元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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クリスマス企画深夜0時投稿です!

それではベリークルシミマース


丸くは収まらない

保健室で医療用ナノマシンを注入され痛みは引いたが痣は消えずに残っている。これは予想なのだろうが俺のIS<M.M.>が攻撃を受ければそのまま俺の身体にも同じように傷跡が残ると考えると使用するのにも躊躇われる。もしSEが切れたらどうなるかとか爆発に巻き込まれたら、銃器で撃たれたらと考えるにも悍ましい内容だが、いずれは経験せざるを得ない物だと思う

 

「七実お疲れ様」

 

「かっこよかったよ~!」

 

既に夜となっていて自室に戻っていた俺は簪と本音と一緒にゆっくりとしていた。今日の事を思い出そうにも悪者扱いされたことしか思い浮かばない。元凶は全部俺ではないのに、どうしてここまでの扱いを受けねばならんのだろうか

 

「それにしても今日のあれはなんだったの?一夏が急に襲い掛かって来たけど」

 

「どうせ俺を悪者と思ってやって来たんだろ。話さえ遮って重要なところを言いそびれた」

 

あの時、俺はセシリアに対してあの事は水に流そうと言おうとした。だがセシリアの口車に乗せられた一夏によって遮られてしまった

 

「あいつから見たら俺は悪に見えただろうな。何が本当の悪かも知らずに」

 

「大変だったね七実」

 

「まぁな。それよりもあの後はどうなった?2人をボコしてさっさと出ていったから知らんのだが」

 

簪と本音曰く、あの後はお流れになったらしい。セシリアの機体は俺がボロボロにしたせいで修復に時間が2,3日必要らしい。一夏は気絶してしまい既に起きているが念のために安静にする必要があるらしい。円華は戦える相手がいなくなったため不戦勝という扱いになり、さらに代表を辞退するみたいだ。一夏のIS技術を鍛えるために辞退したそうだが、なぜそこまでしようとするのかは不明だ

 

「そんな風に落ち着いたのか」

 

「そうみたいだよ~」

 

「あのイギリス代表候補生を倒すのは凄かった。射撃の腕は代表候補生の中じゃ上位に食い込む程だし」

 

「機体の性能差だろ」

 

そう俺が写し取った<ブルー・ティアーズ>はスペック通りの性能が出せるが普通はそんな風にはいかないらしい。せいぜい出せてもスペックの70%ぐらいだそうだ

 

「同じ形状の機体なのにスペック差とは、これ如何に」

 

「うっせ」

 

こんな風に会話をしている時が一番気楽で楽しいと思う。誰にも邪魔されずに会話ができる。前世ではこんなことしようものなら鞭打ちされたからな。そんなことを思っていると扉をノックする音が聞こえてくる。本音が確認しに行き扉を開けるとそこにはセシリアがいた

 

「鏡野さんに謝罪しに参りました」

 

自分で何をしたのか、何を言ったのかがようやくわかったようだ。しかし、やってしまったことは消せやしない。ただ許しを乞い全てが解決するなんてことは無い。セシリアはベットに腰かけている俺の目の前まで来て深く頭を下げた

 

「先日の事、申し訳ございませんでした!わたくしがもう何を言っても変わらないとは思いますがせめて、この謝罪だけは受け取っては貰えませんでしょうか?」

 

「随分と虫が良いなセシリア・オルコット。それに今日の事はどうした。お前が原因でこうなったにも関わらず無関係の一夏を巻き込み、その上で俺に敵対するように仕向けた。お前が俺の事をどう思おうが自由だが、そこに他人を巻き込むな。俺も他人も迷惑だ」

 

「そのことも申し訳ございませんでしたわ!」

 

謝るだけだったら簡単だ。上っ面だけで済むし内面を曝け出す必要も無い。しかし信用はどうしようも無い。崩すのは簡単だが築くのは難しいのだが、こいつは最初の段階で信頼を築くのを拒んでしまったから俺もそうした。たぶんこの部屋にいる簪や本音だって悪印象を持ってしまっているだろうしな

 

「謝って許されるとは思うな。それぐらいの事をお前はしたんだからな、自業自得だ」

 

「そ、そんな!」

 

身を寄せるように両腕で自分の身体を抱きしめ震え始めるセシリア。自分のしたことに責任を取れないようで賭けなどするなと思う。さしずめ必ず勝てるという慢心の元に言ったのだろうが俺のISが相手だったのが最後だったな

 

「俺はお前が嫌いだ。さっさと失せろ」

 

「待ってください!」

 

「いい加減にしろ。俺は失せろと言ったんだ」

 

もうどうすることもできないと感じたようでセシリアは大粒の涙を浮かべ部屋を出ていく。あいつにどう思われようが関係ないし興味ない。それに後は楯無の方でやってくれるだろう

 

「これでよかったのななみん?」

 

「これでいい。別にあいつがどうなろうが知ったことじゃないし、そもそもの原因を作ったのはあいつだ」

 

本音は扉を閉めて、俺の隣に座ってくる。後はあいつが何とかしてくれると思う

 

 

 

楯無サイド

 

部屋の中での会話は本音ちゃんの携帯から聞いていたから知っているけど容赦無く言ったわね。しかも重要なところは何一つ言わないなんて、ちょっとズルいわよ七実君。さて私は私の仕事をしましょうっと

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「っ!?」

 

大粒の涙を流しながら走っているセシリアちゃんを止めて目の前に出る。走るのは校則違反だけど今日のところはお咎め無しにするわ

 

「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットちゃんで間違いないわよね?」

 

「うっぐ・・・その通りですわ」

 

私が出たことで一旦泣き止んだ。話の内容は知っているからあれだけど少し罪悪感を感じちゃうわね。いくら私が生徒会長である程度の権限が与えられているからってあまりこういうことはしたくないのだけど七実君の事でもあるから仕方ないわね

 

「そういうあなたはどちら様ですの?」

 

「私?私はこのIS学園の生徒会長の更識楯無よ」

 

セシリアちゃんは目を見開いてこちらを見てくる。こんなんでも現ロシア代表なんで名前を聞いたら知っているわよね

 

「驚くのはいいけど話があるわ」

 

「な、なんでしょう?」

 

「あなたの事よ。セシリアちゃんは1週間前に鏡野七実君にとんでもない賭けを申し込んでいた。間違いないわね?」

 

「・・・はい」

 

目を逸らしてこちらを見なかった。彼女がどんな風な扱いを受けるかを考えているかもしれないけど本当はその必要はないのよね

 

「人権や自由を無視する発言だったそうね。代表候補生ともある人がそんな発言をしたということが世界中に広まったらどうなるでしょうね?」

 

「くっ!」

 

七実君も言っていたけど、これは自業自得だわ。国家代表である私や他の国家代表、代表候補生の人は発言に気をつけるように言われている。なぜならその発言が国の発言と捉えられるからである。

 

「さてセシリア・オルコットはこの学園から退学が言い渡されているわ」

 

「あ・・・う、嘘ですわよね」

 

彼女の顔が一気に青ざめて血の気を感じさせなくなるほどまでになった

 

「確かに学園長から言い渡されたわ。でもね」

 

渡されていた退学届を出し目の前で破る。もうこの話も学園長の了承を得ているから問題は無い

 

「ある人のおかげで取り消しになったわ。よかったわねセシリアちゃん」

 

「は・・・え、え?」

 

何が起こっているのかが分からず混乱し始めたところでネタバラシとするわ。七実君本人から言ってほしかったのだけどしなかったのがこうなったのね

 

「七実君が()()()()

 

たっぷりと皮肉で言ってやった。彼女は初対面の時に七実君の事を『犯罪者の息子が優しい?』とか言っていたのを聞いた。今回悪役を演じさせられた彼は本当は悪役なんかじゃなく正義としてやっていたのだと思う。戦った後に話すつもりで彼女と話していたのだろうけど

 

「え・・・」

 

「あんな発言を受けたのにも関わらず七実君は1度だけ許したのよ。まぁ今日の事で彼も怒っているでしょうけどね」

 

「で、でもさっき謝りに行ったときはそんな素振りは一切見せませんでしたわ!」

 

「だから言ったでしょう?1()()()()許したのよ。その後の事は知らないわ」

 

七実君の真意に気付いたセシリアちゃんだけど彼の信頼を得るのは難しいわよ。私だって彼と出会ってから1、2年は邪魔とか無視とかされたし。今でもたまにしてくるけど

 

「さてこれで話はおしまい。あとはセシリアちゃん次第よ」

 

これで仕事はおしまい。後で七実君に会いに行こうかしら。後で報告がてら七実君のところに行くことにして今は学園長室に向かうことにした

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

次回で一巻分は終了になります。ちなみに今日は普通に投稿しますので

追記:どう考えても1巻ではありませんでしたね。第1章ですね

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