元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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臨海学校初日

 

IS学園を離れ、バスに揺られている。行先は臨海学校の舞台である花月荘へと向かっている。各クラスごとでバスを使い移動しているのだが、道中は暇でしかない。とはいえ隣の奴と会話する手もある

 

「おーい七実さんや、大丈夫かね?」

 

「いつもと口調を変わってるぞ円華」

 

そう隣に座っているのは円華だった。本音やシャルロット、ラウラでは無く織斑円華であった

 

「いやーなんとなくかな。隣にいるのが七実で話とかしないから暇なんだもん」

 

「すまんな。話のネタなんてない」

 

「んー、じゃあ七実の好きな食べ物は?」

 

唐突過ぎる話題だが振られた以上は乗っておこう

 

「食えればなんでもいい。美味かろうがマズかろうが」

 

「いやそんな回答が返ってくると思わなかった・・・今度セシリアの料理を食べさせてみようかな?」

 

「どういう意味ですの円華さん!?」

 

円華の左隣に座っているセシリアが反応を示す。もしかして料理ができないタイプなのか?

 

「だってこの前のあれを体験した側として、七実がどういう反応を示すのか知りたくてさーまた今度作ってよ少量だけでいいから」

 

「なんだか罰ゲームみたいですわね・・・」

 

「いや実際に罰ゲーム気分だったよ」

 

「お前らは何を作ろうとしてるんだか分からんが面倒事に巻き込むな」

 

いったい何を作らせようとしてたのかは知らんが面倒事に巻き込まれようとしているのは分かる。なんで巻き込もうとするんだよ

 

「・・・七実、1つ聞いてもいいかな?」

 

「なんだ?」

 

「最近、一兄さんとまた仲悪くなった?」

 

仲が悪いというものか、それだけで済んでいいものか。正直分からないがセシリアの時とは多少違う、と思いたい。だが関係は悪化していると言えよう

 

「だったらなんだ?」

 

「やっぱり・・・今度はどうして?」

 

「ここじゃあ話せない。あっちに着いたら俺は海で泳ぐことは無いからいつでも聞きに来い。その代わり秘密にしておけよ」

 

「分かってるって・・・これはちー姉ちゃんにも相談かなー」

 

実際、俺が勝手にやったことだが何もしないよりかはマシだと思う。一夏が何をしてたかは知らんが、あいつもあいつで動いてたんだろうさ。あれだけシャルロットに対して守ると言ってたんだからな。バスで揺られること3時間、ようやく到着したようで大きな和風の建物の前に停車した

 

「バスから降りて整列しろ」

 

織斑先生の指示通りにバスから降りて整列する。他のクラスの奴もバスから降りるなり整列し始める。整列が終わり教師陣が前に並び、建物内から着物を着た女性が出てくる

 

「それでは、ここが今日から3泊4日でお世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように」

 

「「「よろしくおねがいしまーす」」」

 

生徒全員で礼をする。毎年、臨海学校ではここに来ているらしいがこんなにいては大変だろうな。女性、もとい女将の一言を終え、それぞれが旅館の中へ入っていく。俺は最後の方に入っていけば通行の邪魔もされず、ならずで済むと思い残ることにした

 

「織斑兄に鏡野、ちょっとこっちにこい」

 

織斑先生のお呼びで近づくが挨拶でもしとけと言う感じだろうか

 

「どうも鏡野七実です。今回の臨海学校ではお世話になります」

 

「挨拶をしろ馬鹿者」

 

一夏は織斑先生に頭を押さえられていた

 

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「あらあら、まぁまぁ。ご丁寧にどうも。清州景子です」

 

なんだろう某スマホゲーのバーサーカーでも彷彿させるような前文だな。二面性があるのかね、と深読みはしないでおこう

 

「良い生徒さんではありませんか」

 

「毎回手を焼かされていますが。それと今年は男子が2人もいるせいで浴場分けが難しくなってしまい申し訳ありません」

 

「いえいえ、そんなことはありませんよ。ささ、どうぞ上がってください」

 

ようやく旅館内に入るが不思議なことがあった。それは俺と一夏の部屋が決まっていないことだ。一夏が織斑先生に部屋の場所を聞いても、ついてこいの一言で終わってしまった。言われた通りについていくとそこには教員室と書かれている部屋の前で止まった

 

「最初は2人だけの部屋というのも考えていたが、諸事情と女生徒が押し寄せてきかねないと理由でここになった。ちなみに織斑兄は私と、鏡野は山田先生と同室だ」

 

「分かりました。山田先生の部屋はどこですか?」

 

「隣だ」

 

左隣の部屋を指さした、ということは隣部屋か。同時に角部屋でもあった。1階の角部屋か・・・まぁ楽ではあるな。一旦この場から離れ指定された部屋の襖の前に立ちノックする。しかし返答は無く中には誰もいないようだ。部屋の中に入るが中にはバックの一つも無くまだ山田先生が来ていない様子だった。制服を脱ぎ、黒いワイシャツと七分丈のズボンを履く。水着が許されるならこれくらいもいいだろうさ、別に禁止されているわけじゃないしな。必要最低限である財布とスマホをポケットに入れて部屋を出る。円華がどこかで待っているだろうしな。外に出ると目の前にある海岸には既に生徒たちが遊び始めていた

 

「おっそーい!」

 

「すまんな」

 

黒いビキニを着けてビーチサンダルを履いている円華が旅館入口で待っていた。織斑先生に似ているせいか雰囲気込みで似合っていると思う

 

「実はそんなに待ったわけじゃないけどね。あれ水着は?」

 

「無い、というよりも泳げるわけじゃない」

 

最後に泳いだのは小学1年の時だ。既に8年も前で泳げるかどうか分からんし、そもそも背中の傷を見せる訳に行かないからいらないのだ。そもそもの話、買ってすらいない

 

「もしかしてカナヅチ?」

 

「いやそういうわけじゃないが・・・ただ泳いだことなんて早々無い。小中と基本的には見学ばかりだったしな」

 

「そうなんだ。それじゃあ適当なところに行くから話してよ」

 

俺は円華に連れられていくが辿り着いたのは海の家だった。夏の風物詩と言えばこれなんだろうが真っ先にここというのはどうなんだろうか

 

「はい七実」

 

「いいのか?」

 

円華はカキ氷を2つ購入し片方を俺に渡してくる

 

「話を聞こうとしてるのはこっちなんだからこれくらいはね。ブルーハワイでよかった?」

 

「別に何でも構わない。シロップなんて匂いと色合いが違うだけで使っているものはほぼ一緒らしいしな」

 

「子供の夢を壊すような発言はしないの」

 

「すいませんでしたっと」

 

日陰になっている場所に椅子があったためそこに座ることにした。ここからだと遠巻きで生徒たちがビーチバレーやら砂で本格的な城を作っているのが見える。よくもまぁ元気でいられるものだな。ふと空を見てみるとオレンジ色の何かが落ちてきているのが見え旅館内に轟音と共に落ちていった

 

「おい円華、今何か見えなかったか?」

 

「私は何も知らない。ニンジンなんて見えななかったよ」

 

「あっはい」

 

見事なまでの即答だが何か知っているようだ。いや、マズイんじゃないのか?

 

「まぁ多分害は無いだろうし、ちー姉ちゃんしか何とかできないから私達が行っても無駄だよ」

 

「・・・あれが何か知ってるんだな。今の物言いを信じるとしてこの話題は打ち止めだ。そういや一夏の話だったな」

 

「うん。どうしてまた仲悪くなっちゃったの?」

 

「少し長くなるから食いながら話すぞ」

 

シャルロットには悪いが全てを話すとしよう。後で謝るとして、まずは事の発端からだ

 

「事の発端はシャルロットが関係する。話す前に注意をしておくがあくまで俺の主観でしかないということは言っておく」

 

「うん・・・シャルロットが関係してるんだ」

 

「そうだな・・・まず俺が一夏に強引に部屋に連れ込まれたな。どうして連れていくのかも教えず連れていかれた。一夏の部屋に入れられるなり、部屋の中にいたのは男装していないシャルロット自身だった」

 

円華はカキ氷を食べることは止めなかったが、話は黙って聞いていた。俺も同様でただ話していた

 

「流石に状況を見てどういうことかはわかったが、何も聞かされずただ助けるのを手伝ってくれと言われた。ただ助けを求めているだろうシャルロットから何一つ話さず、何かを求められるなんておかしく俺は全てを聞こうとした。原因を、現在の気持ちを聞こうとした。まず最初はここで一夏に阻まれた」

 

「どうして阻まれたの?」

 

「俺が話すと言ってな。憶測でしかないだろうがシャルロットが嫌がることだろうと思ったんだろう。だが他人から聞いた話なんて脚色される場合がある。だから本人が話さねば意味が無いというのにな」

 

その本人も脚色するかもしれんが他人よりかは信用できる。内容の良し悪しは度外視だが

 

「話が逸れたな。結局は本人から話を聞くことができた。内容に関しては秘密にさせてくれ。ただこの話は過去の話で終わってしまった。今どうありたいのか、どうしていきたいのか。そういうことを一切合切何も話さなかった。そこで追求したんだが、その時に問題が起きてな」

 

「問題?」

 

「一夏とどうやってシャルロットを守るかということで話したんだが、一夏は学園特記事項21というのを盾に取ったのを俺が否定した」

 

「確か21って・・・外部からの干渉を受けませんってやつ?それなら問題無いように思えるけど」

 

「文面上だとなそう思うだろう。だが落とし穴が1つある。それは外部が関係しない場合だ」

 

円華は頭を働かせているようで考え始めた。少し考えれば分かることだ。専用機はフランスの物で所属はどこだ?

 

「ああ!シャルロットってフランス代表候補生でデュノア社所属だから!」

 

「そういうことだ、期限なんてある程度決まっていただろうさ。イグニッション・プランだかの期限がある以上は急がなきゃいけない。夏休みに戻って来いなんて言われてみろ、重要な話・会議があるとかなんとかこじつけて戻らせて切り捨てられていたかもしれん」

 

「・・・それで七実はどうしたの?」

 

「俺は素直に頼るべき人間を頼ると進言した。たかが一生徒の身分だからできることなんてそうない。だが一夏はそれが気に食わないようでこう一撃入れた」

 

俺は円華に寸止めで拳を向ける。それがどういう意味なのかはすぐに分かるだろう

 

「俺は殴られて怒りはしたがそれを表に出すことは無かった。ここでやり返しても何も始まらない。その後一言だけ残して部屋を出ることにした」

 

「その時なんて言ったの?」

 

「確か・・・害を為すかもしれんし得となるかもな、だったか?」

 

「それってどういうこと?」

 

「助けになるかもしれんが誰の為でもない俺がやりたいからやる。簡単にいうと代償無しで助かると思うな、だ」

 

害なんてデメリット、今回も場合は代償だ。フランスに二度と入れないかもしれないし、今まであった関係を全て破棄しなきゃいけない。得というのは自由、ただ一つだ。しかし、結果論ではあるが亡命し日本国籍を手に入れ、日本代表候補生となり、自由となった。ある意味得と言えよう

 

「ふーん」

 

「重要なのはここからだ。これは秘密にしておけよ、バレても恥ずかしいし何よりも面倒だからな」

 

「いいよ、それでそれで?」

 

「その翌日に俺は織斑先生と楯無、まぁ更識会長に交渉を持ちかけた。会長相手には却下されたがな。そこで俺が知りたいのは一夏が何をしてたのかだ。俺を殴ってまで言ったんだからそれ相応の事をしてたはずだ。どうだ?」

 

円華の方に顔を向けるが苦い顔をしていた。それがどういう意味かは分かってしまったが話すまで待つことにした

 

「・・・ゴメン」

 

「お前が謝ることじゃないだろ。反応から察するしかないが、そういうことは一切してないと」

 

「流石に部屋の中での行動は分からないよ。けどいつも一緒にいてISの訓練をしてた。七実が望んでたことは分からないかな」

 

「まぁそこは本人たちが知るところだろう」

 

もし一夏がシャルロットに対して何かしていたというのであれば俺がやったことなど些細だっただろう。そしてその好意は俺に向けられるものではなかったはずだ。逆説での証明だが、一夏は何もしてないのだろう

 

「その後、シャルロット自身があの2人を一辺に説得しに行ったそうだがな。結果は知ってるだろ?」

 

「一応ね。まさか日本代表候補生になるなんて思わなかったけど」

 

「それだけの実力があったってことだ。この話はここまでだが、何か聞きたいことはあるか?」

 

「特に・・・ごめんね一兄さんが」

 

「だからお前に謝られても困るだけだ。まぁ今度織斑先生から話があると思うだろうし、説得するんだったらしとけ。家族なんだろ」

 

そこに俺が含まれていないのが妬ましいがな

 

「なんとか説得して謝るように言っておく」

 

「そうしてくれ。今の俺から歩み寄ることは無いだろうから大変だぞ」

 

「七実こそ覚悟しててよね。一兄さん、ああ見えてしつこいところあるから・・・でもどうしてそんなことしたんだろ。こういっちゃなんだけどIS学園に来るまでは、そう簡単に暴力なんて振るうこと無かったのに」

 

どうしてそうなったかは今の家族で知る必要があるんだろう。俺が知っても無意味にしか思わない

 

「頑張れよ」

 

「うん。あ、そういえば七実の部屋ってどこなの?」

 

「教員室だ。相部屋だが相手は山田先生だが来ようとは思うなよ?隣の部屋は織斑先生だからな?逃げ場がないぞ」

 

「ちー姉ちゃんかー・・・本音、力になれそうにないよ」

 

本音が聞き出してとか言ったのか。そんなことだろうと思ったけどよ

 

「んじゃ俺は戻るわ」

 

「え、遊んでいかないの?」

 

「面倒だし俺なんかと遊びたい奴なんてそういないだろ」

 

「んー、簪とか本音、ラウラはそう思わないかもよ?」

 

「そん時は俺を呼ぶなり捕まえろってな。俺は部屋でゆっくりと寝る」

 

「奢ったよね?」

 

どうしてそこまで俺を引き留めようとするのか分からん。あの中に行くこと自体面倒としか思ってないのだが

 

「なんだ?本音にでも頼まれたか?」

 

「うっ・・・」

 

「図星か・・・わかったわかった行きますよ」

 

「ん、ありがと。食べ終わったら行こ」

 

円華は急いでカキ氷を食べるが頭を抑えたりと忙しい奴だ。アイスクリーム頭痛だったか?食べる前に水を少量飲むといいんだったか?まぁもう遅いような気がするがな。カキ氷を食べ終わり出るが夏ということもあってか日差しが強い。そんな中で遊べるとかいろんな意味で凄いと思う。砂から凄い熱気を感じるしよ

 

「やっほー本音、連れてきたよ」

 

本音や簪、シャルロット、ラウラとか同じクラスの女生徒が数人見える。全員水着だが、本音は水着というよりかは着ぐるみだ

 

「まどっちありがと~。ななみんどこいってたの~?」

 

「そこらへんだ。どこでもいいだろうが」

 

「むむむ~、カキ氷でも食べてきた~?」

 

「そうだな。別に悪いことじゃないから別に構わないだろう?」

 

「一緒に食べたかったな~。ね、かんちゃんにデュッチー」

 

なら今から行ってこいというのは卑怯なんだろうが、俺は行きたくないぞ。また往復しかねないからな

 

「んー、行きたかったのはそうだけど今はいいかな。だってそろそろ昼食でしょ?」

 

「あ、すっかり忘れてた!」

 

そういえば昼食がまだだったな。てかそんな状態で遊んでいたのかよ

 

「ならそろそろ戻った方がいいかもな。もう12時近くだし」

 

「そっか・・・なら昼食を食べたらまたあとで遊ぼ」

 

「部屋でゆっくりしてたいんだが・・・そこまでできることなんてないぞ?」

 

「よし・・・言質は取った」

 

そう言ってみんなが更衣室がある方へ戻っていく。そもそも俺はこの上に制服を着こむだけで済むのでなんら問題は無い。さすがに下は着替えるがな。俺も部屋へ戻ることにした。部屋に戻るが相部屋が山田先生であるのでノックは欠かさない。もし浴衣に着替えている場面に遭遇でもしたら目も当てられない。確認すると「入っていいですよ」との事で襖を開けるがまだ浴衣は着ていなかった

 

「どうも」

 

「七実君も海に行ってたんですか?」

 

「話があるとの事で円華に連れられて。あ、臨海学校中は同室ですがよろしくお願いします」

 

「いえいえ。こちらこそよろしくお願いしますね」

 

挨拶も済ませたからとりあえず着替えることにした。制服を持って部屋のトイレで着替える。着替え終わり、トイレを出て隅に置いた荷物の上に畳んで置いておく

 

「七実君は几帳面なんですね」

 

「癖みたいなもんです。嫌な記憶ですが家事はみっちり叩き込まれたんで」

 

「あ・・・す、すみません」

 

山田先生には関係ない話だから謝られても困るという感じだ。あの経験のおかげで家事は大抵なんでもできるようになっただけなんだから

 

「気にしなくていいです。悪気があって言ったわけじゃないんですし」

 

「そ、そうですね」

 

あとなぜ言葉が堅苦しいのだろうか。少し静かになるとそわそわし始めるし、静かなのが苦手なんだろうか?

 

「先生って静かなのが苦手ですか?」

 

「え、いやそういうわけじゃないですよ?ただ男性と一緒なのが慣れてなくて」

 

「あ、そっちでしたか。意識しないでくださいとは言えないですが普通でいいんじゃないですか?ただの生徒でしかないんですし」

 

「そう言ってもらえると気が楽になります。七実君ありがとうね」

 

「そうですか」

 

俺としても普通に接してもらえる方が気が楽だ。そろそろ昼食だし行くとしよう

 

昼食も食べ終わり部屋でゆっくりしていた。腹休めという感じだ

 

「どうぞ先生」

 

「あ、ありがとうございます」

 

旅館ならではのティーパックでお茶を淹れて差し出す。なんだかんだで世話になっている先生だしこれくらいは良いだろう

 

「七実君は海に行かないんですか?」

 

「もう少ししたら行きます。本音や簪と約束してるんで」

 

「そういえばあのお2人と付き合いがあるんでしたね。いつ頃からの付き合いなんですか?」

 

あの頃は割と他人との関りを極力避けていたんだったな。誰にも知られず、ただ1人でいる方が気楽だったあの時期

 

「確か小2です。あいつらには本当に感謝しきれないですね」

 

身体の動かない時期は本当にあいつらのおかげで学校生活を送っていたな。毎年、簪か本音のどちらかが一緒のクラスになり教科書を見せてもらったりな

 

「あいつらって楯無さんや虚さんもですか?」

 

「まぁ一応ですが。特に虚は暴走した楯無や本音を止めてくれたりと本当に助けて貰いましたね」

 

「それは大変でしたね。でも良い人と出会うことができて」

 

今までが酷過ぎたというのがあるがな。本当に色々あり過ぎたんで何度大変な思いをした事か。1回死んで、2,3回死にかける、極めつけに誘拐され奴隷扱いを受けるなんてな

 

「ここだけの話ですが本当にそうですよ。いまでもあいつらには助けて貰いっぱなしですが」

 

「ふふふ・・・七実君、IS学園に来るときのこと覚えていますか?」

 

「ええ、山田先生が迎えに来た時ですか?」

 

「はい。その時に先にニュースを見てしまって少し怖かったんです。ですが親御さんの言葉と楯無さんと虚さんの会話を聞いて、安心してたんですよ。本当はいい人なんだなって」

 

あのニュースを見てもなお、こう思ってくれたのは多分山田先生ぐらいだろう

 

「それで入学当初から色々あったじゃないですか。誰かを助ける為に重症になったりだとか、あれで確信したんです。あのニュースは嘘なんだなって。本当に優しい人なんだなって」

 

「それは言い過ぎです。やらなきゃいけない事だっただけで」

 

「そうかもしれませんが自分の身体も労わってくださいね?悲しむ人だっているんですから。もちろん私もです」

 

胸を張って言われるようなことではないと思うが、この人だったら本気で心配してくれるんだろう。なんだろう、山田先生を相手にしてると調子が狂うな

 

「そう言ってもらえるとは有り難いです。すみませんが俺は行きますね」

 

「あ、分かりました。あとお茶美味しかったですよ」

 

そう言って俺は着替えてから部屋を出た。まだ暑い日差しの中に出るのは面倒だが約束は約束。守らねばならんことだしな。行くとしようか

 

 




お読みいただきありがとうございます

ここ最初は3000文字が普通だったんですがここ最近5~8000文字とか急激に増えたような気がします。長いですか?

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