元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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知る者と眠るもの

 

私は本音と簪ちゃんのお友達という佐野七実君の情報を集めていると悲惨な情報しか集まってこなかった。彼は日常的に暴力を受けていたり家の全ての家事をあの年で任されていたりとまるで奴隷のような目に遭ってきているようだった。さらに言うと本音が私に教えてきた時に流れていたニュースの事も彼が被害者でいまだ意識不明だそうだ

 

「どうしてこんな仕打ちができるのだろうか。子供は宝だというのに」

 

「それは私も思うのだが何度も同じことを言わないでくれ。耳にタコができてしまう」

 

「すみませんでした。でもそうだとは思いませんか?現に少子高齢化が進む中、女尊男卑で男児のイジメが増加し自殺も増えているにも関わらず学校の教員は関心を持たない!こんな世の中に嘆かない方がおかしいですよ!」

 

つい子供の事になると熱くなってしまうのだが子供は可愛いから仕方ないじゃないですか!

 

「一旦落ち着け、暗部たるもの冷静にならなければ救える者も救えないぞ?」

 

「それもそうですね。それにしてもこの子の戸籍がおかしいんですよ」

 

七実君の情報に彼の戸籍も含まれていたのだがそこには養子と書かれていたのだがその前にいた織斑家には今では子供を捨てて親のいない生活をしてはいるものの彼が生まれた時には経済的な問題もなかったのだ

 

「名前も以前と変わっていることから何かの問題に巻き込まれてあの家庭に入ることになったと思われます」

 

「ふむ・・・ではどうするのだ?彼にそのことを伝えてるのか?」

 

伝えても知らなければ意味が無いしそれに戻ることを決意しなければどうしようもないのだがこれを伝えるかどうかも憚られる

 

「それは一度彼と話してみないとわかりませんね」

 

「だろうな。それにしてもあんなに失礼な奴にどうして簪は惹かれたのだろうな?」

 

・・・楯無様も子煩悩じゃないですか。子供はいつか親の元を離れる定めですよ

 

 

 

簪サイド

 

今日も七実君の席は空席だった。あのニュースを見てからというものの嫌な予感があったけど本当に彼じゃないと祈る日々が続いていた。ただの病気であってほしいと願った

 

「ななみん、今日も来なかったね~これで2週間目だよ」

 

「うん・・・」

 

人見知りのせいか私には友達があんまりいなかったけどその中でも数少ない友達と呼べる七実君だけは席も近いせいか話すことは多かったけど本格的に心配していた

 

「本当にどうしたんだろう・・・病気だといいんだけど」

 

「それね~ななみんたら女の子に心配させちゃいけないんだぞ~!」

 

本音も少しおどけたように怒っているがこれでも心配していて毎日朝来ては彼がいるか確認しては落ち込んでいる

 

「ん~ちょっと待ってねかんちゃん。メール来たみたいだからさ」

 

本音はスマホを取り出すとメールを見るなり驚いた様子で私のスマホを見せて来るけど近すぎて文字が見えない

 

「文字が見えないよ!」

 

「あーごめんごめん、ほら」

 

差出人は暁斗さん、本音と虚ちゃんのお父さんからだった。メールにはこう書かれていた

 

今日は七実君のところに行くのだが一緒に行くかい?

 

「答えは決まってるよね~」

 

「うん。私も行く」

 

「らじゃ~!」

 

本音はだぼだぼな服のまま器用にスマホを操作しメールを打ち込んでいき送信するとすぐに返信が帰ってきた

 

「お姉ちゃんたちも来るってさ~早く行こう!」

 

「待ってよ!」

 

ゆっくりとだが本音は駆け出していくが本当にゆっくりだったためすぐに追いつくことができた。校門のところまで行くとお姉ちゃんと虚ちゃんが既にいて少し待っていると暁斗さんが運転する車が私たちの目の前に止まるとそれに乗り行先不明のままどこかへと発進するのであった

 

 

 

七実サイド

 

俺は目が覚めるいつだか見飽きた白い天井がすぐに見えた。体を動かそうにも酸素マスクやら液体を注入する針が刺さっているためろくに動かせない状態だった何もすることができないため何もする気は起きなかったが死ぬことはできなかったのか。残念のようでそうじゃないような変な感じがする外を眺めると既に夕暮れでもうすぐ日が落ちるようだった

 

「何かがなくなったようにつまらなく感じる・・・」

 

ここに運び込まれるまで何もすることが無かった俺はたとえ他人話していようが少しは気が晴れると思い空をずっと見ていたがそれさえもつまらなく感じた。それでもやることが無かったから空を眺めていると廊下側から窓を叩く音が聞こえてくる。俺に用がある人間なんて極少数だと思いながら首を動かしそちらの方を見ると見たことのない男といつもの4人がいた反応しようと思い左腕を動かそうとするが全く動く気配がなくそれどころか感覚さえも無くなっていた

 

「どういうことだよ・・・」

 

まさかとは思うが深々と刺された時に何かがあってそれで動かなくなったのか?異変に気付いた男は看護婦を呼びに行くが簪たちはまだそれに気付いていないようでこちらに釘付けになっていた。男が戻ってくると白衣を着た男性と看護婦と思われる女性が何人かやってきて針やらマスクを取り外してくると今の俺の状態を説明してくれた。左腕の神経が酷い状態でろくに動かせる状態じゃないこと、そして背中の傷のせいでもしかしたらろくに動けないかもしれないとのことだそうだ。これじゃあ完全に人形じゃねえか。部屋を移され個室に1人になると簪たちが部屋の中に入ってくる

 

「七実君!」

 

簪は部屋の中に入ってくるなり俺の傍に近寄ってくるが目を開けずに顔だけ向ける

 

「心配したんだよ!あの日から2週間も学校に来なくてどうしたのかなって!」

 

「すまん・・・それよりも2週間だって?」

 

そんなに長くここにいたのか。だとしたらあのクソ野郎はきっと捕まったことだろうな、あんな奴は死んでしまえばいいと思っていたしもうどうでもいい

 

「君が七実君だね?」

 

「・・・どちらさまで」

 

俺は男の方にそのままの状態で顔を向ける。他人を見てはいけないような気がしたからあえて目は開けないでおく

 

「申し遅れたね。私は虚と本音の父親の布仏暁斗だよ。君の事は調べたから既に知ってるから名前は言わなくていいよ」

 

「そうですか」

 

「話に聞いていた通りにあまり喋らない子だね。さて本題に入るけど君の養子になっていた親はどっちも逮捕されて君はある意味自由の身になったけどこれからも生きていかないといけない。そこで2つの選択肢がある、1つは私の信頼できる夫婦の養子になるか。元の家族のところに戻るかの2つどうする?」

 

元の家族が誰だかは知らないが多分一夏と円華と呼ばれた弟と妹ところに行くことになるのだろうけど正直に言って今の俺の状態では戻ってもあまりいいものではないと思うなら答えは前者

 

「前者で」

 

「随分と即決だね、どうしてかは教えてくれるかい?」

 

「後者は・・・あまり行きたくない」

 

「・・・わかったよ、後で連絡しておくからその内会いに来ると思うよ。それじゃあおじさんは外で待っているから同年代同士で積もる話もあるだろうし外で待っているよ」

 

そういうと暁斗さんは部屋の外に出ていってしまい俺は虚を除く3人にもみくちゃにされるのだった。悪い話ではないが一応病人だということは覚えておいて欲しいもの

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

次回から急展開で本編付近まで時間が飛びます

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