現代の修羅、VR世界で暴れる   作:黄金馬鹿

18 / 18
お久しぶりです。Fateの方に浮気してました。一人称で久々に書いたら三人称の書き方忘れました。

しかし、何だかネタ切れしてきたのも事実。あと、SAOHRをやる時間がありません


そのじゅーはち

 睨み合う。戦いはまず気迫による相手の圧迫から始まる、とでも言わんばかりに。片方は木刀の切っ先を地面に向け、木刀を持たない半身を前に出し、片方は短な、短剣型の木刀を逆手に握り、木刀を前に、その峰にもう片方の手を添える。

 防具はなく、ジャージという当たれば終わり、というレベルの薄着だが、二人は元より攻撃を受けるなんて脳は無い。二人の世界では、当たれば即死。それが常だからだ。

 次の瞬間、二人の呼吸が一拍毎に目まぐるしく変わっていく。片方が呼吸を合わせれば片方がそれを外し、そして合わせる。そして、些細な動作を起こして無意識へと潜り込もうとする。が、既に二人は『無意識を意識』しているため、それは叶わない。それが分かった瞬間に二人の攻防は目に見える形で始まる。

 トン。そんな軽い足音と共に短剣を握った方が一瞬にして懐へと肉薄した。縮地。それを一瞬にして行い肉薄。そして、木刀のレンジをすっ飛ばし、短剣のレンジへと持ち込む。二歩一撃という技の更に上を行く、歩く事を縮地に置き換える技術。その技術で走れば木刀のレンジをすっ飛ばす事などたやすい。

 そして、振るわれる短剣。だが、元よりそれを予見していたために避けられる。その瞬間、側頭部に衝撃。そこから発生する痛みを知覚してから目をやれば、そこには木刀の柄があった。

 殴られた。そう気が付いた。が、それだけで十分。フラつき倒れゆく体をそのまま地面へと向け、地面へ手をついた瞬間、片足で地を蹴り、回転しながら足払いをする。それを飛んで避けた瞬間には、相手は既に術中へハマっている。相手が飛んだのを確認した瞬間、足で再び地を蹴り、今度は逆立ち。そのまま両足で相手の胴を掴み、ホールド。そのまま体を起こして勢い良く頭突きを叩き込む。

 

『いったぁ!!?』

 

 物凄く痛そうな鈍い音が響いた数秒後、二人同時に地面に倒れ込む。その後、暫く額を抑えて蹲ってから同時に起き上がる。

 

「け、珪子……やるじゃねぇか……!」

「か、和人さんこそ……!」

 

 二人仲良く額を抑えて涙目になりながら賞賛、というよりは煽り合う。ギャラリーは先程の頭突きを見て額を抑えている。

 二人が戦う切欠となったのはほんの些細なこと。二人の事をよく知る、アスナこと結城明日奈とリズベットこと篠崎里香がふと気になったから口に出したこの一言が原因だった。

 

『和人(くん)と珪子(ちゃん)ってどっちが強いの?』

 

 この一言に二人はこう答えた。

 

『そりゃあ勿論、俺(私)の方が強いに……うん?』

 

 明日奈になるべく強い男というのをアピールしたいが故に互角というのを隠した男と、和人に私の方が強いから頼ってもいいんですよ?という意志を押し付けたいがために互角というのを隠した少女の言葉が全く同時に飛び出し、二人の間で若干の険悪な空気が流れ、なら試してみようか。の一言で学校の武道館を借りて久し振りに現実で戦う事になった。ついでに、珪子の方は和人の俺に勝ったらなんか奢ってやる、という煽りの一言でいつも以上に本気になっている。

 が、それ故にやった頭突きは和人よりも珪子の方がダメージは大きかった。

 先程の側頭部への一撃に加え頭突き。この二つが重なり、珪子の脳が若干揺れ、少し平衡感覚が麻痺しかけている。それ故に、和人はここで攻めなければ速さで押し切られると判断し、木刀を握り直して走り出す。

 それを見て慌てて珪子も体勢を立て直すが遅い。珪子の頭をカチ割るように木刀を一閃。それを避けられた所で今度は回し蹴りを放つ。それを見て珪子は腕のガードは吹き飛ばされる。避けるのも不可能と判断し、同じく回し蹴りで応戦した。

 再び響く鈍い音。蹴りと蹴りがぶつかり合い、軽い衝撃が響くが、今度は痛み分けにはならず、珪子の足が来た道を行く時よりも早い速さで戻っていき、体勢が完全に崩れる。これを好機と見て和人は縮地で一気に距離を詰め、珪子の顔へ向けて木刀を横薙ぎに振るう。

 勝った。確信した瞬間、それが油断だと思い知る。

 顔を狙われたのなら、その下へ顔を落とせばいい。珪子はさらに体勢を崩して床へ倒れ込む。そして、目の前を木刀が通って行ったのを確認してから背中が床についた瞬間、その反動を利用して起き上がり、一気に和人の懐へと潜り込み、腹へ拳を一発。そこから足を振り上げ、金的。

 無防備にそれを受けた和人は呻き声をあげながら後退。珪子は追撃。逆手に持った短剣で和人を切り付けるが、和人はそれを木刀で防ぐ。

 

「ひでーことしてくれるじゃねぇかよ……!」

「男性相手なら金的が一番って聞きましたからね……!」

 

 金的は鍛えようがない場所の一つ。故に、恥さえ捨てれば単純な力では負ける女が男の行動を確実に一つ潰せる常套にして最高の手段となる。

 お互いに得物を弾き、再び距離を取る。が、それは珪子の縮地を許すという事に繋がる。故に、珪子は足に地をつけた瞬間には動き出した。

 一瞬。スローモーションのカメラでも追いかけるのがやっとのような速さで和人の背後に回り込み、両耳を平手で思いっきり叩く。それだけで和人の平衡感覚が一瞬にして麻痺し、フラつく。

 これで終わりだと和人の後頭部へ向けて思いっきり短剣を振るう。が、和人もタダではやられん、と一瞬で木刀を逆手に握り直し、後ろへ向けて思いっきり突き出す。

 その瞬間、二つの鈍い音が響いて勝負が決まった。和人は後頭部へ短剣が叩きこまれそのまま倒れ、珪子は鳩尾に思いっきり突き出された木刀の勢いに逃せず吹き飛んだ。

 

「うっ……ぐぁ……」

「うぐぅ……けほっけほ……うぇっ……」

 

 両者ともに大ダメージ。和人は両耳を張り手された事による脳へのダメージと後頭部の痛み、珪子は鳩尾を思いっきり突かれた衝撃で痛みと吐き気に悶えている。

 流石にヤバい状態だと気が付いたのか、セコンドとも言える明日奈と里香が二人の介抱に回った。

 

「和人くん、大丈夫?」

「ひ、膝枕してくれたら治る……」

「あ、大丈夫みたいだね」

「俺の嫁がセメント過ぎる……!」

「ほら、珪子。しっかりしなさい」

「り、里香さん……吐きそうです……」

「でしょうね……」

「あ、ちょっとマジでヤバイです割とヤバイですマジでヤバイですあ、今お昼に食べたのが食道を上ってうっぷ」

「ちょっ、マジでやめなさいよアンタ!!?」

 

 割と余裕そうだった。まぁ、ふざけるのはこの位に、と二人は何事もなかったかのように立ち上がった。

 

『……弱くなったなぁ』

「あれで!?」

「あそこまで動いておいて!?」

 

 そして放たれた第一声に余裕そうな様子も相まって明日奈と里香が驚いた。

 

「だって、蹴り合いに負けた程度で体勢崩すようじゃ……」

「金的程度、耐えれないようじゃなぁ……」

「えぇ……」

「もうアンタ等総合格闘技にでも出てなさいよ……」

 

 バーリトゥードなら優勝も有り得る二人だから割と洒落にならないのが里香の言葉だ。

 しかし、弱くなったのは事実。ALOの中では全力以上に動けるが、やはり現実では痩せこけてしまった体というのがバッドステータスになり、回復までに時間がかかる。

 SAO帰還直後から考えたら、全然健康的だが、SAOにログインする前よりも体は完成されておらず、自らの戦闘スタイルに合わせた体も真っ白な白紙に戻ってしまった。

 今も全盛期に戻そうと必死だが、数年単位で作り上げてきた体に戻そうとするのなら、やはり年単位の特訓が必要だ。最も、珪子の縮地のような、体の動かし方だけで何とかなる技はSAOログイン前並に精度はいいが。

 それでも、体が脳の命令についていかない、もしくはそれが分かるがために精度が威力を落とさなければいけないのは事実。二年という時間は二人の体を深刻に蝕んだ。

 とは言うものの、それもまた数ヶ月後には何とかなる。

 

「そういえば最近、建斗達、ALOに入ってこないな」

「あぁ、何でもGGOにコンバートして、今は大会が近いらしいので暫くは来ないそうですよ?木綿季ちゃんが言ってました」

「そうか……まぁ、暫くは平和だな」

 

 その言葉に頷いた明日奈と里香は何ら悪くなかった。

 

「……よし、今日はゲーセン行くか」

「あ、パンチングマシーンで久し振りに勝負します?」

「おっ、いいな。今は俺と珪子で半々だったな。ここでいっちょ年上としての威厳を見せますかね」

 

 和人と珪子は先程までのダメージは何じゃそりゃ、と言わんばかりに肩をぐるぐると回しながらジャージから着替えるために更衣室へ向かった。

 何で珪子が年上で、しかも男の和人と互角のパンチ力を持っているのだろうか。そんな事をふと思った二人だが、きっと珪子は連続縮地でとんでも無い助走からのパンチを決めたに違いないと勝手に判断して選手二人の帰還を待った。

 今日も平和であった。

 

 

****

 

 

 平和、とはいかなかったのがGGO世界でのキチガイ三人プラスα。三人は大会、BOBに向けての最終調整を行っていた。というのも、最終調整という名の狩り、でもあり、新川ことシュピーゲルの特訓であった。

 

「シュピーゲルのステータスはAGI特化か……よくもまぁ、ここまで愚直に上げたもんだ」

「いや、でも今はAGI特化型が最強って……」

「最初はそうだけど、後になったらどうすんのさ。シノンなんて今、ヘカート装備出来ないからSTR上げてるんだよ?」

「今後、強い武器が出てくる毎に要求筋力値は高くなる……これ位分かるでしょ?」

「……あっ」

「そういう事だ。今のうちにSTRも上げとけ」

「そ、そうする……」

 

 もう数日後にはBOBが開催されるという時。なのにも関わらず、シノンは未だにヘカートを装備できないでいた。

 

「クソが、何なのよこの要求ステータス……頭おかしいんじゃないの……ファッキン運営」

「やべぇよ、シノンさんが今までにない状態でキレてるよ」

「一撃必殺で殺した後に死体撃ちしてやる私の密かなる愉悦が……!!」

「ただのゲスでしたね」

「え、えぇ……」

 

 シュピーゲルの中のシノンの像がバッキバキに崩れ去っていったここ数日だが、それでも惚れた弱みというのは健在であり、シュピーゲルはそんなゲスでクズなシノンに惹かれていた。もはや病気だ。しかもこれが片思いなのだから救えない。

 

「そういえばシュピーゲル。あなた、あれからどうよ」

「あ、あれからって?」

「あの不良共よ。少しは懲りたの?」

「ま、まぁ、僕の所には……」

「へぇ、それは上々。学校で脅した甲斐があったわ」

「……へ?」

「いやぁ?最近授業難しいしヘカートは装備出来ないし女の子の日でムカムカしてたから適当にシュピーゲルに何かした奴全員にイロイロやったのよねぇ……いやぁ、最高だったわ。高慢ちきぶってた奴等が最後は泣いて土下座する様は……!!」

 

 シノンの顔が今までにないくらいの畜生顔になっている。流石のツルギとユウキもドン引きせざるをえなかった。

 流石に後遺症になるような事はしなかったが、それでもかなりヤンチャしたのは確かだ。中でも一番酷いのは女王様プレイだろうか。人間で椅子を組み上げてその上に乗る。勿論足を組んで肘掛けには肘をつき、ドヤ顔は忘れない。座り心地の悪さに適当な一人にスタンガンを押し付け気絶させたのは若さゆえの過ちだ。その後人間椅子が崩れる音が聞こえたが知ったことではない。

 一部は先生にチクったらしいが、話をつけに来た先生から適当に口車に乗せて逃げ出し、呼吸を合わせて闇討ちし、物理的に記憶を飛ばした。やりたい放題である。

 

「いやぁ、いいストレス解消素材をくれてありがと、新川君」

「え、あ、うん……」

「頷くな!!コイツの手で起こったのはイジメを超える何かだ!!虐待レベルだ!!」

 

 流石のツルギとユウキも人の口の中に毛虫を流し込んだ程度しかやっていない。なお、流し込まれた人間は数ヶ月物が食べられなくなったそうな。

 

「あー、もう。ほら、カモがネギ背負って来たわよ。戦闘準備」

「俺さ、敵に回すと恐ろしい奴に背中預けてるよ……」

「ボクも……」

 

 そして始まるのは前回と同じ蹂躙。しかし、ツルギとユウキは背後からの視線にどこか冷たい物を感じた。




次は多分、三人称に書き方戻すためにもう少し別な短編とか書いてから投稿します

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。