翌朝早くポケモンセンターを出て七番道路、リビエールラインをゆったり歩いていく。
途中の分かれ道で農園のようなものが見えたがスルーし、カビゴンが眠る橋まで眠そうなサナと共に向かっていった。
「おや、君達。もしかしてポケモンの笛を借りてきてくれたのかい?」
昨日と同じように橋にはカビゴンがおり、胴着姿の男性達も立っていた。
「ええ、これです」
ツカサは鞄から笛を取り出すと胴着姿の男性に手渡している。
「……うん! 寝ぼけたカビゴンが襲ってくるかもしれないけど、笛を吹いてもいいかね?」
「はい」
「うん……手に馴染むね。じゃあ始めるとするかね」
そう言うと笛を吹き始めた。
まだシャキッとしてない頭に笛の音が響き、橋で寝ていたカビゴンの目もパッチリ開きあくびと共に襲いかかってきた!
「リザード、りゅうのいかり!」
「グルル……!」
「ゴン」
カビゴンはりゅうのいかりを平然と受け、オボンの実を食べながらたいあたりでリザードを弾き飛ばしていた。
「もう一度りゅうのいかり!」
「!」
「……ぺろ」
たいあたりで空に飛ばされながらもカビゴンに向けてりゅうのいかりを放って着地、直後見た目からは想像出来ない機敏な動きで接近してきたカビゴンの舌でなめられていた。
「よっと、それじゃあ……モンスターボール!」
前もって握っていた空のモンスターボールを投げ、それがカビゴンに当たり……
「カビゴン、ゲットだぜ!ってなー」
抵抗もなく捕まり、ボールが手元に戻りカビゴンの図鑑も自動で埋まっていた。
「す、すごーい! カビゴン捕まえちゃったよ!」
そんなツカサをサナがキラキラした目で見ていた。
直後トリミアンの鳴き声が聞こえて振り返ると昨日のおっさんとトリミアンが居る。
「私はポケモンの笛を飾っておく事しか出来ない。だが小さな頃から吹いていた君はいい音色を響かせる。……私のトリミアンも笛の音色が好きなようだ。もちろん私自慢のトレビアン花火の次だがね」
「あ、ああ……そうだね」
何が言いたいのかわからず胴着姿の男性は困惑していた。
「ただ昔の方がもっともっといい音色だったな。笛は預けておくからもっともっと練習するといい」
そう言うとトリミアンと共に去っていった。
顔を見合わせていた胴着姿の男性ともう一人の男も笛を持って立ち去り、ツカサとサナだけがその場に残されている。
「今のって仲直りのつもり? とりあえずよかったよかっただね!」
「何かしら心境の変化があったんだろうね」
「さてカビゴンちゃんが寝てた先、何が待ってると思う?」
「ワクワクするな。ここからは別行動、またどこかで会おう」
サナにそう告げてローラースケートで颯爽と去っていった。
直後トロバとティエルノに捕まり三人で育て屋の見学をし、そのまま外に出て二人と別れてからリビエールラインを進み始めた。
バトルシャトーという建物に惹かれて入ってみると何故かビオラが居り、驚いているとこちらに気がつき笑顔で近づいてきた。
「あら、久しぶり。ツカサ、貴方の爵位は何?」
「爵位?」
「えっ? 爵位ないの!? 貴方の強さなら持っていても全然おかしくないのに……!」
「え?」
「爵位っていうのはね、ここバトルシャトーで実力が認められた一握りのトレーナーにのみ与えられる称号なの!」
「ビオラさん、こちらは?」
興奮しながら説明するビオラの背後からダンディな男性が現れ、ツカサの事を尋ねている。
「初めまして、私はツカサと申します」
「これはご丁寧にどうも……おお! バグバッジをお持ちという事は、ビオラさんに認められたトレーナーさんのようですね。初めまして、私イッコンと申します」
「私、推薦しますからツカサに爵位を与えるというのは? かなり強いトレーナーですから、きっとバトルシャトーの為になりますよ」
「ほう、なるほど……! ビオラさんの推薦でしたら資格としては十分でしょう。それに……私もただならぬ何かをツカサさんから感じます」
「えっと……そうですか?」
何故か急に二人によいしょされて照れている。
「ツカサさん! バロンの爵位を今から貴方に授与しましょう!」
「俺がバロン……」
ナイト・オブ・スピアーという言葉が脳裏を過っていた。
「爵位をお持ちの方は同じく爵位を持つ方々とここで勝負できます。男性ならバロン、女性ならバロネスは爵位としては一番下ですが……ここで勝負を繰り返し勝つ事で爵位も上がります。ではツカサさん、ビオラさん失礼いたします」
説明をしてくれたダンディはそのままバトルシャトーから出ていってしまった。
「ツカサ、あたしも爵位を持っているの! サイコーの爵位を目指してお互い競い合えたらいいよね!」
そう言ってウインクをしてビオラもバトルシャトーから出ていった。
「何それ楽しそう。でも次の町に行かないと……」
惜しみながらもバトルシャトーを後に……
「何かヴァイカウントの爵位になった」
我慢できずに一通り回って戦ったらしく爵位が上がっていた。
そして今度こそはと後ろ髪を引かれながらもバトルシャトーを後にした。
「絶対また来よう……あ、セレナ?」
少し歩くとセレナが立っている姿が見え、思わず声をかけている。
「久しぶり。ポケモンバトルがしたいんだけど……ちょうどいいわね。ティエルノとトロバのコンビにアタシとツカサで挑みましょ」
「オッケー」
背後から走ってくる気配を感じながら軽く了承していた。
「ツカサ、お隣さんだしこの組み合わせでいいよね」
「ああ、かまわんよ」
そう返すと二人して腰のモンスターボールに手をかけ、二人が来るのを待っている。
二人に了承を得てからダブルバトルが始まった。
特訓の成果と言う名のレベルの暴力で軽く蹴散らしてしまい、特訓しすぎたかと少々焦っている。
「……みんなトレーナーとしてのスタイルが違って面白いのね。さてと、次に行けるのはコウジンタウンね」
「なら俺はお先に失礼するよ」
サーッ!とローラースケートで颯爽と立ち去っていった。
「ツカサ、ポケモンを育てるのが上手だったわ。お隣さんで……ふふ、やっと見つけた私だけのライバル……」
去っていく背を熱く見つめ、自分だけのライバルなんだと独占欲が芽生え始めている。
走り去って少し行った場所に階段があり、そこは普通に歩いて上がっていた。
「セレナ、三つ下なのに妙な色気があってドキドキしちゃう……いや、二つ下のメイちゃんの時の方がやばかったか。やたら甘い声で名前を呼んでくるし、めっちゃ腕組んできたし、ポケモンセンターに泊まる時は必ずツインだったしなぁ」
表には出されてないが向こうの一目惚れからスタートしたのでガードが緩く、そんな状態でおもちゃとはいえ指輪を貰った事で好感度もカンストしている。
「……お、洞穴だ。看板が『この先 地つなぎの洞穴。こちらコウジンタウン近道』向こうの出口がすぐに見えてるな」
中に入りすぐに洞穴を抜けると八番道路、ミュライユ海岸に出た。
「お待ちなさい!」
「うおっ!」
「あはは! 驚かせてゴメン。リザードも君も元気?」
「あー……ジーナさんにデクシオさん、お久しぶりです」
いきなり草むらから出てきた二人に驚いたがちゃんと挨拶を返していた。
「広大なカロス地方を一つの地方図鑑だけでカバーするなんて何て事!って思わない?」
「という事でポケモン図鑑をパワーアップさせますね」
「それならお願いします」
図鑑を二人に手渡しワクワクしながらアップデートされるのを待っている。
「はい、出来たわ。新たな出会いが人とポケモンを成長させるの! それではおいとまするわ。ボン ヴォヤージュ!」
アップデートが終わった図鑑を手渡し、二人は再び草むらへ入っていった。
「……あー、驚いた。きんのたまおじさんに俺にだけ生暖かいきんのたまを手を握られながら渡された時くらい驚いた」
八番道路が崖の上を通る事に気がつき、ゆっくり慎重に進んでいる。
怖いもの見たさで崖ギリギリまで行って下を見て、ビビりながら後退していた。
そしてコウジンタウンに到着し……
「お隣さん」
「え、セレナ?」
さっきまで居なかった少女の声に振り向くと、崖の方からローラースケートで駆けてくる姿が見える。
「ここがコウジンタウン。水族館を通り抜ければショウヨウシティだけど……まずはカセキ研究所でカセキの話を聞くでしょ? メガシンカに関わる不思議な石の事も分かるかもしれないし」
「カセキ……一度ポケモンセンターに寄ってから行こうかな」
その場でやたら見てくるセレナと別れてからポケモンセンターに向かい、早朝にゲットしたカビゴンを預けている。
………
……
…
そのままポケモンセンターでポケモン達とおやつを食べ、少しダラダラしてからカセキ研究所に向かった。
途中でお姉さんに声をかけられ、余っているからと技マシンを手渡されている。
「ツカサ」
「あっ……」
どうやら待っていてくれたらしく、少々ジト目なセレナが入り口付近にいた。
そのまま逃げないように手を掴まれて連れていかれている。
「ようこそ! カセキのロマンに導かれた学究の徒達よ!」
男性と女性の研究者が二人を出迎えてくれていた。
「アタシはセレナ、こちらはツカサです。いきなりですがメガシンカについて何かご存知でしょうか?」
「よろしくお願いします」
「おぉ、君達がプラターヌ博士の! 聞いてますぞ。メガシンカねえ……残念だが不思議な石が関係する……それくらいしかわかっていないのです。だが君達! 彼の弟子ならポケモンのカセキは知ってるかね?」
「知ってますよ」
レッドからひみつのコハクを貰っており、今も大切に部屋に飾ってある。
「素晴らしい! 流石プラターヌ博士の弟子ですなあ! そうなのです! カセキとは古代のポケモンの名残り! 現物を見る為、採掘場に行くべきですぞ!」
「そうですか。メガシンカの事は分からないと……」
「あら! カセキから復元出来るポケモンがそのメガシンカに関わっている可能性もあるわ。カセキの復元なら輝きの洞窟にいる、助手クンなら詳しいわよ!」
「どうしよう、折角だしその助手さんに会おうかな……ツカサは輝きの洞窟に行くの?」
「とりあえず俺は行ってみるよ」
研究所を後にして採掘場へ行く為の九番道路、トゲトゲ山道へと足を向けている。
「母さん、かなり有名なサイホーンレーサーだったんだな……やたらサイホーンばかり家に居たし、オーキド博士の研究所にもたくさん預けてたし。とりあえずよろしくね」
座ってこちらを見ていたサイホーンの背に乗ると立ち上がり、ノシノシと歩き始めた。
邪魔な岩を頭突きで粉砕しながら進んでいく。
「確かこう……うおっ!! はっはー! 風のように走れサイホーン!」
速く走らせるコツをマサラタウンに居た時に教わっており、スピードを出しながら巧みに操り突き進んでいく。
すぐに目的の洞窟近くに着き、降りてからサイホーンの撫でられて気持ちのいい場所を撫でて待っているようにお願いしていた。
「やっぱサイホーンは可愛い。母さんとレースに出てたサイホーンは赤かったなぁ……今はオーキド博士の研究所に併設された広場でのんびりしてるけど」
世話をしに行くとまだ現役だとばかりに突っ込んでくるらしく、かつての父親のように何度か吹き飛ばされていたりする。
色違いのサイホーンとツカサの母はサイホーンレースでは伝説のような存在になっており、ファンが訪れて写真を撮ったりとマサラも少し賑わっていた。
吹き飛ばされても平然と起き上がるツカサに見ていた者達が驚いたり、マサラ人らしい一面も見せてネット上ではちょっとした都市伝説扱いをされている。
目的の輝きの洞窟に入ると植物が青く輝き、水晶も緑に輝いて神秘的な風景を作り出している。
そして次のエリアと思われる広い場所に到着すると先客が居り
「あらま? 物好きなトレーナーがやってきちゃったよ。いいか! 俺らは泣く子も黙るオシャレチーム、フレア団!」
赤いスーツに赤いサングラスの男が近寄ってきていた。
「……チッ」
アクア、マグマ、ギンガ、プラズマといった組織と戦い続けた経験から、こいつもダメな奴だろうとツカサの機嫌が悪くなっている。
「フレア団の目的は俺達だけがハッピーになる事。その為に他のトレーナーやポケモンがどうなってもいいのさ!」
「……」
「あんたまだ子供でしょ。まだ消えたくないでしょ?」
「はぁ……ご託はいいんでそっちが消えてくれます?」
「おしゃれなスーツも汚れるスマートじゃないやり方だけど、消し去ってやるさ! 行けー、デルビル!!」
そう言いながらダサいポーズを決めて仕掛けてきた。
「蹴散らすぞ、ゲコガシラ!」
二体がボールから出て向き合い……
「みずのはどう!」
「ゲコッ!」
間髪入れずに放たれた水の波動がデルビルを飲み込み吹き飛ばした。
「一撃!? くっ、行けズバット!」
「もう一度みずのはどうだ!」
「ゲコゲコ!」
再び放たれた水の波動がズバットをデルビルと同じように飲み込み、洞窟の壁まで吹き飛ばしダウンさせていた。
「……負けちまった俺はスマートに崩れ落ちるぜ」
「いや、こいつマジで弱くて草生える」
フレア団も大した事ない組織だとツカサは心に刻んでいる。
「……あらま? 子供のクセに強いポケモントレーナーだ。だけどよフレア団は俺だけじゃないんだぜ」
「770円しか持ってないみたいだし、負け惜しみで当たり前の事を言うとかダッサ」
辛辣にそれだけ言うとさっさと奥に向かい始めた。
お姉さんに貰ったいわくだきの技マシンを使いそれをリザードに覚えさせ、イライラをぶつけるかのように砕けそうな岩を壊させていた。
「うおっ! イシズマイか……四番目の仲間はお前に決めた。八つ当たりみたいな真似して、隠れてた岩を壊しちゃったし」
モンスターボールを投げるとあっさり捕まり、手元に戻ったボールを腰のボールホルダーに付けている。
「♀でのんき、イタズラが好きなのか。リザードよかったな、ハーレムだぞ」
先に進むとフレア団が二人おり、相手をしようと腰のボール二つに手を伸ばし……
「ツカサ!」
「セレナ? 君も来たのか」
「フレア団が二人……じゃあ、こちらも二人で戦わないとね」
「ああ、そうだな」
互いに顔を見合わせてニヤッと笑った。
「さっきも別のフレア団と戦ったの。……アナタ達フレア団がハッピーになるなら好きにすれば?」
「だが俺達を消し去るなんてありえないし、許せないんだよなぁ」
息ぴったりな二人のタッグを止められるわけがなく、フレア団のズルッグとグレッグルをあっさりと蹴散らしている。
「ちっ! フレア団御用達のオシャレスーツが汚れたぜ」
「カセキを復活させればいい金儲けになるのよ!」
「あいつらの行動理念がクソダサいんだよなぁ」
「さあ、カセキ研究所の助手さんを探しましょう」
フレア団はそのまま放っておいて奥まで向かうと助手と思われる人が立っていた。
「あの」
「ツカサ、見つけたの?」
「ん? やあ、君達もカセキを探しに来たのかい?」
平和そうに発掘したと思われるカセキを手にニコニコしている。
「大丈夫……なの? フレア団来ませんでした?」
「ふれあだん……? なにそれ? ポケモン?」
「あー、それならいいっす」
「カセキ探しに夢中だったみたいね」
「ラッキーだね! 君達、今二つカセキを見つけてさ。とはいえ既に見つけた物だから、君達に分けてあげるよ! アゴのカセキとヒレのカセキどっちにする?」
「じゃあ、セレナが先に」
「ツカサが先でいいわ。そわそわしてるんだもの」
「うっ……じゃあ、アゴのカセキをお願いします」
「それじゃあ、アタシはヒレのカセキをいただくわ」
二人とも助手にカセキを手渡され鞄にしまっている。
「カセキはカセキ研究所でポケモンに復元しますよ! それでは一足お先に」
助手はそのまま満足そうに帰っていった。
「助手さんを探しに来たらフレア団なる不穏な連中が居たと……無事に旅を続けるにはもっと鍛えた方がいいかも」
「ああ、特訓して強くならないとな」
今のままだと幹部が出てきた時に力負けすると考え、更なる特訓をする事を考えている。
「となれば……ショウヨウシティのポケモンジムに挑んでみようかな」
「それがいいかもな。俺も特訓してから挑もうと考えてる」
一度バトルシャトーまで戻ろうかと考えている。
………
……
…
結局バトルシャトーまで戻り、数日入り浸って様々なバトルをして戦う事を慣れさせていた。
アール、マーキスと称号も上がりそんなバトルシャトーでの強敵達との戦いで、鈍っていた腕が二年前にプラズマ団の相手をしていた時くらいまで戻っていた。
同時に仲間達もかなり成長しており、ツカサ自身はまだまだ本調子ではないが既にフレア団の幹部との戦いになっても遅れは取らない程。
「後はジム巡りをしていけば昔の俺……やっとスタートラインに立てそうだ。お前達も格好良く強くなったなゲッコウガ、リザードン、ファイアロー」
「……」
「グオオッ」
「キュイイ」
ポケモンセンターに併設されたバトル施設で最終進化を遂げた面々を出して労いながら呟いていた。
ゲッコウガはツカサの傍で腕を組んで静かに佇み、リザードンはツカサの後ろから頭を肩に乗せて甘え、ファイアローはリザードンの肩に乗っている。
「メガストーンは首から下げられるように、アクセサリーみたいに加工したから」
そう言うとお洒落に仕上げたメガストーンをリザードンの首から下げた。
バトルシャトーで知り合った面々の知り合いに格安で加工してもらい、ツカサにはそれを付けたリザードンが他のリザードンより格好良く見えている。
「うん、似合ってる。それじゃあ……戻ろうか。ちょっと強くなりすぎた気もするけど」
イシズマイ以外はレベルで言えば40近くあり、レベルという表現がないこの世界でも仲間達から滲み出る強者の風格にツカサも特訓はもういいかと考える程。
その晩はコボクのポケモンセンターに泊まり、翌朝早くにコウジンタウンへ再来訪した。
「『コウジンタウン 紅く舞う土煙』ちょっとかっこいい。水族館の無料の通路を通って下に行くのか」
無料の通路でも金のコイキングの像は見え、そのまま八番道路のミュライユ海岸へと出た。
「何か水着のお姉さんがダウジングしてるのをじっくり見てたら、欲しがってると思ったのか余ってたダウジングマシンをくれた。やっぱ海岸の……水着を……最高やな!」
久々に水着のお姉さんを見てテンションがおかしくなっている。
ダウジングしながら水着のお姉さんとだけバトルをして進み、ショウヨウシティに到着していた。
かなりの距離を強行し、海岸で鼻の下を伸ばしながらバトルをしていたからか既に日も暮れている。
仕方なくポケモンセンターに泊まる事にしたようだが、バトルシャトーでの賞金だけで六十万近く貯まっていてホテルに楽勝で泊まる事が出来るのに気がついていない。
「浜辺でピクピクしてたラブカス捕まえたけど、どうしよう……」
「き、君! そのラブカスと私のハガネールを交換しませんか?」
聞き耳を立てていた男性がガタッ!と椅子から立ち上がり、ツカサの元へと近づいてきた。
「え? いいですよ」
「それじゃあ……これで成立ですね。ラブカス、こんにちは。これからよろしくお願いします」
「それではー」
ハガネールを即預けて夕飯を食べに向かっていた。
「うーん……」
妙な事を口にしながらスマホを使ってトレーナーの公式交流サイトを見ている。
各地方の名物トレーナーを見て懐かしく思ったり、母親がサイホーンレース界のレジェンド扱いされているのを見てなんとも言えない気分になったりしていた。
「うん、まぁ、こうなるよなぁ……」
既にツカサスレは本スレと探すスレとに別れており、どちらにも目を通している。
本スレでは知り合いのようなそうでないようなコテが大量に居て、ほぼ全ての事が明らかにされているような状態だった。
特に元サイホーンレーサーであるサキの息子という情報が一番インパクトがあったらしく、サイホーンレーススレからも人が来てちょっとしたお祭り状態である。
「これで大半の人は一般トレーナーから親が凄いトレーナーに認識が改められたわけか」
珍しく素麺があったようで大きな器に入ったそれを美味しく食べ始めた。
部屋に戻るとお約束のようにミアレの彼女の姉のジョーイさんにサインをし、コウジンには寄らなかったのかと聞かれて寄りはしたが泊まりはしなかったと告げている。
「あらー。姉さんガッカリしてるかもしれないわー」
「あはは……」
カロスに住むジョーイさん一族による包囲網である。