SKYRIMやらNieR:Automataとゲームに現を抜かしていたり、ただ単純にスランプだったりしました
8月11日、本日は簪とのデート予定日である。前回、シャルロットとのデートの事を伝えた後、簪は一から予定を立てていた。このことで俺は何一つ関与させてもらえなかった。理由を尋ねてみたところ、周辺地域に何があってデートスポットなんかわからないでしょ?とのこと。全く持ってその通りである。この前のシャルロットとのデートがいい例だ。デートスポットなんか何一つ知らない俺なんかよりも、簪の方がたくさん知っているはずだ。ならば簪に合わせる方がいいだろう
朝5時、早朝とも言える時間に起きる。今日も今日とて日課である走り込みをするために手早く着替え外に出た。IS学園の外周を走るのだが10㎞をジョギングで、5㎞をインターバル走を行う。以前にIS学園の外周なんて1時間もあれば走り切れるだろうと高を括っていたが無理だった。敷地面積がしゃれにならない程に大きかったのだ。今はこれで十分な量の距離である。もう少し距離を増やしてもいいんだけれども、朝食を作ったりするため時間が無いのだ。走る前には入念なストレッチをしてから走り込みを開始する
6時半、走り込みを終え自室に戻りシャワーを浴びていた。汗を掻いた状態で料理とか衛生上最悪なので洗い流して普段着に着替える。さて簡単ではあるが朝食を作るとしよう。サラダにホットサンド、オムレツと朝に食べやすいチョイスにした。てか、食材がほとんど無くなってんな
「はぁ・・・はぁ・・・」
ガバリとゆっくりベッドから起き上がったのは簪だった。今日は珍しく簪が早起きをした。彼女は朝は目を覚ましても布団の中でぬくぬくと過ごしたりするのが好きなようで、夏でも冬でもそれは変わらないのだが今日は違ったようだ
「・・・シャワー浴びてくる」
よくよく簪を見てみると寝汗でびっしょりだった。じろじろ見るのも気が引けるし、いい気はしないだろう。そこはかとなく足取りは重く、ふらふらしているように見えた
「大丈夫か?」
「大丈夫・・・何も問題ない」
なんか違和感を感じる。いつも通りに受け答えをしているにしても覇気がないというか元気がないというか。どこかが、何かが違うという感じだ。夏休み期間中とはいえ、かなりの頻度で外に出ていっていたし疲れが溜まっているのだろうか?
「あんまり疲れさせないようにしないとな。残り少ない休みを満喫させるためにも、するにも風邪やら熱で台無しにさせるのはいかんしな」
もし簪の体調が優れないようであれば延期というのも考えざるを得ない。悪化してしまえば今後の予定も何も計画できないのだから、延期もできなくなってしまう。さすがに俺の思い違いであってほしいものだ。調理すること10分で出来上がってしまったのだが、まだ誰も起きていない。簪は起きているが今でもシャワーを浴びている。あまりにも長いようだったら声をかけて返事が無かった場合、シャルロットに見てきてもらうか
「自己管理がしっかりしているからこそ、何か溜め込みすぎたのかね」
ここら辺は簪に聞いてみなければわからない事ではあるが心配だ。もし最悪の場合は本音とか楯無に連絡を入れるとして、看病をしなければならないのか。薬の備蓄でも確認しておくか?
「んー、あ、七実おはよ」
薬箱に何があるのか確認しているとシャルロットが起きたようだ
「おはようさん。起きてすぐで悪いがちょっとシャワールームにいる簪の様子を見てきてくれないか?」
「簪?別にいいけど、珍しいね」
「寝汗が酷くてシャワーを浴びに行ったんだが、足取りがふらふらしててな。念には念をということで見てきてほしい」
「うん、わかった」
寝起き早々であるがシャルロットに簪の事を任せて俺は薬箱を再確認しておくことにしよう。そう思う束の間、シャワールームの扉が勢いよく開かれた
「少しの間でいいから七実、部屋の外に出てくれないかな?理由はちゃんと話すから」
「ん、わかった。入ってよくなったら声かけてくれ」
もしかしたらヤバイ状況だったのかもしれない。シャワールームで倒れていただとかだったりしたら、シャルロットはもっと困惑なりしていただろうし、こんなんですまなかっただろう。シャルロットに言われるがままに部屋の外に出た
んで、簪はというと39度の熱を出していた。今はベッドの上で顔を赤くし寝っ転がっている。夏休みで溜め込んだ疲れが今日という日に出てしまったという何たる不幸。シャルロット曰く、シャワールームで声をかけても反応が無く確認してみたところ、案の定ということだ
「うー・・・」
「残念だったな。熱だし今日は無理か」
「や!」
やって・・・その状態でデートに行こうにもすぐに限界が来るだろうし無理があるだろう。そもそも外出させるわけないけどな
「今日はゆっくりして治そうな。そしたら後日ちゃんとデート行こう」
「うん・・・でも、今日行きたかった」
簪の場合、暇である日が少ないというのもあって現状に至るので強く言うことができない。これが働くということなのかっ
「そういや食欲とかってあるのか?あるなら何か作ってくるが」
「特に・・・今は、七実が近くにいればいい、かな」
簪は、ベッドから少しだけ顔を覗かせては力無く微笑む。その顔をは熱を帯びていて、いつもの簪ではないように思えた
「わかった、あとで家事だとかしなくちゃならんから離れることはあるかもしれないが、それまではちゃんと近くにいる」
「約束、ね」
「ああ」
俺自身、過去に病人というか身体が動かせなかったのもあってか看病とかは見慣れている。というよりもされ慣れている。だからあえて言おう。要望はどんどん言ってくれ、と。寝込んでいる時だったりすると何かと心細く感じることがある・・・みたいだしな
「ねぇ七実・・・その、手、握って?」
掛け布団に包まりながら手を見せてくる。言われるがままにその手を握り返す
「ん、これでいいか?」
「ありがと・・・七実の手、冷たくて気持ちいい」
簪は握ったまま俺の手を顔に当てる。その顔はとても熱く火傷するかと思った
「予想以上に熱いな。熱さまシートだとかいるか?」
「お願いしてもいい?」
「はいよ。っつっても近くにあるから動きはしないんだけどな。じっとしてろよ」
簪の額に熱さまシートを張り付ける。その間は手を放してくれたが、終わるとすぐさま俺の手を取っては握っていた。しばらくはこのままなのだろうか・・・まぁ、簪がそれでいいならいいか
「今はいいけど、後でちゃんと寝とけよ?」
「わかってる・・・けど、今は甘えさせて?」
そんなことを言われた日にはさせるに決まっている。簪が寝るまではこのままでいるとしよう
簪サイド
「んん・・・」
熱を出していた私はいつの間にか眠っていたらしい。眠る前までは手を繋いでいたはずの彼の手は無く、この部屋に1人寂しくベッドに横たわっていた。機械の駆動音も無く静寂に包まれていた
「七実いる?」
私の問いかけに対しても返ってくるのは静寂だけ。いつもなら気にも留めない事だけど、今日はなぜか違った。熱を出していたことで、どこか心細くなっていた。重たい身体を動かし、部屋中を探し始めていた。普通に考えていないであろう場所を、いつもいそうな場所を、部屋の中を隈なく探したが見つかることはなかった
「どこ・・・どこにいるの?」
熱に侵されているこの身体は、徐々に自由を無くし立つことすらままならなくなっていた。どこかに彼がいるであろうという直感は外れ、私はただただその場にへたり込むことしかできなくなっていた。次第に1人でいることへの不安と
「たでーまー」
なんとも気が抜ける一言だが、聞きたかった声が、居て欲しかった彼が扉の向こうから現れたのだ。両手にビニール袋を引っ提げて。私は感極まって七実に抱き着いていた
「七実ぃ、七実ぃ!」
「お、おう、急にどした?」
「起きたら誰もいなくて、1人で怖かったよぅ!寂しかったよぅ!」
とめどなく溢れる涙と共に七実が近くにいてくれるという安心感、1人ではないという安堵。その2つの感情が湧き上がってきた。それに対して七実は、両手のビニール袋をそっと置いて屈み、私の事を抱き寄せてくれた
「1人にして悪かった」
それ以上の言葉は無く、抱きしめる力を強くしそのままでいてくれた。七実の体温が、鼓動が、息遣いが直で聞こえてくる。これほど近くにいることを待ち望んだ日はそうないだろう。今の私の状態など忘れて強く抱きしめあっていた
あれから何分経っただろうか。それほどに私にとっては心地よく暖かい時間だった。泣き止んだのを確認され、抱きしめる力を弱めていた。むぅ・・・もう少しあのままでよかったのに
「ほれ、立てるか?」
「大丈・・・あれ?」
差し出された七実の手を借りて立とうとしたのだが腰が抜けて立つことができなかった
「ごめん、腰抜けちゃった」
「まじか。んじゃ、多少手荒だけど我慢してくれよ」
投げかけられた言葉とは真逆で優しく、膝の裏と背中に腕を伸ばし持ち上げてくれた。そう、いわゆるお姫様抱っこ言われるものだった。七実がこんなことするとは思わず唖然としていたが、理解したとたん顔が熱を帯び始めてしまった。いつもぶっきらぼうなくせに、こういうところで急に優しくなったりカッコよくなったり本当にずるいよ。でも、嫌じゃないから為すがままされていたんだと思う。気づいたらベッドに降ろされていたんだもん
「もっと、して」
「あのなぁ・・・今日はちゃんと治すんだろ?だったら大人しくしてろ」
「や!」
「またそれかい・・・まぁ、でもちゃんと治せたら考えとくわ。それでいいだろ」
口約束ではあるものの約束を取り付けることができた。治せたらやってくれるんだもんね、忘れないからね
「しかし、書置きしてたの見てなかったのか?食材無くなったのと簪用に食べやすそうなもの買ってくるって書いといたんだが」
「え」
そんなものあったっけ?七実はサイドテーブルの上から1枚の紙を取り、私に見せてきた。そこには先程七実が伝えた内容とそっくりそのままの内容が書かれていた。あるぇ・・・ちゃんと探したはずだったのに恥ずかしっ!
「お、おやすみ!」
有無を言わさず、私はベッドに潜り込んだ。だって、だって恥ずかしいんだもん!一声掛けてから行っても良かったんじゃないかな!?
七実サイド
簪には寂しい思いをさせてしまったようだ。書置きしたから大丈夫かと思ったんだが、そうでも無くどこか心細かったんだろう。これだけは本当に俺の失態だ。どうすりゃよかったかね?気を取り直して、買ってきた食材を冷蔵庫なり棚に入れておく。食べやすそうなものを買ってきてみたが、饂飩にゼリーとかは完全に俺の経験上の物でしかないからな。あとはスポドリだとかか
「おーい、簪。これから饂飩でも作るけど食うか?」
「食べる」
掛け布団からひょっこりと顔を覗かせる。さながらカタツムリのように。食べるってことはある程度食べやすいのにしないとな。シンプルに醤油ベースで長葱だけでいいか
「パパっと作りますか」
特に苦労とかは無く切って、茹でて、出汁を作って終わり。約5分で完成。弩が付くほどのシンプルな饂飩が出来上がったので早速食すとしよう
「出来たぞ」
「うん」
ベッドの上で食べさせるのは忍びないが、今日ぐらいは大目に見るか
「まだ熱いから気を付けろよ」
「ありがと。熱も少し引いてきたみたい」
「それは良かったな。ぶり返しなんていったら大変だしな」
簪のスケジュール的にも、後日に回したデート的な意味でも大変だ。俺としても、ぜひ今日治してくれた方が助かる。簡単な話だけして食事を進めていくが家事もやることが無くなってしまった。手持無沙汰という訳なのだが本当にどうするかね
「ごちそうさま。七実はこの後どうするの?」
「やること無くなったから暇。なんなら手でも繋ぐか?」
簪からしたら意外な提案だったらしく、珍しく無反応だった。え、何、嫌な提案でもしてましたかね?
「七実ってたまにズルくなるよね・・・無自覚で」
「これは罵倒と捉えていいんですかね?」
「違う・・・絶対に私たち以外にはこういう発言しないで」
それにはどういう意図があるかは明確には分からんが、突っ込んで聞いた方がいいのだろうか。いや、今日のところはやめておくとしよう
「基準が分からんから、なるべくなと答えておく。んで、手は繋ぐか?」
「繋ぐ」
食い気味での即答には圧倒されそうになった。手を差し伸べるとゆっくりと手を重ねる簪。食ったばっかで横になると逆流性食道炎になりやすいとかなんとか。だが、こんなことを言ってもしょうがないので横になる簪の手を握り続けることにした。明日は俺が熱を出しましたなんてオチはいらねぇからな?
今日は簪の看病で付きっきりだったが、それで分かったことが1つある。更識簪という少女は内側に入ると駄々甘になるというところだ。なんとなく今まではそんなことはあるかな、と思った時があったのだが今日の出来事で確信した。その信用に答えられるようにならねばな。今回のオチ、夜には回復はしたようで元気になっていた簪ではあるが、朝に昼と自分の行動やら言動を振り返ってしまったようであえなく撃沈していた。そのことでシャルロットに問いただされ、簪の言い訳も虚しくシャルロットだけではなく本音や楯無、はたまた虚にまで伝わってしまったそうな。これからいろんなことせがまれるんだろうな、という俺の思考はそこで固まっていた。簪とのデートは2日後に決行され映画館やらウインドショッピングに連れまわされましたとさ
今回もお読みいただきありがとうございます
今話は簪を看病というテーマでやらせていただきました
何かが足りない?・・・表現できなかったんや!