結局あの後何もすることなくふくれっ面の簪とその簪にいいようにされた本音と一緒にアニメ鑑賞していた。本音は一度起きたものの耳元で奇声を上げ飛び上がったがその時も簪によってもみくちゃにされたがその時は俺が鎮めた。今は2人に寄り添われながらアニメを見ている・・・しかしあれだな、アニメとはなかなかに面白いと思う。作者が自由気ままに作った世界を反映しキャラクターがその中で物語を描いていく。主人公が苦悩し解決し全てが全てでは無いがだいたいはハッピーエンドで終わる幸せな世界。そんな素敵で救われる世界が妬ましいと思えるほどに面白い。無事終わりを迎えると俺は少し疲れたようでベッドに倒れこむ
「・・・どうして一気見なんだ」
1話から12話ぐらいのものを一気見したせいで少し疲れてしまった。途中で昼食も取ったが本当に簡単なものだった。幸いなことに俺は食が細いため量を食べるわけじゃないのだがアニメを見ながらの昼食だったため多少味気なく感じた
「だって撮り貯めしてたから全部見ようと思って・・・つまらなかった?」
「そんなことは無い。ただ疲れた」
「あ、ごめん」
「気にするな」
とは言ったものの慣れないことをしたせいもあるが恩を返せずに親と離ればなれになった事もあってか精神面でのストレスが尋常じゃない。あの時の生活に比べたらそこまでじゃないが一度知ってしまった蜜の味は忘れられない。俺は再び養子になって難から逃れて今まで生きてきた。そのせいもあってストレスを強く感じている
「顔色悪くなってるよ~、ななみん大丈夫?」
「分かんね」
「自分の事なのに分からないって・・・無理させちゃったかな」
「そんなことじゃない。悪いけど少し寝る」
俺はベッドに潜り寝ることにした。嫌なことは寝て忘れるに限る
本音サイド
あらら~ななみんに無理させちゃったかな?仕方ないよね、新しい環境がIS学園だしそれに優しかったお父さんとお母さんと離ればなれになっちゃったし。それにニュースじゃ非難されてるしたまったもんじゃないしね。ななみんが寝てしばらくすると部屋と扉の方からノックする音がし開けてみると織斑先生がいた
「鏡野に用があってきたが大丈夫か?」
「あ~今寝ちゃってます、起こしてきますか~?」
「寝ているのなら仕方ない。言伝を頼んでもいいか?」
「は~い!」
「明日は鏡野のISについての検査を行うから10時に第1アリーナに来ること。以上だ」
「わかりました~」
「・・・鏡野の様子はどうだ?ニュースでもあることないこと言っていたしご両親と離ればなれになって辛いだろうからな。何かあれば私達教員に言うのだぞ?」
ななみんの様子はたぶんあの時の状態と変わらないほど最悪だと思う。かんちゃんも思っていたと思うけどあの時は助けられなかった彼を今度はちゃんと助けてやりたい
「わかりました~」
「ではまた明日。あ、それとまだ食堂は開いていないから注意しておいてくれ」
「は~い」
そう言い織斑先生は立ち去ってしまった。部屋の中に戻るとかんちゃんは携帯ゲームを始めたけど夕飯はどうしよう?今から買いに行こうかな?
「ねえ、かんちゃん。夕飯どうしよう~?食堂が開いていないみたいなんだって~」
「え・・・なら買いに行く?」
「そうしよ~!あ、でもななみんはどうしよう?」
「それなら大丈夫よ!」
大きな音を立てて扉が開くと楯無様とお姉ちゃんが立ってるけど今の音でななみんが起きちゃったよ!
「うるせぇ・・・」
「七実さんが寝ていたようですね」
「ごめんね七実君。明日の事で少し話が合ってここに来たのよ」
「それならさっき織斑先生が伝えに来ましたよ~楯無様」
「そうだったの?あぁだからさっきすれ違ったのね。先に言われちゃったわ」
まだななみんには教えてないけど
「何の話だ?」
「あら?明日の10時からISの検査が行われる話、されてない?」
「まだ伝えてないんだけどね~」
「ちゃんと伝えなきゃダメじゃない」
「その時は寝てたので~起こすのもどうかな~って」
これは本当に思ったこと、無理に起こしてしまうのもダメかなって思って起きたら話そうと思っていた
「なら仕方ないわね。それじゃあ少し早いけど夕食を食べに行くわよ」
「学校が始まるまでは空いていませんよ?」
「えー、なら作るしかないわね。お姉さん張り切っちゃうわよ!」
おー楯無様がやる気になったのはいいけど食材もお弁当も何も買ってないんだよね~。お昼も適当に学校にあるコンビニで買ってきただけだし
「まだ買ってないよ?」
「・・・今から行きましょ、七実君はこの部屋で待機ね。もし生徒と接触して騒ぎになられても面倒だし」
「すまない」
「これくらいいいのよ。さてみんな行くわよ!」
こうして4人とも食材を買いに学園内にあるスーパーに向かった。お菓子やジュースも一緒に購入し荷物がいっぱいになって重いよ~
七実サイド
・・・やっぱりこの足ぐらい元に戻んねえかな。もし戻ったならあいつらに世話を掛けさせることもなくある程度は自分でもできるんだがな。料理や家事は嫌な記憶だがあの時に叩きこまれたからいいけどせめて何かあいつらの役に立てることはできないもんか?今の俺にできることは・・・そんなことを考えてると買い物に行っていた4人が大きな袋をそれぞれ1つ持って戻ってきた
「今戻ったよ」
「さて夕食を作るわよ。簪ちゃん手伝ってちょうだい」
「うん」
袋に入っていた食材や飲み物を冷蔵庫に入れたり夕食の準備を始める楯無と簪
「今日はお疲れ様でした七実さん。いろいろとお辛かったでしょう」
「虚や楯無程じゃない」
確かに朝からマスコミがやってきて煩かったし今の親とも別れここに来たのもストレスになったがそれは精神的疲れであって仕事を済ませてきた楯無や虚程のものじゃない
「今日のは簡単なものだったのでそこまでじゃないですよ。それに量も少なかったですし」
「でもお疲れさん」
「・・・ありがとうございます」
「ねぇななみん。1つ思ったんだけど~お風呂とかはどうしてたの~?」
「こんな身体だから濡れたタオルで拭いておしまい。髪はちゃんと洗ってた」
脚が動かなければろくに風呂に入ったこともない。てかシャワーも浴びれない。髪は母さんに手伝ってもらって洗ってたけどな
「なら今から背中拭くから待っててね~」
は?いやいや用意だけしてもらえるなら自分でできるしそれに見ちゃまずいもんがあるだろうが。そんなこともお構いなしに本音は洗面所に行き用意してくる
「・・・虚」
「分かってますよ。ダメじゃないですか本音」
「ほえ?」
「七実君は男の子なんですよ?その・・・刺激したらまずいと言いますかなんと言いますか///」
虚は顔を赤くし本音に伝える・・・いやあってるけど今はそうじゃない
「自分でできるしさすがにお前らの前でやるわけにはいかない」
「私は気にしないよ~?」
「俺が気にする。気遣いはありがたい」
俺は虚の肩を借りて車椅子に乗せられ洗面所に入る
「それでは頭を洗う時には言ってくださいね。手伝いますので」
「ああ」
虚は俺を残して部屋の方に行ってしまった。俺は片腕で器用に服を脱ぎ体を拭き始めると背中に左肩の少し下らへんから斜めに大きな傷に触れた。この傷はあのクソにつけられた負の記憶とも呼べる傷跡だ。治ることなく大きく背中を割りいつまでも残る呪いみたいだと感じだと思う。全身拭き終わり服を着始めると楯無が中に入ってくる
「やっぱり大きな傷跡ね」
「勝手に入ってくんな」
「やーだよ。そろそろ夕飯が出来るからねー」
「わかった。虚を呼んでくれ」
「はいはい、虚ちゃーん七実君が呼んでるわよー。それじゃあまた後でね」
楯無と入れ替わりで虚が入ってくるなり俺の頭を洗い始める。やっぱり申し訳なくなるだけで嫌になるな。前世からそうだが何もできない苦痛しか味わっていない生き方はもうごめんだ。何が悲しくてこんな生き方になっちまったんだ
「はい終わりましたよ。今からドライヤーで乾かしますので動かないでくださいね」
「いや、乾いたタオルを巻いてくれ。今までもそうしてきた」
「ダメですよ。こんなにもいい髪なんですからちゃんとしないとご両親に笑われちゃいますよ」
もう2度と会えるかどうかわからない親父と母さんの事を持ち出すのは卑怯だ。寂しく感じるだろうが
「・・・勝手にしろ」
「それじゃあ勝手にしますね」
俺はなすがままにドライヤーを掛けられるが違和感しか感じずにいられなかった。普段は頭にタオルを巻いて終わりだったから濡れた髪に暖かい風が当たるのは違和感でしかなかった。こうもある程度親しいが他人に触れられるのはあまりいいものではないな。髪が乾くとドライヤーの駆動音がしなくなる
「さらさらになりましたよ。これでちゃんと乾きましたよ」
「耳いてぇ・・・ありがと」
「いえいえ。それではご夕飯を食べに行きましょう」
車椅子を押され元いた部屋に戻ると既にテーブルに夕食が用意されており3人が待っていた。今日は楯無と簪の作った夕飯らしいがいい匂いが漂っていた。虚は俺をテーブルまで押し進めると空いてる席に座り夕飯を食べることにした。もしこの身体が元に戻ったらこいつらに俺の作った飯を食わせてやろう
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