ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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本人視点がないあっさり四天王戦

あれから二ヶ月が経過し、ツカサは色々な経験を積みポケモンリーグへと戻って来ていた。

 

忘れていたジムリーダーとのツーショット写真も撮ってもらいに各ジムを回り直したり、様々なホテルに泊まってみたりと観光も楽しみながらの二ヶ月だったが。

 

新聞で見た限りだと三人の挑戦者は四天王の一人目で惨敗し、慢心して心折られ逃げるようにリーグから去って行ったらしい。

 

「緊張するなぁ……」

 

ツカサ以後辿り着いた者はいないらしく、現在はスタッフとツカサしかセンターの中には居ない。

 

「明日には四天王に挑戦、勝てればチャンピオンにも挑む事になる……そわそわしちゃう」

 

四天王戦まではネット配信限定で放映され、チャンピオン戦になると緊急特番扱いで地上波でも放映されるようになる。

 

ツカサはその事を二ヶ月前のジョーイさんに知らされておらず、色々本人的に黒歴史になりそうな事をやらかしそうである。

 

………

……

 

翌日、ジョーイさんに見送られ城のような建物に向かって行った。

 

中に入るとシンと静まり返っており、左右どちらからでもいけるように別れた通路が見える。

 

キョロキョロと緊張しながらも左側から進んでいくと扉があり、近づくと中に入れと言わんばかりに勝手に開いた。

 

「……」

 

中は高い天井にステンドグラスがあり、他にも像が飾られていたりと自身の場違い感にそわそわしている。

 

「あなたがツカサね。ようこそポケモンリーグへ」

 

「どうも」

 

「私は四天王の一人、炎のポケモン使いパキラ。ポケモンリーグには私を含めた四天王とチャンピオンがいます。チャンピオンに挑むのであれば四天王に勝利して強さを示さねばなりません。とはいえフレア団を食い止めた貴方なら楽勝でしょうけど」

 

「……?」

 

何故か明確な敵意に眉を顰めたが、パキラがそのまま立ち去り自身の担当する部屋に戻ったので確認出来なくなっている。

 

………

……

 

ネット配信が早速始まりツカサの動きが実況されていた。

 

「さて今回の挑戦者はどこまで耐えられるでしょうか。見た感じだけで言いますと、彼は前の三人の挑戦者より頼りなさそうに見えますが……特別ゲストの前々ホウエンチャンピオンのダイゴさん、如何でしょうか」

 

「どうも。ですが見た目だけで強さが決まる訳ではないですよ」

 

ダイゴは年の離れた友人であるツカサが挑むと知って二つ返事で受けたらしく、シロナにもこの話は言っていたが断った事をマサラタウンで後悔していた。

 

 

「ですがあんなのほほんと歩いている姿を見ると……」

 

画面の中のツカサはかなりリラックスしているように見え、視聴している者達からもダメだろこいつというコメントが多い。

 

「バトルを見れば明らかになりますよ。……彼が最初に選んだのはドラゴンタイプの四天王みたいですね」

 

「ドラゴンタイプの四天王、ドラセナさんですね。……ドラミドロを相手に挑戦者はリザードン。ドラミドロの攻撃が当たらない! そしてじしんの攻撃で……一撃!?」

 

ドラミドロの攻撃を悉く避け、空から地面に向けて拳を叩きつけて地震を引き起こして一撃で倒していた。

 

「あのリザードンはかなり育てられていますね。ポケモンがトレーナーを、トレーナーがポケモンを信頼しているから力を発揮出来る。どちらも自身が負けるなんてこれっぽっちも考えていないのがよくわかりますね」

 

「ドラセナが次に出したのは……オンバーン! 対して挑戦者はリザードンを戻し……ニンフィアです! 可愛さを振りまきながら現れました!」

 

「空に逃げるオンバーンに触覚を巻きつけて……引き摺りおろした!? 間髪入れずムーンフォースと容赦ない動きです」

 

オンバーンを超える力で引き摺りおろしたわけではなく、地面に叩きつけてからのムーンフォースでありドラセナもツカサもドン引きしていた。

 

「……はっ!? オンバーンがダウン、次はチルタリスです!」

 

「挑戦者は変えず……ああ、もうこれは挑戦者の勝ちでしょう。ニンフィアの素早い動きによる死角からのムーンフォースに耐え切れずダウン、最後のクリムガンも歯牙にもかけていません」

 

「挑戦者、四天王ドラセナを難なく突破しました……」

 

 

直後今すぐに資料集めろ!だの遠くで人が慌ただしく走り回る姿や音が聞こえ、ダイゴは事前に善意からツカサの情報を集めておくように言ったのが無駄になったなと内心で溜息を吐いていた。

 

沸点が分からないドラセナがニコニコしながらツカサと会話をし、握手をしてから審判をしていた者にツーショットで写真を撮ってもらっていた。

 

「ふふ、相変わらず……」

 

「さぁ、挑戦者は次に誰に挑むのでしょうか」

 

 

何故か連絡先まで教えてくれたらしく、戸惑いながらも礼をして部屋から出て行った。

 

初戦を快勝で終わらせて緊張が解かれたのか軽く身体を解し、そのまますぐに正面の開いている扉の奥へ向かって行く。

 

昇降機に乗り上に向かうと奥で男性が背を向けて佇んでいるのが見える。

 

一歩踏み出そうとすると部屋の仕掛けが作動し、あっという間に部屋が水で満たされ神秘的な光景に呆気に取られ見惚れていた。

 

「選んだ相手は水の四天王ズミ! 仕掛けで変わる部屋はやはり神秘的ですねー……」

 

「そうですね。……ブロスター、ギャラドス、スターミーと育てられた四天王のポケモン達を彼のラプラスは10まんボルトの一撃で倒しています」

 

「水の四天王には有効すぎる選出ですね。そして最後に来るのはズミのエースポケモン、ガメノデス!」

 

エースにはエースをとラプラスを戻してルカリオを出し、初の晴れ舞台だと気合いたっぷりに空気が痺れるような咆哮を上げていた。

 

「ッ! モニター越しとは思えない迫力。あのルカリオ……やはり速い」

 

ガメノデスの攻撃の悉くを最低限の動きで捌き、飛びかかってきた所に蹴りを入れて吹き飛ばしている。

 

体勢を整えたガメノデスに高速で接近し、静かで軽く見える一撃が放たれていた。

 

そんなダメージがなさそうなガメノデスにズミが指示を出すも反応がなく、そのまま白目を剥きゆっくり後ろに倒れダウンしている。

 

審判がツカサの勝利判定をし、二戦目の最後は静かに終わっていた。

 

 

「二人目の四天王を撃破! この強さ、これはもしかしてもしかするかもしれません!」

 

「ポケモンとの関係も良く、礼節も弁えているので四天王にも気に入られていますね。……料理の話ですっかり意気投合しているようです。カントーの郷土料理を教える代わりに、カロスの郷土料理を教えると互いにいい笑顔で約束してハグをしていますね」

 

同じように審判がツーショット写真を撮り、連絡先を交換して手を振って部屋から出て行った。

 

「何故かハグした瞬間からコメントが多く届いております。ズミ×挑戦者、挑戦者×ズミと謎のかけ算コメントも多数……」

 

「あはは……」

 

そんなやり取りがされているとはつゆ知らず、ツカサは三人目の四天王の元へと歩を進めている。

 

そしてまだツカサの情報が集まり切らず、皆が焦りながら作業を続けていた。

 

「えー……ダイゴさん、この快進撃はどこまで続くと思いますか?」

 

「このままチャンピオンまで駆け抜けるでしょうね。今の僕……私でも互角に戦えるかどうか」

キラリと光る石のハマった指輪をチラッと見ながら呟いている。

 

「え……あの歴代ホウエン最強と言われた」

 

「さぁ、彼が三人目の四天王の元に着きましたよ」

 

既に昇降機で上がっており、部屋に入ると同時に上から巨大な剣が二本落ちてきて地面に刺さっている。

 

それが回転すると壁が降り始め、三人目の四天王の元へと続く道が出来ていた。

 

 

「三人目の四天王は鋼の男、ガンピ!」

 

「彼はファイアローを出して……クレッフィの特性いたずらごころによって、まきびしが撒かれましたね。満足している所にファイアローのかえんほうしゃが決まりダウンしました」

 

「二体目のダイノーズを見てルカリオに交代……はどうだんが決まるも耐えています! しかし! ダイノーズ、ルカリオのしんそくを捉えられない!」

 

ダイノーズは反撃をしようにもはどうだんの一撃が重く狙いが定まらず、まきびしを気にせず死角から高速で迫ってきていたルカリオに蹴り飛ばされてまきびしの上を滑りながらダウンしていた。

 

「やはりあのルカリオは強いです。トレーナーを愛していなければ、あのまきびしの上を走ろうなんて考えを持ちませんよ」

 

「跳ねて蹴り倒せばいいから、と指示を出していましたがそれでは間に合わないと自ら走る事を決めたんでしょうね……要望に応える為にちょっとだけ跳ねたルカリオのキックが可愛いと思いました」

 

「撒かれているまきびしを考慮してファイアローに交代しました。ガンピはハッサムですがこれは流石に……やはりかえんほうしゃで一撃ですね」

 

ファイアローは縦横無尽に飛び回って狙いを定められないように動き、姿を見失ったハッサムの背後から蹴りバランスを崩した所にかえんほうしゃを決めていた。

 

 

「最後はガンピのエース、ギルガルド! 盾と剣が一体化したような見た目、挑戦者も目をキラキラさせて見ています!」

 

「男の子ですからね。自分もあのポケモンが欲しいという思いが伝わって来るのが分かりますよ。そしてファイアローと交代でリザードンが出されました」

 

「しかしあの綺麗な石のついた首飾り、リザードンにお洒落させているトレーナーは珍しいですね」

 

「そうですね」

 

いきなりフォルムが変わったギルガルドのせいなるつるぎがリザードンに襲いかかるも鍛えて頑強になった尻尾で弾き、隙だらけになった身体の面の部分を更に尻尾で叩いて地に叩きつけている。

 

そのまま真上に飛び上がると口を開き、倒れているギルガルドに向かって大の字をした炎を吐き出していた。

 

立ち上がり避けようとしていたが圧倒的な火力の炎に縫い付けられ、そのままギルガルドがダウンするまで轟々と燃え上がり続けていた。

 

 

「き、決まったぁぁぁ!! 三人目を難なく突破! ここ十年近くこのように実況をさせてもらっていますが、四人目に挑戦する者は初めてです!」

 

「彼のように力に溺れず、傲慢にならず、慢心をせず、ポケモン達を愛し愛される。これだけでも四天王といいバトルは出来るはずなんですよ。ただ勝てるかどうかは別として」

 

 

 

二人が真面目な話をしている間にツカサは連絡先とツーショットの写真を撮り、部屋から出て四人目の前にポケモン達の怪我を傷薬等で治療していた。

 

連戦で疲れている面々には甘い木の実や凄い虹色ポロックを与えて小腹を満たして疲れを癒し、皆に優しく感謝の言葉をかけてボールに戻している。

 

「……あんな幸せそうなポケモン達、見た事がないですね」

 

「いい事です。……最後の四天王を見て彼は少々険しい表情を見せていますね」

 

「炎の四天王パキラ、私の後輩でもあります。彼女も敵意のような物を向けているような……始まったバトルもカエンジシをゲッコウガのみずしゅりけんが襲いダウン!」

 

「二体目のファイアロー、三体目のコータスもみずしゅりけんを避け切れずダウンです。正に疾風怒濤と言った所ですね」

 

「パキラのエース、シャンデラが遂に登場! ……私は今鳥肌が立っています。彼の前の三人の挑戦者は様々なメディアが注目して経歴等を取り上げ話題にしておりました。ですが彼の事を記事にしたのはミアレ出版のみ。その彼がまさかここまで来るとは予想しておりませんでした」

 

「時間まで贅の限りを尽くしてリーグの施設で過ごした三人と二ヶ月間自分と仲間を鍛えていた彼。それを考えれば結局彼が一番強いって事になりますよ」

 

シャンデラが放つ炎をみずしゅりけんで相殺し、蒸気を煙幕代わりにゲッコウガは走り始めた。

 

そのまま死角から強襲し水を纏った脚でシャンデラを蹴り距離を取っている。

 

着地と同時にシャドーボールが襲いかかるもゲッコウガはそれを軽く避け、ツカサのつじぎり!という言葉に頷いて応えていた。

 

その場で水で出来た刀のような物を創り出し、しっかりとそれを握ると身を低くして駆けていく。

 

真っ直ぐに高速で迫って来るゲッコウガにシャドーボールを放ち続けるもそれが全て切り裂かれて無効化され、迎撃に失敗した段階で逃げられるはずもなくシャンデラはそのまま横一文字に斬り捨てられていた。

 

 

この一撃に実況している二人だけでなく、バトルをしている現場までも静まり返っている。

 

ゲッコウガが水で出来た刀を消し、シャンデラに背を向け目を閉じてツカサの元にゆっくり戻っていく。

 

シャンデラがゲッコウガの方を向きシャドーボールを放とうとしたが、ゆっくりと後ろに倒れていった。

 

「き……決まったぁぁぁぁぁぁ!! 遂に四天王を全員倒しチャンピオンに挑むトレーナーが現れました!!」

 

「おめでとうツカサ。まだ本気を出していない君ならチャンピオンにも勝てるはずだ」

 

「この続きは地上波でもお届けいたします!! ダイゴさんも今から別のスタジオに急ぎましょう!!」

 

「分かりました」

 

「ここまでの放送は私、ユリーシャと」

 

「ツワブキダイゴがお送りしました」

 

放送が一時的に終わり、カロス全土や他地方にまでカロスリーグのチャンピオンへの挑戦者が現れた事がテレビやネット等で速報として流れている。

 

………

……

 

 

「レッドさん、グリーンさん、ダイゴさん、シロナさんレベルを想定してたからよかった。後はチャンピオン……誰なんだろう」

 

直接会うまではと調べて来なかったらしく、ドキドキソワソワしながら大きな扉が開くのを待っていた。

 

 

「ツカサ様、申し訳ありません。チャンピオンの準備がまだ出来ていないので、二時間程お待ち頂きたいのですが……」

インカムを付けたリーグ職員が慌てて来て、申し訳なさそうに言っていた。

 

テレビ放映の準備にノーマークだったツカサのデータ収集、現チャンピオン以来のカロスリーグのチャンピオンとのバトルにお祭り騒ぎになっているカロスの者達が落ち着くの待ちと、二時間は待機させるつもりのようだった。

 

カロスの者達は現チャンピオンの魅せるバトルをイベントで見る事はあっても全力バトルは見た事はなく、今回のバトルを見る為にあらゆる企業や店が休みになりホール等に集まってモニターの前でワイワイ騒いでいる。

 

テレビのあるバーやカフェも満員になっており、今か今かと始まるのを待っていた。

 

 

 

「あの、それだと自分とこの子達のお昼ご飯が……」

 

「それはこちらですぐにご用意致します」

 

そう言って職員がインカムで指示を出すと、あっという間に広間の隅にテーブルや椅子が用意され始めている。

 

そのまま用意されていく料理がかなり豪華な物ばかりでツカサは引き、ポケモン達用の物も普段ツカサが何かの記念やご褒美として用意するような物ばかりが並んでいた。

 

「おかわりもございますので、足りなければ私にお申し付けください」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

仕方がないとそのまま席に着き、それから全員ボールから出して今回は特別だからと言い聞かせてゆっくり食べさせ始めた。

 

「美味しいなぁ……一般家庭だからこんな贅沢な料理を食べる機会なんてリーグに挑戦する時くらいしか食べられないや」

 

母親であるサキに叩き込まれていた完璧なテーブルマナーで食べていて、側に控えている職員も内心驚きながらも関心している。

 

ポケモン達も食べ散らかす事をせず、互いが互いを思い合って美味しい物を分け合っていたりと微笑ましい。

 

 

 

二時間待ちの間に特番が放送され始めており、ようやくツカサのデータが公開されていた。

 

『マサラタウン出身の17歳。幼馴染にはあの元カントーチャンピオンのレッド、グリーンの両名がいるそうですよ!』

 

『それよりもサイホーンレーサーとして一世を風靡して、今も尚伝説として君臨しているサイホーンレーサーサキの息子という所に注目するべきだと』

 

『名前は変えられていますけどドラマ化もしてますよね。あの紅い暴風の道を遮る者は悉くが吹き飛ばされる……引退レースでゴール地点で待っていた旦那様を吹き飛ばしていたのは今も語られていますね』

 

『あれは今でもハプニング物のTVで放映される程ですから。今でもオーキド研究所の敷地内に紅いサイホーンはいますよ』

 

『それは個人的に見に行ってみたいですねー』

 

 

 

レイナはすっかり元気になったピカチュウとソファに座って仲良くテレビを見ており、対面に座る彼女の両親は開いた口が塞がらなくなっていた。

 

「お兄ちゃんのお写真!」

 

「ピッカ! ピカチュ!」

 

「まさかあの先生が……」

 

「あ、あなた、やっぱりあの時のチョコレートの詰め合わせだけじゃダメじゃないかしら?」

 

こっそりツカサが与えていたでんきだまをネックレスのようにして首から下げるピカチュウを見て呟いていた。

 

「あ、ああ。改めて先生を家に招きたいが……もしチャンピオンに勝ってしまったら、忙しいから招くことは出来なくなるな」

 

「お兄ちゃんお家に来るの?」

 

「ピカチュ!?」

 

写真が消えて難しい話をするテレビよりも、大好きなお兄ちゃんが家に来てくれるような話をする両親の方に興味津々だった。

 

招く云々を耳聡く聞いていたピカチュウは急に身だしなみを整え始め、耳に付けてもらったリボンの位置も気にしている。

 

「お兄ちゃんはレイナがいい子にしてたら来てくれるよ」

 

「いい子にしてる!」

 

「ピッカ!」

 

………

……

 

『……あの、ツカサ青年は属性盛り過ぎじゃありませんか?』

 

『この二年間でポケモンブリーダー、ポケモンドクターの資格を取得。ブリーダーとしての評価も現地研修では文句無しの最優、オーキド研究所所属扱いだったようです』

 

『だから彼のポケモンはあんなに懐いていたんですね。……ポケモンドクターとしては現在も勉強中で、他のドクターと同じように既に内科は診る事が出来るようですね。ですが、彼は内科ではなく外科に……身近すぎる故に誰もがなろうとしない外科に進んでなったようです』

 

『これを聞いた各センターにトレーナー達は喉から手が出るくらい彼を欲しがるでしょうね。内科も出来る外科は貴重ですから、彼がチャンピオンに破れたとしてもカロスリーグは絶対に確保に走りますよ』

 

ほとんどの者が研究所に集まり見ていたマサラタウンの面々は阿鼻叫喚だった。

 

今まではただの遊び歩いている穀潰しだと思っていた存在がブリーダーとドクターの資格を取得するのに動いていた事を知り、それまで冷たくあしらっていた者達は頭を抱えている。

 

 

母であるサキは自宅で遊びに来ていたハルカ、ヒカリ、メイと見ていた。

 

「ドクターでブリーダー……はっ! ツカサは負けないだろうけど、もし負けちゃったらお姉さんの私が雇ってあげてもいいかも! お義母さん、安心してくださいね!」

 

「お義母様、その時はあたしが雇いますから大丈夫です!」

 

「私は結婚して主夫になってもらえればそれでいいかなぁ……」

 

「ふふ、引く手数多ね」

 

………

……

 

『これだけでもお腹いっぱいなのにまだまだ濃いですよー。まず現ホウエンチャンピオンのハルカ、現シンオウチャンピオンのヒカリとは従姉妹という事です。それぞれの旅に同行し、当時ホウエンを騒がせていたアクア団とマグマ団と戦いどちらも解散に追い込んだと』

 

『あの当時の事は今でも思い出せますね』

 

『気になる発言は後で聞くとして……シンオウではギンガ団を相手に大立ち回りをして野望を砕き解散に追い込んだとの事ですよ』

 

『その時点で迷惑な組織を三つ潰している事になりますね』

 

『現イッシュチャンピオンのメイとは母親同士が仲の良い先輩後輩で、一人旅が不安だからと彼を同行させたようですね。そしてかつて倒され新生していた新プラズマ団の野望を共に挫いたと。旅に出た当初にメイのおねだりで出演したポケウッドの作品で……リオルキッド、ルカリオキッド役を担当!?』

 

『あー、そっちに食いつきましたか』

 

『勝っても負けてもインタビューは私が行います! ええ、決して握手とサインが欲しいとかじゃありませんとも!』

 

カロスでの人気はツカサが思っているより凄く、今までの情報よりもこの情報に皆が食いつく程。

 

 

自宅でサナと両親と共にテレビを見ていたセレナはハッとしてBDBOXを取りに部屋まで走り、皆が待つリビングまで急いで戻っていた。

 

「これに付いてたリオルキッドとルカリオキッドのブロマイドに変身前のリオ君のブロマイド……それとツカサにお願いして撮らせてもらった写真」

ラミネート加工された三枚のブロマイドと無駄にいい笑顔なツカサの写真を並べている。

 

変身前の役は眼鏡でボサボサな髪、暗い表情と王道の正反対キャラだった。

 

 

「やっぱりこれツカっちゃんだ……」

 

「何で話してくれなかったのかしら……」

 

「それはありのままのツカサ君をみんなに見て欲しかったからだろうね」

 

「そうね、きっと先入観で見てもらいたくなかったのよ」

 

ただ恥ずかしいのとノリノリでヒーロー役をやったのが黒歴史なだけだったりする。

 

「サナはもうツカっちゃんとお友達だから平気です!」

 

「アタシも……あぁ、でもどうしよう。ツカサはリオ君なのよね……」

 

誰もがリオルキッドやルカリオキッド派な中、セレナは変身前の自分を曲げないリオに一目惚れしてそれが初恋だった。

 

 

「おや、そろそろチャンピオン戦が始まるのか切り替わるみたいだよ」

 

………

……

 

切り替わると帽子を取ったツカサが映り、準備が終わったと言われチャンピオンの待つ場所へと向かい始めていた。

 

気負ったり緊張した様子がなく、ワクワクした顔で早足になっているのが分かる。

 




面倒だったのでさっくり書いた。

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