元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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その信用は誰の物?

翌日、満身創痍の状態で教室へと向かっている。昨日は大変でしたよ。部屋に帰ったらあの4人が仁王立ちしていた時は絶望感満載でしたよ。夕食後、正座での説教はかなり堪えました。いや、これに至っては仕方ないだろうが。緊急事態だったから致し方ないだろう。教室に到着するがまだ誰もいない時間帯のせいか無人である。自分の席に着いて寝よう。昨日は体に鞭を打ち過ぎたからな、これぐらいは良いだろう。本当はサボりたかったが本音が同じクラスというのもあってかできやしない

 

「あー・・・机冷た」

 

「だろうな」

 

「あ?」

 

そのままの姿勢で顔だけ横に向けるとそこにはラウラがいた

 

「よう」

 

「挨拶ぐらいはまともにしてくれ。私の相棒としてみっともない」

 

「すまんな、結構疲れててな眠いんだよ。そういやお前さんはどうだ?」

 

「相棒のおかげで軽くて済んだ。それよりも昨日はありがとう」

 

感謝されるのは良いと思う。満身創痍になってまでやった甲斐があったというものだ。これで死んでいたのだったら俺は目も当てられない状態だったろう

 

「それとだな・・・教官にお前のISの事を伝えた」

 

「あっそ、いつかは知られることだとは思ってたし別に構わん。逆を言えば、これがあったから相棒を助けられたとも言える」

 

懐中時計を手にして俺はそう思う。これが無かったらラウラを助けてやることはできなかった。一夏が単体でどうにか出来たとも思えんし、ある意味最小の被害で救助に成功したとも言える

 

「それから、もうあいつを恨むのはやめにした」

 

「どういう心境だ?」

 

「一度、倒してしまってスッキリした。それに私を救出してくれたそうだし、これ以上恨むのも大変だしな」

 

恨み続けるのも大変だろうな。俺だってそうだ、いつまでも憎んでいたくない。でも、どうして俺を見つけてはくれなかったのか、もう見限られてしまったのか。どんな事であろうと既に事件としては時効を迎えている。もうどうしようも無いのだろうか?

 

「まぁそういうことだ。これからもよろしく頼むぞ相棒」

 

「はいよ、相棒さん」

 

だが、心強い味方が出来たのはありがたい。少しは気楽になるのかね。ラウラは自分の席の方に行くのを確認した後、寝ることにした。満身創痍のこの身体では、ちと厳しい数日間となるだろう

 

周囲が騒がしくなり目が覚める。微睡みの中で聞こえてくるものは少ないがそろそろ教師陣もやってくる頃合いだ。この騒がしさは良い目覚まし時計だとつくづく思う

 

「貴様ら静かにしろ!」

 

織斑先生の一喝と共にふらふらとした足取りの山田先生が教室内に入ってくる。これで完全に目が冴えましたよ。周囲を確認すると空席が1つある。シャルロットが座っていた席だ。というよりも篠ノ之、戻ってきてたのか

 

「み、皆さん、おはようございます・・・」

 

何処か元気が無いようだが、だいたい分かってしまった。シャルロットの件についてだろう。本当にお疲れ様です

 

「今日は、ですね・・・みなさんに転校生を紹介します。転校生と言いますか、既に紹介を済んでいるといいますか、ええと・・・」

 

「入って来い」

 

「失礼します」

 

言い淀んでいるところに織斑先生の一声が入る。それと同時に男装ではない本来のシャルロットが教室内に入って、教壇に上がる

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

シャルロットの一礼と共に生徒は騒ぎ始める。どうして女子はこうも騒ぎ立てるのが得意なんだろうか、あとで一喝されて終わるというのに。今回も見事に一喝されて静まる生徒たち

 

「書類の方に不手際があり、致し方なく男装を強いられていたそうだ。これからも仲良くやるんだぞ?」

 

『はい!』

 

中には最初から疑っていた奴もいたはずだが、そこはどうなんだろうか。そこの関係修復は本人が頑張るべきなんだろうさ

 

「それと鏡野、貴様は放課後に生徒指導室に来るように」

 

「はい」

 

どうせISの話だろう。どれ程危険な物かが分かってそれの対策でも取るんだろう。全く面倒だ

 

「これで朝のSHRを終了とする。2週間後に臨海学校があるからちゃんと準備しておくように、以上」

 

そういって山田先生の背中を押して教室を出ていく。今日も何事も無く終わるといいな

 

「やぁ七実、昨日はお疲れさま」

 

「っ!?」

 

空を眺め、時間を潰そうとしていたところに肩を叩かれ激痛が走る。不意の一撃だったので声をあげそうになったが我慢できた。肩を叩いた相手はシャルロットだった

 

「だ、大丈夫?」

 

「大丈夫に見えるならお前の目は節穴だ。眼科に行くことを薦める」

 

「そこまでなんだ・・・ごめんね」

 

謝ってほしいわけじゃない。ただ普通にしていてくれ。そっちの方が接しやすい

 

「今日のお昼って空いてる?」

 

「先約はいるが少し話すぐらいなら大丈夫だ。話を聞いた以上、事の顛末を聞いといて損はないだろう」

 

「そのつもりだよ。それじゃあまた後でね」

 

そう言ってシャルロットは自分の席へと戻っていった。てか、まだ痛いのは我慢するしかないのか・・・致し方あるまい。この状態で過ごすのか

 

授業も終わり、昼休みとなった。昼食を取る前にシャルロットと話をしなければいけないんだったか

 

「よう」

 

俺はシャルロットの席まで行き、話を聞くことにした。どんな結末になったのか、どんな代償を払うはめになったのか聞く覚悟は決めている

 

「それじゃあ話すね。僕は日本に亡命することにしたんだ。フランス代表候補生から日本代表候補生になって専用機もそのまま。だけど、フランスには悪いけど専用機は日本に献上して卒業するまで使えることになったそうだよ。会社は吸収されることが決まっていて、もうどうしようもないってことなんだ」

 

フランスざまぁ、という結果になったのか。経済的にもフランスは苦しくなっただろうがシャルロットにスパイ行為を押し付けた結果だと言えよう。フランスには憎まれる結果にはなっただろうがそれは自業自得という他ないのだから何も言えないだろう

 

「ねぇ七実、本当の事を教えて欲しいんだ。七実は先生と更識生徒会長に説得したんだよね?」

 

ここで「していない」というのは卑怯だろう。真剣な表情で見つめてくるのシャルロットには確固たる覚悟があるという感じだ

 

「楯無は面倒だった。俺が説得した時は失敗に終わっているしな」

 

「!・・・そうだったんだ。ありがとうね」

 

「・・・あの時はああ言ったが俺にも思うところがあってな、勝手にやったことだから気にされても面倒だ。忘れてくれ」

 

憐みというわけでは無い、同情と言えるだろう。あんな扱いされているのに見過ごすというのは、同じ経験をしたこともありできなかった。言い訳がましいが聞いてしまえば多分誰に対してでも動いたかもしれん。あながちお人好しというのも間違いではないような気がしてくる

 

「忘れられないよ。どんな形であろうと僕の為を思ってそうしてくれたんだから」

 

「はぁ・・・好かれるためにやったわけじゃないんだが。まぁいい、俺は行かせてもらう」

 

俺は教室を出ることにした。俺としてはいい気になろうとしてやったわけじゃないから好感を持たれても困るという話だ。とりあえず屋上で簪と本音が待っているはずだ。放課後で擦り切れる話し合いの前の憩いだ

 

「悪い、遅くなった」

 

「むっ・・・」

 

先に来ていた2人はお先に食べていた。だが2人がこちらを見る目が変だ。垂れ目の2人がジトッとした目、そんな目で見ていた。俺、なんかしたか?

 

「遅かったね」

 

「少し話をしていた」

 

「立った~立った~フラグが立った~」

 

そんな言い方したら俺が旗を立てた風に聞こえるだろ。いや、立てたかもしれんのは認めるけどよ。それともなんだ?2か月ぶりに俺が動けるようになったことの祝福なのか?

 

「またライバルが・・・この似非やさぐれめ」

 

簪が小声で恨めしそうに不吉なことを言っていたのをスルーしておくことにした。別にやさぐれている訳じゃないんだが。隣にいた本音は簪を信じられないものを見たような目で見ていた。見たんじゃない聞いたんだけどな

 

「いただきます」

 

ここ2か月で起きたことを思い返す。身体が動くようになって、入学しょっぱなで喧嘩売られて買ったら更にバッシングを受けるようになって、死にかけて、男装の真実を無理やり聞かされて殴られ、相棒ができて、相棒を助けて重症になった・・・いいことが2つしかない件について

 

「・・・どうしたの溜息なんてついて?」

 

無意識で溜息をついていたらしく簪が心配してくれた。この時だけは簪が女神か何かに見える。女神カンザシエル?語呂悪いからやめよう

 

「IS学園に来てからの事を思い出していた」

 

「ななみんは色々大変だったもんね~」

 

「大変なんかで済んだら死に目に遭ったりしない。今年は厄年かね?」

 

そう思っていないとやっていられないような気がしてきた。臨海学校では何事も無いといいな。多少の怪我は許せるが今回のラウラが暴走した件みたいなことになれば、今度こそ死んでしまうかもしれない。精神的にも肉体的にも

 

「あはは~かんちゃんも厄年かもね~」

 

「なんで?」

 

「だってラウラウや~デュッチーが参戦だよ~?()人から5人に増えるかもね~」

 

・・・聞き流すとしよう。3人というのが誰であるかなんて明白に分かってしまったからだ。虚は俺にその気はないというのを言ってきているからそうなんだろうが、残る3人は?という話だ。聞き流すことにしよう。隣2人で牽制しあっているのを視界に入れながら昼食を取る。あーいい空だなー

 

放課後、俺は言われたとおりに生徒指導室に行った。入学してから2か月、生徒指導室の中に入る回数3回と全生徒中で1番多いのではないだろうか。内2回は相談の為だがいつ来ても慣れないのは喜ばしいことなのか?

 

「失礼します」

 

ノックして中に入るが織斑先生と楯無、そしてスーツ姿の壮年の男性がいた。誰よ?案内されるがままにテーブルを挟んで対面するように座る

 

「あのそちらの男性は誰ですか?」

 

「私ですか?そういえば自己紹介がまだでしたね。轡木十蔵、このIS学園の学園長です」

 

確かIS学園の学園長は女性だったはずだ。苗字も一致していることから夫婦または家族関係なんだろう。体裁を保つためにはトップは女性の方がやりやすいというだけの話だろうな

 

「そうですか。それでここに呼ばれたのは何でですか?」

 

「鏡野、貴様のISについてだ」

 

予想通りでしかない。ラウラが言ったというのであればある程度見えてくる

 

「取り上げですか?」

 

俺は胸ポケットにしまっていたISの待機状態である懐中時計を取り出す。別に取り上げられてしまっても元はIS学園のISがこうなってしまっただけだ。だからこれが取り上げられようが文句はない。ただ使用が禁じられるというだけの話でしかない

 

「まぁ結論を急ぐな。更識姉、説明を」

 

「分かってますって。昨日織斑先生から話があって七実君のISについて話し合いが開かれたわ。通常、ISは装甲があって万が一のために絶対防御があるわ。でも七実君のISはあったとしても意味を為さない、通常ではありえないほど危険なものだわ」

 

最初は予感程度のものだったが一夏に1度斬られて確信している。メリットがあればデメリットも存在する。信じられないだろうが<Mirror me(こいつ)>も俺自身であると

 

「知らなかったじゃ済まされないわ。これは学園側からのお願い、使ってもいいけど絶対に無茶しないで」

 

「無茶というのがどの範囲かまでは知らんが、ラウラみたいなことが起きたらどうする。人命に関わり、周りには俺しかいないなんて状況が起きたらどうする。その時は流石に無茶せざるを得ないぞ」

 

言っておくが自身の評価は常に最低であることは自分で思っている。最低だからこそできることもあるし言えることもある

 

「揚げ足を取るものじゃありませんよ。彼女はただ貴方に前回、今回のようなことになって欲しくないのですよ」

 

「そうだぞ。鏡野は偏屈過ぎる、もっと周りを信頼してはどうだ?」

 

流石にその言葉は無責任すぎる。俺の事を思って言ってくれているのはありがたいが、どうして俺がこうして裏で頑張っているのか。俺は徐々に怒りが込上げてくる

 

「信頼しろ?ふざけないでくださいよ。ならなんで俺に対する罵詈雑言が消えないんですか。真実を曲げられ異物扱いを受け、何一つ悪いことをしていないというのにどうしてこうなってるんですか?」

 

どうしてこうなったんだ?ここに来るまで俺は大変な思いをしてきた。身体が動かず何もできない生活。今度は身体が動くようになったけど精神的に抉られる生活

 

「セシリアは俺の全てを抉って、()()()と受けてきたことを平然と行いを抉って、()()()()()()()()()()()()

 

水に流したとはいえ過去は消せない。あのせいで俺と一夏に最初の溝を作り本当の関係を戻し辛くした。そこから俺の苦悩は始まったとも言える

 

「篠ノ之箒の時だって俺が死に目に遭ってまで助けたというのに、のうのうと戻ってきては感謝の言葉すらない。」

 

俺が助けなかったら死んでいたというのに、なんで感謝されないんだ?それほどに俺が嫌いなのか?嫌いだとしてもしてもらったことには何かしらの返礼ぐらいはあるだろう

 

「シャルロットの時もそうだ。一夏はまず最初に俺じゃなく姉である千冬さんに頼むべきだった。聞き分けが悪いとか言って、なんで殴られなくちゃいけないんですか?何もしなかった奴がどうして威勢を張って俺に敵対するんですか?」

 

俺だって助けたいと思った。だけど具体的な案を持っていないのならできない。そもそも相手が悪すぎる、国家相手に対抗するには一般人では無理だ。それを知っているからこそ協力を頼もうとしたのに殴られた。理不尽極まりない

 

「こんな環境に置かれて誰かを信用しろ?教室内では減ってきていますが最初は酷かった。常に何かしらは嫌味が聞こえてきてた」

 

ただ普通でいたかった。それができないなんて苦痛でしかない。奴隷にも似たような在り方だ

 

「移動する際には暴言を浴びせられ嫌がらせもある。こんなストレスを抱えてまで周囲を信用しろなんて無理だ」

 

毎日毎日大変なんだよ。そんなことにならないためにも朝早くから人気の無い時間帯、通路を通って学校に来ているんだ。前世の経験で耐えられるけどいつか病んでしまいそうな程に苦痛だ

 

「逃げても先回りされているそんな状況でどうしろってんですかっ!!」

 

ここ最近は感情が昂ることが多くなってきた。どうも抑制できない。いつもは感情を切り捨ててきたものだから制御ができない。本当にどうしたらよかったんですか。生徒指導室に静寂が訪れ、誰も声が出ない。愚痴っぽくなってしまったけど今の俺の本音でもある

 

「すみません。今日は怪我の事もあるんで帰ります」

 

そう言って俺は生徒指導室を出ることにした。徹底的に改善してほしいわけじゃない。ただ普通でいたいだけなんだ。人の闇なんていやという程、知っていたはずなのに

 

 

千冬サイド

 

鏡野の闇を見たような気がする。私が不用心に信用という言葉を使ってしまったのが原因だ。私にも他人が信用できなかった時期があった。春十が行方不明になり、両親が蒸発したそんな時だ。金は置かれていたが、まだ幼い一夏と円華を育てなきゃいけず他人を信用できなかった。用心し過ぎかもしれなかったが、それくらいの注意はしなければいけなかったのだ

 

「その・・・すみません。私が不用心なことを言ってしまったせいで」

 

「昔から七実君は大変だったので、それもあってかあんな風な言い方になったんじゃないですかね。一番近くで見ていた私でもあんなに感情をあらわにしていたところを見たのは初めてですし」

 

楯無もあの状態を見るのは初めてだったんだろ。そのせいもあってか反応できなかったのか

 

「どうしましょうかね。彼のISについての運用方法の説明する前に帰ってしまいましたし、それと環境の改善にも手を出さないわけにはいきません。少し話し合いましょうか」

 

「分かりました」

 

会話の中で少々引っかかる部分があった。何十年も受けた、本当の関係・・・前者は時間的に矛盾が発生している。鏡野は16歳であるがどうして何十年なんだ?身体が動かなくなったことを加味しても矛盾だらけだ。後者は本当に分からん。私はIS学園に来てから初めて会ったはずだ。最初は雰囲気が一夏と似ているような気がしたがどうなんだろうか。まさかとは思うがあいつが春十なのか?いや、それは無いか。経歴が全て物語っているのだから

 

「まずは意識の改変、生徒全体に差別意識を無くさせることです。これは更識生徒会長が適任でしょうな」

 

「集会の際に厳重注意しておきます。それでも改善しない場合の対策も考えておきますね」

 

「では頼みました。それと気づかれない程度で監視の継続もよろしくお願いします。織斑先生には直で生徒の改善をお願いします。先ほどの彼の話ですとあなたのクラスでも起ているようですし」

 

「・・・分かりました」

 

そして一番気になるのは一夏だ。IS学園に来る前までは周囲には優しく人当たりがよくて誰にでも好かれるような人格者だったはずだ。だが彼の話を聞くと随分と荒っぽくなっている。以前にも鏡野に対して悪意を向けているのを教えられている。何がお前をそうさせたんだ?

 

「それにしてもストレスですか、そっちの方面は考えていませんでしたね。これは運営側の配慮不足でしょう。こちらでも動きますので、お2人もよろしくお願いしますよ?」

 

「分かってますよ。ね、織斑先生?」

 

「ああ」

 

ちゃんと聞きださなければいけない。姉として何が一夏をそうさせたのか、そして鏡野が話していた内容についてだ。その後日が落ちるまで話し合った

 

 

 

簪サイド

 

七実の様子がおかしい。部屋に戻って来たと思ったら服を脱ぎ捨てその場で着替えて寝巻に着替えてベッドに潜ってしまった。問いかけにも対応せずただベッドに潜っている。いつもなら洗面所に行って着替えるのにどうしたんだろう

 

「七実、どうしたの?」

 

何度も問いかけるが一向に返事は帰ってこない。本当にどうしたの

 

「ただいま~」

 

七実の心配をしていると本音が帰ってきた。2人でならいけるかな?

 

「ななみんどうしたの~?」

 

「分かんない、でも様子がおかしいの」

 

「あ~こういうことか~」

 

本音はスカートのポケットからスマホを取り出し私に見せてくる。差出人はお姉ちゃんだった

 

もし、七実君と会って様子が変だったらよろしくね。ここ2か月のストレスが溜まっちゃってるみたいよ。原因は言えないけどよろしくお願いね

 

追伸.今週の日曜までに元に戻ってないと5人でデート出来ないかもしれないわよ

 

うん頑張ろう。追伸は置いておくとしてどうしてこんなになるまで溜めちゃったかな。もっと私達を頼って欲しいかな。本音と一緒に七実を揺するが一向に反応が無い

 

「七実、何があったかはわからないけど、どうしてそういう風になったの?」

 

『俺、悪いことしたか?どうしてこうなったんだろうな。嫌われながらもなんだかんだ頑張って、死にかけようが重傷を負うことになってもただ苦しくなっただけ。本当に厄年だな』

 

布団に潜ったままで話し始める。多分ここ2か月の話なんだろう。お昼休みの時も思い返していたみたいだしそうなんだろう

 

「ななみんは本当に頑張ったよね~。セッシーの時も、しののんの時も、デュッチーの時も、ラウラウの時も。ぜ~んぶななみんが裏で頑張ったのにね~。避難誘導だってしたのにね~、だーれも感謝の言葉を送ってくれないしね~」

 

私もクラス別対抗戦の時は避難誘導を受けた身だ。その時、遠巻きで七実がしているのを見ている。感謝されたいわけじゃないんだろうけど、批難される理由は無いはずだけど今でも続いている。私のクラスでもたまに聞こえてくる

 

「私達は七実の味方だからね。頼りがいは無いかもしれないけど頼って欲しいの」

 

『いらん心配をかけたみたいだ、すまん。今日はもう寝かせてくれ。寝て忘れたい』

 

「うん分かった。本音今日はここまでにしよ?」

 

「はいなのだ~」

 

七実がどれ程辛かったのかは分からない。だって本人じゃないし教えて貰ってないもん。でもね、その気持ちはなんとなくだけど分かる気がする。1人になりたい気分だってあるはず、ここは大人しく引き下がることにする

 

「七実、私達食堂に行ってくる」

 

布団の中から手を伸ばし振ってくれた。声には出さないけどその気持ち嬉しいよ。私達は部屋に鍵を閉め食堂に向かうことにした

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

なんでしょうね・・・この話、中盤からすんごい滅茶苦茶になってしまいました

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