ソラビトの空中大陸で破損した遺跡群の修復をする施工科
唸りをあげて土を掘り返す重機群、空中大陸に設置された空港から次々と物資が運ばれ、空中大陸での開発を進めていた。
「この瓦礫はどこへ運べば良いですかね?」
「山の方に集積所があるので、そこに運んでください。」
空港を中心に、少しずつ施設が増えて行き、最近では、空の民の遺跡都市の修復もするようになった日本、
リクビトからソラビトに変質した際に、器用さを失ってしまった為、高度な工作技術を持つ日本が修復してくれる事を空の民は感謝していた。
「それを・・・そう、はめ込んで、緑色の魔石を中に封入してください。」
「どっこいしょ・・・あぁ、こいつか?ほいっとな。」
ヴヴヴゥゥゥン・・・・ビリビリ・・・バチバチッ・・・
「うぉ!?」
「やった、空調制御装置が復帰した!」
ソラビトの魔導士に言われるがまま、重たい岩を組み合わせ、魔石をはめ込むと、独特の機動音を上げて、岩の柱が周りの空気を暖め始めた。
「岩の塊にしか見えない奴が、どうしてこんなに無駄に凄い事が出来るんかねぇ・・・。」
「えっ?ニフォンが使っている えあこん と言う物の方が精密に出来ていませんか?」
「まぁ、確かにそうなんだが、岩でできた柱みたいなモンで、同じ事されると、苦労に苦労を重ねて築き上げた技術って何だったんだろうなぁと思うのよ。」
「そんな事ありませんよ、この柱が出来る事は、精々、この柱の周りを少しだけ快適な温度に保つ程度ですし。」
「それでも十分凄いよ。」
「それに、よく見てください、一見ただの岩の塊にしか見えない柱にも、魔法式が複雑に刻み込まれていて、現在のリクビトには真似出来ない技術で作られているのです。」
遠目からでは確認できないが、近くでじっくりと観察するかルーペを用いなければ見えない程の細い線が、脈打つ様に光を走らせていた。
「おおうっ?まるで電子回路みたいだ・・・よくこんな細かいの彫り込めたな。」
「私たちがリクビトだった頃は、ツチビトにも負けないほどの技術力を持っていたのですよ!」
えっへん、と、無い胸を張るソラビトの少女を横目に、光を発し続ける柱を観察する施設科の隊員。
「でも、助かったなぁ・・・私たちの指じゃ、こんな重いの持ち上げられないし、半ば諦めていたのよ・・・。」
「まぁ、小指と薬指が翼の一部になっていたらなぁ・・・。」
「大地の民との争いを避けるために、リクビトからソラビトになったけど、少しだけリクビトのままの姿の同胞を残しておくべきだったかしら?」
魔導士の少女の呟きを聞くと、すこし眉間にしわを寄せて施設科の隊員が口を開く。
「いや・・・外見が異なる連中が居ると、対立する事になるかもしれんな。」
「どうしてですか?元は同じ民、身内ではないですか?」
「人間ってのは、自分たちと違う姿の集団が居ると、排除したがるのさ、頭では分かっていてもな。」
「そんな筈はっ!!」
「あぁ、下の方の大陸で、リクビトと亜人が暮らす多民族国家があってな、その国の中にはアンタらと同じく魔石で変質して、
リクビトから別の種族になった者が居るが、元同胞のリクビトに、ぞんざいな扱いを受けているのさ。」
「それは、リクビトが野蛮だから・・・」
「おいおい、それは逆差別的だぞ?」
「っ!!」
「餓鬼んちょ共が一番わかりやすい、子供たちの集まりの中で浮いた奴がいると、集団で排除にかかる事も珍しくない。」
「確かに、ソラビトでも、子供たちの間ではそういう事もあります。」
「それを国レベルで規模を大きくして、当てはめてみると、似たような物になる。」
「そんなもの・・・理性で押さえつければ良いじゃないですか!」
「そうだな、しかし、理性で押さえつけても外見の違いでどんな人間も自分の姿と違う相手に対して、違和感を感じてしまうのさ。」
「・・・ニフォンは、私たちの事をそういう目で見るのですか?」
「否定はしないが、アンタらの内面を知れば、日本は平等に受け入れるだろうさ、外見の違いで排除する奴は理性が足りない奴だけさ」
「それに、最初はアンタらも、俺達の事をリクビトと勘違いして、排除しようとしていた奴らが居たろ?」
「えっ!?えぇ、その・・・まぁ・・・。」
「地上の大陸の多くの国々は、自分の中の獣を放し飼いにしているのさ、だから争いが絶えんのさ。」
「リクビト以外の亜人を国民として迎え入れている大地の国は、全体で見ると少ないと聞きます。」
「日本も国交を持つべく、大使を向かわせているが、偏見の目で見られることも少なくないそうだ。」
「ニフォンの民を?」
「そうだ、流石に取って食うほど理性が無い訳ではないが、細かい所でぞんざいに扱われる事も珍しくない。」
「酷い話ですね。」
「それに、リクビトでは無いと言う理由で、大地の国にある駐屯地が、襲撃される事件も発生しているんだ。」
「そんなっ!ニフォンはどう対応されたのですか!?」
「心配はご無用、丁寧に丁寧に解体してやったさ、それ以降、襲撃の回数は一気に減ったね。」
「・・・・・時々貴方達と言う存在が怖くなりますね。」
「なに、突っかかってこないなら一方的に攻める事も無い、基本的に紳士的に対応しているから安心してくれ。」
「えぇ、今までの公正明大な行動と態度を見ればニフォンを信じる事が出来ます。」
「そりゃどうも、さて、雑談もそこそこに、そろそろ作業を再開するぞ?放置しすぎて崩れかかっている所が、まだまだ沢山あるんだ。」
惑星アルクス
地球の存在した世界とは違う別次元の地球型惑星で、様々な種類の知的生命体が共存している。
この星を支配する種族リクビトは、ヒューマノイド型知的生命体の基本形態であり近縁種含めて日本ではアルクシアン(アルクス人)と呼称される。
ごく少数、昆虫類や爬虫類から進化した知的生命体も存在するが、アルクシアンとの交配は起源が違う為、不可能。
元の次元とは違う物理法則が、この次元の宇宙を支配しており、魔法と言う要素が加わる。
魔鉱石と呼ばれるこの次元特有の物質が、ほぼすべての土地に存在し、環境や生物に様々な影響を与えている。
別次元から力を取り入れたり放出したりする性質から、「物質と言う形態をとった世界(宇宙・次元)の歪み」とも呼ばれている。
3つの衛星(月)が存在し、絶妙なバランスで影響しあっている。