「はーい、新規ボス三人で討伐達成を祝ってかんぱーい」
『イエアァァァァァァァァァァァァ!!』
「うっるさ……」
約一名ダウナーな人がいる中、キチガイ三人の打ち上げが始まった。と言うのも、健斗、木綿季、詩乃の三人はつい先日新規実装されたボスをデスペナ関係なしにゾンビアタックをかまして倒したばかりであり、今日はリアルで詩乃の部屋に集まり打ち上げをする運びとなった。
「さて、ここに爺さんの秘蔵の日本酒がある」
「でかした!」
「またアンタは……」
「え?いらないのか?」
「いるわよ」
最初にコップに注いだジュースを一気に飲んだ三人は今度はあろう事が酒をコップに注いだ。最早飲酒に何も感じてない辺り何度も飲んでいるのだろう。
酒瓶から注がれた透明な液体を三人はそのまま口へと運ぶ。が、約二名が顔を顰めた。
「……炭酸の抜けたサイダーだこれ」
「騙された……」
「まぁ、バレないわけないわよね」
流石に飲めない事はないが、酒のつもりで飲んだ健斗と木綿季はかなり気分が落ち込んだ。
「っていうか、匂いが完全に日本酒なんだけど、味はサイダーってどういう事なの?」
「ウチの爺さんに世界の法則なんて通用しねぇよ……」
「待ってアンタのお祖父さん本当に何者」
前々から剣術を見せてもらって護身術を習った時も人間辞めたような動きをしていたが、流石にこんな摩訶不思議な液体を作るあたり健斗の祖父が本当に人間を辞めているという物が確信に変わってきてしまう。
二人はまぁ、あの人だし。とサイダーを飲み干して酒瓶を適当に置いてからジュースを飲む。
「いやー、それにしてもさ。そろそろ人型ボス出てきてくんねぇかな……異型だとやりにくいったらありゃしねぇ」
「それやると健斗のターンが続いて面白くないじゃん」
「蹂躙ほど面白いものは無いんやで……!」
この男、下衆にも程がある。キチガイだが
「アンタ、ネットでレジェンドオブキチって呼ばれてるの知ってる?」
「え、何それちょっと待って初耳なんだけどそれ広めた奴殺してくるから名前教えて」
「あ、その二つ名広めたのボクだ」
「よぉし、辞世の句を読めキチガイ」
「そんな貴方を窓からそぉい」
「貴様ァァァァァァァァ!!?」
早速健斗と木綿季の喧嘩が勃発。したが、木綿季が先制攻撃として健斗を窓から流れるように投げ捨てた。
詩乃はそれを溜め息をついて見送った後、頃合いかなとドアを開けた。その瞬間入ってきたのはバーサクキチガイこと健斗だった。
「木綿季テメェ!」
「ハハハ、ボクに触ってごらんよ。その瞬間貴様を警察にセクハラとして突き出してやる」
「セクハラ………………ハッ!!」
「よし殺す」
「幼児体型が何言っても痛くないなぁ?せめて詩乃位は………………あ、何でもない」
「木綿季、コイツ殺すわよ」
「やべぇ敵増やしちまった」
幼児体型じゃないし最近引っ込むところ引っ込んで来たしと木綿季がガチギレして健斗に襲いかかり、着痩せしてるだけで最近成長してんのよと詩乃がブレーキとしての役割を放棄して縄を片手に健斗に襲いかかる。
その数分後。見事に全身を亀甲縛りされて身動き取れない状態で天井から吊るされる健斗の姿があった。
「二人には勝てなかったよ」
「よしコレのケツに酒瓶突っ込もう」
「いいわね。あ、ちょっと待って中の液体沸騰させてくるから」
「それ洒落になってねぇからマジでやめろよ!?」
『……何だフリか』
「いやちげーよ!?マジで死ねるからホントやめろ!?」
二人の怒りは有頂天だったが、流石にそこまでやると色んな意味で危ないと察したのか、二人ともそれだけは止めた。が、健斗は天井から釣られたまま。
「あ、じゃあついでに暴露するけど健斗って本棚の裏に新たに作った小さなスペースにエロ本隠してるんだよ」
本当についでに今までの鬱憤でも晴らすかのように木綿季がポロリと漏らした。それは健斗のお宝の秘蔵場所だった。
「え、何でそれ知ってんの?ちょっと待ってマジで何でそれ知ってんのそれ」
「明朝五時のトレジャーハント」
「貴様ァ!?人が寝ている隙に何してやがる!!?」
「ちなみに巨乳のお姉さんが好きみたい」
さらに性癖までバラされた。
「熟女好きなのね。引くわ」
「ちょっと何でいきなり俺の性癖暴露大会になってるんですかねぇ!?」
「なお昨日のオカズは逆レ物」
しかも昨晩のオカズも知られている。
「いやマジで何でそれ知ってんだよ!?電気消して数分で終わらせたしその時木綿季は部屋にいなかったよな!?」
「カーテン開けっぱ。僕の部屋から丸見え」
「俺のプライベートォ!!」
「……」
「あ、ちょっと詩乃さん、その養豚場の豚を見る目で見るのやめて目覚めそう」
「死ね変態」
「うっわストレートな罵倒来たよこれ」
最早健斗のプライベートと言うか下関連は完全に木綿季に筒抜けだった。何だか死にたい気分になった健斗だった。さらに詩乃からの絶対零度の視線に何かに目覚めそうだった。
が、それが健斗のスイッチの引き金となったのか急に健斗は色々暴露し始めた。
「あーもうこうなったら色々とぶちまけてやらぁ!木綿季をオカズに数回、詩乃をオカズにしたことも数回ある!あ、ついでにアバターの方でも数回な」
「……え、ちょっと待って。流石に急すぎてボクも思考停止してる」
「サラッと言ったけどコイツ、友人を夜のオカズにしたと宣言したわよ」
「……え、キモ」
「ちょっと木綿季さん。貴女のその目マジで今まで見たことないほど冷めきってるんですけど……」
「ねぇ、詩乃。ボク怖いんだけど。コレ燃やそうよ」
「そうね。私も不快だし燃やしましょ」
「ちょっと待とうか!?」
木綿季の目が急速に冷めきっていき、そのまま詩乃の部屋にあったチャッカマンの調子を見はじめた。
アカン。あれはマジで燃やされる。詩乃の方は悪ふざけに見えるが、もう片方の相方は結構マジだ。流石に生命の危機を感じた健斗の頭がフル回転する。そして地雷を踏み抜く答えを口にした。
「お、お前だって何かブツブツ言いながら俺の部屋でゴソゴソ何かしてただろうがよ!流石に俺だけ責められるのはお門違いじゃねぇか!?」
「……お前殺してボクも死ぬ」
「やっべぇ地雷踏んだよ」
「ちょっ、木綿季落ち着きなさい!流石に私の部屋で殺人事件起こさないで!」
顔面真っ赤で目からハイライトを無くした木綿季がチャッカマンを点火してそのまま健斗へと近づける。流石にふざけてる場合じゃないと全力で止める詩乃。そして真っ青な顔して炎から逃げようとする健斗。正に阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
その一時間後。
「……なぁ、なんか打ち上げが始まってからの記憶がないんだが」
「奇遇だね、ボクも……あと、猛烈に頭が痛いんだけど」
「な、何でもないわよ?あはは……」
健斗と木綿季は直近の記憶を失っていた。と言うのも、詩乃が流石に不味いと感じたため、偶々くじ引きの景品で当たったフルメタルのモデルガンの銃床で二人の頭を叩いて気絶させ、健斗の祖父直伝の記憶飛ばし(物理)で二人の記憶を消し飛ばした。
ちなみに、机の引き出しにしまわれたモデルガンの銃床には、バッチリと二人の頭部から流れた血が付着しているため、バレるとかなり不味い。
そして、この日詩乃は学んだ。木綿季をマジギレさせると本当に何をするか分からないという事を。
ある意味この三人のカースト一位はシノン。まぁ、ブレーキだし