元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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3回連続投稿・・・いやね、他のSSも書かなきゃいけないってのはわかるんだ。でもね、ネタが降りてこないの。どういう風に立ち回らせるとかそういうのが降りてこないから書けるやつを書いてるだけなんだ


ここに集う

 

生徒会室から出て、今は寮へと足を運んでいる。日も陰ってきて黄昏時というべきなんだろう、夕日が眩しい。目がー、目がー

 

「おい」

 

「んあ?」

 

脳内ムスカごっこしていると後方から声を掛けられた。振り返るとそこには眼帯軍人・・・ラウラがいた

 

「鏡野七実、話がある」

 

「なんだ?」

 

「まずはこれを見ろ」

 

手に持っていた紙を俺に手渡してくる。そこには学年別トーナメント戦のルール変更と書かれていた。理由は1年の代表候補生が多く、時間が取れなくなる可能性が出たためと書かれていた。内容は簡単、1対1から2対2、要はタッグトーナメントということに変更されていた

 

「タッグか」

 

「そうだ、タッグを組まねばならない。。そこで提案なのだが私と組まないか?」

 

別に誰でもいいんだが、さっき織斑先生によろしく頼むと言われたからな。それに当人は乗り気で提案してきているのを無下にするわけにもいかない

 

「いいぞ。織斑先生にもお前と仲良くやってくれと頼まれたからな」

 

「教官にか?」

 

「その教官ってのが織斑先生であれば、その通りだ。でも1つだけ面倒なことがある」

 

タッグを組んだのは良いが俺のISは修復作業中だ。確認だけでもしておきたいが時間は取れないのだ

 

「面倒事などどうでもいい。私が織斑一夏を潰す」

 

「・・・そういえばどうして一夏をそこまで恨む。私怨か?」

 

「私怨と言えば私怨だ。なぜなら教官に泥を塗ったからだ!」

 

この後のラウラの語りにはドン引きした。内容としては、一夏がいたから織斑千冬という完璧な存在に汚点が付いた。とのことなんだが、その語りっぷりが羨望とか憧れというレベルじゃない。もはや信者、狂信という感じだ

 

「・・・ということだ。これで貴様も織斑一夏が憎く思えただろう?」

 

「いや、俺をその手に引き込むな。何が原因で棄権せざるを得なかったかは知らんが、その話を聞いてみてはどうだ?」

 

あいつの肩を持つようだがラウラが言っていたことだけが真実とも限らない。一夏や千冬だって語っていないこともあるだろう

 

「例え、そうだろうと教官に汚点を付けたのは間違いない」

 

「そうですかい」

 

「詳しい話はまた後日する。ではな」

 

「ちょっと待ってくれ。1つ頼みたいことがあるんだがいいか?」

 

この場を立ち去ろうとするラウラに待ったをかける

 

「頼み事だと?」

 

「ああ、俺の幼馴染が専用機持ちでな。紆余曲折あって、昨日完成したばかりなんだ。それのデータ取りをしたい。だが、俺のISは使用不可で訓練機なんて1,2回程度しか使用したことが無い」

 

「私の力が必要ということだな」

 

「有り体に言えばな。頼めるか?」

 

「元はと言え、私から協力を申し出たんだ。それくらいならしてやる」

 

最初の印象からかけ離れて、中々に話が分かるやつだった。印象って大事なんだなってハッキリと分かった瞬間でもある

 

「助かる。今日、再度確認を取ってから明日の朝にでも伝える」

 

「わかった。ではな」

 

今度こそラウラは立ち去って行った。予測だがラウラと簪は相性がいいと思う。性格は真逆かもしれんが相手にしている人物が同じということもある。一夏には悪いが簪の恨みをその身に受けてもらう。俺は再び寮へと足を進める

 

 

翌日の放課後、俺と簪は第2アリーナに来ていた。今日は試験運転をするためである。ラウラは別行動だが許可はちゃんと取ってある

 

「再確認するけど、どうしてラウラ・ボーデヴィッヒまで?」

 

「今度のイベントがタッグになったよな。それで誘われたんだが簪と相性が良さそうだから、手伝ってくれるように頼んだ。まぁ、無いと思うがいざという時の保険だ」

 

試験運転ということだがバグやトラブルが起きて、怪我でもしようものなら大変だ

 

「ふーん・・・他意は無い?」

 

「あるわけ無いだろ。転校して間もないのに、すぐに良好な関係を築けるほど器用じゃないのは知ってるだろ」

 

「知ってる・・・七実とタッグ組みたかった」

 

「早い者勝ちだ。今回は無しということで」

 

あの時ラウラがいなかったら簪と組んでいただろう。それでも俺が足を引っ張りかねないが

 

「遅いぞ鏡野七実」

 

ピット内に入ると既にラウラがISスーツを着て待っていた。今日の為にわざわざ来てくれて助かる

 

「すまんな。とりあえず自己紹介でもしてくれ」

 

「なら私から、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

またしても名前だけの自己紹介だ。どうしてこうも口下手な奴が集まりやすいのだろう。気楽できるからいいんだけど

 

「ラウラ、自己紹介ぐらいはちゃんとしてくれ。編入初日のあれもそうだが、一夏と同じ内容だぞ?」

 

「なに!?」

 

あれだけ毛嫌いしているんだからこう言われたらキチンとするだろう。現に目の前で考え始めているんだから

 

「簪にはどういう奴か分からんだろうがある程度の説明はする。こいつはラウラ・ボーデヴィッヒ。経歴や成績は知らんが、こいつも一夏の事を少なからず憎んでいる」

 

「っ・・・本当?」

 

「その通りだ。あいつさえいなければ教官に汚点を付けずに済んだんだ!」

 

接点を持つのには最低なやり方だが今回の場合は有効な手段だろう。悪いが、今の俺はラウラ側だ。一昨日の事は必ず晴らしてやる

 

「私も同じ・・・一夏がいたから専用機が完成しなかった。代表候補生での努力を貶されたようでならない」

 

「ほう、ならば目的は同じということだな?」

 

「うん・・・私の名前は更識簪。よろしくラウラ」

 

「よろしく頼むぞ更識」

 

「簪でいい。お姉ちゃんもいるし」

 

「分かったぞ簪」

 

2人は互いの手を取る。新たな友情というのは変な気がするが、目の前に新たな関係が生まれていた

 

「改めて自己紹介させてもらうが、私の名前はラウラ・ボーデヴィッヒだ。ドイツ軍のIS部隊シュヴァルツェア・ハーゼに所属している代表候補生だ」

 

「軍属だから教官か。どういう経緯で織斑先生がそう呼ばれるかが分かった気がする」

 

「それで私は何を手伝えばいい?簪の為なら何でも手伝ってやるぞ」

 

目的が嚙み合っている者同士で思うところがあるんだろう。ラウラが乗り気になっているのは非常にありがたい

 

「私の専用機の試験運転をするから、補助して。七実はデータ採取とアナウンス」

 

「いいだろう」

 

「分かった」

 

「行こうラウラ」

 

2人はISを纏ってピットから飛び立つ。俺は俺でちゃんと仕事しますか。ピット内に備え付けられてある計測器とモニターを用いて試験の準備に入る。計測項目が書かれている冊子を読みながらの測定だ

 

「2人とも準備はいいか?」

 

『私は大丈夫。関節部も異常なく動くし歩ける』

 

そこに異常があったら最早論外だ。動けないだろ

 

「飛行して適当にブースターを吹かしてくれ。ラウラは簪に随伴するように」

 

『うん』

 

『了解した』

 

2人は一緒になって空を飛び回る。俺はモニターを確認しながら計測項目を確認していく。姿勢制動用のスラスター、推進用のブースター、センサー、その他の部分の数値は特に問題無く正常である。後は武装の展開及び使用ぐらいだ

 

「もう十分だ。後は地上に降りて武装の展開の準備に入ってくれ」

 

『わかった』

 

簪のISが下降を始めようとしたところで異変が起きた。右脚部のブースターが爆発し、姿勢崩壊しながらアリーナの外壁へと一直線に突き進んでいく

 

「ラウラ!」

 

『この手の事は任せておけ!』

 

ラウラは簪の機体目掛けて、ワイヤーを射出し全身に絡め引き寄せる。それでも動きは止まることなく徐々に壁へと近づいていく

 

『簪は全スラスターとブースターを切れ!後は私に任せろ!』

 

『そんなことしたら落下する!』

 

『いいから私に任せろ!』

 

こういう時にISを使えないのが痛い。目の前で起きていることを傍観するしかないんだから。簪はラウラの言う通りに全てを停止させると重力に従い落下していく。全身に巻き付かれているワイヤーを少しずつ引き戻していくと、地面に衝突することなく振り子のように揺られている

 

「大丈夫か簪?」

 

『ラウラのおかげでなんとか・・・ありがとうラウラ』

 

『いや、私にも似たような経験があってな。何がともあれ無事でよかった』

 

ラウラは揺れが収まる頃にワイヤーをゆっくりと地上に降ろされていく。なんともなくてよかった

 

「これは計測しなおしだな。一旦整備室に行くぞ」

 

『そうだね・・・』

 

遠くから見ても凹んでいるのが分かる。そりゃ完成したと思って使ってみれば1日目で部分的に破損する。クーリングオフはよ、とでも言いたいけど開発を凍結させられてちゃ無理だ。俺たちはアリーナを出て整備室へと向かった

 

 

 

ラウラサイド

 

鏡野七実というIS業界において2人目のイレギュラー。そいつの評判は最悪な物だった。嫌われ者、人格破綻者、異常者、と教官の弟に比べ酷かった。本国から接触を図る様に指令を受けたのだが、話してみるとそういうことは無かった。むしろ善人とは言い難いが話の分かるやつだと思った。どうして嫌われるのかはニュースでの報道では知っていたのだが、至って普通だ。平凡な一般人。どうしてハブられるのか分からない程に普通だ。私はそこが分からなかった

 

今は整備室に来て、簪のISを整備している。壊れた部品は廃棄し新たな部品を付けるのだが意外に鏡野の手先が器用なのだ

 

「おい鏡野七実。随分と手慣れているようだが経験はあるのか?」

 

「そんなことは無い。ここに来るまでは碌に動けなかったし、今では普通に歩けるが1,2か月前までは車椅子が普通だったな」

 

こいつも大変な環境にいたのだろう。表情は隠れていて分からんが暗いように見えた

 

「七実は・・・大変だったもんね」

 

「忘れたくても忘れられん。あの経験があるからこそ、今の俺が形成されたとも言える」

 

「そうかもしれないけど・・・そういう風に考えちゃダメ」

 

私もそれなりに大変だったがこいつも同じらしい。いったいどんな経験をしてきたのだ?と聞きそうになるが、そこは人の抱える闇。聞くわけにはいかない

 

「貴様も大変だったのだな」

 

「ん・・・そういやお前も大変だったそうだな。詳細は知らんけど」

 

「教官から聞いたのか?」

 

「一応な。お互いに辛い目に遭ってるから接点としては悪くないんだろうよ。同情を憐れむとかそういうのじゃないけど」

 

現に話は続いてるし、簪という仲間も紹介してもらってる。それ相応に相性は良く、教官の言うことに間違いは無いだろう

 

「そうだな・・・これからもよろしく頼むぞ、鏡野七実」

 

「へいへい」

 

この後、簪のISの修理は無事終了した。原因は途中で投げ出されてから開発途中だったらしく、接続不良だったみたいだ。なまじ、配線や基盤が多いため確認し辛かったのが今回の出来事に繋がったそうだ

 

「今日はありがとう」

 

「いいんだ。私もいい経験をさせてもらった」

 

「七実もありがとう・・・2人がいなかったら、怪我してたと思う」

 

「ラウラに頼んでよかったと常々思う。俺からも礼を言わせてくれ」

 

2人は頭を下げて礼を言われる。あの時に私がいなかったら、大変なことになっていたのは確実だ。だが、それこそ鏡野七実に感謝すべきだろ

 

「構わんさ。2人とも、これからもよろしく頼む」

 

「おう」

 

「うん」

 

私は2人と別れ、整備室を出ることにした。少なくとも、教官の弟よりは数段も好感が持てる奴だと確認できた。この調子で友好関係を築いて、あいつを叩き潰しやすくするとしよう

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

原作よりもまともな思考?・・・ですかね。

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