現代の修羅、VR世界で暴れる   作:黄金馬鹿

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多分、これから出てくる技術やら何やらの説明回。覚えなくてもいいのよ


そのはち

 ニヤニヤが二人。俯き笑いを堪えてるのが一人。苦笑いが一人。笑顔で怒ってるのが一人。顔が引き攣ってるのが一人。これがとある公園の一角で出会った者達の表情だった。

 

「いや、その、直葉さんや?何も言わずに剣術習ってたのは悪かったからさ?だから落ち着こうぜ?」

「ふーん、お祖父ちゃんに私がお兄ちゃんの代わりに剣道やるからってあんだけ言って私の代わりに辞めたのにお兄ちゃんは剣術やってたんだぁ……不思議だなぁ、何年も前からやってたみたいなのに全然気が付かなかったよ」

「す、直葉さん……その、木刀しまってくれませんかね……?流石に筋肉の落ちた体でお前の一撃を受けたら死んじまう……」

「死ねば?」

「辛辣!」

「あ、あははは……」

『(この兄弟おもしれぇ……)』

「さ、流石にこの展開は草生えるわよ……!」

 

 木刀を構える直葉とゆっくりと後退していく和人。それをニヤニヤと見るのは建斗と木綿季。そして苦笑いしているのは珪子でちょっと笑いが堪えれなくなってきたのは詩乃。

 何故こうなったかと言うと、先日の木綿季の誘いに乗ったリーファこと直葉はアバターの体だとリアルよりも性能がいいため、リアルで体に技そのものを馴染ませた方が仮想現実でもやりやすくなるしリアルでも同じ動きが出来るため、住んでる場所を大雑把に聞けば結構近かったため集まってオフ会的な事をやってみようという事になった。まぁ、近いのは当たり前である。和人と同じ家に住んでるのだから。

 近場の公園で集合として、約束の日に和人と直葉は同じ時間に家を出た。木綿季と珪子がリアルの容姿がアバターと結構似ているのを目印として直葉は歩いて行き、兄の和人と一緒に公園に入り、和人が手を上げ、直葉が珪子と木綿季を確認した所でようやく和人と直葉が素性に気が付き、今に至る。

 よくここまで気付けなかったな、と建斗は笑いながら言ったが、まさかと二人とも思っていたため、ここに来るまで気付けなかった。

 

「色々と反省しろ馬鹿兄貴!」

「あっぶねぇ!?」

 

 そのまま全力で木刀で和人の頭をかち割りに行く直葉。しかし、和人は途中で直葉と呼吸を合わせ無意識にその存在を潜り込ませ、直葉が勘で振った木刀を避けてその勢いを利用し直葉の手と背中に手を当て、フワリと、体を傷めないように投げる。

 投げられた直葉は尻餅をつき、呼吸を合わせるのを止めた和人を睨んだ。

 

「いや、ホントに悪かったって……俺だって祖父ちゃんに一泡吹かせてスグの事も俺と同じように好きにさせてやれって言うつもりだったんだけどさ……スグが剣道楽しそうにやってるから何も言えなくてさ……」

「お兄ちゃん……」

 

 こんな言い訳でさっきの怒りが収まるわけないだろ。さぁ、第二ラウンドだと建斗木綿季詩乃がニヤニヤする。

 

「も、もう。そういう事なら、その、許してあげないことないけど……」

 

 そして舌打ちが三つ聞こえてきた。珪子はその舌打ちの音源に引いてる。

 

「いや、ホントごめん、スグ。何時か言おうと思ってたんだけど、言い出せなくてさ」

「じゃ、じゃあ、これから家でアタシに色々教えてくれるのでチャラ!」

「あぁ、分かったよ」

 

 約束だよ?と言う直葉の笑顔に珪子と詩乃は何だかその笑顔が普通じゃないと感じた。

 どこか、そう。何か余り見過ごせないような、そんな感じ。珪子と詩乃が顔を合わせ、首を傾げた時、二人はやっと気が付いた。

 あれ、雌の顔だ。あれは惚れてる。絶対に惚れてると。

 

「珪子、気付いた?」

「はい。あれって、多分自覚なしですけど禁断の……」

「……和人って罪づくりよねぇ……」

「全く持って同感です」

 

 そんな恋する乙女二人の話し声が聞こえてか聞こえないでか、建斗と木綿季のニヤニヤが止まらない。

 

「さて、木綿季。スグを頼む」

「あいよー。じゃあ、まずは服を脱ぎます」

「えっ!?」

「ジョークジョーク。んじゃ、まずは構えてみてね」

 

 直葉が木刀を手に持って構え、木綿季はそれを見てから直葉の構えを本人に違和感が無い程度に実戦向きに……殺し合い向きへと変化させていく。

 これは和人も通った道だ。今でこそ我流を混ぜ混んだ構えを取っているが、それまでは長かった。やはり、最初に教えこまれた事というのは中々抜けるものではない。それに、直葉はこれからも剣道を続けていく。だからこそ、剣道の構えを主体に、本人がやりやすい構えを木綿季が見ながら作っていく。

 その間に和人と珪子は筋肉の落ちた体でも効率よく手足を動かせるように適当に体を動かす。その適当が直葉から借りた竹刀を縦回転を混ぜ混んだアクロバティックな方法で振り回したり縮地でのシャトルランだったりする辺り、発想がどうにかしている。

 ちなみに、詩乃と建斗に関しては建斗が的になって詩乃がエアガンで建斗を撃っている。が、やはりエアガンの弾程度なら避けてみせるのが建斗だ。伊達に生まれた時から戦闘用に体を作られてはいない。

 

「よし、構えはこんなモノだね」

「あんまり変わってないような……」

「そりゃあ急激に変えたら頭が追い付かないって。長年かけて作られた構えの癖なんてそうそう抜けないんだよ?」

 

 じゃあ、次ね。と木綿季は一度手を叩いて次のステップに移る。本来はここからこの構えを体に馴染ませるのだが、それはスキップ。個人でやってもらう事にする。

 

「じゃあ、縮地は和人にゆっくり教えてもらう事として、呼吸を合わせる事を覚えようか」

「あの、目の前から消えるやつ?」

「そうそう。これに関しては難しくないから教えれるだけ教えとくね」

 

 木綿季が少しだけ指を動かす。その瞬間、木綿季の姿が消える。いや、直葉と一時的なシンクロ状態になり、直葉からは異物と認識できなくなり、自分の一部のように見えてしまう。そのために、木綿季の姿が近く出来ない。

 が、すぐに手を叩く音が聞こえ、木綿季の姿が認識出来るようになる。

 

「取り敢えずはさっきみたいに、何かしらのアクションを挟んで相手の呼吸に合わせる事から始めようか。まぁ、呼吸に合わせるって言っても本当は相手に合わせて動くっていう単純な事なんだけどね!」

「相手に合わせる……?」

「そうそう。相手が自分を意識出来ないような動きをする事。つまり、相手と呼吸を合わせて相手のしたい事、考えてる事、何を意識しているか、何を感じているかを相手に合わせて馴染む様に体を動かす。これだけで相手は自分の姿がまるで消えたかのようにみえちゃう」

 

 直葉はその言葉を聞いて何をやるかは分かったが、どうやるかが分からなかった。

 

「後は呼吸を奪う技法なんていうのもあるんだよ。おーい、珪子。こっちおいでー」

「なにー?」

 

 木綿季に呼ばれてシャトルランしていた珪子が縮地で木綿季の横までやってきた。

 

「じゃあ、直葉。ボク達が的になるから攻撃してきて。ただ、注意するのは狙うのは珪子。ボクは優先順位が低い目標として狙ってね。あと、珪子は反撃しないけどボクはちょっかい出すからね」

「え?あ、うん」

 

 直葉が木刀を構えて意識を切り替える。当てはしない。だが、その首に木刀を突きつける位はさせてもらう。

 困惑している珪子の不意をつくように直葉は飛び出し、珪子へ向かって木刀を振るう。だが、その振るわれた木刀は横から木綿季が手刀で軽く叩き、軌道をずらした。

 その程度で。直葉はすぐに返す刀で珪子の首を狙う。しかし、珪子はそれを避けない。

 貰った。そう思った瞬間、再び割り込んだ木綿季がそれを上へとかち上げる。これじゃあ珪子に攻撃が当たらない。だとしたら、一旦木綿季を片付ける。

 目標を変え、木綿季へ向けて木刀を振るう。が、木綿季はハラリヒラリと煽るように木刀を横から叩いて軌道をズラしながら避けていく。

 攻撃が当たらない事に段々とイライラしてきた直葉は思いっきり胴薙の一刀を繰り出そうとするが、その直前に構えた木刀が動かなくなった。

 木刀の方を見れば、珪子がいつの間にか木刀を握って抑えている。

 

「ねぇ、直葉。直葉の優先目標は誰だったかな?」

「そりゃあ、珪子ちゃん……あっ!?」

「これが呼吸を奪う。まぁ、自分に意識を集中させて仲間に討たせる。そんな技法だね。これは呼吸を合わせる技法の応用。相手の意識をこっちに向けさせるようにこっちが動く。そして自分だけを見させる。取り敢えずはこれだけ覚えてもらうよ」

 

 何ともまぁ、滅茶苦茶な。しかし、これがALO内で使えれば。リーファとして動く自分は仲間が戦ってる中相手を確実に闇討ちし、そのままヘイトを完全に奪い、縮地で逃げながら仲間に大技を決めてもらえる。

 そんな戦法が完成する。そして、剣道の試合で呼吸を合わせればもう勝てない相手はいないだろう。

 

「後は相手の呼吸の合間に割り込むようにして行動して攻撃を当てる『呼吸を斬る』、リアルミスディレクションこと『視線を斬る』。これは潜入位にしか使わないかな?カモフラ率が高いのが条件だし。まぁ、リアルミスディレクションの一つの『気配を斬る』……まぁ、呼吸を止めたり体勢を低くしたり視線を外したり……それと組み合わせるとリアルミスディレクションが本当に完成するんだけどね」

 

 つつけば技術が出るわ出るわ。じゃあ、リアルミスディレクションやってみようかと言われて木綿季が石を投げた瞬間、木綿季の存在が気薄になり、気が付いたら視線は石へ。そして木綿季はいつの間にか直葉の胸を揉んでいる。

 

「……流石にこの大きさは反則」

「きゃぁっ!?」

「あうちっ!」

 

 ゲンコツを落として木綿季を下がらせたが、それでも先ほど見た技術の数々は目を見張るものがある。確かにこれをALOで次々と使ったらPK狩りなんて趣味同然に出来るようになるだろう。全く持って頭がおかしな技だ。

 

「まぁ、やり方はさっき教えた通りだから後は練習あるのみ。合わせやすいようにはするからやってみなよ」

「う、うん……」

 

 ちなみに、この日は幾ら練習しても直葉は呼吸を合わせられなかった。落ち込む直葉に木綿季はそんな簡単にできたらボク達の苦労は何だったんだ状態になるんだから多少はね?と言って慰めていたが、その後直葉が何日で出来るようになったのかという疑問に木綿季は数ヶ月と答え、若干の目眩がしたのは特筆することではないだろう。




本来ならまず、初級として相手への煽りと放火と大体硬さが変わらず、時と場合によっては嫌がらせに使える万能の武器、地面について教えるのですが、そこら辺は省いていきなり小手先の技術から

今回の話で見せた木綿季の呼吸を奪う技法は煽りを含めて直葉を苛立たせ、剣筋を単調にしています。実は木綿季でもここまでしなきゃ避けるのは無理だった、というのが本音。シリカも連続縮地で後ろに逃げれば逃げ切れますが、使わなければ冷や汗物の攻撃でした。実は小手先の技を極めれば建斗並のリアルチートキャラになれるのがこの作品だと直葉ただ一人だったり。まぁ、原作でも唯一武術やってる子ですしね

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