってた。中身がピンキーだったら即死だった」

 

「みみっきゅ!」

 

「きゅきゅん!」

 

「アママイコはまだ進化するらしいし、冒険中に進化するといいな」

 

上着の中に潜り込んでくるアママイコを優しく撫でながら呟いていた。

 

 

それから襲ってくる野生のポケモンを倒し、襲ってこない怪我をしている野生のポケモンの手当てをしたりしながら目的地である洞窟へ向かっている。

 

「なんか知らないが見た事のないポケモンがメレシーと一緒に洞窟から出てきたな……」

 

『もしもし、貴方は人間ですか?』

 

「しかもテレパシーで話しかけてくるとか予想外すぎる。そうだけど、君は?」

 

『私はディアンシー。世界中の地下に広がる国の姫です』

 

「やばい、何かスケールが大きくて困る」

 

『実は……』

 

自分は力不足で国のエネルギー源である聖なるダイヤが精製出来ない、だからゼルネアスに会って助言してもらいたいと直接脳内に話しかけていた。

 

「うーん……仕方ないか。なら一緒に行こう」

 

『はい、私と共に来る事を許します』

 

「おー、何か姫っぽいな。じゃ、行こう」

 

 

足並みを揃えるのにバンバドロ達をボールに戻し、会話をしながら今来た道を戻って行く。

 

「髭みたいなの付いてるメレシーとまだ若そうなメレシー二体はお供か」

 

『私は一人で平気だと言いました』

 

「あー……お前達も大変だな。あ、リベンジに来たか。顔色悪いが戦う気満々だな」

 

来る時に怪我をしない程度に戦ったリングマが戦う気満々で目の前に立ち塞がった。

 

 

「お姫様は後ろに下がった下がった。バンバドロ、力比べだ!」

 

「ブルル!」

 

「グゥ!」

 

投げられたボールから飛び出したバンバドロが着地すると、その重さで地震のように地が揺れリングマが少しよろめいている。

 

「リングマが持ってるのはどくどくだま? ……あいつ、まさか! バンバドロ、このままじゃ不味い! ヘビーボンバーで止めろ!」

 

ツカサの焦った声を聞いたバンバドロが走り出

し、その巨体をリングマにぶつける瞬間に相手の繰り出したからげんきとぶつかりあった。

 

ぶつかりあった技の威力が凄まじく、互いに吹き飛び木々を薙ぎ倒していく。

 

 

リングマは遠くでバンバドロが立ち上がるもすぐに倒れるのを見てニヤリと笑い、ダメージの大きさと猛毒の苦しさでこのまま死ぬんだなと達観して気を失った。

 

 

次に目を覚ました時には辺りが暗くなり、人間とポケモン達が楽しそうに焚き火をしながら話をしている姿があった。

 

「起きたか」

 

「グゥ」

 

「不思議そうにするだけで襲ってこないか……やっぱりお前は賢いな。お前を治療したのは俺のバンバドロと相討ちになった事への敬意、それとこのヒメグマに頼まれたからだよ」

 

ディアンシーやアママイコと遊んでいたヒメグマが駆け寄り、リングマを心配そうに見ていた。

 

「リングマ、もう行ってもいいぞ。俺達はもう寝るから」

 

ディアンシーがそれをテレパシーで伝えたのか、リングマは何度か振り返りながらもヒメグマと共に去っていった。

 

それを見送り終わるとツカサは手持ちの面々をボールに戻して鞄から小さな何かを取り出し、それについているボタンを押してから放ると一瞬で大きなテントが完成していた。

 

火の後始末をして、ディアンシーと三体のメレシーをテントに招いている。

 

「寝袋は一つしかなくて……毛布だけで悪いな」

 

『とても暖かいので構いません。人間は凄いのですね』

 

まだ話をしたいディアンシーはツカサの隣で横になり、メレシー達は固まって毛布に包まり既にスヤスヤと寝ていた。

 

「ディアンシー達も凄いと思うけどなぁ……とりあえず今日はもう寝よう」

 

『ツカサの仲間達は寒くはないのですか?』

 

「ボールの中は快適なんだってとあるポケモンが教えてくれたよ。更に居心地がいいのはこれらしいけど」

 

ゴージャスボールを鞄から取り出して見せ、欠伸をしながら戻すのは明日でいいかと適当に転がしていた。

 

『……』

 

「おやすみ」

 

こうして慌ただしい一日は終わった。

 

 




色ミミッキュ出たけど、ちょっと人理修復してた。

映画ディアンシーとは当然別個体で、映画本編は迷い込み系でやる予定。
サンムーンも本編は分からないけど、メインキャラとの関わりは作っていくつもり。

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