何気に今回から原作のALO編突入
つい最近起きた出来事。と言えば殆どの人は揃いも揃ってこう言うだろう。
SAOのゲームクリア、と。ある日、唐突にSAOにログインし、未だに生きている人間が目を覚ました。それは即ち、ゲームクリアが成された、という事だった。
一万人のSAOサバイバーはその数を減らし続けていたが、それでも残った人間は何とか現実へと戻ってきたが、その中でも問題は多数あった。が、そんな事キチガイ共の知った事ではない。
キチガイ三人は二人と一人に別れてそれぞれの知り合いの元へとお見舞いへと向かった。何やら問題が多数あってゴチャゴチャ世間がうるさいがそんなのは大人の問題だ。当事者でないなら当事者を煽りに行くだけの話。
そんなこんなで建斗は一週間近く経ったある日、とある病室の前に行くと何の前触れも無くその扉を開けた。
「やぁやぁ、ゲームクリアおめっとございまーす!!」
「うぉぁっ!!?」
病院なのでお静かに、という注意は通用しない。バーン!と扉を開け放って入った病室の中では黒髪の痩せこけた青年が室内で出来るリハビリをしている真っ最中だった。
流石にそれに驚き、その手に持ってた軽めのダンベルを落としそうになるが何とか持ち直し、ベッドの脇に置いた青年は呆れた顔で建斗を見た。
「はぁ……二年前と変わんねぇな、お前は」
「そういう君は桐ヶ谷和人」
「何でそこでDIO様のネタ入れた?しかも何でその台詞をチョイスした?」
ベッドで寝ている青年、和人は建斗の何時もの暴走っぷりに何だか懐かしい物を感じていた。
あ、持ってきた花、花瓶に突っ込んどくぞ。と適当に花屋で見繕ってきた花を病室の花瓶に突っ込んだ建斗は適当な椅子にドカッと座った。
「にしても、久し振りだな、和人。どうだ?SAOは楽しかったか?」
「楽しくねーよ何度も死ぬかと思ったわボケ」
「はぁ……俺も行きたかったぜ」
「お前なぁ……せめて他のSAO帰還者の前ではそんな事言うなよ?不謹慎だからさ」
二人がこうやって話したのは実に二年ぶり。なのにも関わらず、二人は数日ぶりに出会った程度の感覚で話していた。
この二人は同じ学校の同級生であり、ゲームの話で意気投合して友人になった仲で、木綿季とも友人であり、詩乃が密かに好意を寄せている相手でもある。
一応、詩乃と同じくキチガイの暴走を止める役を請け負った胃痛持ちでもあるのだが、どうやらこの二年で胃痛は何とかなったようだ。
「あ、そういえば」
「どうした?」
「お前さ、SAOが始まる前はSAOの中で彼女作るとか言ってたけど出来たのか?いやー、でも出来るわけないよなー。所詮女顔だしなー」
「出来たぞ?嫁」
「……パードゥン?」
「結構最近、SAOの中で嫁と子供が出来ました」
幸せそうな顔でそう報告する和人の目に冗談の色はない。つまり、これはマジもんだと言う事。詩乃が落とせなかった鉄壁の要塞を落とした女がいるということ。と言うか子供ってどういうことだ。
流石のキチガイもこれには仰天。固まってどういう行動をするべきかという長考に入ってしまった。
これはきっとあの子じゃないな。と予想はしながら建斗は口を開いた。あの子と付き合ったらコイツの顔色、ちょっと悪くなる筈だし。と考えつつ。
「お、おめでとう?ございます?」
「何で疑問形だゴルァ」
「い、いや、その……こんな女顔を貰う奴がいるなんて……」
「誰が女顔だ!!」
「あ、哀れ詩乃と珪子……」
流石のキチガイも同情せざるを得なかった。
一方その頃、木綿季の方では。
「それで和人さん、そのままアスナさんと結婚しちゃってぇ……」
「…………………………」
「誰か助けて」
実は木綿季経由で知り合いだった綾野珪子がSAO内で起こった失恋話を急に語りはじめ、詩乃が轟沈。楽しいお見舞いが葬式に一転した結果、流石の木綿季も困惑していた。
「あんなに頑張ってぇ!攻略組にもなったのにぃ!!横から出てきた女に掻っ攫われてぇ!!」
「け、珪子……ここ病室だから……ね?」
「……………………………………」
「し、詩乃……何か喋ろうよ?瞬きすらしないで虚空見つめてるのは怖いよ……」
綾野珪子。SAOの中ではシリカと名乗っていた少女は原典とは違い、元より和人と知り合いだった。しかし、元より少し奥手な彼女はSAOの中でゆっくりと和人と付き合う土台を作ろうとした結果見事にゲーム的にも恋愛的にも出遅れ、一年ちょっと経った頃、攻略組と呼ばれるトップ集団になんとか追い付き、和人が結婚する前に自分の好感度を聞いて帰ってきた言葉がこれだ。
「珪子は、肩を並べて戦える戦友だって!!最早女の子として見てくれてないんだよ!?ただの戦力としてしか見てくれないんだよ!!?」
「どうどう……」
「リズさんは途中でヘタれるしぃ!?サチさんは私を近付けないようにガードしてくるしぃ!?それで最後はアスナさんに取られてジエンドだよ!?私のポジション戦友だよ!?」
「お、落ち着いてよホントに……退院したらゆっくり聞いてあげるからさ?ね、詩乃?」
「へぇ、和人取ったのってアスナって女なのね……殺さなきゃ」
「寝てろぉ!!?」
「ふげっ」
流石の木綿季も失恋で暴走する友人を目の前にして真横で殺意を露わにする友人に腹パンして気絶させたりした結果、何時もよりもマトモになったが少し哀れだった。
一方、そのカオスの原因といえば……
「それでさぁ、一緒に一層に行って初めて一緒に食べたパンを食ったんだけどさ、その時のアスナの顔が可愛くてさぁ」
「そ、そうかい……」
惚気けていた。思いっきり。少し遠くで珪子が失恋に暴走して詩乃が殺意を抱いてるのを知らずに。それが大体わかる建斗はさっきから胃がキリキリと痛んでいた。
これは今度珪子と詩乃と一緒に宅飲みかなぁ。と軽く上の空でもあった。
「けどさ、ちょっと、色々あってな……」
「い、色々?」
「実は、アスナがまだ、目覚めてないらしいんだ」
「……あー、そんな事ニュースで言ってたな、そう言えば」
と言うのは、ついこの間、ニュースではSAOがクリアされたのにも関わらず、目が覚めない人間がいる、というのを聞いたからだ。
これには流石にメディアも専門家も困惑。全ての元凶の茅場が死んだ今、それをどうにか出来る者は一人もいないからだ。
騙されたのでは?約束が違う。バグか?様々な話が飛び交ってはいるが、それはあくまでも予測。事実を解明は出来ていない。
その事件の一つに和人の嫁であるアスナは巻き込まれたのだろう。
「写真の一つでもあれば、こっちでも原因は探ってみるが……」
「何で写真が必要なんだ?」
「SAOって確か、リアルの顔が使われたんだろ?なら、もしかしたらバグで違うゲームや試作品のゲームにログインさせられてたりする可能性もあるからな。後は、その子の病室に忍び込んでナーヴギアを解析する時に使うか……」
「おい、ナーヴギアを解析って、そんな事したら……」
「あくまでも、何のネットワークに接続されているかを調べるだけだ。それに、お前で実験したって言ってたしな」
「ちょっ!!?」
流石の和人もヒヤッとしたのか自分の体を抱くように手を動かすが、まぁ、別にその程度ならナーヴギアはどうにもならねぇってのは茅場本人が言ってたから安心しろ、と言って安心はさせる。
一応、建斗の人脈はそう広いとは言えない。だが、祖父の人脈は広すぎて正直引くレベルなのだ。個人で全てやった茅場の事は何一つ分からなかったが、それでも祖父の人脈ならゲーム関連やネットワーク関連に強い人間も多々いるし、忍者的な事を出来る人間も勿論いる。なので、祖父に顔写真一つ見せれば解決する可能性はかなり高い。
「写真かぁ……あ、ナーヴギアに記録されてるな」
「おっ、マジか」
「ユイをナーヴギアの記憶容量に突っ込んだ時に一緒に家族で撮った写真全部突っ込んだんだよ。消えないようにな」
「じゃあ、そのデータくれればこっちで色々やっとくぞ」
「助かる。えっと、ノートパソコンとナーヴギアを接続して……」
和人が家から持ってきてもらったらしいノートパソコンとナーヴギアを接続し、ナーヴギアの写真データを全部移してから建斗の携帯と接続して写真データを送る。
建斗はキチンとそのデータが見られるかどうかを確認するためにフォルダーを開いて写真を確認する。
「うわ、ALOより解像度いいんじゃねぇのか、これ……で、こっちの茶髪の人がアスナか?」
建斗が適当に出した写真は、私服の和人が笑顔の茶髪の少女と黒髪の子どもと一緒に笑っている写真だった。
「そうだ。で、こっちの子が俺達の娘のユイだ」
「ふーん……なに、養子?」
ここまで自然な笑顔となると流石にAIとは思えなかった。ALOにもNPCはいるが、笑顔はどれも人間っぽくはなかった。
「いや、AI。茅場謹製の」
「AIって……そんなに会話とか出来ないんじゃないのか?」
「それが感情もあって会話も出来る本物の人間みたいなんだよ。っていうかアレは人間だ。そうとしか思えない」
「マジかよ……」
流石の茅場の変態技術に圧巻する建斗。その写真の中には家族で撮った物だけではなく、仲間内で撮ったのであろう写真もいくつかあった。
その中には珪子が写っているものもあり、一番新しい珪子の写ってる写真はヤケ酒してたりユイを膝の上に乗せて凄く複雑な表情をしている写真だった。流石に想い人の子供を膝の上に乗せるというのはかなり複雑な気分だろう。と言うか失恋への追い打ちとなった事だろう。この後泣いたのが目に見える。
「そういえばこの時のシリカ……じゃなかった。珪子はかなり変な顔してたな……調子でも悪かったのか……?」
「お前の追い打ちのせいだろ……」
「なんか言ったか?」
「別に?」
流石にこれは建斗も泣けてくる。ここまで一方通行な気持ちのまま終わる恋愛なんてそうそう無いだろう。
「じゃ、この中の一枚を使って爺ちゃんに頼んでみる」
「助かる。本当に助かる」
「なぁに、報酬は珪子と詩乃を慰めることでいいさ」
「え?あの二人、何かあったのか?」
「お前が原因なんだよなぁ……」
「何だって?」
「別に?」
そして一方その頃、珪子と詩乃は。
「あ、この時は和人さんがボスのLAを取った時で、この時は下層に行ったらピンチだったプレイヤーを助けた時だね」
「へぇ……やっぱアイツは黒が似合うわね」
「あ、これこれ。これが最後に茅場を倒した時で……あれ?木綿季ちゃん、どうしたの?何でそんなに離れてるの?」
「君達の目が濁りきってるのが怖いから距離とってるんだよ……!!」
今回の苦労人は木綿季だった。
実はキチガイ共はキリトとシリカと知り合い。そしてキリトとシリカも原作開始前から知り合い。が、駄目……!キリトとアスナが結婚するという運命は最早絶対……!MOREDEBANの片割れでは歯が立たない……!
ちなみに、この小説はシリカさんにもDEBANがあります。リズベット?知らんなぁ……!
しかし、ここのシリカさんとシノンさん、このまま病みそうだなぁ……w