大陸に進出した日本の拠点である城塞都市ゴルグ、日本が進出する前は周辺諸国へ度々ちょっかいをかける厄介者な扱いを受けていた国だったが、そんな国でも友好国は存在し、
ゴルグ陥落の報を受け激昂した国も少なくは無かった、日本の攻撃によって死亡した貴族の中にも友好国から嫁いできた者も多く、日本が占拠している城塞都市を奪還すべく、
侵攻を企てる国も多かった。
『我が名は、カーマ家、次期領主、カーマ・セドック!!我らルーザニアの盟友ゴルグガニアを滅ぼし、城塞都市を不法占拠する不届きものニッパ族よ!即刻降伏せよ!!』
唾を飛ばしながら、青銅鎧を身にまとった壮年の男が怒鳴り声に近い声量で、日本ゴルグ自治区の城壁付近で日本に降伏を勧告している。
「あー・・・また来たよ、この手の輩・・・。」
「盗賊に扮していたり、今回みたいに堂々と正面から喧嘩売ってきたり、本当にうんざりするよ。」
「で、ゴルグ付近の集落や街道に居た商人たちはどうなっている?」
「ご愁傷様です。」
「・・・つまり、そういう事か、外道どもめ。」
双眼鏡で丘を覗くと、丸太で作られたレールの様なものを敷いて、投石器らしきものが、みすぼらしい姿の奴隷に引かれてくるのが見える。
「あんなのじゃ、防壁に傷一つ、つけられないだろうに・・・。」
「あの奴隷、多分近くの村を襲った時に調達した者だろう、かわいそうに・・・。」
「ゴルグの開発がある程度まで進めば、近隣にも被害を出させないが、連中はそこまで待ってくれないからな、全く余計な事をしてくれるぜ。」
馬のような生物に乗り、降伏するよう勧告していた男が丘の上の本隊に合流すると、青銅剣や青銅斧などを装備した兵士たちが叫び声を上げながら突進を開始する。
『ゆくぞ!皆の者!ルーザニア王ハイ・ヴォックの命を受け、いざ、蛮族共を打ち取らん!!』
『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
ルーザニアの兵士たちの雄叫びが、束なり、まるで巨大な獣が咆哮するような音量になり、空気がピリピリと震える。
「見ろよ、この前の襲撃の時よりも、梯子の長さが延長されているぜ?」
「前回は盗賊に扮していたが、全滅させた後その場に残っていた梯子は全然長さが足りていなかったしな、やっぱりと言うかあの国が黒幕だった訳だが・・。」
「盗賊の洞窟に籠っていた奴らの所から証拠品を押収して、盗賊のせいだ、我が国には関係ないと白を切る事が出来なくなったと思ったらこれだよ。」
「まさに脳筋な発想だな、さて、もう十分に引き付けたんじゃないか?」
「そうだな、そろそろだ、指示を受けるまで引き金を引くなよ?」
敵兵が城壁に近づいてくると、城壁上部に備え付けられた銃座からMINIMIや89式の銃撃が雨のように降り注ぐ
『な・・・なんだぁ!?敵の魔光弾か!?・・がっ!?・・・げぇぉぁ・・。』
『怯むな!進め!進め!蛮族共を滅ぼぴゃっ!?』
城壁の上から撃ち込まれる十字砲火に、カールグスタフや迫撃砲が加わり、騎兵と歩兵の被害は更に増える
『ああああぁぁぁぁっ!!蛮族共め!おのれ蛮族共め!分不相応にも蛮族が我らを打ち倒そうなどおぉぉぉぉ!!』
騎兵の絶叫と共に、丘の上の投石器から岩石が放たれる、射程が足りなかったのか、城門手前に落ち、何回かバウンドした後、転がり、ゴツンと勢い無く城門にぶつかる
「おぉ、実際に見ると凄い迫力だな、直撃しても傷つかないけど、一応、攻城兵器だしな、投石器を破壊しろ!!」
二基のL16 81mm迫撃砲による砲撃で投石器を次々と破壊させ、敵に動揺が走る。
『馬鹿な!炸裂魔光丸だと!?あの距離まで届くと言うのか!?』
『ば・・・化け物がぁぁぁぁぁっ!!』
その日、ルーザニアが送り出した襲撃部隊は全滅し、日本はルーザニアに損害賠償を始めとする様々な要求を、かの国に突きつけた。
ある程度予想はついていたが、ルーザニアは徹底抗戦の構えで日本の要求を断固として拒否すると払いのけた。
「凄い数だな・・・・遺体の数は万には届いていないな、数千程か、魔法使いを除き歩兵や騎兵は全て男性と、男手が少なくなっているだろうな、あの国は」
「おい、城門に転がっている投石器の岩をどかすぞ、手伝ってくれ!」
「ハイハイ」
しかし、投石器から放たれた岩石をどかそうと手を触れた瞬間、岩石から青白い光が漏れ、盛大に破片をまき散らしつつ破裂する。
「なっ!?・・・がぁぁぁぁぁぁっ!!」
死者は奇跡的に出なかったものの、その場にいた自衛官数名が大怪我を負う被害が発生した。
城門にもわずかながら傷がついたので、自衛隊は慌ててゴルグ自治区を守る防壁の強化を行う事になる。
炸裂の岩礫
魔鉱石を含有する岩に、魔術師の体から抜き取った鉱物器官(魔石)を詰め込み、衝撃で炸裂するように調整した原始的な榴弾。
今回、ゴルグ自治区の城門に衝突し不発だったが、自衛隊が不発の岩礫をどかそうと触れた途端に信管に当たる魔法回路が作動し、炸裂した。
日本政府と自衛隊は、これを重く見て、城塞都市の防壁の強化を行った。