2XXX年
日本は地球とは別の世界に「転移」した。
磁気嵐や、オーロラの発生、3つの月の出現などの異常現象が発生し、混乱が生じた。
異世界の民とのファーストコンタクトは、海にすむ知的生命体と護衛艦が遭遇したことだった。
海の民・・・・・その外見から正式に人魚と呼ばれるようになるまで時間はかからなかった。
遭遇した当初は、我々を非常に警戒している様子で、武器らしきものを向けてきていたが、彼らの長と思われる人物がその場を収め、
我々と同行する事になった。
それから暫くして、地形の情報収集のために派遣された調査隊が、武装した現地住民に襲撃され、これを撃退した。
銃撃で死亡した異世界人の遺体を回収した結果、非常に人間に近い進化を遂げた人間とは別の知的生命体だという事が判明した。
しかし、いくら外見が人間そのものでも、根本的に遺伝子配列が違うので当然ながら人間との交配は不可能の様だ。
だが、分かったことはそれだけではなかった、海にすむ人魚と陸にすむ異世界人と共通し、体内にある種の鉱物器官を持ち、
何かしらの力を互いに作用させることで傷を癒したり、細胞を活性化させることが出来るようだ。
暫くして判明したことだが、この世界では動植物共通で、この鉱物を体に取り込み、利用をしている様だ。
自然界でもこの鉱物は産出され、現地住民の言葉で「魔法の石」と呼ばれ重宝されているようだ。
「くそっ、リクビトめ、海面で待ち伏せしていたのか!?」
「どいて!今、幻惑の歌で足止めするわ!」
「リンダ!お前だけ残すわけにはいかないぞ!私も歌わせてもらう!」
「お父さま・・・・みんなが・・・。」
「ウルスラ、彼女たちは、海の国の聖歌隊の中でも上位の実力者だ、リクビトなんかにやられたりはしないよ。」
「~~~~♪~~~~♪」
「~~~~♪・・・・・な・・・・なぜだ!奴らの魔力に干渉できない!?これでは、精神を操れぬぞ!?」
「うそ・・・・あのリクビト達・・・・魔力を持っていない・・・?」
もう目と鼻の先という距離になって、灰色の船が動きを止め、奇妙な姿をしたリクビトが姿を現した。
「な・・・なんだ・・・こいつら?漂流者じゃないのか?」
「そもそも、人間なのか?何かの冗談だろ?」
「何か喋っているみたいだ、一応言葉を話せるみたいだな、何を言っているのかさっぱりだが・・・」
恐怖の象徴であるリクビトとの遭遇して動揺が走るウミビト、一方、得体のしれない未知の生物と遭遇して混乱する海上自衛隊。
この奇妙なにらみ合いは暫く続いた。
「ダメ・・・・いくら歌ってもまるで効果がないわ!」
「リクビトめ!いつの間に幻術の対策をっ!!」
「いや・・・・だが待て、彼らも困惑している様だぞ?そもそも、殺意がまるで見られない。」
「お父さま!」
「な・・・何を?黒刃の鮫牙とも謳われた貴方が血迷われるとは?ポール戦士長!」
「我々にもリクビトと交流を持っていた時期がある、我々をいつも襲う連中とは違う様だし、ここは一つ可能性にかけてみようじゃないか」
「正気とは思えん!」「あぶないよ、お父さま!」
「見ろ、あのリクビト達・・・身振り手振りで何かを伝えようとしている様だ、少なくとも発見次第襲い掛かってくる様な奴らじゃないみたいだぞ?」
「・・・しかし」「お父さま、リクビトがついて来いって・・・」
「交渉の余地は有り、か・・・さて、どう出るか・・・。」
「お父さま・・・プリシラお姉さまは・・・。」
「大丈夫だよ、きっと、どこかで生きているさ、今は生き残る事を優先しよう」