異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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月末か月初めに投降しようと思っておりましたが、少し伸びてしまいました。


第151話  大鷲の爪

カクーシャ帝国首都から離れた国境沿いに複数点在する大規模な要塞都市。

その一つ一つが、周辺国の首都を超える規模であり、カクーシャ帝国が大陸中央部で抜きんでた軍事力を持つ要素の一つである。

その要塞都市に空から見つめる者達が居た。

 

 

「クーガー1、敵対空兵器と思われるものを確認。バリスタだ。」

 

「あんなもの、まぐれ当たりすらしないと思うが、城壁にへばりついているのは好都合だ。」

 

「クーガー2、兵舎と思われる施設を確認、攻撃を行う。」

 

2機のF-15戦闘機が、カクーシャ帝国国境要塞上空を旋回する。

 

「クーガー2、爆弾投下用意・・・・投下!!」

 

「クーガー1、投下!」

 

山岳部の上に建造された石造りの要塞都市に、F-15が急降下しながら通常爆弾を投下し、風切り音を立てながら兵舎、城門、監視塔などの施設に次々と突き刺さり、天高く爆炎と黒煙が舞い上がる。

異星の空を舞う大鷲の鋭い爪は、無慈悲にカクーシャ帝国国境要塞をえぐり取り、紅蓮の炎共に地上の兵士を消滅させる。

 

「クーガー1、敵地上物破壊」

 

「クーガー2、敵地上物破壊・・・・これはっ!?」

 

山岳部の上に建造された石造りの要塞都市の地下には、天然洞窟が広がっており、そこを改装した地下施設が存在した。

 

上空からの爆撃を全く想定していなかった、いや、爆撃と言う概念すらなかった山岳要塞は地上の施設を破壊された事で、地下洞窟が崩落し、まるで土砂崩れの様に爆撃地点を中心に飲み込まれていった。

 

「クーガー1、敵基地は壊滅、繰り返す、敵基地は壊滅。」

 

「クーガー2、敵基地地下に空洞があった模様、爆撃地点が崩落した。」

 

「クーガー1、再攻撃の必要性は認められず。」

 

「こちら管制塔、了解。全機帰投せよ。」

 

 

===================================

 

カクーシャ帝国国境要塞の一つである山岳要塞に属国などから兵が集められ、ニーポニスとの戦いに備え物資が集積されていた。

 

『ふむ、キョーシャ傭兵国に陣を構えるニーポニスを叩き潰すには少々過剰なのではないかね?』

 

『いえ、ニーポニスは先遣隊を未知の攻撃により壊滅させております。それも、キョーシャ傭兵国を落とすには十分なほどの人数が派兵されていたにもかかわらずです。』

 

『全く魔力無し風情が、小賢しい真似をする。』

 

『相手の攻撃手段を暴かなければ、無視できない被害が広がる可能性があります。今後の統治にも影響が出かねません。』

 

『最終的に叩き潰すにせよ、無用な被害を広げるわけには行かんな、敵前哨基地に調査をする必要が・・・・何だこの音は?』

 

鎧に装飾が施された武官が窓から空を眺めると、銀色に光を反射する何かが見えた気がした。

それが、彼が見た最期の記憶となった。

 

空気を切り裂く様な音が聞こえたと思えば、兵舎が巨大な紅き花を咲かせ、灼熱の炎が死を纏ってその場にいた兵士を次々と飲み込み、彼らをこの世から消滅させる。

 

『ぐわあああああああああぁぁぁぁ!!!?』

 

『何事・・ごげ・・・おごろぇぇぇぇっ!?』

 

『あ、あれ、おれ、腹がない?あ、え・・・・ぅぇ・・・。』

 

弩砲や破城槌すらも撥ね退ける頑丈な城門も、まるで子供が積み木を崩すかの様に粉々に粉砕され、城壁上部に備え付けられた魔導弩も一瞬で原形を失い、組み込まれていた魔石も砕かれる事で内部に蓄えられていた魔力が暴発し、連鎖爆発を引き起こす。

 

『何だ!?何が起きて・・・うわあああああ!!』

 

『にぎゃああぁぁぁぁ!!』

 

『何だあれ・・・鳥?鳥か!?』

 

『兄貴が、兄貴が食われた・・・あぁ、城が、城がない。』

 

要塞全体や城壁の外を見渡すために高く作られていた国境要塞の象徴ともいえる監視塔は爆炎と共に一瞬で原形を失い、その破片は散弾の様に近くに居た兵士をずたずたに引き裂き、鎧や盾がまるで意味をなさず肉片と化す。

 

『なんて速さだ!』

 

『まさか、あれもニーポニスの操る魔獣なのか?』

 

『は・・・ははは、ふは、ふははは、ニーポニスは天変地異すら起こす魔物を従えるというのか?ふひゃ、あひゃはっひゃひゃひゃ・・・。』

 

ある者は唖然としながら、ある者はあまりの光景に狂った様に笑いながら、異形の巨鳥を眺めていた。

 

『地揺れがっ!?』

 

『こ・・・今度は何だ?』

 

突如、地響きと共に床が崩れ始める。

 

『うぎゃあああぁぁぁ!!』

 

『逃げろぉぉぉ!崩落に巻き込まれるぞぉぉ!!』

 

兵舎や監視塔などの地上構造物が破壊され爆弾の威力も相まって、地下洞窟に亀裂が走り、爆心地を中心として崩落が発生し、悲鳴を上げながら兵士が瓦礫と共に地底へと流れて行く。

 

『何だ?この音は?』

 

『上で魔術師がまた何か実験しているんじゃないの?』

 

『まて、何か揺れないか?』

 

突如、天井に亀裂が走り轟音と共に崩落が始まり、土煙で前が見えなくなる。

 

『ど、洞窟が崩れ・・・うぎゃあああぁぁ!!』

 

『逃げろ、早く逃げろおぉぉ!!』

 

『きゃあああああぁぁぁ!!』

 

地下施設は、城下町としての機能を持っており、多くの民間人も暮らしていたが、上部の軍事施設が爆撃を受けた事で洞窟部分が崩落し、兵士だけでなく民間人も多数生き埋めとなる。

 

『・・・・おい、生きているか?』

 

土煙が収まり、運よく崩落に巻き込まれなかった生き残りが、瓦礫の隙間から這い出てくる。

 

『ここだ、俺は此処に居るぞ・・・。』

 

弱弱しい声で助けを求める声を聞き、体が半分埋まった仲間を引き抜き救助する。

 

『くそっ、一体何が起きたと言うのだ!』

 

『分からない、だが上の施設が何かとんでもない攻撃を受けた可能性がある。』

 

『あっちにも仲間が埋まっているぞ!くそっ、何だこれは!』

 

瓦礫に埋もれた仲間を引き抜き、土砂を取り除き埋もれた者を救助し、そして既に事切れた遺体を見つけては意気消沈する。そのような光景は地下施設の彼方此方で繰り広げられていた。

 

『兎に角、外に出なければどうにもならない、早く首都に事態を伝えねば・・・。』

 

地上の施設はF-15の爆撃で消滅しているので、各地から召集され兵舎に集まっていた兵は、ほぼ全滅しており、既に要塞としての機能は失われているが、地底部分の全てが破壊された訳では無かったので、民間人含めて多数生き残っていた。

 

『大丈夫か?この道を真っすぐ進めばもう外だ。』

 

『くそっ、ここはカクーシャ帝国の要所でもあるのだぞ、大規模な崩落で壊滅なぞどの様に報告すれば・・・。』

 

国境要塞の地下施設出入り口から外に出た生き残りたちは、突如眩しい光に照らされ、思わず手で目を覆う。

 

『馬鹿な、そんな馬鹿な、鎧虫の群れだと?』

 

『う・・後ろを見ろ、要塞が、俺たちの家が、瓦礫の山に・・・・。』

 

自分たちを包囲する異形の鎧虫と軍勢に、多くの兵が唖然とし、背後の瓦礫の山を見て放心状態となる。

兵士、民間人問わず目の前の現実が受け入れきれずに思考が止まる者が続出した。

 

 

===================================

 

『アー・・・アー・・・我々は日本国自衛隊である!要塞は包囲されている!こちらの攻撃は防壁を容易く粉砕する威力を持ち、既にそちらを射程に収めている!』

 

『武装解除し、我らに投降せよ!無駄な抵抗はよせ、直ちに武装解除し投降せよ!』

 

キョーシャ傭兵国前哨基地に大型トレーラーに載せられて運び込まれてきた74式戦車や96式装輪装甲車が崩壊した国境要塞を包囲し砲門を向けスピーカーで生き埋めを免れた生き残りに投降の呼びかけを行う。

 

「今まで呼びかけに答えた奴らがどれだけいたんだか・・・。」

 

「奴らのホームは瓦礫の山となっているんだから諦めてほしいもんだが・・・。」

 

サクッ・・・。

 

陸上自衛隊が展開する陣地よりはるかに手前に矢が刺さった事で、呼びかけが無意味だったとため息をつく。

 

「結局こうなるんだよな。」

 

弓矢や刀剣を構えた集団が瓦礫の山の隙間から次々と吐き出され、それはまるでスコップで掘りぬいてしまったアリの巣から無数のアリが這い出てくる様な光景であった。

 

「思いのほか爆撃を生き残った奴らが居るもんだな。」

 

「やはり、爆撃だけで片が付く訳では無いのはこの世界も同じ事か。」

 

「敵の攻撃を確認、繰り返す攻撃を受けた。敵攻撃の意思あり、反撃せよ。」

 

自衛隊への攻撃を皮切りに、鋼鉄の獣が咆哮を上げ黒い息を吐き出しながら前進を開始する。

 

『白地に赤い丸を確認した!間違いない、ニポポ族だ!』

 

『畜生、あんな巨鳥と鎧虫を操るなんて聞いていないぞ!!』

 

『先遣隊がやられる訳だ、あの様な化け物を操るなんて。』

 

『あれ程の巨体だ、重さで動き自体は遅い筈だ!懐に飛び込めば勝機はある!矢や投げ槍に注意せよ!』

 

『くたばれ劣等民族め!!』

 

雄叫びを上げながら生き残った兵士や武器を渡された民間人が最後の抵抗と言わんばかりに自衛隊に無謀な突撃を開始した。

 

「鎧を装備していない?あれは民間人なのではないか?」

 

「躊躇うな、武器を取ってこちらに向かっているんだ、奴らは敵だ。」

 

「・・・・了解、攻撃を開始する。」

 

目に映ったのは民間人とは言え、ある程度訓練しているのか隊列を維持しながら突撃する集団であった。

予備役としての側面もある国境要塞の住民であるが、やはり本職の兵士には及ばず、防具もまともに用意されていないが、闘志は本職の軍人にも負けていなかった。

 

『鎧虫が何だ!一矢報いてやる!ひき潰せるもんならひき潰してみろ!』

 

『鎧虫を壁にするつもりだろうが、そうは行くか!矢の雨を降らせてやっ』

 

重く空気を叩く音が響き渡ると共に、戦列が引き裂かれた。

 

ズン!・・・・ドゴーン!!!

 

『ぎゃああああっ!』

 

『ひっ・・・・ひぃっ!』

 

74式戦車が多目的榴弾を発射し、その直線状の者達と着弾地辺付近に居た兵士を血の煙へと還す。

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 

『何だこれは、一体何ぎゃあああぁ!!』

 

『助けて!誰か助け・・・ぎっっ!!』

 

96式装輪装甲車の上部から放たれるM2重機関銃や96式40mm自動てき弾銃がカクーシャ帝国軍を砂糖菓子の様に溶かして行く。

 

「くっ、民間人すら特攻して来ているのか?」

 

「キョーシャ傭兵国と変わらんか、後が無いとはいえ。」

 

「装甲が叩かれている、奴らの弓矢はここまで届くのか?」

 

「やかましい音だ、効かないと分かっていても良い気分ではない。」

 

炎が爆ぜる音と共に車体が揺れるが、96式装輪装甲車には焦げ目すらつかず車内から遠隔操作された96式40mm自動てき弾銃が攻撃を継続する。

 

「魔法も届くのか、だが装甲を貫くほどでもない様だな。」

 

「物理干渉のない光も飛んでくる、恐らく大陸沿岸部でも見られた催眠魔法の様なものだろう。」

 

「体の構造上俺たちには効き目は無いんだがな、無駄弾撃ってくれるなら好都合だ。」

 

「冷却が終わったぞ、撃ちまくれ!!」

 

車体上部に取り付けられM2重機関銃や96式40mm自動てき弾銃が火を噴き、魔法を浴びせていた集団が肉片へと変わる。

 

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!キンッ!カンッ!ボボボフッ!

 

『このぉぉぉ蛮族があああぁぁぁ!!』

 

「っ!?」

 

96式装輪装甲車と共に攻撃に加わっていた74式戦車の車長が奇妙な予感を感じると同時にカクーシャの陣地から突如強烈な熱線が放たれた。

 

コオオオォォォォ・・・・ブォン・・バシュウウゥゥン!!!

 

『なっ!?俺たちを巻き込む気・・・げああぁぁぁ!!』

 

『退避!退避ぃぃ!!』

 

仲間の兵士を巻き込みながら発射された熱線は74式戦車の下部から上部を炙るように命中し、履帯が吹き飛び正面装甲を焼き焦がす。

 

ゴオオオオオォォォ・・・ミシミシ・・・パチパチ・・ギギギッ・・・。

 

「眩しいっ!」

 

「くそっ!お返しだ!」

 

74式戦車の正面装甲を焼き焦がしたが貫通するまでには至らない、熱線が放たれた場所に砲門を向け、多目的榴弾が発射される。

 

『馬鹿な!城壁すら貫く魔導兵器が通じぬというのか!?』

 

ズンッ!!

 

『あり得ぬっ!』

 

萌葱色の魔石がはめ込まれた杖を向けていた魔術師の顔には焦燥感と恐怖が張り付いており、至近距離で炸裂した成形炸薬が赤々とした炎と破片をまき散らし、魔術師は土と肉片の混合物と化する。

 

「被害報告!」

 

「ライトが片方破損、履帯が脱落しました。」

 

「まさかあれ程の威力の魔法が存在するとは、トガビトの魔法だけでなくリクビトの魔法も警戒しなくてはな。」

 

「っ!?魔石の様な物体が光を放っております!」

 

「何っ!?」

 

ペリスコープで着弾個所を眺めているとカクーシャ帝国兵が慌てふためいた様に光を放つ魔石から離れていた。

 

ジジジ・・・ピン・・・パキン・・・ピシッピシッ・・。

 

『いかん!魔力が暴走しているぞ!』

 

『人食い族の魔石の力が解放されたら俺達も巻き込まれ・・・・。』

 

熱線を放った魔術師の持っていたと思われる杖が青白く光り輝き、強烈な魔法パルスを放ち、やがて光は赤い色に変色し、次の瞬間視界を覆わんばかりの大爆発が引き起こされた。

 

ドオオオオオオオオォォォォォン!!・・・バチバチ・・・ゴゴゴゴゴゴ・・。

 

青と赤の混じった閃光は、土砂を掘り返し、黒煙を天高く上げ、まるで雷雲の如く余剰エネルギーがバチバチと迸り、カクーシャ帝国兵の生き残りはその大爆発に巻き込まれて半数以下まで数を減らしていた。

 

「魔石に・・・あんな小さな魔石にあれだけのエネルギーが秘められているとは。」

 

「まさかトガビトの魔石か!?」

 

「日本本土でも高純度魔石の危険性が指摘されているが、これ程とは。」

 

「流石にさっきの爆撃程の威力は無いが、巻き込まれていたら危なかったぞ。」

 

「どの道、履帯が破損しては身動きがとれん、他の連中の支援をしろ!」

 

小破した74式戦車をカバーする様に他の車両が前進し、カクーシャ帝国兵を重火器で殲滅して行く。

 

『ぐ・・ひひ・・・ひひはははっ!これ程とは!化け物めぇ!!』

 

『逃げろおぉ!人の敵うモノではないぞぉぉ!!』

 

『逃げる!?何を言うか!甲獣などよりもよっぽど上級の獲物ではないかぁ!』

 

『アンタ正気か!?』

 

『ふはっ、ふはははっ!こ奴らを狩れば我らは天変地異すらも制覇した事になるのだ!ふははははっ!!』

 

『くそっ!死んでたまるか!俺は、俺は逃げるぞ!』

 

『強き者が生き残り、弱き者が食われる、それこそがこの世の摂理なりぃぃ!食らうが良いニポポ族ぅぅぅぅ!!!』

 

片腕をもがれた男が目を血走らせて大斧を構えて奇声を上げながら戦闘車両へと向かって行く。

 

「糞っ!こいつらもかよ!」

 

「撃て撃て!一人も逃すな!」

 

74式戦車の同軸機銃が迫りくるカクーシャ帝国兵を薙ぎ払い、一か所に固まっている場所があるとそこに主砲を放ち吹き飛ばす。

 

『われ・・・我らは神になり・・ぃぃ・・・えぇ・・・ぅ。』

 

『逃げなければ逃げ・・・・がぁっ!!』

 

74式戦車に切りかかろうとしていたカクーシャ帝国兵は狂気的な笑みを貼り付けたまま体を上下泣き別れされ、崩れ落ちる。

自衛隊のあまりの火力に、逃げ惑っていた兵士たちも銃撃や砲撃に巻き込まれ屍の山を構成する一つになる。

 

「爆撃無しだったらこれよりも大人数を相手にしなければならなかったのか。」

 

「砲兵は戦場の女神と言うが、空爆も万々歳だな。」

 

「退避している民間人には当てるなよ?」

 

「騙し討ちしてくる様なら?」

 

「そん時は一緒にドカンよ。」

 

「冗談じゃない。」

 

戦闘に参加していなかった民間人や戦闘を放棄した一部の兵士達はすすり泣き、家族や友人が引き裂かれる光景を見て絶望し、悲鳴と怒号が戦場に響き渡る。

 

『降伏する!矢を放つのを止めてくれ・・・へぎゃっ!?』

 

『投降は許さん!蛮族共を皆殺しにしろぉ!』

 

『おのれニポポ族!この俺が貴様らを成敗してくれ・・・がっ!!』

 

あまりにも絶望的な状況に降伏しようと武装解除した兵が、後ろから仲間に切り殺され、その兵士も銃撃や爆発に巻き込まれ絶命する。

 

瓦礫の山に隠れて子供の様に泣き崩れる者や、狂う者、仲間を奮起させ無謀な突撃をする者、絶望のあまり自殺する者、カクーシャ帝国軍は阿鼻叫喚の渦に飲み込まれていた。

 

「ナイスキル!いや、待て!」

 

『うおおおぉぉぉ!!カクーシャ帝国万歳っっっ!!!』

 

体中穴だらけになったカクーシャ帝国兵が内蔵のこぼれた腹部に手を突っ込み、胸部が青白く光りながら膨張し、青白い爆発を起こす。

 

「うわっ!じ、自爆した!?」

 

「自分自身を魔石爆弾にしやがった!!」

 

魔力制御に長けた者が体内の魔石を暴走させ、自分自身を人間爆弾に代えて戦闘車両に向かって特攻する者が出始め、ますます自衛隊は弾幕を厚くする。

 

「こいつら正気じゃない!」

 

「カクーシャ帝国もキョーシャ傭兵国と中身は変わらんか!」

 

「流石に正面装甲を抜く程の威力は無いが、生身で食らえば即お陀仏だぞ?」

 

「少しばかり距離を詰めすぎたか?」

 

「履帯を破壊された仲間も居るんだ、踏ん張るぞ!」

 

死兵と化したカクーシャ帝国兵を弾薬の続く限り撃ち続け、国境要塞の人口の殆どが消滅したころ、動く者は崩壊した要塞の瓦礫の山に身を寄せ合う者と陸上自衛隊のみであった。

 

カクーシャ帝国国境沿いの要塞都市の同時攻撃は、カクーシャ帝国軍の半数の消滅と言う結果となり、カクーシャ帝国首都は丸裸の状態となったのであった。

 

「はぁ、生きた心地がしませんよ。」

 

「戦闘はこちらの圧勝、意図していなかったが、空爆により地下施設ごと崩壊して残存勢力を叩くのみ、他の場所に比べると楽な方だったんじゃないか?」

 

「そうですね。」

 

「ここ以外にも同規模の国境要塞は幾つかある、こちらと同時期に潰したところもあれば未だ戦闘中の所もあるんだ。」

 

「あちらさんも頑張って欲しいもんですね。」

 

「全くだ、こんな連中放ったらかしとく訳には行かん。」

 

「生存者たちはどうするのですか?」

 

「どうするも何も、大陸沿岸部の時と変わらんよ。」

 

「あまり協力的な態度では無いんですよね、酷い怯えようです。」

 

「人間とは思っとらん様子だ、化け物か何かと思ってるんだろう。」

 

「まぁ、我々は地球人ですからね、エイリアンみたいなものです。」

 

「ハン、宇宙人だか何だか知らんが、降伏した以上はこちらの指示に従ってもらうわ。」

 

「カクーシャ帝国人の中でも人種的なヒエラルキーがあるのか一部の人達は協力的なのですが、純粋なカクーシャ人は抵抗の意思を見せるそうです。」

 

「また面倒な事を、兎に角拘束しておけ。」

 

カクーシャ帝国は、日本国および大陸中央部諸国を攻撃しようと各要塞に兵を集めていたところ、自衛隊の空爆と地上部隊の突入により、再生不可能のダメージを負った。

 

現地の文明ではカクーシャ帝国に太刀打ちできず、波に飲み込まれ蹂躙される運命である筈だったのだが、鉄と火薬の暴風に晒されたカクーシャ帝国軍は一瞬にして灰塵と化したのだ。

 

これは、現代兵器の無慈悲な洗礼を受けた国境要塞の一つの話である。




スプラッシュ・ツーか敵地上物破壊か迷いましたが、後者にしました。
うーん、戦闘描写ってやはり難しいです。

成るべくテンポを維持しつつ執筆を続けたいと思います。

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