ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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二つ目のジムとメガシンカ

早朝、ポケモンセンターから出たツカサは満足そうに腹を擦っている。

 

「気合い入れて朝から肉をガッツリと食ったし……町を見て回ってからジムかな。二人目だし写真も撮ってもらわないとな。でも何か二つ目のジム遠すぎやしませんかね?」

そう独り言を呟きながら、もう開いているサイクルショップにフラッと足を運んでみていた。

 

 

中に入ると店長と思われる男性と目があい……

 

「おお! おおおっ! いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!!」

カウンターへ来てくれと手招きしていた。

 

「あ、はい」

 

「お客さん凄いね! オープンしてから一万と一人目だよ。一万人ぴったりなら無条件で自転車をプレゼントしたんだけど……前後賞のあなたはクイズで見事正解なら自転車をプレゼント! ではいきますよ。自転車にはカラーバリエーションがある?」

 

「まぁ……あるでしょうね」

 

「ご名答! いやー、君なら自転車を心から愛してくれるだろう! では黄色と緑、どちらの自転車にするのかな?」

 

「折角だから俺は緑の自転車を選びます」

どうせなら赤がよかったなぁと考えている。

 

「よし、それじゃあそれでカロスをかっとばしてよ!」

 

 

店長に何度も礼を言いながら外に出て、早速自転車に跨がった。

 

「おー、坂道もスイスイ……おっと?」

坂道をサーッ!と駆け上がっていると、カーブで誰かが出てきたので停止している。

 

「おやまあ貴方は……なんという事でしょう。自転車レースは私の一位フィニッシュで終わりましたよ。レースを見れなかった代わりに秘伝マシン『かいりき』をどうぞ」

 

「え? あ、どうもありがとうございます」

 

「ポケモンに使ってもらえば大きな岩も押せますから。もっとも戦っていない時にかいりきの技を使うなら、ジムリーダーの私が渡すジムバッジが必要です。私はポケモンジムにいますのでよろしければいらしてください」

 

「はい、すぐに伺わせていただきます」

 

そう礼儀正しく返すと満足そうにジムへと向かっていった。

 

 

その後を追ってショウヨウジムに入ると巨大な岩があり、ジムリーダーの元に向かうにはクライミングを行うしかなかった。

 

「ザクロさんか……」

 

まだバッジを手に入れていないのを像で確認すると、セレナにスカートで来るのをやめるようにホロキャスターでメールを送っている。

 

 

そして覚悟を決めて登り始めたが、思っていたより楽しいとスイスイ進んでいく。

 

「それでも壊れそうだったからカメラ置いてきちゃった。あの説明したがるおっさんが嬉しそうに預かってくれたのがなぁ……っともう天辺だ」

登りきるとジムリーダーの姿が見える。

 

「私は待っていました。首を長くして……いえ、首だけではなく手足も伸ばして……」

 

「えっと、何を待っていたんですか?」

 

「もちろんチャレンジャーです。貴方は壁を登りここに到達しました。非常に素晴らしい事です。それでこそ私も伸ばした首と手と足を使い存分に戦えます。もちろん手足の長さは壁登りには役立ちますが、ポケモンの強さに何の関係もありません」

 

「それでは……」

 

互いにボールを手に取り

 

「アマルス」

 

「ゲッコウガ!」

 

バトルフィールドに投げられたボールから二体のポケモンが現れ、互いに目を離さず睨みあっている。

 

 

「先手必勝、みずのはどう!」

 

「ゲコ」

コクリと頷くとみずのはどうを放ち、何かしようとしたアマルスを吹き飛ばした。

 

 

「一撃!? チゴラス!」

一撃で倒された事に驚愕したがアマルスを回収し、二体目を即座に繰り出している。

 

 

「あいつ進化したらめっちゃ格好良くなりそう……でも岩っぽいからゲッコウガの敵じゃない」

 

「……」

チラッとアイコンタクトだけで理解したのか、再びみずのはどうを繰り出していた。

 

アマルスと同じようにチゴラスも吹き飛んでいき、起き上がろうとしたが力なく倒れ伏している。

 

 

「まさかこんな……。私の前に聳える高い壁……それは貴方です」

 

「よし! お疲れさま、ゲッコウガ」

手も足も出させない圧倒的な展開で終わらせたゲッコウガを労いボールに戻した。

 

 

「どんなに手を伸ばしても届かないものもあるでしょう。ですが諦めない事、どんな時でもどんな相手でも諦めない事。戦う貴方達の中にその心を感じました。そんなグレードの高い貴方とポケモンのチームワークにウォールバッジを!」

 

「ありがとうございます!」

 

「それとこれを」

 

「技マシン……」

技マシンを鞄にしまいながらバッジをケースに納め、ザクロに向き直った。

 

「このジムの壁登り……ボルダリング以外にながーい手足をどう活かせばいいのか。貴方は共に戦うポケモンをどう伸ばせばいいのか。お互い考えましょう、笑顔になる為に」

 

「……はい!」

 

 

そのまま謎のおっさんからカメラを回収してジムを後にした。

 

………

……

 

「……やっぱり強くなりすぎてたな。ここからは特訓なしで観光しながらジムに挑んでいこう。その前にポケモンセンターでみんなの疲れをとらないと」

 

 

一時間待ちと言われて預けるとセンター内をぶらぶらし始めた。

 

「あ、そうだ買い物しなきゃ。モンスターボールを21個、もしもの為のすごいキズぐすり20個、げんきのかけら20個……なんでもなおしは売ってないからこれくらいでいいか」

普段あまり買わないからかまとめ買いをよくしている。

 

必要個数を記入する紙に書くと店員に渡して料金を支払い、渡された商品を全部鞄にしまっていた。

 

 

「みんなも回復したし。さぁ、次は……確かジムの上に洞穴があったな」

放送で呼び出されたので受け取りに行き、ボールホルダーにセットしながら思い出している。

 

 

自転車でその洞穴に向かい中に入り、かいりきをイシズマイに覚えさせて巨大な岩を押して通れない道を通れるようにしていく。

 

「つばめがえしにやつあたりか……リビエールラインに繋がってたし、邪魔な岩も大体退かしたから今後はみんな行き来が楽になるな」

そう言いながらショウヨウシティに戻っていった。

 

 

そのまま橋を渡ると十番道路であるメンヒルロードに突入、大小様々な石が道端に転がっているのを眺めながら歩いている。

 

「この光景はダイゴさんだったらテンション上がるんだろうなぁ……」

 

 

更に進むと巨大な岩が並んでおり、綺麗な並びに思わず溜め息が漏れている。

 

「あらま? お前は! カセキがカセキでカセキした! あのなここの列石は凄い代物なんだよ! 何でも三千年前……あれ? なんだっけ? まあいい! ここはスマートにリベンジさせてもらう!」

 

「うわぁ……フレア団だ」

 

 

数分後

 

「あらま? まさかの連敗! もしかするとお前は凄いポケモントレーナーなのか?」

 

「おう、賞金あくしろよ」

 

「ふむふむ……スマートに逃げる!」

唐突に通信し始め、賞金をスッと地面に置くと全速力で逃げていった。

 

「何か目をつけられてるし、フレア団は潰さないといけないな。俺の安穏とした日々の為に……あ、イシズマイが」

 

「キュルル」

進化を遂げイワパレスへと生まれ変わっていた。

 

「よろしく、イワパレス。今度その背中に座らせてね」

進化をしたイワパレスの前腕のハサミを軽く握って握手をし、それからボールに戻して再び歩き始めた。

 

 

何人かフレア団を一方的に倒しながら進み、五体目の仲間は誰にしようかと考えながら草むらをウロウロしている。

 

「何か俺の心をズドンと撃ち抜くようなポケモンは……ゴフッ! ぶ、物理的に撃ち抜こうとしたのは何だ……」

腹に何かが突っ込んできて尻餅をつき、その何かを掴んで目の前に持ってきていた。

 

「ブイ!」

 

「おー、イーブイじゃんか。レッドさんはエーフィ持ってたっけ……じゃあ、お前さん一緒に来る?」

地面におろしてから聞くと、尻尾を振りながらピョンピョン跳ねて足に頭を擦り付けてくる。

 

「はい、それじゃあこれに入ってー」

モンスターボールを取り出すとイーブイに触れさせ、捕獲した事を確認すると改めてイーブイのデータを見ていた。

 

「♀でおとなしいのに負けず嫌い……えっ、あれでおとなしいの? 俺の腹にでんこうせっかしてきたのに?」

他のイーブイ達への恐怖を抱きながら、ボールを腰のホルダーにセットしている。

 

「さて、最後の仲間はどうするかなー」

 

………

……

 

「何かイーブイの特訓してたら進化した……見た事ない進化系だけど」

 

「フィア?」

 

「名前はニンフィアでフェアリータイプ……ついにうちのメンバーにもフェアリータイプが来たか。弱点は毒、鋼」

 

「フィア!」

リボンのような触覚を伸ばしてツカサの身体に巻き付け、身体を脚にくっつけて幸せそうに甘えている。

 

「あぁ^〜可愛いんじゃ^〜」

 

 

そんなニンフィアに癒されメロメロになりながらも先に進み、日が暮れる前にセキタイタウンに到着している。

 

「まだ部屋取るには早いし町でも散策しよう、そう思っていた時期が俺にもありました」

目の前で背を向け歌っているフレア団のしたっぱを見て呟いていた。

 

「セキタイタウンは石の町♪」

 

「……」

それだけ歌うとどこかに向かい始めたので、そっと後を追っていく。

 

 

町外れにくるとしたっぱがこちらを振り向き

 

「いいか! 俺達フレア団は十番道路の列石やとんでもないお宝を使ってハッピーになってやる! 世の中、力を持つ奴がスマートに勝利するのさ!」

そう言うと更に奥まで逃げていった。

 

「えぇぇ……」

 

「ツカサ! フレア団来なかった?」

 

「いや、来たんだけどさ」

 

「でもいないよね? その先行き止まりなのに……フレア団ってなんだか不気味ね……」

 

「ちょっと見てくるよ」

そう言うとしたっぱが向かった方へ急いだ。

 

 

確かに行き止まりだがあからさまに怪しい石の建物があった。

 

「遺跡? マグマ団の時の事を考えると入るのに何か必要で、この中に居るんだろうな」

様々な組織と戦った経験からここは入り口だと確信していた。

 

 

今はどうしようもないと町中に戻り色々と見て回っている

 

小さく見えて広い町並みを自転車で疾走しながら気になる所で止まり、知的好奇心を満たしている。

 

「『セキタイタウン 静かな石は多いに語る』か。あの遠くからも見えてた町の中心にある三つの尖った石は……『謎のパワーを放出すると言われている古代の石』。さっき聞いた話だと、次のシャラシティにも不思議な石があるらしいけど」

 

 

 

日も暮れてきたのでポケモンセンターで部屋を借り、併設されているバトル施設で他のトレーナーのバトルを見ている。

 

夕飯ここでも食べられるハンバーガーのセットを注文して持ってきて食べながら見物していた。

 

実力が戻ってき始めたからか、見られている者達は落ち着かない状態でバトルをしている。

 

 

「うん、イチャイチャしながらバトルしてるのを見てると殺意が湧いてくる。……俺もあんな風にダブルバトルとかしたいなぁ」

ポテトを摘まみながら溜め息を吐いていた。

 

「ツカサ?」

 

「ん? ああ、セレナか。ポケモンセンターでは久しぶりに会う気がするな」

 

「そうね。あまり会わないのは、ツカサが一つの町に数日滞在してるからだと思うけど」

 

「あー、確かにそれはあるかも。基本的に町を見て回って写真撮ったりしてるから」

ジムリーダーの写真は諦めたようだが、今後はジムの仕掛け次第で撮るか決めるらしい。

 

「ふふ、楽しんでるのね。それじゃあ、アタシはそろそろご飯食べてお風呂入るから。またね」

 

「ちょっと早いけどおやすみー」

ヒラヒラと手を振って去っていくセレナを見送り、再びバトルに目を向けた。

 

………

……

 

朝になり準備を済ませるとポケモンセンターから出て、太陽の光を浴びて伸びをしている。

 

「んんー……! ここにはジムがないし、さっさと次の町に行こう」

 

「ちょっとルカリオ!!」

 

「ん?」

騒ぐ声が聞こえて振り向いてみると、ルカリオ二体を連れた女の子がこちらに向かってきていた。

 

「あっ! 五番道路のトレーナーさんだよねー!」

 

「あおんっ!!」

 

「……たぶんなんだけどルカリオ、貴方と戦いたいって。よかったら相手してくれる?」

 

「うん、いいよ」

 

「二匹のルカリオ……あなたを気に入ったのはどっちかわかるー?」

 

 

数分後

 

「わわ! 自慢のルカリオコンビで全く歯が立たなかった!?」

 

「……」

どちらのルカリオもリザードンのほのおのきばによる一撃で倒れ、力押しだけでどうにでもなっている現状はちょっとマズイなと考えていた。

 

「うわー、なるほど!! ルカリオが気に入るわけねー!」

 

「え?」

 

「ねっ! あたしがシャラシティのジムリーダーなの覚えてる? この先の洞窟を抜けたらシャラシティだからよろしくねー!」

 

「あ、はい」

サーッと滑っていくコルニを見送り、今後の事を考えながら十一番道路へ踏み出した。

 

 

ミロワール通りを歩きながら力押しになるのは今は仕方ないと切り替え、探索しながら進んでいるとホロメールが届いた。

 

『やー! もうすぐシャラシティに着くんじゃないの。凄いね! ポケモンとカロスを巡る旅は順調だね! そうそう! シャラシティにはメガシンカに詳しい人……その名もメガシンカおやじって人がいるんだ。みんなにも連絡しておいたから、よければ訪ねてみるといいよ!』

 

「プラターヌ博士、久々だったな。てかメガシンカおやじ? 最初からそれを教えてくれていればよかったんじゃ……」

 

 

そのまま映し身の洞窟に入るとローラースケートに自転車が禁止と表示されていて、歩きで洞窟内を見て回っている。

 

「しかし天然の鏡って凄いな。さっきティエルノがフラッシュくれたけどここでは必要ないか」

 

「フィア!」

 

「君は何で勝手にボールから出てきてるんですかねぇ……レッドさんのピカチュウ以外にこんな事が出来るポケモンは初めて見たわ」

 

「フィアフィア!」

 

「これでニンフィアが人間の女の子だったらたまらんシチュエーションなんだがなぁ……出来ればシオニーちゃんみたいな土下座のスフィアを持ってる子を希望」

ニンフィアが触覚を伸ばしてツカサの右手に絡め、並んで歩きながらそう呟いていた。

 

「ん……? え、いや、待った! 私達も出ようと思えば出れる的な震え方しないで!」

現在の中で加入が一番遅いニンフィアがツカサと並んで歩いているのが悔しいらしく、腰のボールがガタガタいい始めて焦っている。

 

 

皆を諌めながら何とか洞窟を抜け、シャラシティに到着していた。

 

「はい、大人しくボールに戻ろうねー」

そして町中でもボールに戻ろうとしないニンフィアを戻そうと必死である。

 

 

じゃれつき甘えられメロメロになりながら二十分かけてどうにかボールに戻し、一度休憩しようとポケモンセンターに足を運んだ。

 

入るとニンフィアとじゃれている姿を見ていた者達が何人も居り、ツカサを見てほっこりした顔を向けてきていた。

 

「今まで俺が捕まえたりしたポケモンの中でダントツでアグレッシブ。リザードンだけ♂で肩身が狭そうだし、出来るなら六体目は♂にしてあげたい」

寧ろ最後も♀でガチハーレム状態にしてあげるのも一興。

 

そのままフレンドリィショップで自分用とポケモン達用におやつを購入し、外に出て迷惑にならない場所で全員ボールから出している。

 

「『シャラシティ 目覚めの街』やだかっこいい……」

芝生に座り人間用ポフレを食べながら、少し離れた場所にある看板を見て呟いていた。

 

「……フィア!」

 

「お?」

 

「……」

皆が普通にポフレを食べている中、ニンフィアはくわえてツカサの前まで来てそれを脚に置き目を閉じて口を開いている。

 

「あざといけど可愛い。ほら」

 

「……」

あーんしてもらってモグモグ食べ始めていた。

 

………

……

 

ティエルノとトロバと合流し、三人で手分けをしてメガシンカおやじを探し始めた。

 

街の奥にあるマスタータワーにいると聞いて向かい、途中ティエルノからすごそうな石を貰って先に行くように言われて歩いていく。

 

巨大な建造物を見上げながら中に入ると、妙なマークの付いている扉の部屋が中央にありその上には巨大なルカリオの石像が乗っていた。

 

「とりあえず入ってみるか」

 

 

中に入ると眉毛が凄いお爺ちゃんとコルニが居り、入ってきたツカサに気がつき振り向いている。

 

「おっ? お前さん、ツカサだな。プラターヌから言付かっているぞ。わしがメガシンカおやじ! プラターヌの知り合いだな」

 

「はじめまして、メガシンカおやじさん」

 

「おっとメガシンカおやじというのは本当の名前ではないぞ。ほれお前さん、ちょっとこっちにおいで」

 

「あ、はい」

手招きをされたので近づいていた。

 

「ん? 一人なのか。ポケモン図鑑を渡されたのは五人と聞いていたが。お前さん以外誰もおらんではないか?」

 

「いえ、多分もうすぐ来ますよ」

 

「あっ。ツカっちゃん、そちらは?」

ツカサの言葉と共にティエルノとトロバが入ってきて尋ねていた。

 

「こちらの方がメガシンカおやじさんだよ」

 

「人呼んでメガシンカおやじ!」

 

「あっ、自分はティエルノです」

 

「ぼくの名前はトロバと言います」

 

「おう! よろしくな、プラターヌの弟子達よ! とはいえまだ三人か……おっ? そのすごそうな石はお前さんが見つけたのかね?」

 

「いえ、これは友人が」

 

「わわわ! えーっと、見つけたのはツカっちゃんだよねえ!」

 

「誰が見つけてもいいのだ。それよりも正直でいる事が大事なんだよ。嘘を吐くと真実は曇り消えるからね。もっともそのすごそうな石はタダの石……それも真実」

 

「それなら知り合いのとある石マニアにプレゼントしてもよさそうですね」

 

「という事はみんな揃ったのか?」

何故かメガシンカおやじはそう言うと部屋から出ていった。

 

 

「セレナとサナが来たのに気がついたのかな?」

 

「ねっ! シャラシティに来たんだね! ルカリオったらボールの中で物凄く喜んでる!」

 

「おー……いいから、お前達は対抗しないでいいから! 喜びでアピールするならまだしもガタガタ動くのはやめて!」

コルニの言葉に対抗心を燃やしたのか、腰の五つのボールがガタガタ動いていた。

 

「わっ、仲良しなんだね! さ、あたし達もあちらに行きましょうよ!」

 

 

 

部屋から出るとサナとセレナが待っていて、最後にツカサが出てきたのを見ると二人とも手を振ってくれた。

 

「うむ! 揃っておるようだな」

 

「ツカっちゃん!!」

 

「元気にしてた?」

 

「みんな揃うのは久しぶりな感じです」

 

「そうだねえ、七番道路以来だねえ」

 

「まだ旅に出て一ヶ月経ったかくらいなのに、かなり懐かしく感じるなぁ」

しみじみと呟くツカサに皆もまだそれくらいなのかと驚いていた。

 

 

「メガシンカおやじさん、ずっと気になってたんだけどそちらの方は?」

 

「孫のコルニ、シャラシティのジムリーダーだよ。さてとプラターヌの弟子達よ、みんな揃ったようだね。ではメガシンカの説明を始めさせてもらおうかの」

 

「よろしくお願いします」

 

「ポケモンの進化についてはばっちりわかっておるよの」

五人それぞれの顔を見て言っている。

 

「ポケモンの進化でしょ。えーっと多くのポケモンは戦わせて強くなると進化します! それに道具を使うことで進化するポケモンもいるよ♪」

 

「他にも懐く事で進化するポケモンもいるし、決められた場所でのみ進化するパターンもあるわ」

 

「特定の技を覚えさせたり、朝昼晩で進化するのもいるな」

 

「そう! 進化のバリエーションは更に色々あるはずだよね。そしてメガシンカとは進化を超える進化なんだ!」

 

「そうだとも! メガシンカとはこれ以上進化しないと思われていたポケモンの更なる変化! 一層のパワーアップ!」

 

「それって例えばヒトカゲ、リザード、リザードンならリザードンが更に進化するとおっしゃるのですか?」

 

「うん! その通りだよ。ただすべてのポケモンがメガシンカできるわけじゃないの」

 

「先程変化と言ったのにはちゃんと理由がある。メガシンカは進化と異なり一定時間で終わる……つまり一時的な進化なのだよ」

 

「えー!? 進化なのに戻っちゃうの?」

 

「うん……メガシンカは特別な進化だから。とはいえメガシンカについてはまだまだわかってない事ばかり。今わかっているのは特別な道具が必要なこと、そして何よりポケモンとの信頼関係が大事ってこと」

 

「信頼……絆ってことね!」

 

「さてとメガシンカにはポケモンにメガストーン、トレーナーには未知の石を埋め込んだメガリングの二つが必要となる。プラターヌから図鑑を託されたお前達全員にわけてやりたい……わけてやりたいのだが……」

 

「だが……? ってなあに。何だか歯切れ悪ーい!」

 

「すまぬ! 今のところメガリングは一つしかない……本当に貴重なものでな、それゆえ研究も進まんのだ。というわけでお前達、メガシンカの継承者に挑む人間を誰か一人決めてくれ」

 

 

「自分はポケモン勝負……あんまり自信ないからねえ。メガシンカなんて凄いこと、うまく使いこなせないよ」

 

「あたしも! 思い出になるだろうし、面白そうだけどね」

 

「まずはポケモン図鑑を完成させたいです。あれもこれも欲張るとどちらもうまくいきませんから」

 

「残るはツカっちゃん達だね」

 

「二人ともトレーナーとしての腕前申し分ないよねえ」

 

「ツカサ、余計な事は考えないで。貴方が年上だからって理由で譲られても嬉しくないわ」

 

「……何でわかったの?」

興味はあるが年上だしセレナに譲ろうと考えていたのを読まれて驚いていた。

 

「ツカサの考えそうな事くらい簡単にわかるわ。だから勝負しましょう」

 

「ふっ……トレーナー同士だもんな」

 

「ここで競いあってアサメタウンのナンバーワントレーナーを決めるのもいいでしょ」

 

「隠してたけど実は俺、かなりの負けず嫌いなんだ。だから俺はメガシンカで仲間達と共に更に上を目指すよ」

 

「メガシンカを使いこなして、アタシだけの価値を手に入れるの。トレーナーであるアタシを信じてここまで来てくれた、ポケモン達の為にも……! ツカサ達の強さ……見ているだけで伝わってくる。だけど負けない! ううん! 絶対に勝つんだから!」

 

互いにそう言って笑うと距離を取り、腰のボールに手をかけ……

 

 

「行っておいで、ニンフィア!」

 

「行きなさい、ニャオニクス!」

 

対面した二体はにらみ合いながら指示を待ち、いつでも動けるように軽く動いている。

 

 

「ニンフィア、かみつく!」

 

「ニャオニクス、ひかりのかべ!」

 

ニャオニクスがひかりのかべを張るが関係ないとニンフィアが飛びかかり、思いきり噛みついてから飛び退いて再び睨みあっている。

 

 

「もう一度かみつく!」

 

「フィア!」

 

 

「ニャオニクス、チャームボイス!」

 

「ニャオ!」

 

ニャオニクスの可愛らしい声を受けてニンフィアが不快そうにし、少し荒々しく強くかみついて再び飛び退いている。

 

 

「でんこうせっか!」

 

「……!」

 

「ニャオニクス、避け……あっ!」

 

「ニャ……」

 

出会った時の技でニャオニクスを吹き飛ばし、そのままダウンさせている。

 

 

「ニンフィア、よくやった」

 

「行って、アブソル!」

 

セレナの二体目であるアブソルが現れ、獲物を狙う狩人のようにニンフィアを見ていた。

 

 

「ニンフィア……ムーンフォース!」

 

「アブソル、避けて!」

 

「もう遅い! 俺のニンフィアは外さないし逃がさない!」

 

『俺の』という言葉を聞いたニンフィアは、避けようと飛び跳ねて翻弄しようとするアブソルの動きを見極め、何度目かの着地するタイミングにムーンフォースを直撃させて壁まで吹き飛ばしてダウンさせていた。

 

 

「い、一撃……?」

 

「え、何あれ怖い」

 

セレナは一撃でダウンしたアブソルを見て呆然とし、指示を出したツカサはまさかのニンフィアの強さに怖がっている。

 

 

「アブソル、お疲れ様……? ハリボーグ!」

 

「ニンフィア、お疲れ。さぁ、行こうかリザードン!」

 

見ていたサナ達はもうリザードンに進化している事に驚き、セレナは相性の悪さに苦い顔をするも諦めるわけもなく

 

 

「ハリボーグ!」

 

「真剣勝負だから遠慮も容赦もしないよ。リザードン、つばめがえし!」

 

ツカサをチラっと見たリザードンがコクリと頷き……

 

 

「は、速い……!」

 

「飛行訓練の賜物だよ。低空飛行に急にターンするのも俺をターゲットに特訓したんだ」

 

「は?」

 

 

特訓の成果を見せようと更に加速している。

 

ハリボーグが必死に捉えようとしている背後から尻尾による強烈な一撃で浮かし、目があった途端に強烈なストレートを叩き込んで吹き飛ばして着地していた。

 

 

「なに今のかっこいい連撃。つばめがえし……なのかあれ」

 

「……アタシの負け、か」

目を回しダウンするハリボーグをボールに戻しながら呟いていた。

 

「お前、つばめがえしにアレンジ入れるとかイケメンすぎんだろ……」

 

「グオォ!」

 

 

労いボールに戻すと満足そうなセレナが声をかけてきた。

 

「本当に強いのね。パートナーとの絆、感じたわ。負けて悔しいけれど……うん、ツカサならポケモンをメガシンカさせられるよ絶対!」

 

「ポケモン勝負だから勝ち負けはあるけど、どちらのポケモンもトレーナーも素敵だった! メガシンカはポケモンを強くする手段の一つでしかないよ。メガシンカさせずともポケモンの強さを引き出すトレーナーは多くいるでしょ?」

 

「あー……」

シロナにダイゴといったやたら構ってくる面々の強さを思い出している。

 

「ではツカサ! まずはジムリーダーのコルニに挑むがいいぞ! メガシンカしたリザードンとお前さんのコンビ、楽しみだな」

 

「あたしのルカリオに気に入られた不思議なトレーナーさん! 貴方が継承者に挑むのにふさわしいトレーナーかポケモンジムで試させてね! もちろん他のお友達もジムに挑戦してよ!」

 

「うし、なら一度ポケモンセンターで休憩してから行くか」

コルニがマスタータワーから出ていくのを見送り、一度休憩を取りに向かうことにしていた。

 

「ツカサがメガシンカを使えるようになれば博士も喜ぶんじゃない? 最高のトレーナーの一つの形だからね」

 

「そっかー。博士もおっしゃってたもんね、最高のトレーナー目指しポケモンとの旅を楽しんでって」

 

「ティエルノさん、ぼくらも最高のトレーナー目指しませんか」

 

「オーライ! サイコーめざそー! じゃあツカっちゃんにサナぴょん、また会おうねえ!」

セレナが去り、二人もそう言って去っていった。

 

「わざわざ比べなくても人もポケモンもみんな違う。それでも競いあってお互い高めあう事ができる相手がいるのは幸せよな」

 

「そうっすね」

 

「ツカっちゃんってこれからもセレナと競いあって強くなっていくと思う! みんなで旅してよかったね♪」

 

「そうだな。セレナとライバル関係かー……初めてのライバルって考えたら燃えるわ」

 

そのまま上がったテンションでポケモンセンターに向かっていった。

 


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