元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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すみませんがこちらを見てください

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訪れ変わる兆し

あれから2週間経ちあの事は闇に葬られた。しかしあの事があったせいで俺の事をよく思っている奴は少なくなっただろう。しかしどうでもいい。真実を知ってくれている奴はちゃんといるからな。そんな俺は松葉杖を使えば歩けるようになっていた。虚は素直に喜んでくれたが簪や楯無、本音は喜ぶも少し残念そうにしていた。どうやら車椅子を押すのが楽しかったようだ。怪我人で遊ぶな。今は放課後で簪と一緒に寮に帰る途中だ。本音は意外かもしれんが生徒会の仕事があるらしい。あんなにお惚けな感じな奴だがあれはあれ、これはこれらしくちゃんと仕事をしている・・・といいんだが

 

「そういえば部活に入らないの?」

 

「入れると思うか?」

 

どこに行ってもいい顔をされず、ゴミのように思われている俺は既にどうしようもないのだ。故に部活に入るなど面倒極まりない

 

「そういう簪は入ったのか?」

 

「私は適当なところに入って幽霊部員になってるから」

 

「そうか」

 

大して俺と変わりないことが分かる。もし俺も部活に入るようであればそうなるだろう

 

「ちょっといい?」

 

「あ?」

 

簪以外の女性の声が後ろから掛けられた。振り向くとそこには手にミニマップを持ちボストンバックを肩に下げたツインテールの少女がいた

 

「あんたが2人目の男性IS操縦者の鏡野七実ね」

 

「学園の嫌われ者が1番最初に付くがな」

 

「そこらへんは気にしないから。誰かが何を言おうがそこに嘘が混じってたら信用できないもの」

 

名前は知らんがこのツインテはある程度は信用に置けるかもしれん。自分の目で見て何が本当か何が嘘かを見抜こうとするとは一夏やセシリアとは大違いだ

 

「アタシは凰鈴音、鈴でいいわ。これでも中国の代表候補生よ」

 

「そうか」

 

「ところでさ、正面玄関ってどこか知らない?ここって広すぎて分からなくなっちゃったのよ」

 

手に持っていたミニマップを借りどういう順路で行けばいいのかを教えてやると走ってそっちの方へと行ってしまった。あいつが今後どういう風に関わっていくかは知らんが俺には関係の無いことだろう

 

「慌ただしい奴だったな」

 

「そうだね。帰ろっか」

 

俺たちはそのまま寮に帰ることにした。宿題も何も無いから今日は簪と一緒にアニメを見ることになったがたまに見る分なら面白いとは思う。勧善懲悪のアニメが好きなようでよく見るのだがこういうものに憧れるものなのだろうか?

 

 

 

翌日、いつもは6時半頃に起きるのだが今日は珍しく寝坊し朝食を適当に済ませ教室へと向かった。簪と本音も一緒に部屋を出たが健康体である2人は俺よりも歩くスピードは早かった。先に行った2人を追いかけるように校舎内に入り教室へと向かった。先生が職員室を出たのが見え、教室に入ろうとするが昨日出会った鈴が教室の前の扉で邪魔され通れなかった

 

「すまんが退いてくれ」

 

「ん?七実じゃない。おはよう」

 

「ああ、おはよう。それとそろそろ織斑先生が来るぞ」

 

「げぇ、千冬さん苦手なのよね。教えてくれてありがと。一夏、逃げるんじゃないわよ!」

 

どうやら鈴は一夏の知り合いらしい。鈴が退き教室に入るが一夏にはいい顔はされない。あの一件が許せないようでいつもこんな感じになっている。対して円華は手を合わせてこちらに謝っているのが見える。別に円華が悪いわけではないから気にしていない。自分の席に座るのと丁度同じぐらいに織斑先生が教室内に入ってくる

 

「貴様ら席に着け。SHRを始めるぞ」

 

今日もこうして1日が始まる

 

 

 

午前の授業が終わり昼食時だ。いつもは簪が弁当を作ってくれるのだが今日は寝坊してしまったため食堂で昼を取ることになった。本音は生徒会の方で呼ばれたため簪と2人でだ。食堂に入りチケットを購入して配膳してもらうのだがこの食堂のチケットは格安なのに量はそれなりにあるということで大変重宝されているらしい。俺と簪は人混みに入るなら別な場所で食べたいのだが今日は仕方なく食堂を利用している。俺は天ぷらうどんを注文し適当なテーブル席に着き簪を待つことにした

 

「七実じゃない」

 

「鈴か」

 

奥の方から鈴がラーメンを片手に持ってやってくる。器用に持っているが溢さんでくれよ

 

「どこも空いてないから同席してもいい?」

 

「周りは・・・空いていないか。こっちも待ち人がいるんでそっちに聞いてくれ」

 

丁度良く簪が来て鈴が同席することを教えると許可が出た。どうせ鈴だけだろうと思い食べ始めるが一夏や円華、箒、セシリアの4人がやってくるのが見え簪の箸が止まる

 

「こっちよ一夏!」

 

「おうここか・・・って七実」

 

一夏と一緒にいた箒は睨みを効かせて俺を見てくる。そして簪は暗い顔になり俯いてしまった。簪は一夏の事が嫌いである。専用機の事もあるが俺に必要のない敵意を向けているからだそうだ。鈴やあの4人には見えないところで握り拳を作り震えていた

 

「落ち着け簪」

 

「・・・わかった」

 

俺はそっと左側に座っていた簪の握り拳に手を置いて簪にしか聞こえないような声でそう言った。例え嫌いだろうと同じ場所で生活している以上、こういう場面も出てくる

 

「他に空いてる場所は無かったのか?」

 

「探したけどなかったわよ。え、何?一夏と七実って仲悪かったの?」

 

「全て悪いのはそっちの方だ。一夏には何の問題は無い」

 

箒がそういうが真実を知っている奴がいる。いの一番に気まずくなったのはこういう風になった原因でもあるセシリア自身だった。本来だったら友好的な関係を築けたかもしれんがぶち壊す原因となったためだ

 

「そう、でも飯を食べる時ぐらいは我慢しなさいよ。いちいち関係を気にしてたらキリないわよ」

 

「・・・それもそうか」

 

非常に正しいことを言うな。呉越同舟という諺があるように、こうして仲が悪い奴と一緒にならなければいけないことがある

 

「俺はお前の事を許してないからな」

 

「勝手にしろ」

 

一夏には一夏のやり方、思考、行動があるのだろうが俺だって同じだ。ただ真実を投げつけ考えさせどうするかを信条としている俺とは相性は悪いのだろうな。距離を置いて一夏は対角線上に座るが正面側には箒と一夏が座り、簪の隣には円華、セシリアの順で座る。円華は深い溜息をつきながら座った。ここの空気はとても悪く一触即発という雰囲気が漂っていた。俺はちゃんと食べたが簪は少し食べてそのままだった。アイコンタクトで簪にここを出るか聞いてみると既に耐えられないようで急いで出ることにした。元いた席では箒があーだこーだ言っているのが聞こえるがどうでもいい

 

「よく耐えたな」

 

「七実こそ」

 

「俺はあの日以降敵対されているから別に気にしてない」

 

例え本当の兄だというのが分かっていたとしても一夏が決めたのなら俺はどうしようもできない。俺は悪くないはずだが悪いと認定し食って掛かる一夏には身内に頑張ってもらうことにしよう

 

「気分転換に外に行かない?」

 

「ああ」

 

簪の様子を見るにいろいろとくるものがあったみたいで俺たちは屋上を目指すことにした。俺としてはもう少し仲良くやっていきたいがどうしたらいいのかさっぱり分からん

 

 

 

円華サイド

 

七実と簪が食堂から出ていったあとに、箒はあることないこと言うが本当は違う。全部は分からないけど断片的には分かる。あの事で七実が責められる理由は無い。むしろ一兄さんとセシリアが責められることを七実は全部引き受けている

 

「セシリア分かってる?」

 

「ええ、分かっていますわ。鏡野さんと一夏さんがどうしてこうなったかは」

 

セシリアは俯いてそう言った。もしあの時セシリアが七実にあんなことを言わずにと思うが過去には戻れない。してしまったことに責任を感じその重責はセシリアを襲っているだろうけど、一番重責を背負わされているのは七実自身だ。その事を一兄さんにも話したが意味がなかった。本当にどうしたらいいんだろう

 

「なーに、しょぼくれた顔してんのよ円華」

 

「そんな顔してた?」

 

「辛気臭い顔してたわよ。なんか悩み事?」

 

「いや、大丈夫だから」

 

指摘されるまで分からなかったけどそんな表情になってたんだ私。でもどうしたらいいか分からない

 

「円華、本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫だって一兄さん」

 

他人だからと言えば割り切ることもできると思うけど、一兄さんが関わっている以上禍根を残したくはない。一回ちー姉ちゃんに相談してみようかな?

 

「それにしても一夏や箒の話を聞いていれば七実って相当悪者じゃない」

 

「セシリアに酷いことをしようとしたしな」

 

「いいんです一夏さん、あれはわたくしに責任がありますの」

 

「いやあれはどう見ても七実が悪いだろ」

 

もし七実がこの会話を聞いていたらどんな風に思うだろうか。例えば完全に離れることもあるだろうしそこまでいかなくとも今後は友好的な関係を築けなくなってしまう。そんな風になってほしくない。彼が犯罪者の息子ではなく犯罪者の息子であり被害者であることを知っている私が変えなければならない

 

「なんとなくだけど話が見えた気がするわね」

 

「やはり鏡野が悪いのだ。この事実は変わらん」

 

「いえ、ですから鏡野さんは悪くないんですの。それにあの方はわたくしがあんなことを言ったのにも関わらず許してくださいました」

 

許した?あんな酷いことを言われたのに許したの?だとしたら本当に七実はなんであんなにも責められなきゃいけないの?

 

「ですから一夏さん。どうか鏡野さんのことを許して差し上げてくださいませんか?」

 

「・・・ごめんセシリア。それは無理だ。目の前であんなことをした奴をそう簡単に許せない」

 

「そう・・・ですか」

 

一度七実から話を聞いてみるのもありだ。自分なりにまとめるために何が本当で何が嘘なのか見極めて真実を知る必要がある。チラッと全員の顔を見たけど多分鈴も同じことを考えているはず

 

「そろそろ次の授業が始まっちゃう時間だから出ないか?」

 

「ん?そうね」

 

私達は食堂を出ることにした。セシリアは思うところがあってずっと俯いたままだった。対して一兄さんと箒はいつも通りにしていた

 

「ねぇ円華、あんたも薄々気付いてんじゃないの?」

 

「何が?」

 

「この話はどこかでおかしくなっているってこと」

 

鈴は私に近くに来て小さな声で話しかけて来る。多分だけど一兄さんの正義感が強くでてこの話をおかしくしているのだとは思う。でもいくつか疑問点が上がる。本音から聞いた話だと代表決定戦では何かを話していたらしいがその時の内容や彼の考え方。そしてどうしてセシリアを許したのかだ

 

「私も思った。近いうちに聞きに行こうと思う」

 

「なら今日聞きに行かない?夕方ぐらいまでは暇なのよ」

 

「ごめん、こっちは一兄さんにISの訓練をつけなきゃいけないの」

 

「なら私が聞きに行くわ。そのことをそのまま教えるから」

 

「ありがと鈴」

 

「いいのよ。変わった一夏を元に戻すのは私たちの役目よ」

 

鈴は小さい頃に中国から転校してきて虐めを受けた。けどそこを一兄さんに助けられ、一目惚れしたそうだけど今の一兄さんを見て驚いたと思う。素の部分は変わっていないにこうまで嫌うのは私も初めて見たからそうなんだと思う

 

「分かってる」

 

「おーい円華に鈴。授業に遅れるぞー」

 

「はいはい。今行くわよ!」

 

頼むよ小さな姉御(凰鈴音)

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

鈴ちゃんが出せましたが・・・大丈夫ですかね?

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