翌日、俺は何事も無く普通に登校した。朝早くなので部活に入っている奴らが朝練している以外の人には会わずにここまで来ることが出来た。登校できなかった1週間分の授業の遅れは本音からノートを借りることで何とか事なきを得たんだが教科書や参考書などを見比べても書いている部分が少ないのだ。元々そういうのは知っていたが今すぐにやるとするなら本音から借りるしかなかった。そのせいか、ほぼ貫徹と言って良いだろう。とても眠い。簪のISや授業の遅れを取り戻す為にした結果がこれである。机の上で腕を枕にして寝ることにした。どうせ朝のSHRが始まる前には騒がしくなって起きるだろう
朝のSHRが始まる前には教室内は騒がしくなり無事起きることが出来た。まだ眠いが今日の授業は実習となっている。その為なるべく体力は作っておきたいがもう無理だろう。貫徹なんてするんじゃなかった
「はーい、みなさーん席に着いてくださーい」
山田先生が入ってくると同時に朝のSHRが始まる。今日も始まるのか
「今日から鏡野七実君が復帰しました!1週間も授業に出れなかったので助けてあげてくださいね」
実際、そんなに助けを借りるわけでは無い。ただ普通に接してくれ。面倒事が増えなくてすむから
「それと、このクラスに転校生がやってきました!入ってきていいですよ」
髪を首の後ろで束ねた金髪で中性的な顔立ちの男であろう奴と長い銀髪をした眼帯をつけた小さめの女が教壇に上がる
「では自己紹介をお願いしますね。まずはデュノア君からで」
「はい、僕の名前はシャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますがどうぞ宜しくお願い致します」
なんとまぁ優等生的な自己紹介だろう。しかしなんだ?中性的な顔立ちのせいか、あまり男に見えない。もしかしたら杞憂かもしれない。それよりも俺はまず耳を塞ぐことにしよう。うるさくなるのは目に見えてわかる。まったく眠いというのに叫ばないでくれ。珍しいと思うが俺や一夏、シャルルだってここにいる全員と同じ人間だからな
「朝から煩いぞ!」
遅れてやってきた織斑先生に叱られ静かになる
「デュノアの紹介は終わったな。次はボーデヴィッヒだ」
「分かりました教官」
「教官では無い。織斑先生だ」
あの銀髪は織斑先生の事を教官と呼んだ。どうせIS関連で教鞭をとってこういう関係になったのだろう。あの眼帯は怪我でもしたのか?
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
『・・・』
ほぼ一夏の自己紹介と同じだった。名前だけ言って終わらせるのはどうかと思う。せめて出身国とかいったらどうだ?
「あ、あの・・・以上ですか?」
「以上だ」
異常だろ。そう思ったが口には出さないでおく。面倒事になるかもしれんし
「!貴様が」
ラウラが一夏に近づくとパチンッ!と平手打ちしてそんな音を出していた。初対面で何してんだか
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」
「いきなり何しやがる!」
「ふん」
ラウラは指定されているであろう席に向かう。本当にこれからも面倒なことになりそうな予感をヒシヒシと感じさせやがって
「ではSHRを終了する。各人はすぐに着替えて、第2グラウンドに集合。今日は2組と合同でIS模擬戦闘を行う。では解散。あと織斑と鏡野はデュノアの面倒を見るように」
これぐらいはしなきゃなんねぇか。相手はなんだかんだで転校初日の奴だしな
「さっさと行くか。あいつらと行動すると面倒事しかないが」
毎回のように一夏を追いかける女子がわんさかといる。ましてや今回は新たにもう一人追加されたから本当に酷いことになるんだろうよ。教室を出ると既に騒がしくなりつつあるのが聞こえてくる
「急いでいくぞ七実にシャルル!」
「へ?な、なんで?」
「面倒事に巻き込まれたくなければ走れ。でなければ遅刻確定だ」
先行して走っていく一夏の後を追うが別に俺が急ぐ必要なんてないだろ。俺に構う奴なんて限られているからなそう思い俺は歩くことにした。先を行く2人を追う女生徒は、なぜか狩りを行う狼と得物になった鹿のように思えて仕方ない。何事も無く最短距離で更衣室に到着するがほぼ同タイミングで到着した
「ズルいぞ七実!1人だけ楽しやがって!」
「はいはい、悪かった悪かった」
「その返答は悪いって思ってないよね?」
当たり前だ。立場を利用したまでに過ぎない。だからなんだとしか言えない。とにかく俺は更衣室に入りさっさと制服を脱ぎ適当なロッカーに入れた。学校側から配布されたISスーツというISを使用する際に最も適した服が露出する。既に着てきたから脱ぐだけで問題ない
「先に行ってるぞ」
「早っ!?」
授業に遅れて怒られんのは面倒だ。というよりもここから先はほぼ一直線でご丁寧に案内板まであるから別に問題無いと思い、先に行くことにした。何人かちらほら来ているが俺にはどうだっていい。目を瞑って待つことにしよう
「あら七実さん。随分と早いですわね?」
「まぁ」
セシリアから声を掛けられるが、今の俺はとても眠いからそっとしてくれるとありがたい。眠すぎて色々とヤバい。とりあえず目を開けることにした
「もうお身体はよろしいのですか?」
「いつの話だよ」
「あのISの襲撃の後ですわ。わたくしが1番最初に発見したのですがあの時のあり様ったら酷かったですわ」
あの後、俺が誰に見つけられたのかまでは聞かなかったがセシリアが見つけてくれたのか
「見て分かってるとは思うが生死を彷徨ったとだけ言っておく。助かった」
「いえいえ、当然の事をしたまでですわ。でもISの方は・・・」
「あれを直で食らって生きてるだけでも十分だ。死ぬよりはマシだ」
山田先生も言っていたが死ななかったことが奇跡だ。十分に死ぬ可能性もあったはずだ。だがこうして死ぬこと無くこうして生きている
「そうですわね」
「久しぶりじゃない七実」
今度は鈴と円華か
「あんた、箒を助けるために相当無茶したみたいね」
「お前ら程じゃない。あれを相手にしてたんだろ?」
「あたしたちの方は何とかなってたけど・・・あれがあったじゃない?あの時に一夏に凄いことが起きてそれで助かったようなものよ」
やっぱり箒が起点となっていい意味でも悪い意味でもああなったのか。そのせいで俺は死にかけたがな。別に恨んでも問題は無いよな?
「貴様ら整列しろ!これから授業を執り行う・・・おい鏡野、織斑兄とデュノアはどうした」
「まだ更衣室から向かってる途中だと」
あの時点ではまだ着替えをしてたはずだがそこまで時間が掛かるものではない。すぐに来るだろう
「遅いぞ!」
ようやく到着した2人は織斑先生の出席簿チョップを食らっていた。恨めしい目で見られたが直線距離で走れば1分程度で着くというのに遅れた方が悪い。置いていった俺も同罪か?
「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」
『はい!』
気合を入れているようで結構だがどうもやる気になれん。というのもまだ夏では無いにしろ、晴天である。日が差し、直射日光が酷い。徐々に体力を奪われつつある
「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。凰にオルコットは前に出ろ」
「「はい!」」
2人は前に出る。専用機持ちの2人であれば実演に向いているだろう。見ている方も参考になるやもしれん
「ふふん・・・ここはやっぱりあたしの出番よね!」
「イギリス代表候補生の実力、とくとご覧あれ!」
「意気込んでいるようで悪いが今回の相手は・・・」
「ああああーっ!ど、どいてください~っ!」
上空から1機のISが降ってくる。しかも、生徒に向かって落ちてくる。てか山田先生じゃないですかーやだー。だが完全に落ちきる前に姿勢制動が出来たようで空中で静止した
「何をやってるんだ山田君」
「かっこつけようと・・・すみません」
「はぁ・・・2人が戦うのは山田先生だ」
2対1での対戦のようだが先生の実力はどれ程なのだろう?教員と名乗るからにはそれ相応の実力なのだろうか
「え?あの、2対1で・・・?」
「いや、さすがにそれは・・・」
「安心しろ。今のお前たちならすぐ負けるさ」
いくらなんでも挑発し過ぎだと思う。鈴とセシリアは専用機を纏い上空へと向かっていった。織斑先生曰くすぐ負けるということはどういうことだ?力に関しては相応にあるはずだから、そう易々とは負けはしないと思う
「では始め!・・・さて、今の間に山田先生の使用しているISについて、デュノア説明してみせろ」
「あっ、はい」
機体名、ラファール・リヴァイヴ。打鉄のコンセプトは耐久を重視したものであるのに対してラファール・リヴァイヴは安定性を重視したIS。初期の三世代機にも劣らない性能で後付武装が豊富。使用者を選ばないことから、世界中でも数多くのシェア数が多くシャルルの実家が運営しているデュノア社が開発したIS、とのことらしい。途中で説明を打ち切られたが戦闘が終わったらしい。本当に鈴とセシリアが負けたようだ。シャルルが説明している間、わずか5分。その間で負けてしまったらしい
「くっ、うう・・・まさかこのわたくしが・・・」
「あ、あんたねぇ・・・何面白いように回避先読まれてんのよ・・・」
「り、鈴さんこそ!無駄にバカスカ衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」
どっちも落とされてるから五十歩百歩、団栗の背比べという感じだ
「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後、敬意をもって接するように」
普通、先生方には敬意をもって接するのは当たり前だと思うのは置いておこう。あんなにおっとりしている山田先生があんな実力があるとは思わなかった。そりゃ、IS学園の生徒というだけあるからにはそれ相応なのだろうけどそれにしたって相手は代表候補生2人だ。強いとしか言えない
「専用機持ちは7人だな。1人は修復待ちで専用機は無いが教えるぐらいはできるだろう。七人グループを作り実習を行う。各グループのリーダーは専用機持ちがやることいいな?では別れろ」
織斑先生の指示通りに別れたが一夏とシャルルに集中してしまっている。人気だから仕方ないだろうな
「ななみん~来たよ~」
「本音・・・と、後ろの奴らは?」
多分本音の友人なのだろう。友人を作ることに関しては本当に凄いと思う
「相川清香!ハンドボール部!趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ!」
「お、おう・・・」
名前を知らなかったものだから教えてくれる分には嬉しいのだが詳細までは言わなくてもいい気がする
「いや~本音に誘われちゃってね。前々から気になってたけど、近寄りがたい雰囲気を醸し出してて・・・ここにいる人はそういう人だよ!」
「あっそ」
誰もが嫌っているというわけではなさそうだ。特段、俺が気にすることでも無いだろうが関係なんていつ崩壊するか分からない。もし友好的になるんだとしたら、俺は崩壊させないようにするだろう。これ以上、惨めな気持ちにさせられるのもゴメンだしな。別にどう捉えようが他人の知ったことではない
「んじゃ、やるぞ。出席番号順にやるから並べ」
この後は指示通りに授業内容をこなしていった。多少のミスはあったものの平穏に終わった。一夏の方でISを立たせたまま解除した奴がいて騒ぎが起きたらしい。俺の方で起きようものなら対処のしようがないからしないように注意しておいた。本当に何事も無く本日の午前の授業が終わっていった
今回もお読みいただきありがとうございます
これから、どうするかはもう決めておりますがどうなるんでしょうね?