ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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メガシンカとルカリオ

ポケモンセンターで少し休憩をしてジムへと向かい始めた。

 

「若いのにやたら色っぽいジョーイさんだと思ったら、まさかの彼女達の母親っていう色んな意味で怖いあれな展開があった。何か夫とは別れてるからとか、今度家に遊びにいらっしゃいとか、やたら見つめてきて怖かったなぁ……私服がエプロンドレスとかちょっと心惹かれたけど」

 

「フィア!」

 

「まーた勝手に出てきて……それに俺にかみつくなんて指示は出してないんですが」

 

「がぶ」

 

「こらやめなさい」

 

 

そのままジムに向かうと中はローラースケートのコースになっていた。

 

「なるほど……全員倒さないとコルニの所に行けないシステムなのか」

 

所属トレーナーを一人倒すとジムの仕掛けが作動し、中央のステージに行けるシステムだった。

 

そして難なく全員を倒し……

 

「この滑るの落ちそうで怖いから嫌いなんだよ……」

勢いをつけて細い鉄のレールの上を華麗に滑り、中央のステージに降り立った。

 

「コルニ参上!」

 

「ファッ!?」

いきなり背後から現れ、ステージを華麗に滑っているコルニを見て驚いている。

 

「なんてね! 貴方が強いトレーナーなの知ってるからさ、始めちゃうよ!」

 

「お願いしまーす」

スパッツ系女子もいいなぁと不埒な事を考えている。

 

 

「コジョフー!」

 

「ニンフィア先生、お願いします!」

 

ボールから出た二体はすかさず動き出し、ムーンフォースを放とうとするニンフィアにコジョフーはねこだましを決めていた。

 

 

「ナイスだよ!」

 

「ニンフィア、怒りのムーンフォース!」

 

してやられた事に怒っていたニンフィアは、クイクイっと挑発するような態度のコジョフーが避けられない速度でムーンフォースを叩き込んでいる。

 

更に追撃だとばかりに本来の用途ではない触覚を優しく巻き付け宙に放り、落ちてくるタイミングで走り蹴りまで叩き込んでいた。

 

 

「あの、俺はムーンフォースとしか……」

 

「トレーナーの言う一を聞いて、自分で十にしたって言うの……!」

コルニはダウンしたコジョフーをボールに戻しながら驚愕の表情を浮かべている。

 

 

「ニンフィアってあれじゃないの? 凄い癒し系で争いを鎮めるとか書いてあったような……」

 

「ゴーリキー、油断しちゃダメだよ!」

 

 

ゴーリキーがボールからフロントダブルパイセプスで現れ、爽やかに歯を見せて笑ってアピールをしていた。

 

 

「ニン……あ、そうですよね」

 

「えぇっ!?」

 

ゴーリキーが構えた瞬間には嫌なものを見たって顔をしたニンフィアのムーンフォースが直撃、吹き飛びはしなかったがサイドチェストで笑みを浮かべながら後ろに倒れてダウンしていた。

 

 

「ニンフィアだけ他の面々と比べてもやたら強いような……」

 

「やっぱり強いね……さぁ、これで最後だよ! ルチャブル!」

 

 

プロレスラーのようにボールから現れたルチャブルは油断せずニンフィアに向き合い、目を離さず一撃で決める為につめをとぎ始めた。

 

しかしそんな隙を見逃すはずもなく

 

「好機! 攻めろ、ムーンフォースだ!」

 

「あ、避けてルチャブル!」

 

 

ツカサからは見えないよう位置でニンフィアはニヤァっと笑い、ルチャブルがその笑みに怯えて思わず後退り身を震わせていた。

 

そして放たれたムーンフォースを震える足で横にダイブして避け、再びニンフィアの方を向くと

 

「フィア♪」

 

物凄く可愛い笑顔で追撃のムーンフォースを放っている所だった。

 

………

……

 

「ドキッ……!!」

 

「触覚が、触覚が俺に巻き付いてくる!」

勝者であるチャレンジャーは無双した存在をボールに戻そうと四苦八苦していた。

 

「参りました! シャラシティ、ジムリーダーのコルニ、貴方の力量を認めこれを進呈いたします。……なんてね、はいどーぞ!」

 

「やっと戻ってくれた……ねんがんの ファイトバッジを てにいれたぞ!」

 

「それがあるとなみのりの秘伝技で水上を進めるんだよ! あとこの技マシン、是非使ってみてよ!」

 

「グロウパンチ……ガルーラ……うっ、頭が……」

ちょっとしたリアルな記憶が頭を過っている。

 

「まず貴方に謝ります。メガリングを渡すのはマスタータワーのてっぺんです。次にお願いがあります」

 

「なに? 死んでとか以外ならなんでも聞くよ?」

 

「メガシンカを使える者同士のポケモン勝負をさせてください! マスタータワーのてっぺんでルカリオと共に待ってるね!」

 

「はーい」

去っていくコルニを見送り、帰りのレールを思い出して心臓がバクバクなりだしていた。

 

落ちそうになったが何とかジムから出て、二度と来るものかと誓いマスタータワーへと急いで向かっていく。

 

 

マスタータワーに入るとサナとメガシンカおやじが待っていて、戻ってきたツカサに気がつき声をかけている。

 

「おう! てっぺんでコルニ……いやメガシンカの継承者がお前を待っておる!」

 

「気合い入れて行ってきます!」

 

 

上がろうとすると胴着姿の見張りが近づいてきた。

 

「マスタータワーは認められた者のみが上がれる! お主は……通ってよーし!」

 

「あ、はい」

 

 

上がっていく途中の部屋でメガシンカおやじの本名がコンコンブルと教えてもらったりしている。

 

「もう日も暮れてきたな……」

 

天辺に着く頃には既に日も落ち、晴天の空に星が瞬き始めていた。

 

「お待たせ」

 

「空を見てると心がふわっとして……ポケモンもあたしも何でも出来そうで……好きなんだ、ここ!」

 

「……」

その言葉を聞き夜空を黙って見上げている。

 

「もう一度ごめんなさい! わざわざここまでこさせて。高みを目指す気持ちを忘れないように……って事でメガリングはここで渡す決まりなの。はいっ! メガリング!!」

 

「これが……」

手渡された黒いメガリングを左手につけ、そのまま見ている。

 

「メガシンカさせたいポケモンにメガストーンを持たせるの! そしてポケモンを勝負に出せば自ずとメガシンカの兆しが見えるはず! ……ってルカリオ!? あんたどうしたの?」

 

「くぁんっ!」

 

「お……?」

ニコニコしながら隣に来たルカリオを見てツカサは不思議そうにしている。

 

「……もしかしてルカリオ。ツカサさんと共に戦いたいの?」

 

「くぁんっ!!」

 

「まさか……あたしとではなく旅のトレーナーさんとの絆の方が強いなんてね。いいんだか悪いんだか……あなた! やっぱり面白いトレーナーさんね!」

 

「む?」

 

「ねっ! あたしのルカリオと一緒に戦ってあげて。あたしもルカリオで戦う! そう! ルカリオ同士1VS1の勝負をしましょ! ルカリオナイトは持たせているし!」

 

「わかったよ」

 

「もう一匹に負けたくないのか、好みの波導を出すあなたを気に入ったのか、よくわからないけれど……行くよ、ルカリオ!」

 

「俺達もやるぞ、ついてこいルカリオ!」

 

「命、爆発ッ!」

 

 

二体のルカリオが場に現れ、互いに隙を見せずに構えている。

 

「そうかこれが……ルカリオ、メガシンカだ!」

 

「ルカリオ、メガシンカ!」

 

ツカサは左手に付けたリングに埋め込まれたキーストーンに触れ、コルニは左手のグローブに埋め込まれたキーストーンに触れていた。

 

すると二体のルカリオの身体が輝き、その輝きに包まれ光を吹き飛ばすとルカリオ達はその身をメガルカリオへと変えていた。

 

 

「メガルカリオ、ボーンラッシュだ!」

 

「メガルカリオ、グロウパンチ!」

 

指示を受けて走り出した二体のルカリオが中心で激突。

 

メガシンカで拳が骨が付いたグローブのようなものに変化しており、ツカサのメガルカリオはその拳を左ストレート、右ストレート、左フックで三発叩き込んでいる。

 

それを耐えた相手のメガルカリオは渾身の一撃を放ち、打ち込んだその拳が更に固くなっていた。

 

 

「今のはかなり効いたな……だけど素早さはこちらが上、もう一度ボーンラッシュだ!」

 

「避けてグロウパンチよ!」

 

追い詰められたツカサのメガルカリオは獰猛な獣のように唸りを上げ相手の懐に飛び込み、それに驚き避けようとした相手のボディに強烈な右ストレートを叩き込み吹き飛ばしてダウンさせた。

 

 

 

 

「勝った……か。何かお前に見覚えがあるような」

メガシンカが解けたルカリオにそう呟いている。

 

「凄い……あなたとポケモンの絆、空前絶後のパワーだよー! メガルカリオ同士……全力を尽くした戦い! 貴方なら絆の力でメガシンカを使いこなせるよっ!!」

 

「くわんぬ!!」

 

「よければあなたの旅にルカリオも連れていかない? 貴方とのコンビもばっちりみたいだし! ね!」

 

「くおーん!」

 

「ちょうど最後の仲間を探していたところだよ。コンゴトモヨロシク……」

 

「ポケモンとトレーナーお互いが勇気を与えあい、お互いが相手の為に心を痛める優しさがあればきっと笑顔になれるよね!」

 

「くわんぬ!!」

 

「コルニ、ちょっと聞きたいんだけど……このルカリオってリオルから育てたの?」

最後の仲間になったルカリオを見てコルニに尋ねていた。

 

「そうだよ。ツカサさんのルカリオはイッシュで二年くらい前に映画に出てたリオルで、一年前に私が引き取って育てたんだ!」

 

「マジかよ。お前、まさか……」

 

「くあんっ!」

スッとルカリオが上げた腕には赤いバンダナが巻かれ、それに加工されたルカリオナイトが付いている。

 

「それは共演していたリオルキッドの俳優さんがお別れの時に巻いてくれて、それからずっと大事にしてるんだって教えてもらったんだ」

ツカサがホウエンに居た時に貰って入れっぱなしだったバンダナを、撮影で懐いていたリオルに巻いてあげていたらしい。

 

「そっか、お前は覚えていてくれたんだな」

 

「くぁん!」

 

「え? それってどういう……」

 

「……真実と理想の使者、リオルキッド参上!」

一度コルニに背を向けるとミアレのジョーイさんにプレゼントされていたリオルキッド仕様の仮面をつけ、振り向くと二年前の決め台詞とポーズを決めている。

 

「くぁん!」

ルカリオもリオルだった時の決めポーズをとっていた。

 

「え、嘘……ほ、本物なの?」

 

「あはは、俺がリオルキッドとルカリオキッドをやってたんだよ。……あの子のおねだりに拒否出来なくてね」

仮面を外し苦笑しながら正体をバラしている。

 

「さ、サインください!」

 

「くぉん!!」

コルニとルカリオは目を輝かせながらサインをしてほしいと詰め寄ってきた。

 

「うん、いいよ。ジョーイさん達以外に知ってる人が居たなんてなぁ」

ツカサはドマイナー作品だと思っているが一作目の短編以外はかなりの制作費がかかった長編になっていて、今はキャストを変えてでも一作目を長編としてリメイクする案も出ている程。

 

「あたしのジムのみんなも知ってるよ! みんなジムには連れてきてないけど、プライベートでリオルとルカリオを育ててるんだから!」

 

「俺、カロスに住むわ。いや、もう住んでたわ」

コルニに手を握られぶんぶん振られながら呟いていた。

 

「えっと、それなら今度遊びに行っていい?」

 

「この旅が終わったらね。その時には他の地方から知り合い達が来てるかもしれないけど……あ、それと知り合い達には絶対にリオルキッドをやっていた事を内緒にしてね」

 

「はい!」

 

この時のコルニは度肝を抜かれるような面々が揃っているとは思いもしていなかった。

 

………

……

 

あれからコルニにサインをし、ポケモンセンターに向かい部屋を借りていた。

 

「ハチクマンシリーズ再ブーム? えっ、なにこれは」

一人隅っこでドリアを食べながらドン引きしている。

 

ツカサの素性が明らかにしていく過程でイッシュとカロス以外の者達も作品を目にして今になって再ブームが起きていた。

 

それに呼応したのかイッシュのスタッフは一作目のリメイクの為にツカサを探し始め、ハチクマンとリオルキッドのフィギュアの製作まで始めている。

 

 

「……これ知られたらメガルカリオキッドとかやらされるんじゃないだろうな」

左手に付けられたメガリングを見て嫌な予感がしていた。

 

続編の子世代設定でメガルカリオ仮面という謎の師匠設定で出てきそうではある。

 

 

「……」

サラダを時々食べながら様々なスレを見ていた。

 

ツカサのスレッドは今日も盛況であり、あるはずのないチャンピオン達との三股説まで囁かれている始末。

 

ミアレで見かけた情報で若干騒ぎになっており、ジョーイさんがサインを自慢しまくっていたという話題も出ている。

 

 

「……」

サラダを咀嚼しながらもう片方の手でニンフィアスレを見始めた。

 

自分の過激なニンフィアについて詳しく書いて尋ねると、そんなニンフィアはいないと全否定からのフルボッコにされてツカサはイラッとしてログアウトしていた。

 

 

「はぁ……本当なのに。今もセンター内を俺を探してるのか爆走して、センターのスタッフとポケモン達が大騒ぎしながら追いかけてるのに」

知らぬ存ぜぬでサラダを食べ終えている。

 

 

『ま、待ちなさーい!』

 

『タブンネ!』

 

『ラッキー、止めて!』

 

『ハピナスも道を塞いで!』

 

『フィアー!』

 

「最後のだけ聞くと恐怖を叫んでるように聞こえるな。てかあいつマジなにやってんだ……おとなしいって嘘だろ絶対」

 

 

そのまま食器を返して食堂から出るとまだ騒いでおり、ニンフィアが華麗に滑ってタブンネの股下を通り抜けている所が見える。

 

更に触覚を振り向いたタブンネに巻き付け振り子のように使い、ハピナスとラッキーの上を飛んで壁を蹴りながら着地して逃げていく。

 

「スタイリッシュすぎんだろ。今後はザ・フィアーとか呼ぶべきなのかな?」

 

「すげー……触覚ってあんな使い方もあるんだ……」

通りすがりのトレーナーも思わず呟く始末。

 

 

これ以上騒がせても申し訳ないとツカサも逃げたニンフィアの後を追っていく。

 

「ユクゾ!」

デッデッデデデデ!カーン!という幻聴が聞こえてくる。

 

「あ……避けて!」

 

「ぐふっ!」

気合いを入れた瞬間に腹に衝撃が走り食べた物を吐き出しそうになっていた。

 

「イラッとくるぜ……」

 

「〜♪」

擦り擦りと胸元に顔を擦り付けるニンフィアに若干イラッとしている。

 

「ごめんなさい! ボールに戻そうとしたら、部屋の扉が開いていきなり逃げ出してしまって……」

 

「大丈夫っす。逆にうちのがお騒がせして申し訳ないです」

 

ポケモンセンターのスタッフが持ってきていたボールに大人しくするよう言い聞かせたニンフィアを戻し、謝罪と頭を何度も下げて再び預けてから部屋に戻っていった。

 




リオルキッド役の時のリオルが進化したルカリオが加入。

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