異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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第41話   戦争の爪痕

日本ゴルグ自治区、元々、ゴルグと言う都市国家であったが、国交を持とうと訪れた日本の使節団を騙し討ち身ぐるみを剥いだ事で

かの国の逆鱗に触れ、一夜にして滅ぼされしまい、現在は処刑を免れた王族や貴族などにより日本の監視下の元、運営されている。

 

現在は破壊されて大穴が空いているものの、この町全体を包み込む城壁が存在しており、それは、荒野の民が身を守るために築き上げた村が、

少しずつ発展して行き、大陸有数の城塞都市となったルーツを持ち、物々しい石造りの城壁も村を覆っていた柵が発展していった物である。

 

「オーライ!オーライ!よしストップー!」

 

「化学肥料に試作型魔鉱発電機か、暫く魔力をチャージしないと発電できない上に故障も多いが、無いよりはマシか。」

 

インフラの整備や、大陸での本格的な活動の開始の為に、次々と日本から物資が送られ、急ピッチで城塞都市ゴルグの開発が進められていた。

 

「街の様子も大分変って来たな・・・。」

 

「穴だらけになった家屋やら元は城だった瓦礫の山やら、酷い光景だったのにな。」

 

「道に放置された死体やら、民間人に引きずり出されて殺害された貴族の惨殺死体やらを見ていると、やるせない気持ちになったもんだよ。」

 

「俺達がやらかした事でもあるがな、だが、民間人から相当恨みを買っていた王族連中の自業自得でもあるが・・・。」

 

「あぁ・・」

 

「思い出すのか?あの日の光景を・・・全く、本当に後味の悪い事だぜ」

 

 

城塞都市の上空から降り注ぐ炎の雨、そして連続で放たれる致死の閃光、突如大陸に現れた謎の勢力によりゴルグは壊滅的な打撃を受けていた。

 

 

「馬鹿な・・・こんな事があって良い筈が無い・・・。」

 

『コレデ・ゼン・インカー?(これで全員か?』

 

「魔力を持たぬ劣った蛮族が我らを倒そうなど、不相応な事を・・・。」

 

『黙って・くだサイ(黙って貰おうか』

 

「貴様ら、この様な事をして、唯で済むと思うなよ!」

 

『状況・わかる・出来ない・負けてしまった・貴方(アンタらは負けたんだ、何もできやしない』

 

「馬鹿にしているのか?毛無し猿が人間の言葉を真似しおって、早くこれを解け!」

 

『フンッ!!』

 

「がぁぁっ!!?」

 

『貴方、オ前・使節団・私達・貼り付ケ・お肉焼く・突き刺す・長い竿(お前らが俺たちの国の使節団を貼り付けにして拷問して殺したんだ!』

 

「ぐ・・・ぐぅぅっ」

 

『責任・果たす・貴方・王様・私たちニ・命ノ為ニ(お前がこの国の最高責任者なんだろう?だったら、殺された人達の命に対して血の代償を払え!』

 

「ゆる・・・ざない、猿が・・・猿めっ!魔力を持たぬ蛮族がっ!」

 

『貴方・馬鹿・続ける・そレだケ。(馬鹿の一つ覚えで何度も同じ内容を喋るな』

 

「早くこれを解け!王である余に、奴隷の様な拘束具をつけるなど!・・・ぶぉぁっ!?」

 

『貴方・破壊者・殺戮者・事実です・自分の罪・知ってル(アンタは、唯のテロリストだ、自分が何をしたのか分かっているんだろう?自分の罪を知れ』

 

『チュー・オー・ヒロバー・レンコ・シロ・ソコデ・ザージョ・ヨミゲール(中央広場まで連行しろ、そこで罪状を読み上げる』

 

 

城塞都市ゴルグ中央広場、普段は露店などが立ち並ぶ、円形の大広場だが、現在は彼方此方に破壊痕と瓦礫の山が出来上がっており、

負傷した民間人や戦闘続行不可能な兵士が集められており、城から王族や貴族たちが謎の軍勢に連行されている光景が多くの住人の目に留まった。

 

『~~~ヨーリ、貴方達・死刑・確定・シタ(~~により、罪状は死刑に確定した!』

 

「ふざけるでない!余は蛮族を裁いただけだ!」

 

「わ・・・私は、陛下のご命令通りに動いただけで・・・どうかお助けを!」

 

「貴様!自分だけ処刑から逃れようと言うのか!?」

 

「くそくそくそくそっ!こんな筈では!魔力はおろか武器すら持たぬ使節を寄こす不届きものに!!」

 

『ミニク・ナ(醜いな』

 

『サスガ・ニ・ニッパ・ツリ・ショー・ケー・デッキナイ(流石に処刑の為に、日本の施設に連れて行くことは出来ないな』

 

『ジューサツ?(となると、銃殺刑か?』

 

『ソー・ナンル・ナー(そうなるかもな・・・。』

 

「あ゛あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

 

『ッ!?(っ!?』

 

手錠をかけられた上に、鎖でつながれた、豪華な赤マントの国王が、自衛隊に大きく口を開いて、襲い掛かろうとする

 

『シッ!!(疾っ!』

 

「ぱごぉっ!!」

 

『オー・ジョー・ギワ・ワル・ナー(往生際が悪い奴だな』

 

『マッーサーカ・カミツコート・スルー・ト(まさか、噛みつこうとするとは・・。』

 

「ぐぇぇっ!!はががぁっ!」

 

国王を殴り倒した自衛隊員が、首根っこをつかんで、縛られた王族や貴族の集められている場所に投げ飛ばす。

 

『オイッ!?(お・・・おいっ!?』

 

『シネ(死ね。』

 

獰猛な笑みを浮かべた自衛官は、腰からこぶし大の塊を取り出すと、一か所に固められた罪人たちに向かって投げつけた。

その直後、爆音と共に、激しい炎が噴き出し、鎖で縛られ動けない彼らを丸焼きにした。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~っ!!」

 

『オマ・ナニ・スルーダー!?(お前っ!何をするんだ!!』

 

『ヤッケテ・シマ・エ・・・(焼けてしまえ、焼けてしまえ、何もかも』

 

「ぎゃぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

 

焼夷手榴弾は破片手榴弾に比べて殺傷範囲は狭い物の、ちょっとやそっとの事では消えない炎をまき散らし、

一か所に集めらているが故に、次々と消えない炎が罪人たちに燃え移り、地獄の光景となった。

 

『オマ・ジブン・ナ二・シー・ワカッテ・ノカー!?(お前、自分がなにしたのか分かってんのかっ!?』

 

『ふ・・・ふふふっ・・・ふははっ・・・』

 

『ッ・・・ヒューマ・エラー・ダ・・・コーソック・シロー・・。(っ!ヒューマンエラーだ、拘束しろ』

 

 

 

後に日本は、テロ容疑で王族と貴族を死刑に処したと、発表し、大陸周辺に城塞都市ゴルグ陥落の報が広まった。

 

 

「で・・・・結局、王族連中を手にかけた自衛官はどうなったんだ?」

 

「一応襲い掛かられて反撃した形にはなったが、どう考えても過剰防衛だ、謹慎処分だけじゃすまなかったよ。」

 

「そうか・・・そいつは今、何やっているんだ?」

 

「自室で自殺したとさ、そもそも、王族連中を焼き殺す前に、少年兵を機銃掃射して、精神不安定になっていたらしいし」

 

「だからと言って、命令を無視して凶行に及ぶのは・・・。」

 

「自衛官としてあるまじき行動だ、どのみち擁護は出来んよ。」

 

「お蔭で、現地住民からは公開処刑扱いされとるし、怒らせると血も涙もない国だとも思われている。」

 

「全く・・・気が滅入るな・・・。」

 

「あーあー、やめだ、やめだ、こんな話題はさっさと切り上げて、復興活動を再開しよう」

 

「はぁ・・・そうだな、一度ついた印象は中々拭えないもんだが、地道な活動で良い国だと思わせないとな。」

 

 

新しく設けられた防壁から、次々とトラックが入ってくる光景を眺めつつ、自衛隊は、都市の補修を続けた。

 


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