元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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漸くあるいは・・・

翌日の放課後、特にやることが無くただ読書していた。今日は簪は4組の代表となっているらしく訓練をするらしく今日は空いていないらしい。本音も生徒会の仕事らしく帰りが遅いらしい。俺とは違ってあいつらは頑張っているんだな

 

「あ、いた。ねぇ七実」

 

「あ?」

 

一旦読書をやめ声がした方に顔を向けると円華がいた。その後ろには一夏と箒、セシリアの3人もいた。何やら気に食わないような表情を浮かべる箒。また何かあるのか?

 

「えっとね、頼み辛いんだけど1つお願いしてもいいかな?」

 

「なんだ」

 

「ISの事でちょっとお願いがあるの」

 

ISの事だったら円華、お前の方が詳しいだろう。いや、もしかしたら俺の専用機<M.M.>の事を言っているのだったら納得だ

 

「私達が一兄さんに教えてたんだけど、あんまり伸びなくてね。もしかしたら七実が教えてあげることが出来たらって思って」

 

「IS初心者に頼むことなのか?」

 

「この提案をしたのはわたくしです。IS初心者であろうと、イギリス代表候補生であるわたくしを倒したのは紛れもありません。それに変則的過ぎるISでしたら一夏さんの訓練に最適かと思ったまでです」

 

確かに事実であるが、それに一夏は賛同しているか。それとさっきからこっちを睨んできている箒を何とかしてくれ

 

「それで一夏はどうなんだ。セシリアの案に賛成しているのか?」

 

「俺は・・・」

 

煮え切らない返答が返ってくる。迷っているのかそれとも頼りたくないのか。どっちかは知らないがまだ何かが引っかかっているみたいだ

 

「すまんが一夏を借りていいか。少し話したいことがある」

 

「あ、俺?」

 

とりあえず教室を出てあいつを待つことにした。鈴にはああ言われたが守ることはできなかった。すまんな鈴

 

「な、なんだよ七実」

 

「来たか」

 

一夏が教室から出てくる。その後ろからは円華や箒、セシリアが覗いているのが見える。何かあったらどうなるか分かったものではないな。特に箒が

 

「そのなんだ、すまなかった」

 

「は?」

 

鈴に言われた事、それをこいつに伝えねばならない

 

「お前が勘違いしている原因が俺にあったようだ。そのことで謝らなければならん」

 

「勘違いってなんだよ。あれはお前が!」

 

「だから話を聞いてくれ。あの日、俺はセシリアに言われたことを言い返した。だがそれはあいつに何をしたのか分からせた後に許すつもりだった!だがお前に邪魔されセシリアにいいように仕向けられた」

 

セシリアがどんなに辛い目に遭おうが知らない。因果応報、自業自得なのだ

 

「じ、じゃあ俺が七実の事を・・・」

 

「確かにお前のしたことは俺からしたら最悪だ。だがお前にも何かの事情があってあんなことをしたんだろ?」

 

「ああそうだ。だけど、俺は七実に悪いことしちまった・・・」

 

握り拳を作り壁に叩きつける一夏。俺としては別に気にしてないのだが一夏は違うみたいだ。やれやれ困ったものだ

 

「1つ言っておくぞ。さっきの話は俺からの視点であってお前からの視点ではない。故にお前がどんな考えを持って俺に敵対した真意は知らない。でもあれはお前がやらなければいけないと思った、そうじゃないのか?」

 

「そうだけどよ。悪いことをしちまったんだ」

 

「はぁ・・・お前がどう考えていようが構わない。それが今回の事のようになろうとだ。だからお前が気に病むな、俺はもう気にしてない」

 

そう互いに最初から違っていた。考えが、行動が全て違っていた。あれだけ嫌な事を言われようが間違いを起こすのは普通だ。俺だってそうだった。鈴に言われてようやくわかったが間違いがよくわかった

 

「その、なんだ俺も悪く言ってごめん」

 

「だからもう気にしていない。それで一夏、セシリアの提案はどうする」

 

「俺からも頼む。虫が良いのは分かっているけどよろしく頼むよ」

 

どうやら、もうこのことで悩まなくて良さそうだ。鈴にも感謝しとくとしよう

 

「だそうだぞ覗いている3人」

 

「やっぱりバレてたよねー」

 

「その・・・本当に申し訳ございませんでしたわ」

 

「私はまだ信用したわけではない。だがこれからは普通にするとは思う」

 

円華、セシリア、箒の順でそう言ってくる。箒の発言に俺と円華は苦笑いを隠せなかった。あれで信用を獲得できないほどに嫌われているのだろう

 

「それで素人同然の俺は何をしたらいい?」

 

「七実が素人だったら、それに負けたセシリアはどうなの?」

 

「もうやめてくださいまし!」

 

その後、俺らは一夏にISでの戦闘を教えるために第1アリーナに行くことになった。その道中、俺は最後尾で歩いていたのだが円華が近づいてくる

 

「一兄さんが誤解してたみたいでごめんね。鈴からは話は聞いてたけどさ」

 

「なんだ聞いていたのか」

 

円華は前の奴らからは少し離れ小さな声で話しかけて来る。なんだ鈴から聞いていたのか。なら話は早くつくはずだ。本当に助かった鈴

 

「それにしても本当にセシリアの事を許したの?」

 

「1度だけな」

 

一夏を俺に差し向けたことはまた別だ。そのことは恨みこそするが関係には繋げない

 

「そうなんだ・・・七実は優しいね」

 

「アホか。俺が優しかったらこんなことにならずに、もっと良好な関係を築けていただろ」

 

もし俺がこんな解決をしなかったらの話をすると、俺と一夏は()()会った時から仲良くできていただろう。それは円華にも言えることだ。しかしどうだろう。セシリアの事は分からない、こんな状態にあった、置かれたから出来た事でもあるかもしれない。結果的にはセシリアは大事にならずに済んだとも言える

 

「それもそっか。でも私から見て七実は優しいと思うよ」

 

「あっそ」

 

何を思って優しいとするのかはあえて聞かない。聞いてしまえば俺の中にある何かが崩れてしまいそうで嫌になるからだ

 

 

 

円華サイド

 

鈴から話を聞いていた。何が悪くて互いにどう悪いのか聞いていた私は、できればこれで解決してくれると願っていた。最初はセシリアの提案で七実に手伝ってもらおうと思ったが、今の関係では難しいのが目に見えていた。今回はうまくいったようで一安心出来た。これで仲良くできると思うと嬉しくなるが、まだ問題は山積みだ。昨日、鈴と一兄さんの事でいつもの朴念神を発動してしまったらしい。七実の事が解決したのはいいけど今度は鈴の事か。セシリアは無いとして、一兄さんの事が好きなのは箒と鈴に2人だけ。正直なところ私は鈴とくっついて欲しいと思っている。箒はちょっと暴力的なところが目立つからご遠慮願いたいところだ。

 

「さてやろうぜ!」

 

予約していた第1アリーナに到着するなり、一兄さんは専用機IS<白式>を展開し空中に飛びあがる。こういう時は年相応だなと思う

 

「それでお前らはどんな風に教えていた。参考程度に教えて欲しいのだが」

 

「うんいいよ」

 

とても酷いものだけどね。箒の教え方は何というか感覚的な教え方。シュパッ、ドーン!みたいな感じだ。これに七実は「お前はどこの赤王だ?コラボするのか?」などと訳の分からないことを言っていた。次にセシリアは理論立てて説明をするのだが、これで分かったら初心者ではなく初神者とでも言えるだろう。これには七実もコメントはできなかった

 

「どうですか、この完璧なアドバイスは!」

 

「おーい一夏。正直に言えよ。このアドバイスで何か分かったか?」

 

「何を伝えようかは分かったけど、詳細は・・・ごめん」

 

「だそうだセシリア。その説明で伝わるのは国家代表か代表候補生ぐらいだ。相手は初心者だ」

 

一応、私が思ったことは感じ取ったのだろう。本当の事を投げつける七実は鬼畜だと思う。でも何が悪いのかも伝えている辺りまだ良心的だ

 

「ですがわたくしはこれで教わりましたよ?」

 

「なら理解の差だ。本格的にISに触る様になって2,3週間程度で、今まで触れることの無かった知識を原理から教えられて覚えられるわけないだろ」

 

「私の説明の方が伝わりやすいな」

 

「箒はあれだ。論外だ」

 

「なぜだ!あれで伝わっただろう一夏!」

 

一兄さんに話を振るが目を逸らされこの場が沈黙に包まれる。ドンマイ箒

 

「感覚で伝わるなら我流でも覚えられるはずだ。なんとなく何を言いたいのかは分かるが」

 

「あれで分かったのかよ!?」

 

私も理論立てて説明されるより感覚交じりで教えられた方が分かりやすい気がする。どうしてこうなるかの説明ぐらいは欲しいところだ

 

「それで円華はどうやって一夏に教えていた?」

 

「んー実践形式が気楽だと思ってやってた。ある程度やったら何が悪かったか話あったりして」

 

「もうそれしかないだろ」

 

「でもね・・・」

 

「私は一夏に剣を教えているのだ!それを邪魔されているのが私だ!」

 

「わたくしだって一夏さんに射撃の何たるかをお教えしているのですわ!」

 

こうやって一悶着あるのがいつもだ。こうやって箒とセシリアが言い争いを始めて一兄さんに訓練をする時間が減っていく。七実は私の肩に手を置き、大きく溜息をついていた。多分、同情してくれているのだろう

 

「大変だな円華」

 

「なんかもう慣れた。こうなるから七実の手を借りようとしたわけ」

 

「面倒なことをしてくれるな。ちなみに円華の戦い方はどんな感じだ。遠中近のどれが得意だ?」

 

「中近かな。私のISって少し変だから」

 

私の専用機IS<黒騎士>は、あの篠ノ之束が手を加えたということが教えられている。しかし構造やシステムが変わったわけでは無いらしい

 

「俺のよりは変では無いと思う。時の24、来い<Mirror Me>」

 

七実はISを展開する。全身銀色でスリムな形状をしているISだった

 

「この状態だと武器も無く貧弱極まりない」

 

「え、武器ないの!?」

 

()()()()ではな。機体名<白式>、搭乗者織斑一夏。起動しろMirror is Mine(鏡は私の物)

 

七実のISが突然、眩い光を発していく。次に目を開けた時には七実のISが形を変え<白式>へと変わっていた

 

「これでようやく戦えるようになったわけだ。さて一夏やるか?」

 

「おう!」

 

「ち、ちょっと待って!?どうして七実のISが一兄さんのISになってるの!」

 

「ヒントは俺は鏡。そして全てを映し出す」

 

何を言っているかわからない。でもあのISはおかしい。他人のISを模倣できるISなんて開発不可能と言われている。それどころかあれを展開装甲だと仮定しても4世代機となる。卓上の空論と言われている物をやすやすと使う七実は一体何者なんだろう?それにあのISの制作者及び開発したところはどこだ?考えることが増え訓練どころではなくなったが、その間は七実がキッチリ教えていた。ISの初心者のはずだよね?

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

ようやくエンジンがかかってまいりました!(相変わらずの駄作ですが)

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