元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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リクエスト第1弾、温泉旅行後半です


矛盾しながらも思うこと

 

 

 

目を覚ますと浴衣に着替えて、部屋の布団の上で寝っ転がっていた。確か混浴風呂に浸かってのぼせたんだったか?

 

「あ、七実起きた」

 

「簪か」

 

布団から出て身体だけ起こしたら部屋の隅で楯無に本音、シャルロットの3人が虚に説教されていた。しかも正座で畳の上でだ。原因はなんとなく分かるが俺からは強く言えない。なんだかんだで役得に思ってしまったからだ

 

「悪いな、また迷惑かけたようで」

 

「ううん・・・こっちこそ、お姉ちゃんがゴメン」

 

「別に気にしてない。のぼせたのだって俺の自己責任だ。あいつらに何の問題は・・・なかったとは言えないかもしれないが責め立てるようなことはしなくてもいいんじゃないか?」

 

甘いと思われるかもしれないが別に悪い気はしなかった。それ故にあの3人に助け船を出すことにした。姿だけ見るとちゃんと反省しているように見える

 

「もうそれくらいでいいんじゃないか虚。こいつらを見るにちゃんと反省しているだろうし」

 

「分かりました。ではお嬢様だけ続行させていただきます」

 

「なんで!?」

 

「なんとなくです!」

 

理不尽極まりないが説教している時の虚には誰も勝てないのだ。ご愁傷様だな楯無。時間を見てみるがまだ9時を回った直後だ。眠気はまだないとはいえ、このまま暇なのもつまらない。かといって1人でゲームをするのはどうかと思う

 

「ちょっくら外で涼んでくる」

 

アイスでも買って外で涼しみながら食べることにしよう。昼間は夏の暑さで出たくないが、夜に限ってはそうでもない。むしろ、外に出て風を浴びながらアイスを食べる。これが夏の過ごし方になっている。アイスを買い、外に出るが電灯が少ないため星が鮮明に浮かび上がっている。天体観測は趣味だったがIS学園では光が多すぎて星が見えなかったりしていた。昔の事を思い出す、俺の身体が動かなかった時に親父と母さんが丘の上に連れて行ってくれたこと。あの時の興奮は今でも忘れることができないが今ではもう叶わない

 

「ななみん、そこにいたんだ~。外で何してるの~?」

 

旅館の外にある階段に座って星を見ていると本音がやってきた。いつものダボダボな着ぐるみみたいなパジャマでは無く浴衣なのが珍しく思う

 

「星見てんだよ」

 

「そういえば好きだったもんね~。あ~、アイス食べてる~!」

 

本音は花より団子というタイプだったな。半分ぐらい食べたカップアイスだったが物欲しそうな眼差しを向けられてしまった

 

「・・・食うか?」

 

「わ~い、ありがと~!」

 

素直に受け取ってくれたようで何よりだ

 

「ん~、うま~」

 

「・・・ありがとな」

 

どうしてか分からないが、ふと頭を過ったのはそんな言葉だった。本音はカップアイス片手に口に木のスプーンを銜えながら首を傾げていた

 

「ふぉ~ふぃふぁふぉ?」

 

「口に物を入れながら喋るな・・・なんかこんな言葉が頭を過ってな」

 

「ん・・・へ~」

 

口の中に残っていたアイスを飲み込み、興味なさそうなそうでないような曖昧な返事が返ってくる。間が抜けたような感じの返答には苦笑いしか出てこなかった

 

「でも本当にいろいろあったね~。全部は知らないけど~ななみんは頑張ったのは知ってるよ~」

 

急にどうしたんだか。唐突な本音の言葉に戸惑ってしまった

 

「いっぱい傷ついて、自分なんか顧みず大変なことに巻き込まれて、私もだけどお嬢様やかんちゃん、お姉ちゃん、デュッチーに心配かけて~」

 

足をぶらぶらとさせながらIS学園に来てからの出来事として語られるが如何せん恥ずかしくもある。決して褒められたものでは無いからだ。結局のところ、自己満足でしかないのだから

 

「・・・その、すまない」

 

「謝ってほしいわけじゃないんだ~・・・ただ、もうななみんが傷つくのを見るのも知るのもいやなの」

 

俺はどんな顔をして本音を見たらいいんだろうか。今までのツケが一気に回ってきた瞬間だ

 

「お嬢様は言ってなかったけど、ここに来たのだって1学期で出来た傷に効果のある温泉だっていうことで来たみたいだし。みんなななみんの事を大事に思ってるんだよ?」

 

今まで無碍にされたことは多いが誰かに大切にされた事なんて早々無い。全くなかったわけでは無い。前世込みでも数や年数は少ない。それ故に戸惑ってしまった

 

「特段、大事にされるようなことはしていないと思うが・・・まぁ、そう思ってもらえるとは思わなんだ」

 

「なんとなく知ってたよ~。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

何がとは聞けない。何を聞いているのかが分かっているからだ。どうして俺なのかと問いたいがそれは聞いていいことなのだろうか?人として聞きたいと思う反面、知りたくないという恐怖。知ってしまえば依存してしまいそうな甘い誘惑になるだろう

 

「・・・もし知っていたとしたらどうするんだ?軽蔑でもするのか?」

 

「しないって~・・・でもズルいかな~って思うのかな~?」

 

曖昧な反応には慣れたものだが、この反応はどうだ?怒りもせず呆れもせず、無関心に近いのか?

 

「もしもだけど~言い渋ってるなら理由があるんじゃないかな~?ななみんはちゃんと言ってくれるし~、()()してるからね~」

 

信頼とは随分と残酷な言い方だと思う。勝手に俺に何かを期待して貰っても困るというもの

 

「そうか?」

 

「そうだよ~。見てる人はちゃんと見てるんだよ~」

 

「・・・評価なんて知っている奴だけで十分だ。ともあれ、ありがとな」

 

「どういたしまして~。報酬はアイス1個でいいんだよ~」

 

カップアイスの半分とはいえ食ったのだから我慢しろ、とは言い辛い。でもたまには甘くさせてもいいか

 

「んじゃ、あいつらの分買って戻るか」

 

「お~、太っ腹ですな~!」

 

「たまにはな、あいつらには世話になってるし、これくらいはするさ」

 

俺と本音は旅館内に戻り、俺を除く人数分のアイスを購入し部屋に戻ることにした。部屋に入ってみると既に説教が終わっていたようで虚と簪、シャルロットは座椅子に座っていて寛いでいた。肝心の楯無は布団の上で足を擦っていた

 

「戻ったぞ。アイス買ってきたから食いたい奴は食ってくれ。一応奢りで俺は食ってきたから自由にしてくれ」

 

「ありがとうございます」

 

楯無の分を1つ取り、持っていくが未だに足を擦っていた。正座のし過ぎで血行が悪くなったのでこうなるんだったか?悪戯心か、つい指で足を触ってしまった

 

「ひゃう!?」

 

突然の大声でみんなの視線がこちらに集まってしまった。楯無を見てみると顔を真っ赤にして俺を睨んでいた

 

「何してくれてるの!?」

 

「すまん、いつも悪戯されてるもんでしてみた。悪いとは思っている」

 

「悪いって思ってるなら最初からやらないでちょうだい。その点、私は悪いとは思ってないし」

 

「お姉ちゃん・・・それもそれでどうなの?」

 

今回は俺も何も言えないが全くその通りだ。学校が始まる前に侵入して、抱き着いて寝てたのはどこの誰だったのだろうか

 

「とりあえずほれ、楯無の分だ」

 

「あっれー、七実君が食べさせてくれるんじゃないの?」

 

「誰がやるか。自分で食えるんだから自分で食えよ。俺が食ってもいいんだぞ?」

 

「ちぇー。それじゃあ、ありがたくいただくわ。ありがとうね」

 

手に持っていたアイスを取り、布団の上で食べ始める。せめて布団の上で食うなよ。ともかく俺は潜っていた布団に戻って、入ることにした

 

「もう寝るんですか?」

 

「いや入っておくだけだ。特段することは無いしな」

 

もちろん俺の場合だ。簪達の場合では知らんが話のネタは持ち合わせていないのだ。人に合わせるのも面倒に思う

 

「そういえばだけど七実君、お風呂で言ってたこと覚えてるかしら?」

 

「俺がのぼせる前の話か?」

 

少し思い出してみるが途中から記憶があるような無いような、はっきりとしていない。もしかしたらとんでもないことを口走ったのだろうか

 

「悪いがそんなに・・・というよりもこっちを睨んでどうした?」

 

簪に本音、シャルロットの3人がこちらを見ていたのである。そんなに見られるような事をしたのだろうか?

 

「別に・・・七実が誑しなのは知ってるから」

 

「どういう理解だよ。その、なんか悪いことしたなら謝る」

 

「悪いことはしてないわ。でも気になるのよねー。この中で好きな人、いるの?」

 

本音といい今日はなんだ?随分と押してくるな

 

「もし、いたらなんだ?」

 

「聞いてみようかなって。で、いるの?」

 

「いたとしても誰が言うか」

 

「・・・七実さん、そろそろ自分の気持ちに素直になってみてはいかがですか?」

 

虚からはまさかの言葉だった。素直になってみるとしてもどうしたらいい?今の関係を崩さずにするためにはどうしたらいい?

 

「私は知ってますよ。七実さんが誰にどのような想いを思っているか」

 

虚が俺の気持ちを知っているのだとしたら、なぜ答えないのかも分からないのだろうか。いや、そこまで知っているのならこんな話をするとは思えない

 

「虚ちゃんは知ってたの!?」

 

「完全とはいきませんが、一応は知っているつもりです。ですが、どうして答えないのですか?」

 

これは逃げだと思われても仕方ない。だが現状に満足している俺にとってはこれ以上進むのが怖くて仕方ないのだ

 

「七実はどうなの?・・・私は知りたい」

 

「なんなんだよ、本音も簪も随分と積極的だな。()()()()()()()()()()()

 

「なら僕たちを見てよ。目を逸らさずに言ってくれなきゃ僕たち分かんないよ!」

 

シャルロットが声を大にして俺に近づいてくる。さすがに真剣な話をしているというのに今の状態は無いと思い、一旦布団から出て座りなおした

 

「それでななみんは私達の事はどう思ってるのかな~?」

 

「なんで俺なんかに好意を向けてるのかが分からない。そりゃ悪い気はしない」

 

「分かってるならなんで・・・どうして?」

 

「だから言っただろう、()()()()()()()()()()()って。これ以上はただ望めない」

 

俺にも言いたいことは沢山ある。どうして好意に気付いていたにも関わらず、気付かないふりや無関心になりかけたのかはこれ以上望んではいけないように思ったからだ

 

「望まないんじゃなくて望めない?」

 

「ああ、望めない。これ以上他人を望んだことも無いし、望まれたことも無い。いや、俺の知らないところではどうだか知らんが俺はそんな風に思った。あと怖い」

 

「怖いって、何が怖いのかしら?」

 

「今までの生き方でいいことなんて少なかった。そのせいもあってか、これ以上の幸福を感じてしまうと自分でもそれが当たり前になってしまいそうになる。甘い蜜を吸っていたくなる、依存してしまいそうになる、関係が壊れてしまうんじゃないかと思う」

 

今まで知っていることや慣れていることにはすぐに理解できるが今回の事に関しては全くの未知だ。理解もできず関係が崩壊してしまうのではないかと感じてしまったのだ。そんなに軟な関係では無いと思うがそれでも崩れてしまうように思えてしまうのだ

 

「七実君の言い分も分かるわ。でも私達の関係ってそんなに軟じゃないわよ?」

 

「そんなことは言われなくても知ってる。知っているからこそ、もしもが怖いんだ」

 

決してありえないとは思わない。以前、楯無が簪と疎遠になろうとしたこともあるため、ちょっとしたきっかけで全てが無くなってしまう可能性だって無いとは言わせない。それに昔からの関係にシャルロットまで加わってしまった。それに俺の感情としてもまだはっきりしない部分がある

 

「大丈夫・・・そんなことは起こさせない」

 

「僕はあまり知らないけど、そんなに簡単に壊れるものなの?」

 

「俺だってそうだとは思わない、思いたくない。でも怖いんだよ。今まででも十分に満足しているのにこれ以上望んで自分で壊したくないんだ」

 

「深く考え過ぎとは言いませんが七実さんはみなさんの想いを無碍にするおつもりですか?」

 

「だからそういうことじゃない。誰か1人を選んでこの関係を崩壊させてしまうぐらいなら誰も選ばないつもりなだけだ」

 

一夫多妻なんて非常識な選択は無い。ならば誰かを選ばなくてはならない。それ故に疎遠になったり、関係がギクシャクしてしまうなら現状のままで十分に満足なのだ。俺たちの想いなんて度外視する覚悟は既にある

 

「なーんだ、そんなことで悩んでるの?」

 

「いや一番大事なところだぞ。そんなことで、というには大きすぎることだと思うんだが」

 

「こんないい言葉があるわ。バレなきゃ犯罪じゃない、ってね」

 

いやいや、ダメなものはダメだろうが。そのせいでどんだけ悩んでんのか知ってるのかよ。虚を除く4人は一斉に立ち上がりこちらににじり寄ってくる。俺の後ろは壁の為、逃げ場なぞ存在しない

 

「さて、私も一仕事したのでもう一度温泉に入り直してきます。だいたい2時間ぐらいしたら戻ってきます」

 

こんな状況で口角を上げて一瞬だけこちらを見た後、虚はこの部屋から出て行ってしまった。そもそもこの話を切り出したのは虚だったな。もしやこの展開になるのを知っててやったのであれば多少は恨むかもしれんがありがとうと思うだろう。ああ、親父に母さん、今日俺は人として本当に意味で最低に成り下がるでしょう。こんな不出来な俺を育ててくれてありがとう。俺はまだ上ってはいけない階段を駆け上がることになりました

 

 

 

翌日、俺は尋常ではない倦怠感に苛まれながらも疲れと汚れを落とす為に温泉に浸かることにした。某ゲームでは、昨夜はお楽しみでしたね、みたいな会話があったが本当にそうなのだろうか。本当に必要最低限の回避方法は取りましたとも。楯無様様です。ゴムですたい。最後の方は乗ってしまったところもあったかもしれんが罪悪感と虚無感、それと快楽が尋常では無かった。たった2時間でだ。眠りに耽る瞬間に虚が生暖かい眼差しを送ってきたことに関しては触れないでおこう。脱衣所に到着し、浴衣を脱ぎ捨て、シャワーを浴びることにした

 

「・・・やってしまったことには変わりない。無責任というわけにはいかないからな。ただ、バレてしまったらタダじゃ済まされないんだよな」

 

こんなご時世では男性の立場が弱すぎる。もしバレてしまったら終身刑やら死刑になるのではないだろうか。最悪、女性を誑かしたとかで研究所送りなんてのも考えてしまう。いったいどうしたらいいんだか。身体を洗い終わり最後の温泉に浸かることにした。昨日は知らされていなかったが傷に対して効能があるらしいがどうなんだろうか。気遣いとして本当にありがたい

 

「効能って言っても古傷には効果無いんだろうな。まぁ、最近のものには効果はあるんだろうけど」

 

身体には昔から付いていた傷以外にもIS学園に来てから出来た傷も多く存在する。医療用ナノマシンで完治はしているものの修復されてはいない。要は傷としては治っているが跡は残っている。IS学園の1学期の記憶では本当に最悪の結果としか思えないが、自分で出来ることは全てやってこの様である。意味はあったんだろうけどなぜか虚しさだけが残っていた

 

「気にするだけ無駄か。これ以上、面倒事に巻き込まれないようにするしかないというのに」

今は考えてもどうしようもない問題が頭を過った。織斑家の問題だ。この問題に関しては修復不可能な程に深い溝が出来てしまった。俺が求めていた本当の関係(家族)が既に消えかけてしまう。それほどに儚いものだったのだろうか

 

「そろそろ上がるか。長く入ってると昨日みたくのぼせるかもしれんしな」

 

早めに浴場から上がり、しっかりと水気を落としてから浴衣を着る。髪はタオルを風呂で使った奴とは別のを巻いて乾かす。虚に見つかったら怒られそうだがこの際は朝ということで音を立てたくないという理由にしとこう。部屋に戻るとすやすやと寝息を立てて5人が寝ている。微かに栗の花の匂いが残るこの部屋はとてもではないが居たくない。とりあえず気を紛らわす為に布団に潜り直すことにした。自分の使用している布団からも微かに栗の花の匂いが漂っているが気にしないようにしよう

 

「ん・・・あ、七実戻って来たんだね」

 

隣で寝ているシャルロットはどうやら起きていたようだ。昨日あれだけの事をしたせいか、まともに目も合わせることができなかった

 

「ふふふ、顔真っ赤にしてどうしたの?もしかして昨日の事でも思い出したのかな?全く、七実ったら厭らしいんだから」

 

「うっせ、ここにいる虚以外はみんなそんな感じだったろうが」

 

「それもそうだね・・・責任を押し付けたみたいでごめんね」

 

謝られても困る話なんだがな。とりあえず決意したことを言うとしよう

 

「シャルロット、1つ話がある」

 

「ん、何かな?」

 

「後であいつらにも言うつもりだが、やってしまったことには責任を取る。その俺で良ければよろしく頼む」

 

「うん、こちらこそよろしくね。それと僕を助けてくれてありがとう」

 

俺のやり方でも誰かに手を差し伸べることができた。その結果が現状に繋がったのだろう。だとしても流石に笑えない状況だがな

 

「俺は俺で勝手にやっただけだ・・・なんてことはここでは言わない。あんな解決方法しかなかったがこれで良かったのか?」

 

「良かったんだよ。お母さんのお墓参りには行けなくなっちゃったけど心残りなんてそれくらいだし、僕は気にしないよ」

 

「そう言ってくれると助かる。俺としても少しは気が楽になる」

 

シャルロットの問題に心残りがあるとしたら、本人の同意なく勝手に行動してしまい問題の解決を図ったことだ。しかし、今の言葉でそれも解消された

 

「何から何までして貰っちゃって悪いなんてことは無いよ」

 

「俺が全部やったわけじゃない。織斑先生だったり楯無が動いた結果だろうに」

 

「確かにその通りかもしれないけど、その説得だって七実がやったんでしょ?」

 

「まあな。あの時俺がしたことが正しかったのかどうかは分からん。だが現状で満足しているのであれば俺から言うべきことは何一つも無い」

 

「ありがとうね七実。大好きだよ」

 

そう臆面も無く言われると俺は恥ずかしくなってしまう。やはりこういう経験がないので慣れない

 

「そうだシャルロット。一応だが風呂に入っておくことを薦める」

 

「あー、そうだね。なんだかんだで結構汗掻いちゃったし、七実は先に入ってきたの?」

 

「ああ、後で簪達が起きたら言っておくから。先に入ってきたらどうだ?」

 

「そうするよ。それじゃあまた後でね」

 

ゆっくりと音を立てないようにして、シャルロットは部屋を出ていった。俺ももう少し体力を取り戻す為に休むとしよう

 

 

 

いよいよ1泊2日の温泉旅行も終了する。帰りは行きと同じく迎えの車に乗せられて帰る。現在は既に旅館から離れ、行きと同じ車、運転手に乗せられ帰るところだ。簪達にはシャルロット同様に自分なりの決意を示した。その結果、快く受け入れてくれた。今日は虚が助手席に乗り俺は1番後ろの席の真ん中。その両脇には本音と楯無が座っているのだが、ナニとは言わんが疲れが残っているのか俺の肩に頭を乗せて眠っている。ルームミラーからは運転手(親父さん)の鋭い眼光が俺に向けられている。かなり怖いのでやめてもらえませんかね

 

「楽しかったね。またこういうところに行きたいね」

 

「ん、ああ、そうだな。温泉ものぼせるぐらいよかったしな」

 

「実際にのぼせたしね・・・お風呂よりシャワー派だっけ?」

 

「派閥というよりも体が動かなかったからそれが習慣付いていただけだ。まぁ、温泉自体初めてだったが」

 

今回の温泉旅行は疲れはしたものの最高の結果となったと思う。だがこれからどうしていこうか。この関係を知られないように生きていくために後にキチンと話をしなければいけないな。後に全員集めて話をしよう。ふと窓から外を見ると街中の風景だった。そろそろIS学園に向かうモノレール駅に到着するため、楯無と本音を起こすことにした。だが揺さぶりをかけても一向に起きる気配は無く到着してしまった

 

「簪、こいつらを起こすの手伝ってくれないか?」

 

「うん・・・脇腹抓れば一発で起きるけど、その後に七実が被る被害が大きいからやめとく」

 

最悪の場合は使わせてもらうが今はそんな時ではない。普通に起こすことにしよう。しかしなんだ、こうしてみるとこんなにも好意を寄せてもらっていたのだと再確認できた。それがとても嬉しく思う

 

「七実も笑ってないで・・・なかなか起きない」

 

「もういっその事、脇腹抓るか」

 

「それやったらお姉さん怒るわよ!?・・・あっ」

 

どうやらどこかのタイミングで起きていたらしく、見事にやらかしたかのような表情をしていた

 

「も~お嬢様~、しっかりしてくださいよ~」

 

「これでずっと会えなくなるわけじゃないんだから良いだろうが」

 

「そういうことじゃないわよ・・・全くこう言う時だけ鈍いんだから

 

声が小さくなろうとも聞こえているものはどうしたらいいんだろうか

 

「暇がある日だったらまた会えばいいだろ。幸いにも俺は基本的に暇人なんだから」

 

「なら~明日よろしくね~ななみん!」

 

楯無に対して言った言葉に本音が答えてどうするんだか。だが言ってしまったことには変わりはない

 

「明日は今日の疲れが取れてたらな。俺だってゆっくりしたいのとさっさと宿題を終わらせたい」

 

「ん~それじゃあ明日は寮に行くから~」

 

「・・・あれここは私の場面じゃなかったの?」

 

「お姉ちゃん、いつから自分の場面だと錯覚していたの・・・残念、本音の番でした」

 

流石にこれ以上車の中でやり取りをするわけにいかない。虚は頭を抱えているし、運転手(親父さん)の怒りが有頂天に達しそうなんで急いで車から出て、駅に向かうことにする

 

「んじゃ、また今度な」

 

「明日行くからね~!」

 

「電話の1本ぐらい寄こせよ。迎えにも行けんし用意も何もできないからな」

 

俺とシャルロットは駅に向かう前にせめて見送りだけはと思いその場に残った。車は発進していき徐々に車が小さくなっていく。やがて見えなくなり、俺たちは寮に帰ることにした。翌日の事だがなんだかんだで本音だけでは無く簪と楯無も寮に戻ってきて日帰りで家に帰っていったのは言うまでもなかった。だが簪は家よりも寮の方が色々と融通が利くとの事で夏休みも寮で過ごすことになった

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

最後の方は凄い駆け足になってしまいました

分かる人には分かるかもしれませんがR18は書かない(かも)です



どうでもいい余談

GWイベントの深海電脳楽土SE.RA.PHってイベントでいいんですよね?1,5章の間違いじゃないですよね?さすがCCCコラボ、ラスボスがあの人なのはなんとなく予想できてましたとも。ガチャの方もメルトが当たりここ最近のガチャ運に驚愕しているうぷ主

復刻本能寺で沖田、直前ピックアップで嫁王、CCCでメルト(全て呼符と配布石、ストーリーでの入手石)・・・正月の剣式と武蔵で爆死したのを凄い勢いで回収している気がします

なおフレンドが心許ないので辛いです。興味のある人は申請していただけないでしょうか
ID:457966475

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