後日談というよりも今回の出来事のオチ。あの黒いISの正体は判明せずということだ。いや話に来たのが織斑先生だということで反応が分からなかったと言った方がいいだろう。一夏は気絶したが全身に軽い打撲で済んだそうだ。あの時馬鹿をしでかした箒は1か月特別指導室という場所に入れられることになった。次のイベントである学年別トーナメント戦には出られないということ。本来だったら退学沙汰なのだが、学園上層部が篠ノ之箒の姉でありISの開発者篠ノ之束を恐れてそうしたということだそうだ。ちなみに俺というと棺桶に入れられている。いやこの言い方では語弊がある。本来は医療用カプセルなのだがろくに動けないし顔の部分でしか外を確認できない。だから俺は棺桶と呼ぶことにした。今はこの中で他人との接触を断絶されてしまい外がどういう風になっているかなど分からない
『七実君起きてますか?』
「一応起きてます」
目覚めてから既に3日経過している。朝と放課後の2回は必ず通信越しで山田先生か織斑先生が来てくれて少々話をするのだがそれ以外することもできることも無い。休みと聞けば普通は嬉しいものだがこれは流石に論外だ
『明日になったら出れますけど、二度と他の人を心配させるようなことはしちゃダメですよ!』
「いや・・・あの時はそうしなきゃいけなかったんで」
仮にあの時俺が庇っていなければどうなっていたか。あそこでのびていた奴と箒はもしかしたら死んでいたかもしれない
『確かに七実君がしたことは正しいかもしれません。ですがISはほとんど融解して七実君はついこの前までは生死を彷徨ってたんですよ!』
「あっはい」
『それどころか身体中は火傷したかのような酷いあり様でところどころ炭化していました!こうして生きているだけでも奇跡みたいな状況だったんです!』
そんなことになっていたのか。でも今の俺は見えなくとも全感覚は働くし一応は動く。五体満足で問題は無いのだが実際問題そうはいかないのだろう
『織斑先生も心配してましたし、何よりも本音さんや簪さんも心配してたんですよ!』
「・・・」
俺は何も言うことができなかった。簪や本音に心配をかけてしまったのか。だとしたら楯無や虚もそうだろう。なのだとしたら本当に申し訳ないことをした・・・のか?
『人を助けるのは良いですが心配を掛けちゃいけませんよ?』
「・・・」
『それじゃあ約束ですよ?私は仕事があるので失礼しますね。明日の朝には出れますのでその時、またきますね』
そういうと山田先生の声が聞こえなくなる。約束という形でなってしまったが今回と似たようなケースができてしまった場合、はたしてそれを守れるのだろうか。その時になってみないと分からないが多分無理だろう。こんな事態になるのであれば普通は無茶しなければならない。それも死ぬレベルでだ。当然無理としか言えない
「本当にどうしたものか」
俺は考えるのも面倒になり眠たくも無いが寝ることにした。ようやく明日にはここを出られるのだ。退屈で退屈で暇なこの棺桶とおさらばだ
翌日、山田先生の言う通りに棺桶から出された。既に普通に歩けるので松葉杖は必要ないのだが念のためと言うことで持たされることになった。とりあえず俺は体を捻ったり背伸びなどをするのだが何日も動かずあの姿勢のままだったため骨の関節からなる音が酷かった。まるで骨が折れたかのような音がした
「本当にすまなかった鏡野。私がお前に見回りをするように言わなければこんなことにはならずに済んだものを」
「それは結果論で、もしあの指示がなかったら中継室にいたあいつや他の2人は死んでた。結果だけを見たらこれが正解です。誰も死なずに済んだという結果がでましたし」
そう結果が全てなんだ。どうあれ誰も死なずに生還できているという最善の結果が得られた。采配としてはこれは間違いではない
「だからダメですよ!いくら結果だけ良くても七実君は大変だったんですから!」
「ならあの3人は死んでました。どちらの結末にも大変な目に遭う奴が必ずいます。それが俺かあの3人だったかの違いしかない」
「もうこの話はやめだ。さっさと帰るぞ」
山田先生には悪いと思うけどこれが本当の事だ。いくら涙目になろうと罪悪感は湧くが取捨選択は必要だ。今回の事も然り。山田先生の考えていることも分かるけど。俺は織斑先生の後に続きこの部屋から出ていくのだがどうも保健室の地下だったようだ。保健室から出ると2人は朝っぱらなのにも関わらず仕事があるということで別れ俺は寮に戻ることにした。今日は土曜ということでほぼ1週間まるまる無駄にしたかのような感覚になりながら誰とも会わずに自室の前に到着した。起きているか分からないがノックをする。だがまだ寝ているのだろう、返事は無い
「休日だから仕方ないか」
鍵を使い部屋の中に入るがまだ寝ている様子だった。腹も減ったし簡単な朝食を作るとしよう。ハムエッグにトースト、カフェオレでいいだろう。簡単に作れる割には十分な量だからいい。作っているだが簪がゆっくりと起き上がるのが見える
「おはよう」
「あ、おはよう七実・・・七実!?」
ベッドの横に置いてあるサイドテーブルに置いてある眼鏡をかけこちらを凝視してくる
「本当に七実だよね?」
「更識簪の幼馴染こと旧名佐野七実、現名鏡野七実だ」
「うん、七実だ」
何を基準にしたかは知らんが俺と認識したようだ
「簡単な朝食を作ってるから適当に座ってろ」
「あ、うん。てか料理出来たんだ」
「一応な。起きるかどうかわからんが本音も起こしてくれ」
多分起きないだろうが一応な。省いたとか言われてもあれだし。俺は出来たものをテーブルの上に並べて自分の席に座った
「本音起きて」
「むえ~今日は土曜だよー?まだ寝かせて~」
「なら七実が作った朝食はいらない?」
「ななみん~・・・ほえ!?」
勢いよく起きる本音は俺を見るなり立ち上がり俺の顔や腕など全身くまなく触り始める
「ななみん・・・ななみんだ~!」
「お、おう」
「おかえりななみん!」
本音は椅子に座った俺優しく抱きしめてくれた。それなら俺はこういうべきだろう
「ただいま簪に本音」
「おかえり七実」
今の俺の帰るべき場所はここなのだろう。母さんや親父を除けばこんなことを言うのは初めてだ。素直に嬉しいのだ。帰ってこれる場所があるというのは
「とりあえず冷めない内に食べるぞ」
「「うん!」」
俺が作った質素な朝食。だが2人は嬉しそうに食べてくれる。あの時はこんな風に食べてもらえることは無かった。俺も一口食べるが特に普通としか感じられなかった。だが美味いのであればこれからもこいつらの為に作ろうと思う
「そういえば七実、ずっとどこにいたの?面会拒絶って言われてたけど」
「保健室だ。まぁ面会拒絶になるくらいだからそれ相応の場所だ」
見せられないというのが本当の事だろう。何せ俺はつい4日前まで死にかけていたほどだそうだ。火傷もひどく見せられたものではない。今ではもうなんとも無いが
「そう、でも七実が無事でよかった」
「ん~」
本音はだいたいどういうことになっていたかが分かっていたのだろう。視線が泳いでいる
「何がともあれこうして俺は生きている」
「でも、もう無茶はしないでね。私、七実がいなくなったら悲しい」
「・・・善処する」
「それしないやつだよ?」
できるかどうかより起きるか否かがまず分からんからどうしようも無いというのが現実だ
「わかったわかった。無茶はしない」
無理無謀をしないとは言っていない
「無理無謀もダメだよ~」
今度は本音に封じられたか。でも仕方ないことだろう誰かがやらなければいけないことだったんだから。でなければもっと悲惨なことになっていたのだから
「・・・やれるだけな」
「ダメ、絶対」
前はあんなにもオドオドしていた簪は本当に強くなったと思う。我を通すその意志は本当に凄いと思う
「緊急時を除くならな。さすがに今回みたいな人命が関わっている場合は見逃してくれ」
「・・・わかった。絶対だよ。破ったら・・・分かってる?」
「脅迫まがいはやめろ。意外に効く」
「それぐらい心配したの、もうやめてね」
「ああ」
多分俺はどうすることもできないんだろう。仕方ないことだと割り切ることにした。朝食を食べ終わるなり片付けに入ろうとしたが楯無と虚がやってきてその後も大変なことになりました。厭らしい意味では無いからな。楯無と虚の朝食を作りアーンしろだの甘えさせろだのと大変だった。主に楯無がな、虚はそんなことはしなかったが小一時間程説教された程度で済んだ。休んで手に入れた体力が全て持っていかれた感じになるまで甘えさせることにした。特段悪いことをしたわけでは無いはずなのだがどうしてこうなったし
???サイド
あの2人目の男性IS操縦者が気に食わなかった。殺してしまおうと思ってあの無人機を突入させたがまさか箒ちゃんに攻撃するとは思わなかった。でも形はどうあれ、あいつは箒ちゃんを身を挺して助けた。死んだかどうかは知らないけど少し興味がわいた。あいつのISコアにハッキングを掛けても逆にしてやられる。確かにISコアにはそれぞれ疑似人格が埋め込まれているがあいつだけは奇妙に感じた。ただ何かを教えないかのような反応。それも相まってか1度調べることにした。なんであのゴミがISを動かせるのかが気になって
今回もお読みいただきありがとうございます
無事1巻分終了です