ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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中途半端にレンリタウンで覚醒する者

そらをとぶでヒャッコクシティに向かい、ポケモンセンターで部屋を借りているとプラターヌからホロメールが着ていた。

 

部屋に入って確認すると、直接話をしたいからレンリタウンで待っているとの事だった。

 

 

「ルカリオはしばらくおやすみにして、明日は朝一でユキノオーと交代……のはずだったけど、オーキド博士がキュレム用にユキノオーを預かっていたいとか言い出したからルカリオ続投。ついでにゼルネアスをフレア団残党の手に渡らないよう、オーキド博士に預けたし……めっちゃ迷惑そうな顔されたけど」

キュレムにダークライだけでも大変なのに、カロスの伝説であるゼルネアスまで預けられたオーキド博士の心中を察してしまう。

 

「はぁ、やっとフレア団との戦いが終わった。最終兵器の件はニュースになってるなぁ……連絡済みのオーキド博士以外のみんなが心配してメール送ってくれてるけど、一番に心配してメールくれたのがグリーンさんってどうなんだろう。『被害の中心地に居たけど僕は元気です』ってみんなに送ったし、もう電池ないから電源落として充電」

 

そのまま夕飯を食べ、風呂に入り、朝までぐっすり眠って英気を養っていた。

 

………

……

 

翌朝充電が終わったスマホを手に取ると着信やらメールやらがかなりの数になっており、確認する前に送ったり電話をしてきた者達にしっかりと無事である事をメールしたり電話したりしている。

 

「どうにも間に合わないからセレナ達に謝罪のメールを送ったっていう。ハルカ達は何でマサラタウンにいたんだろう……チャンピオン三人がいる家とかヤバイだろ」

 

母親に電話をすると部屋に常設されているモニター付の電話から掛け直すように言われ、仕方なくしてみるとまさかの三人に母親というツカサが引く面々が待っていたらしい。

 

「しかも母さん、三人からお義母様呼びされて満更でもない顔してたし……娘のが欲しかったとか息子の前で言うとかなんなの? メイちゃんがオモチャの指輪を左手の薬指に付けて、頬を赤らめながらの俺からプロポーズされました発言で即切ったからどうなってるか分からなくて怖い……それまでは俺の無事にホッとした顔をしてたハルカとヒカリの顔が無表情に変わっていくのを見てカントーには帰らない事を決めた」

尚、遠くない内にカロスに乗り込んでくる模様。

 

 

それからすぐにセレナ達から先に行くというホロメールが来たのを確認し、昼御飯を食べてからポケモンセンターを後にした。

 

「ここが十八番道路、エトロワ・バレ通りか。地図で確認すると炭鉱で使ってたトロッコとかあるらしいなー」

 

「石の道 鋼の道♪ 足音響く素敵な道♪」

 

「この通りの歌かな?」

 

 

そんなおじさんの歌を背に歩いていると、草むらからアイアントが飛び出してきたりしている。

途中興味を惹かれて終の洞窟と言われる、元炭鉱の中に入っていった。

 

「天井からアリアドスが落ちてきた時は死ぬかと思った……シャドーボールは手に入ったけど、一番奥に行くにはチャンピオンくらい強くないとダメって言われちゃったなー」

 

やみのいし等も拾っており、そこそこ得る物が多い探検だったと終の洞窟を出ながら呟いている。

 

 

「きゃー! 遅刻遅刻ー! って、うわぁ! ぶつかる、ぶつかるー!」

 

「ちょっ、おま!」

 

「いたた……あっ! トレーナーさん! 目と目があったらバトルだよ!」

 

「この子マイペースすぎんだろ……」

慌てて走ってきたミニスカートの少女と漫画的にぶつかり、相手の勢いが強すぎてそのまま押し倒され至近距離で目と目があっていた。

 

 

仕方がないとツカサはバトルを了承したが調子のいいゲッコウガによりワンサイドゲームで終わり、一方的に負けたのに少女は嬉しそうな笑顔で握手を求めてきていた。

 

「えへー。……あれ? あれれ? そういえばここどこ?」

 

「ここはエトロワ・バレ通りだよ」

 

「あれー? おかしいなぁ。トレーナーズスクールに行くはずが道に迷っちゃったのかなぁ?」

 

「ハクダンに行くのにどうやったらここに来れるんだ……」

 

仕方がないとサラと名乗った少女に許可を貰いお姫様抱っこをし、絶対に暴れない離れない事を約束させてからファイアローのそらをとぶでハクダンシティまで連れて行ってあげている。

 

 

「お兄さん、ありがとー」

 

「どういたしまして。てかマジで誘拐とか疑われてるんじゃないかあの子。歩いて十分かからないスクールに三日前から行ってないみたいだし、お風呂やご飯は世話を焼いてくれたひとがいたらしいけど……とりあえずまた戻らないと」

 

トレーナーズスクールの前でニコニコしながら手を振るサラと別れ、ハクダンシティに向かう途中にここ数日の話を聞いていたのを思い出していた。

どうか自分が誘拐犯だと思われませんようにと祈り、同時にフレア団の仕業になっているかもしれないという淡い希望を抱いている。

 

 

それからすぐに再びヒャッコクシティへと戻り野宿覚悟で十八番道路へと向かい、終の洞窟手前で日が暮れてしまいやむなく邪魔にならない場所にテントを設営した。

 

「ここをキャンプ地とする!」

 

「フィア!」

 

「ボールから出して中に入れそうなのはニンフィアとルカリオ、ゲッコウガかな……ファイアローはボールの中のが楽そうだし」

 

 

皆をボールから出して夕飯を楽しんでいると騒ぎに惹かれたのか、サンドパンやコータス等が寄って来ている。

ツカサは襲ってこないならいいかと考え、ポケモンフードを少し分け与えていた。

 

「お前達、俺みたいなトレーナーばかりじゃないから気をつけるんだぞ」

 

「フィア、フィーア!」

 

「通訳してくれてるのかな?」

 

「フィア!」

 

ニンフィアはそうだと言わんばかりに頷き、引き続き野生のサンドパン達に通訳している。

 

ニンフィアがテントの中に入っていくとモンスターボールを二つ触覚で掴んで出てきた。

 

「ニンフィアは何をする気なんだ?」

 

「フィア」

 

スッとサンドパンとコータスの前にそれを置くと二体は顔を見合わせて頷き、自らボールに入っていった。

 

「……ゲットなのかこれ? オーキド博士も普通のやつなら嬉しいだろうけど」

 

「フィア」

 

「他の野生の面々は満腹になって帰ったみたいだし、後片付けをしたら寝ようか」

 

 

片付けを終えてルカリオとニンフィア以外をボールに戻し、二体を連れてテントの中に入っていった。

 

「寝袋も久々だ。ルカリオは入り口付近でいいの?」

 

「クォン!」

 

「うん、やっぱり頼りになるな。……ニンフィアは当然のように寝袋の隙間から中に入って来てるから困る」

 

「……」

 

「もう寝てるとか。朝から疲れたし、俺もさっさと寝よう……ルカリオもおやすみ」

 

ランタンの灯りを消し、ルカリオに挨拶をしてからすぐに夢の世界へと旅立った。

 

………

……

 

翌朝早くに朝食を済ませ、レンリタウンへ急いで向かい始めた。

 

「あー、やっと着いた……『レンリタウン 異なり連なる町』か」

 

「やあ、ツカサ」

 

「プラターヌ博士、お待たせしてしまったみたいで」

 

「いや、別に構わないよ。……フラダリさんの事、君に謝らなければならない。本当に申し訳なかった……そしてありがとう! フレア団を止めた事で君はフラダリさんも救ったんだ。彼が美しい世界を望んでいたのは知っていた……だけど真の進路を追い求めるよう意見をぶつけあわなかったボクの責任でもあるんだ」

 

「そうだったんですか」

 

「さてとツカサ。君達が旅で得た全てをボクにぶつけるんだ!」

 

「なら、行きますよ」

 

 

 

邪魔にならないように空き地に移動し、プラターヌとツカサは互いに距離を取ってボールを投げていた。

 

「まずはフシギバナだ!」

 

「ちょっと相性が悪いけど……ゲッコウガ!」

 

「ツカサ、最近ゲッコウガには不思議な力があるんじゃないかと言われているのは知っているかい?」

 

「それは初耳ですが……ゲッコウガ、じんつうりき!」

 

「おっとフシギバナ、はなふぶき!」

 

お喋りをしながらも二人はそれぞれのポケモンに指示を出していた。

 

フシギバナが放ったはなふぶきをツカサと息を合わせたゲッコウガは軽く避け、じんつうりきでフシギバナの意識を一撃で刈り取っていた。

 

 

「相性の差を物ともせず一撃とは……それに彼のゲッコウガ、一瞬だけ姿が変わったように見えたな。おっと、お疲れフシギバナ。カメックス、君の番だ」

 

「ゲッコウガ、お疲れ様。ラプラス、出番だよ」

 

「ラプラス! 珍しいポケモンだね!」

 

「託されたんですよ。ラプラス、10まんボルト!」

 

「えっ、ちょっとそれはありなのかい!? カメックス、避けるんだ!」

 

ラプラスはツカサの指示を嬉しそうに聞き、避けようとしたカメックスに牽制の10まんボルトを放った。

 

それを避け反撃しようとしたカメックスがラプラスを見ると、本命の最大火力の10まんボルトが直撃しその場に倒れ伏した。

 

 

「カメックスまで一撃だなんて……リザードン、君が最後だ!」

 

「ゲッコウガ、またお願いするよ!」

 

リザードンを相手にゲッコウガを出すと妙な感覚がツカサを襲い、ゲッコウガもその感覚が襲ったのか振り向きツカサをジッと見ている。

 

「ツカサ、どうしたんだい?」

 

「あ、いえ。行こう、ゲッコウガ。この数ヶ月で結んだ俺達の絆を見せて……やろ、う?」

 

「!」

 

触れていないはずのツカサのメガリングから激しい光が放たれ、それが収まるとゲッコウガは足元から突如噴き出した水柱に呑まれていた。

 

 

「まさか、メガストーンもなしにメガシンカ!?」

 

「これは……メガゲッコウガ? いや、違うか」

 

「!」

 

ツカサとゲッコウガの重なり合う想いが共鳴し、別の世界でサトシゲッコウガと呼ばれていた姿へと変化を遂げていた。

 

ゲッコウガと感覚を共有している事が伝わり、かなり驚いたがこれなら更に的確な指示が出せるとリザードンに目を向けている。

 

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「!」

 

「速い! リザードン、かえんほうしゃ!」

 

空を飛び回りかえんほうしゃで逃げ道を塞ごうとしているが悉く避けられ、更に速さを上げたゲッコウガの姿を見失ってしまった。

 

直後リザードンの背中に衝撃が走り地面に叩き落とされ何とか空を見上げると、そこには太陽を背にゲッコウガが幾つものみずしゅりけんを投げつけている姿があった。

 

幾つものみずしゅりけんがリザードンを磔にし、トドメの一撃に巨大なみずしゅりけんが放たれそのままリザードンの意識を刈り取っている。

 

 

「凄いじゃないか! お互いが思いやって培った温かな結びつき、それが君達の強さ……絆だよ!!」

 

「うっ……こ、これ疲れが半端ない……」

 

リザードンが倒れゲッコウガの姿が元に戻ると一気に反動が来たのかその場に座り込み、同じように疲れ果てているゲッコウガをボールに戻している。

 

「ツカサにはポケモンへの愛と信頼があるね!」

 

「それはありますよ。俺、ポケモンが大好きですから」

 

「この町にはボクの宝物が隠してあるんだ。よければ探してごらん! それではボクは失礼するよ!」

 

「あ、はい」

 

「フレア団と戦いカロスを守ってくれた君達の為にあれやこれや色々準備があるからね!」

 

「あれやこれや……」

 

「それと出来るならさっきのゲッコウガについては色々調べたいから、ツカサの平気な時に研究所に来て欲しい。それじゃあ、またね!」

 

プラターヌ博士はそう言うと慌ただしく去って行き、ツカサはまだ立つ事が出来ず座り込んだままその背中を見送っていた。

 




サトシゲッコウガ化しましたが、ここでの呼称はキズナゲッコウガかゲッコウガキズナフォルムかなー。

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