翌朝、ポケモンセンターから出ると寒さから逃れるように連絡通路へと向かっていった。
「二十一番道路、デルニエ通り。ここを抜ければチャンピオンロードか……ワクワクが止まらないな」
しばらく歩いて行くと同じように八個のバッジを手にしたエリートトレーナー達が居り、挑む前に自信を付けようとしているのか挑んできている。
そんな甘い考えをしているエリートトレーナー達を返り討ちにしてどんどん進んで行く。
そして……
「エリートトレーナー達がしつこかったなぁま……でもやっと着いた。反対側は二十二番道路のデトルネ通りか。ハクダンに続いてるんだっけ」
「よく来た! このゲートはチャンピオンロードの玄関! ジムバッジを八個揃えたトレーナーだけが通れます! 貴方がお持ちのバッジは……八個揃えていますね! ではその腕前を試します!」
「おお、予想外のバトル。でもやります」
連戦で暖まったツカサ達は止まらず、ゲートにいたエリートトレーナーをあっさりと倒している。
「……素晴らしい! 貴方とポケモンの行く道に祝福がありますように!」
「あ、はい」
エリートトレーナーに見送られチャンピオンロードへ続く扉の前に立つと、八個のバッジに床が反応して光始め連動して目の前の扉が開いた。
更に開いた扉の先にどんなギミックなのか分からないが上り階段が出来上がっていく。
「何ていうか……凄いな」
階段を上ると念願のチャンピオンロードが広がり、少し先に見える洞窟へと歩を進めている。
中にもエリートトレーナー達が居り、挑んで来るからと倒し経験を積みながらながら進んでいく。
迷いながらも洞窟を抜けると近くに滝があり、凄い景色だとしばし見惚れて写真を撮って休憩を取っていた。
「洞窟内だったから分からなかったけど、かなりの高さまで登ってきてたんだな……そしてまた洞窟かー」
再び洞窟に入ってトレーナー達を蹴散らし、誤った道を進み滝の裏に行ってしまったりしている。
洞窟を抜けると遺跡のようなものがあり、眺めながら進んでいく。
「待って、ツカサ!」
「ん? ……ああ、セレナも来たんだな」
「やっと追いついた……あのね、あれからアタシ考えていたの。フラダリさんはフレア団だけを選んだ。ツカサとアタシ達はフレア団以外を選んだ。立場がそうさせたからであって、どちらが正しいとは言えないよね」
「そうだね。俺達の選択も間違っていたかもしれないし」
「うん。だからなんだけど……双方に言い分があったら歩み寄ればよかったのかなって。だから決めたの。ただただ勝つだけじゃなく、ツカサ達の想いに触れる……そんなポケモン勝負をするの!」
「俺に勝ちたいって言っていた時よりもいい笑顔。俺じゃなかったら思わず惚れちゃうレベル」
「ふふ、惚れてもいいのよ?」
「今はポケモンが恋人みたいなものだからなー……ニンフィアはガタガタしないの」
ポケモンが恋人発言が聞こえていたらしいニンフィアがボールの中でガタガタしていた。
それから互いにボールを手に距離を取り、気合いを入れてそれぞれ投げている。
「ニャオニクス、お願い!」
「ルカリオ、頼んだぞ!」
ルカリオは叶わない夢だと諦めていた、ツカサと一緒にリーグへ挑む事が実現間際で気合いが入っている。
「ルカリオ、はどうだんで様子を……」
「ニャオニクス、ねこだまし!」
波導を練ろうと集中を始めた所にニャオニクスがねこだましを決め、集中が途切れてはどうだんを放つ事が出来なくなっていた。
「今のは仕方ないよ。ルカリオ、インファイト!」
「ニャオニクス、なんとか避けて!」
セレナの指示を聞いて宙に浮き避けようとした所に強烈な右ストレートを叩き込み、そのまま殴り抜き吹き飛ばして気絶させている。
「くっ、あのルカリオやっぱり強い……お願い、ブリガロン!」
「ルカリオ、お疲れ様。リザードン、お前の相手だぞ!」
ニャオニクスをボールに戻したセレナがブリガロンの名を呼ぶのを聞き、リザードンの出番だとルカリオを戻していた。
特訓をしてトラウマを克服したのかブリガロンはリザードンを睨み、リザードンも同じように睨みつけている。
「リザードン、つばめがえし!」
「ブリガロン、のしかかり!」
高速飛行で狙ってくるリザードンにカウンターでのしかかろうとするも尻尾で横っ面を叩かれ、クラッと来た所に尻尾で宙に打ち上げられて鋭い爪で引き裂かれて地に落ちて行った。
「また一撃!? シャワーズ、お願い!」
「ならこっちはラプラスだ!」
ブリガロンの回収と共にシャワーズを繰り出し、それを見てツカサはリザードンを戻してラプラスを出していた。
「ラプラス、10まんボルト!」
「シャワーズ、だくりゅう!」
ラプラスの10まんボルトがシャワーズを襲うも耐え、シャワーズのだくりゅうがラプラスを呑み込んでいく。
「ふっ……ラプラス、もう一度10まんボルト」
「え? 嘘、無傷なの……?」
特性がちょすいのラプラスはだくりゅうの中から現れても笑顔のままで、ツカサの指示を聞いて即座に10まんボルトを放っていた。
避けられるはずもなくそのままシャワーズに直撃し、ビクン!と身体を逸らしそのまま意識を失っていた。
「シャワーズお疲れ様。お願い、チルタリス!」
「こちらから満を持して登場するのはニンフィア!」
ラプラスを素早く戻すと、セレナのチルタリスの入ったボールと同時にニンフィアの入ったボールを投げていた。
「フィーア♪」
「何か俺を見てめっちゃウインクしてくる……」
「あざとい……チルタリス、あんなあざとい可愛さを振り撒くニンフィアに負けちゃダメよ! マジカルシャイン!」
「とりあえず……ニンフィア、ムーンフォース!」
セレナの発言にイラっときたニンフィアは、チルタリスのマジカルシャインにムーンフォースで迎え撃っていた。
そのままあっさり突き抜けたムーンフォースがチルタリスを直撃し、ふらつき落ちそうになっている所に高速で接近して蹴りを叩き込んでいる。
それが急所に直撃して耐えきれなくなり、気を失い地に落ちて行った。
「ニンフィアの皮を被った何かなんじゃないかって」
「あんな動きをするニンフィアならそう思っても仕方ないわ。……これが本当に最後。アブソル、やるわよ!」
「ルカリオ、締めはお前だ!」
ニンフィアとチルタリスがボールに戻され、アブソルとルカリオが場に出されている。
ルカリオはメガシンカをするのを今か今かと待ち侘び、アブソルもそれを正面から迎え撃ってみせようとしていた。
「ルカリオ、メガシンカ! そしてしんそくだ!」
「アブソル、でんこうせっかよ!」
メガルカリオに変化すると地を駆け、同じように駆けてくるアブソルと幾度も攻防を繰り返している。
そのまま距離を取ると互いに構え直し、トレーナーからの指示を待っていた。
「これで決めるぞ。インファイト!」
「アブソル、つじぎり!」
アブソルが縦横無尽に駆けて鋭い爪で引き裂こうとしてくるのを捨て身の構えで待ち構えている。
幾度も引き裂かれるもどれも浅い攻撃だと耐え、本命の一撃を叩き込んでくる瞬間を待っていた。
そして致命打を与える為に速度を上げ突っ込んでくるアブソルに……
「因果!ってか?」
目を見開いたメガルカリオはアブソルの力を利用した強烈なカウンターを飛びかかってきた腹に叩き込み、それを受けたアブソル身体をくの字に曲げて吹き飛び地面を幾度かバウンドしている。
そのまま遺跡の壁にぶち当たるも止まらず、壁を突き抜け岩にぶつかってようやく止まっていた。
「うわ、凄……何ちゃって零式防衛術の練習をしたのが間違いだったのかもしれない」
「アタシのアブソルの力を利用した一撃……とんでもない破壊力ね。お疲れ様、すぐにポケモンセンターに連れて行ってあげるからね」
セレナは完全に意識を失っているアブソルの頭を撫でてボールに戻しながら呟いている。
「何か迎撃をしただけなのに、かなり悪者っぽい気が……」
「ふぅ、また勝てなかったわね。でもツカサと戦って成長出来たからここまで強くなれた……いえ、まだ終わりじゃないわね!」
「そうだよ。頭打ちだとばかり思ってた俺だって成長してるんだし、セレナだってまだまだ伸びるよ」
会う度に強くなっていくセレナに思ったままの事を言い、追い抜かれないよう精進しようと考えていた。
「ふふ。どこがとは言えないけれど、ツカサとアタシは似てる。だから負けたくなかったの」
「それは嬉しいような、セレナに悪いような……」
「似てるって事は同じ所がいっぱいあるって事でもあるよね? 友達として、異性としても嬉しい……」
「ん?」
強い男が好きだったのかフラグが積み重なったらしく、少し頬を赤らめながらチラチラ見て髪を弄っている姿が可愛らしい。
「だからアタシ、改めてツカサをライバルにする!! ライバルはどこまでも強いポケモントレーナーであってほしいの」
「お、おう」
「もちろんアタシ達も今よりずっと強くなる。まずはツカサと同じ絆の強さも使いこなすから!」
「がんばって。俺と同じ土俵に立てればセレナは更に強くなれるよ」
「それに使いこなせればツカサとお揃いだもの……そ、それじゃあポケモンリーグの挑戦がんばってね! ツカサなら絶対大丈夫よ!」
もう完全にデレたセレナが手を振り、そのまま走り去っていった。
「うーん、あんなにクールだったセレナがデレて可愛い……」
………
……
…
セレナを見送ってから先に進むとまた洞窟があり、もう少しで到着だろうと足を速めた。
予想通りすぐに洞窟は抜けられ、ここまで辿り着いた数人のトレーナーを倒しながら先へと進んで行く。
すると目的地に向かう為の水路があり、ラプラスの背に乗ってそこに突入している。
しばらく進んだ水路の先には足場があり、階段とベテラントレーナーが何人か待ち構えている姿が見えた。
「あの人達が最後の試練的な事か……まぁ、がんばろう」
ここまでの経験を活かしたバトルでベテラントレーナー達を蹴散らし、そのまま一気に階段を駆け上がっていった。
外に出るとすぐ近くにやたら豪華な造りのポケモンセンターがあり、遠くには城のような建物が見えている。
とりあえずと一度ポケモンセンターの中に入っている。
「ポケモンリーグ到達おめでとうございます。疲れを癒しますのでこちらにモンスターボールをお願いします」
「あ、はい」
ガラガラ故か入ってすぐにクールなジョーイさんに声をかけられ、受付に置かれているボールホルダーにモンスターボールを置くよう言われていた。
「それではポケモンリーグの説明に移らせていただきます。まず挑戦の申請をしていただきます。その申請が通るのに一週間、そして挑戦者には一週間の猶予が与えられます」
「それは一人につき二週間かかるって事ですか?」
「はい。それと貴方の前に三人の挑戦者がいますので、貴方が挑むのは二ヶ月後になります」
「二ヶ月……」
「はい。当施設にお泊りになってお待ちしますか? 挑戦者の方々はそうなさっておりますが」
「今日は泊まりますけど、挑戦三日前から泊まるのはありですか? 時間を有効に使いたいので」
ツカサはのんびり待つのではなく、二ヶ月を存分に使いゲッコウガの変化を完全に扱えるようになろうとしていた。
「構いませんよ。四人目の挑戦者が来た事で以後の挑戦者の受付は停止しますので、今使われていない一番良い部屋を予約しておきますね」
「ありがとうございます」
「これで説明は終わりになります。……姉さんや妹達が言ってた通りの本物だぁ」
キリッとしてクールだったジョーイさんの雰囲気が一転し、乙女な表情で瞳を潤ませながら受付から出て来た。
「え?」
「今日のお部屋は私の部屋の隣ね。それで夜に交代になったら遊びに行くから」
「あの……何か雰囲気変わってませんか?」
「あれはお仕事だから。でも本当に二ヶ月泊まらないの? お姉さんがお世話してもいいんだよ?」
「え? いや、それは魅力的ですけど……ちょっと鍛えたくて」
絆が結ばれ通じ合っているのに未だメガシンカの出来ないリザードン、キズナゲッコウガと内心名付けたゲッコウガの変化、その他仲間達の強化をして万全の状態で挑みたいらしい。
「残念……」
「あはは……」