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結果だけ言おう、一夏は懸命にラウラに立ち向かうが敵うはずもなく一方的に蹂躙された。SEは少し残ってはいるものの既に詰み状態だ。
「くそっ!」
「やはりこの程度でしかないのだな。教官の弟であるから少しは期待してたのだが、この程度でしかないなんてな」
某ラノベの台詞を代用させてもらえば、家族とは1番近しい他人だそうだ。家族であっても結局は本人ではない。同じ血族だとしても期待するだけ無駄だろう
「そんなの関係ないだろっ!」
「早くしてくれラウラ。集中し続けてるのも疲れる」
「それはすまない。では決着としよう」
ラウラは肩部から6つのワイヤーブレードを射出し一夏を拘束してグルグルと振り回す。ラウラを中点として円を描くように振り回し思いっきり地面に叩きつけられ、土煙を上げてSEが0になったアナウンスが流れる。残る敵はシャルロットだけになった
「これは詰みだね。僕も降参するよ」
何一つ身動きが取れず味方もいなくなったシャルロットは降参し、これまたアナウンスが鳴る。これで俺たちが勝ったことが証明された。いくら汚い、卑怯と言われようが俺はこの作戦に
「戦闘役お疲れさん」
「いやなに、鏡野七実がもう1人を抑えてくれたおかげで安心して戦えた。こちらこそ助かった」
ISに乗っている状態で握手を交わすが観客の方は納得いかないようで拍手喝采とはいかないようだ。いったい何が問題なんだか?俺らが勝ったことか?作戦か?
「全く、嫌われ者という面倒な立場にバミられているな」
「その嫌われ者と手を組んだお前も同罪だっての・・・戻るか」
俺らは元来たピットへ戻ろうとしてブースターを吹かしたそんな時だった。背後にいるラウラが一切動かずゆっくりと地面へと降下していったのだ
「あぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁっぁぁあぁっ!!」
悲鳴のような雄叫びを上げ、その場に蹲る。紫電をISに走らせ、黒い何かへと変化していった。アリーナでは警報が鳴り響き、シャッターが閉じ封鎖された
『織斑にデュノア、鏡野の3人聞こえるか!?』
「俺は聞こえています。あっちはデュノアがいるんで大丈夫でしょう」
『そう言うな。今、返答があった。緊急事態だ、さっさと退避しろ』
「・・・あいつが無事って言うなら退避しますが、すぐさまあれを何とかできるんですか?」
ラウラがいた場所には紫電を走らせた純黒の塊、ISのような何かが存在していた。一夏の方を見てみると何がなんやら、シャルロットが純黒の塊目掛けて走り出そうとしている一夏を取り押さえていた
『今すぐには無理だ。教師陣が陣を組んでボーデヴィッヒを救出する』
「なら俺は聞けません」
『なぜだ鏡野』
どう見ても異常としか思えない状況でラウラを中心として起きていることだ。俺らが放置したせいで出た被害はどうする?そもそもラウラは本当に安全と言えるのだろうか?自称相棒を自負している俺としては、ここで時間を稼ぐ程度しかできないだろうけどやるしかない
「放置している間に出る被害、ラウラの安否確認そういったこと込みでなおさら退避できません。これでも自称相棒を名乗っているんで時間を稼ぐ程度しかできませんがやるだけやってから逃げることにします」
『・・・5分だ。それ以上は時間を取れない、良いな?』
渋々という感じの返答だ。リーグ戦の事を思えば致し方ないことではあると思うがラウラを大事に思っている証拠でもある
「どんな手を使ってでも稼いでやりますよ」
俺は純黒のIS目掛けてワイヤーブレードを射出し、牽制を行うが何処かで見たような剣で一薙ぎされてしまった。そう簡単にはいかないようだ
『ねぇ七実、提案があるんだけどいい?』
「とりあえず聞くだけだ、勝手に話せ」
一夏を抑えているシャルロットから
『一夏のISには零落白夜っていうのがあるんだ。それがあればラウラを救出できるかもしれないそうだよ?』
「それに伴うリスク、何をしたらいいか詳細に教えてくれ。かも、じゃダメだ、確定できなければ意味がない」
常に確定なんてことは無いが少しでも不安要素を無くしたい。手を借りたいが一夏のISはSEが切れていて使えない。シャルロットに至っては一夏を抑えているから手を借りられない
『どうやら零落白夜にはエネルギーを消失させることができるそうなんだ。それを使ってあの黒いのを斬ればSEを大幅に削ることができるそうなんだ。あれだってISなんだから今はこれしかないよ』
「それなら補給してこい、その間に何とかしておく」
なんとか一筋の光が見えたような気がする。近接では心許無く、このISでは相性が悪いとはな。だがやるしかないんだ。いくら関係が悪かろうがやらねばならんことは互いに分かっているはずだ。今は誘導しなければならない
「牽制はここまで・・・これからは全てを賭してやらせてもらう!」
このISははっきり言って強い。だがその分、代償が大きいのは知っている。そんなもの度外視して助けてやらなきゃ相棒として失格だよな。俺はなりふり構わず突撃する。相手が何だろうが剣1本、いくら攻撃を食らおうが知ったこっちゃない。両手首から出現させたプラズマ手刀で間合いを詰める。当然相手も剣戟を加えてくるが必要最低限しか防御はしない。多少食らったところでなんだ、この体が傷付く程度じゃないか
「待ってろよ相棒、お前のISはそんな不格好なもんじゃないはずだ」
近づくにつれて剣戟が増えていく体の末端部を斬りSEが削られ、体には痛みが走る。それでも致命的なダメージは入っていない。まだできる・・・これで死ぬわけじゃないと信じて攻撃を受ける。完全に敵認識されているからできることだ。なんか機械と戦っている気分だ
「来いよ、手足なんか感覚が無くなりつつあるだけだ。この程度でやられる俺じゃないんでな」
流石に攻撃を受けすぎたせいか痛すぎる。そろそろ締めないと色々とマズいな。純黒のISは俺の胴に横薙ぎを入れてくるがそれを受け流す。既に痛覚が麻痺しているのか、あまり痛く感じない。そろそろ締めなければならないか?
「おらぁ!」
こちらも手刀で攻撃を入れるが簡単に回避される。慣れないことをやっているせいかバランスを崩してしまった
「しまっ!?」
完全に隙となってしまい兜割というのか、思いっきり縦方向に斬撃を入れられ剣ごと地面へと叩きつけられてしまった。SEもほぼ0となり、尋常ではない痛みが全身に走る。気を緩めてしまえば気絶してしまうかもしれない
「がはっ・・・・・・だが捕まえたぜ」
剣と腕ごと掴みワイヤーブレードで自分ごと絡めとる。これで攻撃手段の剣は潰した
「まだか・・・」
「これでおしまいだっ!」
ようやく
「よぉラウラ・・・元気か?」
「鏡野・・・私は、いったい・・・」
虚ろな目でラウラはこちらを見てくる。助けんのが遅くなってすまなかったな
「俺にもわかんね・・・教官とやらが教えてくれるだろうし・・・今は寝とけ」
「ああ・・・そうさせてもらうぞ、
そう言って気絶してしまった。ようやく相棒認定して貰えて俺は嬉しいが・・・俺もダメだな、全身が動かんし眠くなってきちまった
ラウラサイド
あの黒いのに飲まれ勝手に戦っていた私のISを何とか食い止めてくれた鏡野七実の姿をずっと見ていた。あいつのISの特性は教えられていたが、どうしようもなかった。だがそんな状態でも私を助けてくれた。何度も攻撃を食らいながら痛みに耐えながら私を助けてくれた
「やぁ」
ふと声が聞こえた。声質は私の相棒のものだがトーンが違う。冷たく鋭いものではなく暖かく柔らかい対照的な声。重い瞼を開けると見渡す限り真っ黒な空間で唯一人立っていた。服装は1枚のボロキレで、如何にも創作上の奴隷が着ていそうな服だった
「ようこそ深層世界へ」
「貴様は誰だ?」
「ひっどいなー。私は私だよ?いやラウラちゃんには俺は俺って言った方が伝わりやすいかな?」
一体何を言ってるんだ、私の相棒は?
「結局誰だ!」
「鏡野七実って言えばいい?私だって俺と同じなんだよ。全て鏡写しで全て正反対、そんな関係だよ?」
言っているのは何一つ分からない。だが髪型、声、身長は寸分違わず一致している。こいつが私の相棒?
「一方的に話すけど、君はISの意識内にいるんだ。私はその1つ<M.M.>こと<Mirror me>のコア人格でもあり、鏡野七実本人だよ。まぁ私の正体はどうだっていい、今回の事の顛末を語ろう。
「どういうことだ!?」
「どうもこうも無いね。きっとこっちに来る前にインストールされたんじゃない?こっちではシステム方面を弄った記録が無いし。ほんと無事でよかったよ。もう少し遅かったら死んでたかもしれない。俺が頑張った甲斐があったってもんだよ」
最悪、命を奪うシステムを組み込まれていたなんて誰も思わないだろう。現に私がそうなんだから
「うん、話は終わりだ。君は目覚める時だよ、じゃあね」
もう1人の鏡野七実は手を振ると距離が離れていく。特に走っているわけでは無く、勝手に離れていったのだ。私は手を伸ばし呼びかけるが既に遅く、姿が見えなくなったところで光に包まれ瞼を閉じる
「っ!?」
瞼を開けるとそこには知らない天井が広がっていた。私はその天井目掛けて手を伸ばしていた
「気が付いたか」
教官の声が聞こえてくる。外は既に夕暮れ時であれから3時間ほど経過していたのがわかる
「教官・・・」
「私は教官ではない、織斑先生だ。それと全身に無理な負担がかかったせいで筋肉疲労と打撲があるから無理に動こうとするな」
ゆっくりと腕を戻したが痛覚が働いて多少の痛みがやってくる
「何が・・・起きたんですか?」
先ほど深層世界とやらで教えて貰ったが確証はない。確認の意味を込めて聞くが同様の話だった。
「そうだったのですか・・・ところで鏡野七実は・・・どうなりましたか?」
「左隣りを見てみろ。ぐっすりだ」
多少の痛みをこらえて見てみるとあちこちに包帯や湿布を張られてぐっすりと寝ている
「相棒・・・すまない。私がこうしてしまったんだな」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
「は、はいっ!」
「鏡野は相棒と自称し、私に貴様を助けると宣言した。その時のあいつは凄かったぞ。攻撃を食らおうが構わず食らい付き、結果として貴様を救出させることに成功した。織斑兄の協力があってこそできたものだが、相棒、ラウラ・ボーデヴィッヒを救ったのは紛れもなくそいつだ。謝る場面ではないだろう?」
この人はどこまで分かってるんだろう。すぐさま私の事を正し、他の追随を許さないこの人には全てお見通しなんだろうか
「しかし妙だ。ISには絶対防御があるというのにこの傷の量はおかしい」
「・・・聞いていないのですか?」
「何がだ?」
「相棒のISのダメージ=操縦者のダメージ、ということらしいですが」
言った瞬間、教官もとい織斑先生の表情が強張った。こんな重大な欠陥を見逃すわけは無いのだが気付かなかったのだろうか?
「その話、本当だろうな?」
「はい、作戦を考える際に告げられたことです。現に
「・・・一致している。実習の時も攻撃を受けないように引き撃ちばかりしていたのはそのせいか。こんなもの生徒に使わせるわけにはいかん。一旦生徒会長と学園長に話を通すとしよう。話してくれて助かった、すまんが今から行ってくる」
織斑先生は保健室から出て行ってしまった。これ以上、私の相棒が傷ついて欲しくないのでな。すまんが頭脳担当になってもらうぞ。しかし、今日は本当に疲れたな。もう少し眠るとしよう
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以前言っていた通りにリクエストを取りたいと思います。ようやく2巻分の終了が見えてきました。お次は後日談です
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