異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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あれ?もう12月?
そんな馬鹿な、私はアーマードコアの新作を楽しんで、宇宙旅行をして、野生の息吹とともに天地を駆け巡る日々だったのに、さっきまで秋だったのに!!


第167話  反日同盟の末路

数少ないカクーシャ帝国の平地にある地方都市であったその地は、カクーシャ帝国が誇る商業都市であった。

帝都が崩壊してその難民を自衛隊が保護し収容した地であり、かつてカクーシャ帝国の本拠地の山岳部へ入る前の窓口でもあったその都市は、交易都市として機能しており、外交を担う重要な拠点であった。

幸いカクーシャ帝国帝都から発生した魔力汚染は、入り組んだ山岳地帯と言う地形が魔力を遮断し、地方都市までは届かなかったので収容した難民の健康被害は起こらなかった。

それから、カクーシャ帝国は正式に亡国したと認められ、旧カクーシャ帝国を引き継ぐ国としてカクーシャ共和国の再建が進められる事になる。

 

それに異を唱えたのが反カクーシャ同盟の国々であった。

元々単独ではカクーシャ帝国に太刀打ちできない中小国が同盟を結び、カクーシャ帝国に圧力をかけていた国々であったが、突如海の向こうからの来訪者である日本国[ニーポニス]が事もあろうに侵略を仕掛けてきたカクーシャ帝国を抵抗らしい抵抗を許さずに一方的に返り討ちにしてしまったのだ。

カクーシャ帝国に対抗するために結束していた反カクーシャ同盟は、帝国の生き残りであるカクーシャ人がニーポニスに保護されて国の再建までされてしまうのは我慢ならない事であった。

更に、大陸中で厄災の象徴として伝わっていた伝説の人食い族が今なお健在で事もあろうにニーポニスと交流を持ち保護されていると言う事実が公表されたのだ。

カクーシャ帝国と言う拳の振り下ろし先を失った不満の行き先は大陸中央部の情勢を掻き乱したニーポニスに向けられて、反カクーシャの国々が反日に転換するのは遅くなかった。

 

聞けば、ニーポニスの民がほぼ全て魔力をその身に宿さない亜人で構成されており、イクウビトと呼ばれる種族の国だというのだ。その事実が魔力至上主義の国々の神経を逆撫でした。

大陸有数の魔術大国であるカクーシャ帝国は、人体を魔道具の素材にするほどえげつない方法で魔法技術力を高めていたが、魔力を全く持たない民の国である筈のニーポニスが一方的に滅ぼした事で大陸中央部の国々は大いに動揺し混乱させた。

 

魔力を宿さない取るに足らない亜人の小国、そのような認識だった大陸中央部の国々は、カクーシャ帝国が滅ぼされてから今更になってニーポニスの情報を集め始めた。

忌々しい魔力無しの虚無の民と最初に交流を持ち、彼らの進出の足がかりとなったケーマニス王国へと向かった彼らが見たのは、見慣れぬ様式かつ異様な巨大さを持つ建築物群であった。

そして一際光彩を放つ超巨大建造物、ケーマニス王国の港町に建造された虹色の城、ケーマニスシーサイドモールを目撃することになる。

 

観光客として訪れ虹色の城の内部を調査した密偵によると世界中のあらゆる富と言う富をかき集めた様な商業施設であり、まさに商人達の城とも言うべき施設であったと言うのだ。

密偵が購入し持ち帰った品は恐ろしいまでの精度で加工されており、工具や刃物も自国の工房では再現不可能な品質であった。

その事実を認められない国は、なんとかニーポニスの技術者を引き抜き自国がより優れた品質の加工品を作れないか画策するが、懐柔するにも拉致するにも彼の国の守りは堅く、女子供一人として連れ帰る事が出来なかったのである。

魔力を持たない劣等民族が自分達に従わない苛立ち、技術者を引き抜きより優れたものを作り上げそれ見たことかと高等民族たる実力を示してやる事もできず、理不尽な怒りを高めていったのだ。

 

 

反カクーシャ同盟首長国トンシー王国

 

『ええい忌々しい!魔力無しのニーポニスめ!カクーシャの地が我等の手に収まる前に穢れた土地へと汚染しおって!』

 

『カクーシャ帝国を下したのはやはり、人食い族の助力があっての事でしょう、そうでなければ堂々と人食い族共の大使館を作る訳が有りません』

 

『奴らは大陸の歴史には関わっていない体裁で人食い族と交流を結んでいるそうだが、あの薄汚い人食い族の加護を得る代わりに中立を気取って世界を破滅に導いた魔族共に窓口を作ったのだ。だがその様な事は関係がない、あの悪魔共に魂を売った裏切り者に変わりないのだから』

 

『陛下、しかしながらカクーシャ帝国が滅びたことで我が同盟の国々が揺れております。事をなすには急ぐ必要があるでしょう』

 

『ふむ、先ずは我が弟に助力を請う必要がありそうだな、使者を出せ、ニーポニスを落すぞ!!』

 

 

反カクーシャ同盟ハイチェク公国

 

『…なるほど、兄上はこの大陸に混沌を呼び込んだ罪人共を粛清するおつもりか』

 

『カクーシャ帝国が滅びたことで我が同盟の結束に綻びが見え始めております。動くならば今しかないかと』

 

『むぅ…』

 

『彼奴らは人食い族共の魔石の力を使って虹色の城を建築し、訪れる者たちを幻惑させ大陸を堕落させるつもりなのでしょう』

 

『全く持って忌々しいことだ。それで、罪人共ニーポニスとやら単体の実力はどれほどのものなのだ?人食い族の助力があったとは言えカクーシャの帝都を陥落させるほどだ、相当な実力があるはずだが』

 

『厳しい戦いになるでしょう、しかし奴らもカクーシャ帝国との戦いを終えばたかり、息も絶え絶えでしょう。そして、我が方は何一つ消耗していない、つまり十分に勝機はあるでしょう!!』

 

『うむ、カクーシャ帝国は大陸の覇者とも呼ばれる大国、奴らと戦い無事で済むはずがないのだ。つまり、今しか動く機会はないか』

 

 

 

 

ケーマニス王国 租借地ケーマニス・シーサイドエリア

 

 

元々港町から少し外れた岬だったが、水深が一気に深くなる海底峡谷が近い位置に有り、大型船舶が航行しやすい地形だったため埋め立てられ荷下ろし用の大型クレーンの立ち並ぶ巨大な桟橋となった。

開拓初期から建設された簡易加工施設と職員居住区のプレハブ住宅はやがて本格的な大規模工場やマンションとなり、日本人を相手にしたケーマニス人達の飲食店が進出し始め交流が深まり、事業拡大のために観光業と宣伝を目的とした大型商業施設建設が行われた。

いつの間にか元々あった港町まで侵食しかねない所まで巨大化していった租借地は、正式に港町とアスファルトで舗装された広い道路と接続され、日夜ひっきりなしに観光客が訪れている。

 

「全く、また誘拐未遂か?」

 

「日本企業職員への勧誘と恫喝、時には家族を狙った襲撃など枚挙にいとまがない」

 

「大陸沿岸部で散々苦汁をなめさせられたからな、もう二度とあのような悲劇を起こす訳にはいかんな」

 

「それにケーマニス王国の発展が魔法技術を用いていないと何度説明してもトガビトの魔石を得ようと交渉してくる連中が訪れるのもうんざりする」

 

「連中、港町の発展はトガビトから引き抜いた魔石で作り上げたと本気で思っている様だな?」

 

「本当に魔石を使ってチチンプイプイとショッピングモールが組み上がるなら苦労せんわ、想像力が豊かなこったな」

 

「逆に想像力不足ではないのか?」

 

ケーマニスの租借地である日本人街を巡回警備する警備員たちが雑談をしているが、血相を変えた彼らの同僚が大急ぎで駆け寄ってくる。

 

「大変だ!」

 

「どうした凄い顔して」

 

「ケーマニス・シーサイドモールを奪おうと周辺国が攻めてきやがったんだ!!」

 

「・・・・・・・・はぁっ!?」

 

 

 

ケーマニス王国国境、バーンメ平原

 

『・・・愚かな連中だ』

 

『我らを人食い族を匿う野蛮人とつるむ裏切り者だと?』

 

『奴らにはニーポニスの実力が見えていないのか?あのカクーシャ帝国を抵抗らしい抵抗も許さずに解体した大国ぞ?』

 

『何にせよ、この地は我らが収める地、同胞と盟友たちに指一本触れさせぬ!』

 

国境付近に点在する中小規模の砦からケーマニスの騎士団が出撃し、反日同盟と睨み合っていた。

互いが罵声を伴った口上が交わされ、ケーマニス王国は領域侵犯を訴え、反日同盟は虹色の城と人食い族の引き渡しとニーポニスの追放を訴えた。

ケーマニスの騎士団は、それに辟易し始めていた。

カクーシャ帝国の傲慢さと横暴さにはほとほと困り果てていたが、反日同盟の無茶苦茶な言い分に唖然とさせられ、次第にふつふつと怒りを高めていった。

 

『おのれ!黙って聞いていれば好き勝手言いおって!』

 

『確かに人食い族を保護することに関して個人的に思うところは無くはないが・・・』

 

『だからと言って新たな盟友を敵に差し出すほど落ちぶれてはいないのだ!』

 

痺れを切らした反日同盟はついに投石機を用いてケーマニス王国の砦に攻撃を加え始めた。

国境砦はもとより農民のものと思われる民家にも被害が発生し、多数の民間人が重軽傷を負った。

 

『おのれ!よくも!!』

 

『田畑を守るために避難誘導に従わなかった者達とは言え、農民に被害が出てしまったか』

 

青白く光り輝く投石が砦の防壁に放物線を描いて衝突すると眩い光を放ち魔力爆発を引き起こす。

石材を積み上げ粘土を挟んだ簡易構造の防壁だが、それなりの強度を持っていたはずであった、しかし魔石爆弾によって無惨にえぐり取られて防壁の裏側の兵士に被害が発生していた。

 

『くっ、あの破壊力は力を持った魔物の大型魔石か、大盤振る舞いだな』

 

『確かに、カクーシャ帝国に対抗するだけの実力はある、局地戦ならば敗北していただろうな』

 

『だが・・・・ふっ、奴らは時間をかけすぎた様だな?』

 

ケーマニス王国の要請を受け援護に駆けつけた陸上自衛隊が彼らの背後に展開する。

 

『貴殿は・・・・』

 

『陸上自衛隊の茂木 勤 二等陸佐であります』

 

『おお、ニーポニスの!』

 

『これより砲撃支援を行いますので後退してください、爆発に巻き込まれてしまいます』

 

『例のカクーシャ帝国を滅ぼした破壊の魔導か!有り難い!』

 

『聞いたか!?大規模破壊魔法が発動するぞ!後退しろ!!』

 

潮が引くように撤退を開始したケーマニス軍を追撃し始める反日同盟軍、しかし平原に点在する砦から放たれる矢の雨によって阻まれ撤退を許してしまう。

反日同盟の軍勢が国境砦に乗り込もうと破城槌で門を打ち付け始めた頃、自衛隊の連絡を受けたケーマニス王国軍は裏門や隠し通路から脱出し砦を放棄した。最後の一人が砦から脱出するのと門を破壊して敵軍が雪崩込んで来るのはほぼ同時であった。

 

『急に抵抗が止んだと思ったらもぬけの殻とは』

 

『我らに怖気づいたのか?』

 

門を打ち破り砦の内部に侵入した反日同盟軍は首を傾げる。

 

『物陰に潜んでいるかもしれん、罠の可能性もある、注意し・・・・』

 

突如風切り音と共に飛来した迫撃砲弾が彼らの頭上で炸裂し、耳をつんざく轟音と共に無数の金属片が撒き散らされ、範囲内に居た兵士たちは一瞬でズタズタに引き裂かれ肉塊へと変貌する。

 

『うぎゃあああぁっ!!!』

 

『あああああっ!!あーーーっ!あああーーーーっ!!!』

 

運悪く即死出来なかった反日同盟軍兵士達は、血と脂汗と汚泥に塗れ、体の彼方此方を欠損して芋虫の様に地面をのたうち回る。

 

防壁に囲まれているため退路が限定されており、頭上から降り注ぐ砲撃から逃げ切れず、かと言って施設内に逃げ込もうにも建物ごと粉砕されてしまう。

 

『こ、これがニーポニスの力か』

 

『虎とも歌われた列強であったカクーシャ帝国が嬲り者にされる訳だ。本気とは程遠い手勢とも呼べる人数でこれだ』

 

『彼らが友軍で本当に良かった』

 

間一髪、砦から脱出したケーマニス軍は、砦と運命を共にする反日同盟軍に同情した。

ニーポニス軍が展開している方向から空気を叩く音が聞こえると、その数だけ轟音と敵軍の悲鳴が響き渡り、一部の者は衝撃的な光景過ぎたのか顔を青くする。

爆発炎上する国境砦からふと視線をそらすと、別の戦線へ向かって物凄い速度で平原を駆け抜ける異形の鎧虫が上部から火を吹きながら敵軍を吹き飛ばしていた。

 

『なんだあの鎧虫は!』

 

『速すぎる!それにあの熱線!いかれているのか!?』

 

圧倒的な機動力を活かして左右斜めから挟むように展開すると、その腹部から次々と緑色の衣装を着た兵士が吐き出されて杖の様な物を構えると、眩い光弾が反日同盟軍を襲った。

 

『不味い!挟み込まれるぞ!』

 

『弓兵!応戦しろ!』

 

『ダメです!うぐあぁぁぁ!だ、誰か助けっ・・がっ?!』

 

2つの火線が交差することにより面制圧と化する十字砲火で敵軍はみるみるうちに砂糖菓子のように溶け崩れ、壊走し始める。

 

「カクーシャ帝国を黙らせたと思ったら、訳分からん難癖つけてくる奴らが現れるとはな」

 

「確か、人食い族を従えて彼らの魔石を使って人々から大地の恵みを奪い尽くし虹色の城を建てただったかな?」

 

「なんだそりゃ・・・」

 

「1000年以上昔の大戦なのにも関わらず現代まで深刻な魔力不足を引き起こした前例があるが、トガビトの魔石と沿岸設備の建築はまるで関係がない」

 

「連中の目にはあのショッピングモールが搾取の上で成り立っている様に見えるんだろうな」

 

「そんな無茶苦茶な・・・・」

 

「少し前から不穏な動きがあったんで現地に潜んでいた諜報部に色々と探らせたみたいだが、カクーシャ帝国戦を見越して同盟を組んでいたのに横取りされて不満を覚えていたらしい」

 

「つまり八つ当たりじゃないかよ、それで人命が脅かされてはたまらんぞ勘弁してくれ」

 

「大きな戦いを終えて疲労している所に畳み掛ければ勝利できると踏んだらしい、確かに死傷者が出てしまい弾薬も消費してしまったが、寄せ集めに負けるほどでもない」

 

「煩わせる事には成功したかもしれんがな、戦後処理でゴタゴタしている所に横槍とは迷惑極まりない」

 

「連中は都市国家群の寄せ集めだ。眼の前の奴らを処理した後は制裁爆撃が行われるらしい」

 

「良い気味だ。ケーマニスで働く職員とその家族を狙った犯行も少しは減るだろうな」

 

「この戦いを監視している国は多い、これで少しは大陸中央部も安定すれば良いのだがな」

 

その後、ケーマニス王国軍は最初に衝突した時に少数の戦死者が出てしまったが被害は軽微であり、彼らを支援した自衛隊に至っては一兵たりとも欠けること無く全員健在である。

しかし、反日同盟軍の被害は数万にも及ぶ戦死者が発生していた。

 

 

反日同盟首長国トンシー王国、王城

 

『ば・・・馬鹿な、万を超える軍勢が壊走・・・だと?』

 

『はっ、まるで信じられません』

 

『我が国から派兵された兵士も僅か数十名のみが生還する程度で、他の同盟国も似たり寄ったりな状況だとか・・・・』

 

『おのれ・・・おのれおのれぇ!人食い族に与する裏切り者共めぇぇ!!』

 

『へ、陛下!?』

 

『人食い族の魔石だ!あれがあれば!あれさえあれば我らも無敵の軍勢を!そして、虹色の城を作れるのに!!』

 

突如王の間の扉が開け放たれ、血相を変えた騎士が転がり込み怒り狂うトンシー国王に跪く。

 

『き・・・緊急事態です!例の巨鳥が現れました!』

 

『なんだと!?』

 

『王城の上空を旋回しています!すぐに避難を!!』

 

王城のテラスから空を見ると、銀色の光を反射しながら大気を切り裂く飛行物体が街の上空を旋回しているのが見える。

 

『くそっ!汚らわしい魔物使い共め!』

 

『陛下!はやく!』

 

聞いたこともない様な音が上空から鳴り響くと、街に点在する兵舎が爆発し街がパニック状態に落ちいる。

 

『お、おのれぇ!!』

 

そして続けて王城周りにある兵舎も攻撃対象となり、次々とF-15J戦闘機から通常爆弾が投下されトンシー王国軍は真の意味で壊滅する。

 

『あああぁぁ!ああぁぁ!!あああああああぁぁぁぁっ!!!!』

 

風に煽られ軌道をそれた通常爆弾が王城の一部に着弾し、監視塔が倒壊を始める。

そして、運が悪く隠し通路の扉に手をかけるトンシー国王の頭上に瓦礫が迫る。

 

『醜い!醜い!醜いぃぃっ!!!おのれっおのれ魔力無し共がぁぁぁ!!!』

 

その日、反日同盟を構成する主要国に行われた制裁爆撃によって反日同盟軍は事実上消滅し、多額の賠償金を日本国とケーマニス王国に支払うことになる。

特に、反日同盟首長国であったトンシー王国の国王は憎悪と恐怖で歪んだ壮絶な表情のまま胴体を押しつぶされ首だけ瓦礫からはみ出たまま死亡が確認された。

また、同じ文明圏でありトンシー王国と密接な関係のあるハイチェク公国の公王は恐怖と絶望のまま投身自殺を図り、反日同盟の中核を担っていた国が滅亡した事により空中分解を始めるのであった。

 

 

大陸沿岸部、日本ゴルグ自治区 ショッピングセンター広場大型モニター

 

「えー、只今入ったニュースです」

 

「大陸中央部にて反カクーシャ同盟を前身とする組織が友好国ケーマニス王国へ進軍し、これを受け自衛隊はケーマニス王国と協力しテロ組織を迎撃したとの事です」

 

「なお、反カクーシャ同盟改め反日同盟軍による宣戦布告は行われておらず、宣言無しでの強襲を受けたと入っております」

 

「沼木さん、これは国際法違反ではないのですか?」

 

「残念ながら惑星アルクスではそのような枠組みはなく、宣戦布告が行われるかはそれぞれの国の気質や裁量によって変わり、基本的に奇襲攻撃を受けるほうが悪いというのが常識となっているそうです」

 

「恐ろしいですね。大陸沿岸部だけでもそう言った取り決めをしておくべきかと思いますが如何でしょうか?」

 

「大陸沿岸部各国にはそれぞれ呼びかけを行っていますが、日本ゴルグ自治区、日本サテラニア自治区と隣接する周辺国に留まり、そこから少し離れると戦国時代を思わせる戦乱の地となっておりますね」

 

「大陸沿岸部での隣国が比較的力を持った友好国が多いのが救いでしょうね。」

 

「えー、只今資料が届きました。実際に戦争をしているのは小さな都市国家が殆どで基本的に魔物と戦うことが多く、疲弊して国力が低下してきた頃に戦争を仕掛けられるケースが多い様ですね」

 

「我が国も虎視眈々と狙われているのかも知れませんね。国外や自治区から遠く離れて仕事する方は注意するべきですね」

 

ショッピングセンターの広場の大型モニターに日本語で放送されるテレビニュースに大陸沿岸部標準語の字幕が表示されている。

 

『はー、大陸中央部でそんな事になっているのかー』

 

『こうしてみると沿岸部と中央部そんなに大差ないのかも知れんね』

 

『既に大陸中央部で親玉的な大国をぶっ倒しているんだろう?こっちで言うルーザニアみたいな・・・・』

 

『馬鹿、少なくともルーザニアの5倍は強いと聞くぞ?まぁ、ルーザニアみたいな軍事国家をニーポニアがぶちのめしても夢を見て戦争を仕掛けてくる馬鹿が沿岸部でもたまにあるくらいだから人間どこも変わらんよ』

 

『それもそうか、何にせよ情勢がきな臭い地域には近づかないに越したことはないな』

 

これと同様の内容の放送が大陸中央部のケーマニス・シーサイドモールにも放送され、大陸中央部の言語で字幕放送されたことにより、報道された内容と日本人職員がその話題で雑談する光景を見た間諜が冷や汗をかき、日本の情報技術と民間人の教養の高さに戦慄を覚え間違ってもこの国に戦争を仕掛けてはならぬとレポートにまとめるのであった。

 

 

 

 

 

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トンシー王国

元々反カクーシャ帝国の同盟に属していたが日本という新たな脅威に立ち向かうために同盟の方向性を変えた。

本来はカクーシャ帝国の襲撃によって弱ったケーマニス王国やフーヒョニス王国を同盟に取り込み、ついでに新参者の日本国もそれに加える予定であった。

しかし、日本国は容易くカクーシャ帝国を撃退し、破竹の勢いで逆侵攻し、難攻不落の国境要塞と帝都を電撃的に陥落させてしまった。

反カクーシャで纏まっていた同盟に綻びが見えてきたので、人食い族と好を結ぶ蛮族として不満の矛先を変え、無辜の民から奪い去ったその技術力と富と人食い族の魔石を奪還するべく反日同盟へと方針転換をした。

なお、[奪還]を掲げているが、それは反カクーシャのスローガンをそのまま流用し、人食い族の魔石をそれに加えただけなので当然ながら日本国が周辺国から搾取したという事実はない。

トンシー王国は、反カクーシャ同盟の中核を担う重要な国であるのは間違いなかった。しかし、本来敵対する必要のない日本に敵対したことで頓死した

 

 

 

 

ハイチェク公国

反カクーシャ帝国の同盟に属していたが、王侯貴族に血縁的関係の深いトンシー王国と共に日本相手に開戦するという敗着をし、滅亡する。

文明のルーツはカクーシャ帝国とは異なるので、昔から度々カクーシャ帝国及びその前身と衝突をしていた。

日本とカクーシャ帝国の戦いで弱った方から略奪をしようとしていたが、国境要塞同時襲撃の時に、間諜が多数爆撃の巻き添えを食らっており、戦闘も一方的すぎてほうほうの体で逃げ出す有様で日本を逆恨みして何時か精算してもらうと恨みを募らせていった。

カクーシャ帝国帝都を攻め落とすために戦争の準備をしていたが、肝心の土地と魔法技術は失われ、人が済むには適さぬ過酷な土地へと汚染されてしまったため、その憎しみはより強かったと言える。

トンシー王国と共にカクーシャ帝国を手こずらせる程度に強く、それ故に同盟に参加する国も多かったが、カクーシャ帝国を正面から打ち破った直後なのにもかかわらず片手間で反日同盟を叩き潰す日本国を相手にするには無理を通り越して無謀であった。

結果的に反日同盟は中核を担う主要国を同時に失い、同盟は事実上壊滅した。

 




楽しいゲームなどの趣味があると時間が無限に溶けますね。

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