ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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幼女とお別れしてヒャッコクシティまで

あれから十日が経過し、マーシュ達やレイナの家族が毎日のようにポケモンセンターを訪れるようになっていた。

 

「みんなは併設された施設でのびのび過ごさせてるから、今はガブリアスとヌメルゴンを連れてクノエの林道を散歩する毎日」

 

「ガブ」

 

「ヌメルゴ〜ン」

 

大体の時間はクノエの林道で二体を育てながら散歩をしており、今はどちらもボールから出して歩いていた。

 

たったの七日で最終進化を遂げている事に、まだ二体がフカマルとヌメラだった時からセンターに滞在していたトレーナー達は驚いている。

 

 

「三日前にヌメルゴンに進化した日、ヌメヌメにされたのを今でも覚えてるわ。あれはヌメイラになって目が見えなくなった時の反動だったのかな」

 

「ヌメルゴン!」

 

「雨が降ってきたと思ったら進化が始まったんだよな。……今日はまだ抱きついちゃダメだからねー。散歩終わったらポケモンセンターで重傷だったポケモン達の経過を診ないといけないから」

 

「ヌメ……」

ハグをしようとした瞬間にそう言われてシュンとしていた。

 

「マーシュさん、めっちゃ嬉しそうにお前達見て笑ってたな。フェアリータイプが抜群だからなんだろうけど……」

 

 

それからしばらく散歩をしてポケモンセンターに戻り、ボールを預けてから白衣を着て助手になっている新人のタブンネと共に入院中のポケモンを診て回っている。

 

「ピカチュウはもうすっかり良くなったな」

 

「ピッカ、ピカチュウ!」

 

「だけどまだバトルはダメだからなー。今無理したらレイナちゃんがまた泣いちゃうし」

 

「ピ、ピカ!」

 

「タブンネ?」

 

「退院しても一ヶ月は大人しくして、一緒に遊ぶくらいにしとこうな」

 

「ピッカ!」

 

………

……

 

それから四日が経ち、新しいドクターに二週間の間にしていた事の引き継ぎを済ませていた。

 

部屋に戻り白衣やスタッフ証等をまとめ、付いてきていたタブンネに渡している。

 

荷物を持ち住み慣れた部屋から出て、併設施設にいた仲間達をボールに戻して出口に向かっていた。

 

「ガブリアスとヌメルゴンは預けたし……お別れは昨日の内に済ませたし、さっさと行こう」

忘れ物はないか確認してボールをホルダーにセットしていた。

 

仲良くなったスタッフ達に片手を上げる軽い挨拶ですれ違っていき、新任のドクターも他のスタッフ達のようにポケモンセンターから出ていくツカサの背に向かって頭を下げて見送っている。

 

 

 

外は珍しく晴れており、伸びをしながら十五番道路への連絡通路に足を向けていた。

 

「ピッカ! ピカチュ! ……ピカピ!」

 

「おお、元気に走り回ってるな。レイナちゃんには出来ないからって俺の身体を登って肩に乗るとは……傷痕が何個もハートマークみたいになってるのはよかったのかもしれないな。ピカチュウも女の子だし」

 

少し離れた広場で遊んでいたピカチュウがツカサの匂いに気がついて走り寄り、そのまま身体を登って肩に乗りほっぺをすりすりと擦り付けている。

 

 

「先生、もう出発ですか?」

 

「お兄ちゃん……」

 

「はい、長居してしまいましたから。レイナちゃん、またいつか会おうね」

 

「……お兄ちゃーん!」

 

しゃがんで視線を合わせて言うツカサに我慢ができず、抱きつくとわんわん泣き出してしまった。

 

そんなちょっと感動的な別れをしているが、勝手にボールから出たニンフィアは肩に乗りほっぺすりすりをするピカチュウを見て睨み付けている。

 

「フィア! フィー……ア!」

 

「ピッカ! ピカ……ピカチュウ!」

 

触覚を巻き付けて肩から引き摺り下ろし、言い争いを始めていた。

 

 

「……お前達は何をやってるんだよ」

 

「……ピカちゃん、ケンカはめっ!」

 

 

そんなグダグダな別れをしてから連絡通路を抜け、ブラン通りへと足を踏み入れていた。

 

ポケモンレンジャーが落ち葉の下に潜んでおり、驚きながらも戦い倒しながら進んでいく。

 

他にもフラダリからのホロメールを受信したりしながら先を目指している。

 

「ミアレからあぶれた若者がたむろしているから問題になってるって……マップに書かれるとか相当な事だぞこれ。さっきのフラダリさんのメールはちょっと選民思想的なのが……」

 

 

道中の荒れ果てホテルに立ち寄ってトレーナーと戦いながら見て回り、連絡通路をスルーして進んでみるといつのまにか十六番道路であるトリスト通りに出ていた。

 

少し気になりミアレに繋がっているのかを確認するのに戻らず進み始めている。

 

「結構距離がありそうだな……この先は今度行く事にして今は次の町に進もう」

思っていたより距離があるのに気がつき、再びフウジョタウンへと向かい始めた。

 

 

 

そのまま時間をかけてフウジョタウンに向かうと、プラターヌとデクシオが後から来ていたらしく話しかけられていた。

 

「雪が降って……うん?」

 

「やー、ツカサ。ボクも若い頃は色んな地方を巡り様々なポケモンと出会いつつ、土地ごとの味わいに気づいて食べ歩きも楽しんじゃってね。結果カロス各地のカフェに詳しくなったりしてさ」

 

「博士……」

 

「もう……デクシオ君、話は繋がっているんだよ。フラダリさんから伝説のポケモンの事を聞いているかい?」

 

「ええ、一応。確か与える者、奪う者が伝説だとメールで」

 

「カロスの伝説ポケモン、名前は……ゼルネアス!! かのポケモンを見た者はあまりのパワーに圧倒されこう伝えるのみだった。まるでXという文字のようなポケモン……と。なんでもエネルギーを操れるポケモンらしいね。生命エネルギーを与え他のポケモンや植物に活力をみなぎらせるってさ」

 

「へぇ……」

 

「それほどの凄いポケモンが今はどこにいるのでしょうか?」

 

「カロスの伝説ポケモンは活動エネルギーがなくなると人知れず眠るらしくて、居場所のヒントもわかってないね」

 

「ツカサ君達が見つけたら凄いですよね。ぼくも伝説のポケモンの事を調べてみようかな」

 

「 君達が見つけたら痛快だねぇ。それじゃあ、ボク達はこれで!」

そう話すと二人はそのまま歩き去っていった。

 

「あ、はーい……」

 

 

直後にトロバが来て博士を見なかったか聞かれ、もう行ったと告げるとガッカリしていた。

 

そのまま別れると一度休憩にポケモンセンターに向かい、おやつを皆で食べると町の散策に戻っている。

 

「『ここはフウジョタウン 綿毛舞い飛ぶ風の町』かー」

 

「いらっしゃいませ……モーモーミルク、一本五百円。旅のお供にいかが……?」

 

「モーモーミルク……ん?」

 

「あ、あの……?」

 

ツカサの目線はモーモーミルクを売っているオカルトマニアの豊満なバストに釘付けになり、買うつもりがなかったモーモーミルクを購入する事を決めていた。

 

 

「一ダースください」

 

「ありがとうございます……モーモーミルク十二本です。また今度買ってください……」

売れたからか嬉しそうに十二本用意して渡し、上目遣いでお釣りを渡すのに手を握りながらそう告げていた。

 

「はい!」

ツカサは年上からのスキンシップには弱いのである。

 

 

 

町の中にある大きな風車を見て、他の人達から聞いたフロストケイブへと向かっていった。

 

吹雪く中を歩いていくとエリートトレーナーとマンムーが居り、豪雪地帯の十七番道路を行くにはそのマンムーの力が必要だという事がわかった。

 

だがマンムーはフロストケイブを気にしており、その場から離れようとはせず仕方がないと様子を見に行く事にしていた。

 

 

「うぅ、ダウン買っておけばよかった……滑るー」

寒さに震えながら氷の上を滑って進んでいる。

 

「そこの貴方! 私と一緒にビバークしてポケモンの体力を回復させましょ!」

 

「……はい!」

同年代くらいのエリートトレーナーの女性に声をかけられ、嬉々として共にビバークをする事にしていた。

 

 

そして楽しい時間を過ごし、惜しみながらも別れを告げて先へと進んでいく。

 

「フレア団……?」

 

「ツカサさん、どうしたんですか?」

 

「トロバ、あれ」

 

 

シッと言いながら先を指差すとフレア団がユキノオーの前で何かをしている姿が見える。

 

ユキノオーが何かされる度に降ってくる雪の強さが増し、それに機嫌をよくしたフレア団の面々が捕まえようとボールの準備を始めていた。

 

「……不味い! あいつら!」

 

「行きましょう!」

 

 

トロバと共に飛び出し、三人のフレア団に大声で呼び掛けていた。

 

「おい!」

 

「モンスターボール強盗! ここで何してるの!?」

トロバもツカサがいる安心感からか勇敢に立ち向かっている。

 

「! ……なにって?」

 

「ポケモンを捕まえるの! 特にこのユキノオー、強くてエネルギーを秘めてるわ」

 

「エネルギー?」

 

「あのね、ぼうや。お金もポケモンもエネルギーもたくさん持っている人が勝つの。持ってない人は何もせずに欲しい欲しい言ってるだけなの」

 

 

「……どうしてフレア団はポケモンやエネルギー、それに金を集めてるんだ?」

 

「言い換えればどうしてフレア団は独占したがるんですか?」

 

「もちろんあたし達フレア団だけが生き残る為。だってどうでもいい人を助ける必要ないでしょ。……質問好きって嫌いじゃないけど、いつまでも相手出来ないのよね」

 

 

「ツカサさん、フレア団だけ生き残るって……この人達無茶苦茶です……」

 

「だなぁ……とりあえず向こうはやる気みたいだし。一人ずつ片付けよう」

 

「はい!」

 

そんな話をして振り向くとダサいフレア団のポーズを取り、ツカサとトロバに下っ端が襲いかかってきた。

 

 

そのままツカサはさっさと片付けたがトロバはまだ戦っており、今のうちに控えている科学者を倒そうと目を向けた。

 

すると科学者はユキノオーにボールを投げようとしており、ツカサは咄嗟に雪玉を作りボールを持った手にぶち当てて落とし、そのままユキノオーの前に立って自分の背にかばいながら睨み付けている。

 

「……あなた、強いのね。どれだけエネルギー秘めてるの?」

そう言いながらボールを投げヘルガーを出してきた。

 

「ニンフィア、容赦せずにムーンフォース!」

 

ヘルガーは動こうとしたがニンフィアのムーンフォースが直撃して吹き飛び、雪に埋もれてそのままダウンしている。

 

 

「ッ! 強いではなく強すぎる! あなたはイレギュラーな存在?」

 

「知らないよ、そんなの。よくやった、ニンフィア」

 

「でも負けたらつまんないよ! もう帰る!」

 

トロバも何とか勝っていたらしく、下手に抵抗されても困ると下っ端を引き連れて去って行くのをツカサは見送っていた。

 

 

「トロバ」

 

「ツカサさんはフレア団と戦うの怖くないの? ぼくは怖いし嫌です……」

 

「だけどトロバも一緒に戦ったからユキノオーを守れたんだよ」

 

「ぼくは控えめでいいのですが、それだけではダメなんですね……でもこれでマンムーさんも安心してくれますよね、よかった……!」

 

「ああ、きっと安心してるはず。それじゃあ、俺はしばらく彷徨いてから帰るから」

 

「はい! ぼくは先に戻ってますね!」

 

 

その場で別れトロバを見送ると、ユキノオーの容態を見ながら怪我をしている場所の手当てをし始めた。

 

いいキズぐすり等の使わないが余っている物を惜しみ無く使い、手当てを終えるとスッとユキノオーが何かを差し出してきた。

 

「ゆひょお!」

 

「これは……メガストーン!?」

 

「ゆきゅ!!」

 

「つ、冷たいけどハグもありがとう」

軽く抱き締められ、背中をソッと押してもう行くように促されていた。

 

………

……

 

外に出ると吹雪は治まっていたが夜になっており、寒さに空腹とポケモンセンターに急ぎボールを預けてから部屋を借りていた。

 

「……フゥー↑ 気持ちいい〜! やっぱり……ポケモンセンターのシャワーを……最高やな! あ〜、生き返るわー」

 

 

シャワーで暖まりさっぱりした後は食堂へ向かい、暖かいクリームシチューとバケットにホットコーヒーを注文して席に座って食べている。

 

「しばらくは自重しないとなぁ……」

バケットをシチューにつけながら食べ、スマホを使い久々に公式スレを見ていた。

 

 

ポケモンドクター総合スレを見ていると新しくドクターになった者のデータが公開される中、二週間で何件かの手術をした事が原因か過去のツカサのデータも掘り起こされて載っている。

 

当時は若すぎて信用出来ないという理由で相手にすらされていなかった。

 

だが二週間前に公式に登録され公開された手術の動画で安楽死を視野に入れるべきピカチュウを全く新しい術式で救った事が衝撃を与え、賛否両論の激しい応酬がスレでは続いている。

 

 

「師匠の技術には程遠いんだよなぁ……停滞せず最新の知識と技術を求めるとか、その為に俺を使ってたし」

スプーンでシチューを飲みながら数ヵ月前までの事を思い出し、げっそりしながら呟いていた。

 

表に出れない故にツカサを使って様々なデータを毎月持ってこさせ、最新の技術と過去の技術を組み合わせて独自の全く新しい手法を産み出す程。

 

 

食べ終えて部屋に戻ると歯磨きをし、パジャマに着替えてすぐに眠って翌日の十七番道路に備えていた。

 

 

そして翌日……

 

「うわぁ……十七番道路はマンムーロードと言われるだけはあるわ。ちょっと病んでる感じのジョーイさんに上着を貰わなかったらやばかったかもしれない」

 

 

新雪に足をとられながらも進んでいくと、昨日のマンムーが積もりに積もった雪の前で待っていた。

 

「ライドオン! ……自分から積もった雪に入っていくのか」

マンムーがしゃがみ背に跨がるように見てくるので乗っている。

 

するとズンズン歩き始め、積もった雪の中を迷いなく突っ込んでいく。

 

 

そのまま連絡通路手前までマンムーが乗せてくれたが、寒さでガチガチになり何とか降りるとマンムーに礼を言って暖かい通路へとゆっくり向かっていった。

 

「あー、寒かった……マンムーの暖かさだけじゃ耐えられなかった。そして連絡通路直前の吹雪いている所でのホロメールである」

 

『ツカサ、次はヒャッコクのジム前で勝負を挑むわ。準備しておいてよね』

 

「二週間ぶりに見たけど、まさかあの腋を出した状態でここを越えたのか? だとしたらカロスっ子はどうなってんだ……」

ブルブル震えながら連絡通路を通りヒャッコクシティに足を踏み入れた。

 

 

早くポケモンセンターに行きたいと必死に足を進めていると……

 

「そこのあなた!」

 

「ファッ!?」

 

「デクシオの代わりにあたくしが伝えに来ましたわ。ここヒャッコクシティで伝説ポケモンについて知っている人がいるそうですわよ」

ビシッ!と指を差してドヤ顔で言うとそのまま去っていった。

 

「え、それだけ……?」

 

「そうでしたわ! よければこれを使いなさいな!」

 

「リピートボールってまた行っちゃうのかよ。……やっぱあの喋り方はドキドキしちゃうなぁ」

戻ってきたと思ったらボールを手渡され、そのまま再び行ってしまった。

 

「『ヒャッコクシティ 星巡る時告げの街』。これ誰が考えてるのかは知らないけど、やたらかっこいい。でも今はシャワーを浴びたい」

そのままポケモンセンターに駆け込んでいった。

 

 

まだ明るいが部屋を借りてシャワーを浴び、腰にタオルを巻いて部屋に戻り替えの服を着ている。

 

「フウジョのジョーイさんからルカリオキッド仕様の仮面、それと今の俺の体型から作った衣装まで貰っちゃって……怖い。サイズ測らせてないし、俺だって細かいサイズまでは知らないのに」

急に寒気がして周囲を見回していた。

 

 

「……そろそろセレナに会いに行かないと、まーたセレナが怖い目になるかもしれないし」

部屋はこのまま借りる事に決め、鍵をかけるとポケモンセンターから出ていく。

 

 

時間があればジムにも挑もうと万全の状態でジムに向かった。

 

「ここは何のジムなんだろう」

 

「ツカサ! ミアレシティのカフェでライバル宣言したんですもの、強くなった所を見せないとね」

 

 

野次馬が多々出来たが気にせず二人は距離を取り、互いにボールを投げポケモンが飛び出した。

 

「ファイアロー、かえ……」

 

「ニャオニクス、ねこだましよ!」

 

ツカサの指示よりも早いセレナの指示でニャオニクスが動き、勢い余ってファイアローの顔を挟むようにしてひっぱたいてしまった。

 

ファイアローがかえんほうしゃの動作に入ろうとした所だったようで、ニャオニクスは両手をやけどしている。

 

「ニャオッ!」

 

「キュイィィッ!!」

 

 

「嘘、ニャオニクス!?」

 

「ファイアロー、ブレイブバードだ!」

 

両手をふーふーするニャオニクスとまさかのやけどに驚くセレナに、まだまだ甘いなーと思いながらも大技を繰り出すよう指示を出している。

 

 

久々の先発でテンションも上がり、ツカサの指示を聞いてニャオニクスを両鉤爪で掴むと宙返りの要領で思いきり空に向かって投げ飛ばした。

 

そしてサイコキネシスで体勢を整え浮こうとしたニャオニクスを真下から奇襲。

 

それに驚きバランスを崩して落ちていくのを追いかけ、いつかの時とは違いニャオニクスと共に地面に思い切り突っ込んでいった。

 

野次馬はアグレッシブなファイアローの行動に驚き、直後の二体が地に叩きつけられた衝撃で起こった風で一時的に目が開けられなくなっている。

 

 

「く……ごめんね、ニャオニクス。シャワーズ、お願い!」

 

「見え……お疲れ様、ファイアロー。ラプラス、出番だ!」

 

セレナはスカートを抑えながらニャオニクスをボールに戻してシャワーズを出し、ツカサはセレナの後ろのミニスカートの学生を気にしながらファイアローを戻してラプラスを出していた。

 

 

「ラプラス、10まんボルト!」

 

「えっ!? シャ、シャワーズ、オーロラビーム!」

 

ラプラスの口から放たれた電撃がシャワーズを襲うもそれを耐え、オーロラビームで反撃するが何かした?みたいな顔で見ている。

 

 

「もう一度だ!」

 

「みず、こおりなのに何で10まんボルトが……あっ!」

 

先程の一撃で動きが鈍くなり避けようとしたシャワーズに電撃が直撃、そのままコテンと横に倒れピクピクしていた。

 

 

「うぅっ! がんばって、ブリガロン!」

 

「それならこっちはリザードンだ!」

 

二人のシャワーズとラプラスがボールに戻り、ブリガロンとリザードンが現れ野次馬達はテンションが上がっていた。

 

 

「リザードン、だいもんじ!」

 

「ブリガロン、避けて!」

 

ツカサの指示が出た瞬間リザードンは滑空してブリガロンに襲いかかり、慌てて腕で顔をかばったのを見て尻尾で思い切り空に打ち上げている。

 

ツカサのリザードンに対してトラウマが出来ているらしく、空中で絶望したような顔になり口を開いたリザードンを見て恐怖で身体が動かなくなっていた。

 

 

「セレナのブリガロン相手にはやたら厳しいんだよなぁ……」

 

「……ツカサのリザードン、あの首飾りが格好いいわ」

 

 

「グオォォッ!!」

 

「ッ!!」

 

そのまま大の字をした炎が放たれ、それが空中で動けないブリガロンに直撃。

 

その炎はブリガロンを容赦なく焼き尽くし、地に落ちる頃には既に気を失って白目を向いていた。

 

 

「やっぱり強い……これが最後、アブソル!」

 

「お疲れ様、リザードン。行こうぜ、ルカリオ!」

 

アブソルは現れると獲物を狙うように身構え、ルカリオもゲッコウガとの特訓で我が物とした攻防一体の構えで向き合っている。

 

 

「……これが俺達の絆の力。ルカリオ、メガシンカ!!」

 

「くぁんっ!」

 

ツカサがキーストーンに触れるとメガリングから激しい青い光が放たれ、それがルカリオが放つ金の光と混ざり合った。

 

 

「メガルカリオ!!」

 

「クォンッ!!」

 

そして混ざり合い白くなった光の繭にルカリオが包まれ、激しい閃光が放たれるとその身をメガルカリオへと変えていた。

 

 

カロスチャンピオンとコルニ以外でメガシンカを使う者は公には居らず、更にポケモンとの強固な絆がなければ出来ないメガシンカ。

 

それを当たり前のように行うツカサに野次馬達は驚愕と何者なのかと写真を撮ったり、ネットに繋いで探してみたりと相当な衝撃を与えている。

 

 

「メガルカリオ、インファイトで決めろ!」

 

「アブソル、でんこうせっか!」

 

二体同時に動き出し、アブソルの高速の一撃がメガルカリオの腹に突き刺さる。

 

だがメガルカリオはその一撃を受けても全く怯まず、守りを捨て全力の脚でアブソルを蹴り上げていた。

 

練り上げた波導を脚に集中させてアブソルを追って跳び上がり、そのまま空中で拳による高速のラッシュを繰り出している。

 

そしてトドメに高めた波導を内包した脚でアブソルを地面に叩き落としている。

 

 

「アブソル! ……ありがとう、お疲れ様」

 

「お疲れ様、ルカリオ」

 

セレナはアブソルに駆け寄り礼を言いながらボールに戻し、ツカサは労いをしながら姿が戻ったルカリオをボールに戻している。

 

 

「やっぱりアナタの事をもっと深く知りたい……! どうしてそんなに強いの!?」

 

「愛……かなぁ」

 

「アタシのポケモン達も逞しくなっているのに……ツカサ達はいつも先を行っているのね。ほら、ツカサのポケモン元気にしてあげる」

 

「サンキュー、セレナ様!」

 

「うふふ……ツカサとポケモン達ならジムリーダーに勝てるよ。じゃ、ファイト!」

 

「可愛い」

ぐっと拳を握って応援するセレナにそう呟き、ジムの中に入っていった。

 

 

 


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