元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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鏡に映る二色

 

 

あれから1週間経ち、クラス代表を決める為の勝負が開かれ俺は第1アリーナのピットに来ている。この1週間はアリーナが整備ということで使えなかったが、その代わり戦い方を映像を見ながら叩き込まれた。しかし俺のISは素の状態で戦える訳がないが虚曰く、やり方を知っているだけである程度の対策は取れるそうだ。まぁそんな感じで1週間が経過し今に至る

 

「なぁ箒。俺にISの事を教えてくれるんじゃなかったのかよ」

 

「ふん!」

 

「おい!」

 

どうやら一夏は箒という奴にISの事を教わろうとしたがダメだったらしい。お前には円華や織斑先生がいるんだからそっちに頼めばいいものを。というよりも近くで騒ぐな

 

「煩い。騒ぐなら外に出ろ」

 

「なんだと!」

 

というよりもここは選出された4人と山田先生、織斑先生以外立ち入り禁止のはずだがなぜいるんだ?

 

「そもそもなぜ部外者がここにいる」

 

「私は一夏の関係者だから問題ない」

 

そういう意味じゃないんだが・・・とりあえず箒とやらがどういう奴かが垣間見えたような気がする。円華や山田先生は思わず苦笑を浮かべているしな。それよりも最初は一夏とあの金髪が対戦するはずだが一向に一夏のISが現れない

 

「まだ来ないか・・・鏡野行けるか?」

 

「まぁ」

 

静かに精神集中でもしてリラックスでもしようかと思っていたがそうはいかなかったみたいだ。到着するまでの間の時間を稼げとのことらしい。仕方なく俺のISを起動させるが<打鉄>になっていた

 

「おい鏡野。まさかとは思うがそれでいくのか?」

 

「いやそのつもりは無いが・・・」

 

織斑先生がどっちの心配をしているかが分からない。俺のISが<打鉄>であることか、それとも<打鉄>で戦うのがマズイか。そんな心配をしているとモニターに文字が表示された

 

勝手に決めちゃってごめんね。でも私()許せないんだ。たった1発でもいいからぶちかましちゃって

 

・・・いや待て。何かがおかしい。なんで『()』なんだ?俺の考えていることはお見通しのようで新たにモニターに文字が表示される

 

俺が気絶した時に私が俺として出ちゃったんだよね。メンゴメンゴ。さて行くよ

 

本音が言っていた俺がおかしくなったというのも頷ける。全くもって面倒なことをしてくれた。だが今はやらねばいけないことがある。戦い方を教えてくれたあいつらの為にあの金髪を倒す。ピットを出て飛び立つと既にあの金髪ことセシリアは上空で待機していた。客席は生徒で埋め尽くされ、俺に向けての批難しか口に出さない。

 

「随分待たせてくれましたわね。それに訓練機で来るとは思いませんでしたわ」

 

「お前には何も見えちゃいない」

 

このISには機体名を偽るようなプログラムは無いが勝手に勘違いしてくれる分にはこっちとしてはやりやすい。俺は近接用ブレード『葵』を展開し構える

 

「それでは踊りなさい!このセシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でるワルツで!」

 

機体名<ブルーティアーズ>搭乗者セシリア・オルコット・・・締めにはあれを使わせてもらうか。セシリアは巨大なレーザーライフル「スターライトmkⅢ」を構えて発砲してくるが直線的過ぎて避けるのも簡単だった。まぁ、この機体(打鉄)を使っていた人が人だから仕方ないと思う

 

「なぁ!?」

 

「遅い」

 

まさか避けられるとは思っていなかったようで大変驚いているセシリアだが、そんな隙を見逃すわけもなく瞬時加速で近づいて、斬るのではなくブレードの刃の無い部分を使ってアリーナの壁に叩き付ける。しかし今は時間稼ぎをしろとの事らしいので追い打ちはかけない

 

「あなた舐めていますの!」

 

「さてな」

 

わざと煽るがこれにはちゃんとした理由がある。もしこの程度の挑発に乗るようなのであれば、ある程度こちらがやりやすいように動けるはずだ。しかし、この目論見は上手くいかなかったようで落ち着いた様子で飛行を開始された

 

「それに今、瞬時加速をしましたわね?」

 

「だったらなんだ?」

 

「とても初心者ができる技術ではないのにどうしてできますの!」

 

「教えてやる義理は無い」

 

葵を握りしめ、経験の中から構えを反映させる。織斑先生の構えしかないのだからそうなのだろうがな

 

「俺はお前の事が嫌いだ。お前が今、俺の事がどう思おうが知った事じゃあない。ただ俺はお前を叩きのめすだけだ」

 

ブースターを吹かしセシリアに接近していく。遠距離型の相手には近接は有効だそうで近づこうにも引き撃ちされ回避に手間取らされる。速度的なスペック差が大きいのだろう

 

「先ほどの威勢はどうしたのかしら?」

 

「仕方ない。機体名ブルー・ティアーズ、搭乗者セシリア・オルコット。起動しろMirror is mine(鏡は私の物)

 

2世代機の量産型ISと3世代機の専用機のスペック差は大きく、とてもじゃないがこの経験をもってしても瞬時加速で対応するしかなかったため作戦を変更した。スペック差を覆すには相手と同じ土俵にすればいい。俺のISは光を発して形を変え、俺の頭にセシリアの経験が頭に入ってくる

 

「お前は自分と向き合うことになる。俺のIS<M.M.>の力を見ろ」

 

「な!?」

 

搭乗者が違うだけで全く同じISに変化したことで動きを止めるセシリア。すまないがさっさと決めさせてもらうとしよう

 

「行けブルー・ティアーズ!」

 

ウイングスラスターから4機のビットを展開しセシリアの周囲に飛ばし縦横無尽に動き回り射撃を始める

 

「なんで!なんであなたが<ブルーティアーズ>を!?」

 

「さてな。とっとと落ちろ」

 

セシリアもビットを展開することができるがその最中は一切動くことができないらしい。射撃に徹するか、ビットを使うために射撃を諦めるかしかできないセシリアは詰み状態だ。回避するも逃げ場が無く被弾し、SEが徐々に減っていくのが分かる

 

「こうなったらこれしかありませんわ!」

 

「させると思うか?」

 

セシリアはミサイルビットを飛ばそうとするが、俺はスターライトmkⅢを展開し、正確に狙撃し爆発を起こさせるとセシリアは地面へと落下していく。セシリアの機体はボロボロになってミサイルビットは既に使えない状況だった

 

「終いだ」

 

スターライトmkⅢを量子化させインターセプターを展開し、追い打ちをかけるように後を追いかけ<ブルー・ティアーズ>を斬りつける。そこでSEが尽きたようで試合は終了となった

 

「おいセシリア。お前が気に食わないと言っていた男に負けたな」

 

「くっ・・・」

 

「さてお前が負けたということはどういうことか分かっているだろうな?」

 

乗った覚えのない賭けの事を思い出したようで顔が青ざめていくセシリア。ようやく事の重大さが分かったようだ。もし俺が負けていたらゾッとする話だが2つほど逃げ道を作っていた俺には意味を為さないがな

 

「い、嫌ですわ!なぜあなたなんかに!」

 

俺は再びあの頃に戻るつもりもさせるつもりもない。セシリアが勝手に勘違いし勝手に思いあがっているに過ぎない

 

「やめろぉぉぉ!」

 

「あ?」

 

一夏が純白のISを操縦して俺に斬りかかる。しかし全方位確認できるハイパーセンサーのおかげで回避できた

 

「何してんだよ七実!」

 

「俺はこいつと話してただけだ」

 

「ならなんで青ざめてんだよ!普通に会話してたらそんなことになるわけ無いだろ!」

 

何を勘違いしているかわからないが元は俺の後ろにいるセシリアが原因だ。お前も聞いてたはずなんだがな

 

「織斑さん!この方がわたくしに酷いことをしようとしてきたのです!」

 

「ふざけんじゃねえ!」

 

セシリアの言葉で生徒はブーイングを起こし、一夏は激怒し俺の方に剣を掲げ突撃してくる。さすがに1度は許すとは思ったがもう許せるものじゃない。一夏の剣を躱し距離を取る

 

「やっていいことと悪いことがあるだろ!」

 

「どっちがだ」

 

体力もそろそろ限界だし一夏も落とすことにする。一夏の周囲にビットを飛び回らせ牽制しスターライトmkⅢで動きを予測し射撃をしていく。IS初心者である一夏は回避はするものの機体に掠ったりしているためどんどんSEを削られていく中、一夏は剣を振るい当てようとするも掠りもしない

 

「くそっ!」

 

「お前の考えはまともだ。だが俺に押しつけるな、迷惑だ」

 

一夏からしたら俺は悪で自分が正義なのだろうが現実は違う。今回の悪はセシリアでそれにそそのかされた一夏も悪なのだ。故に俺としては少なからず正義でも悪でもない

 

「それでは終いだ」

 

ミサイルビットを飛ばし一夏へと誘導させた。それに対して一夏はそれを斬り落とそうとするがそこをビットで剣を握っている手に射撃し剣を落とさせ見事命中し爆発する。それでもまだSEが尽きていないようだった。仕方ないがあいつのISを調べ機体名を割り出す

 

「白式か・・・機体名白式、搭乗者織斑一夏。起動しろMirror is mine(鏡は私の物)

 

またしても光を発して形を変えていく。スペック上では<ブルー・ティアーズ>よりも上で武器は『雪片弐型』しか積まれていなかった。織斑先生の構えを取ると一夏は目を見開いてこちらを見ていた

 

「それは千冬姉のだ!」

 

「さてな。とっとと落ちろ」

 

瞬時加速で接近しウイングスラスターを刺突し貫こうとした時、一夏はとっさに『雪片弐型』を振るい俺を斬りつける。同時にダメージを食らうと一夏のSEが尽きそのまま気絶していった。対して俺は違和感を覚えた。左肩から斜めに切られたのだが、その部分が異様に熱く痛みがあった。左腕を動かせば痛みが増したので急いで元いたピットに戻った

 

「貴様!男ならば正々堂々と戦え!」

 

戻るなり第一声がこの言葉。箒は俺のやり方に気に食わないようでそう言ったが、何を基準にしているのかは知らんがISでの戦いでは正々堂々と戦っているのだが。ISから降りるとなぜか楯無が車椅子を引いてこちらに歩み寄ってくる。てかなんで楯無がいる?

 

「お疲れ様七実君。それにしても大変だったわね」

 

「まぁ・・・ぐっ!」

 

楯無に肩を貸してもらったが、左腕を動かされると激痛が走り思わず声をあげてしまった。慌てて楯無を突き放して膝を着いた。右手で服の中を確認すると、まるで斬られたかのような痣が左肩から斜めに伸びていた

 

「大丈夫ですか七実君!?」

 

「ちょっと左腕が」

 

「どれ見せてみろ」

 

こんな状態の俺を見た織斑先生と山田先生は俺のジャージを剥いだ。露出した痣を見て驚かれるが、俺が一番驚いている

 

「鏡野、なんだこの痣は」

 

「わかりません。一夏に斬られた後に激痛が起きたと思い、急いで戻って確認したらこうなっていました」

 

セシリアと戦う前にはこんな痣は無かった。嫌な考えだが俺のIS<M.M.>がダメージを受けたら俺にまで同じダメージを受けるという考えだ

 

「そうか。更識姉、鏡野を保健室まで連れていけ」

 

「はーい、痛いかもしれないけど我慢してちょうだいね」

 

ジャージを着せてもらうがその際にも痛みが発生した。今度は右腕の方で肩を貸してくれて車椅子に座らせてもらった

 

「そうだ。鏡野は代表はどうする?」

 

「やるわけ無いです。そもそも巻き込まれた側ですしやる気ないんで」

 

「分かった」

 

「待て!逃げようとするな!」

 

保健室に行こうとするが箒に肩を掴まれ止められた。いち早くこの痛みを抑えに行きたいのだが

 

「邪魔だ」

 

「なぜ正々堂々と戦わない!剣があるのだから剣だけで戦え!」

 

箒はそういうがおかしい。剣しかない一夏ならともかく他にも武器があるのだから使う他ない。そこまで剣に固執するのであれば剣道でもやっていろ

 

「剣道ならともかくこれはISだ。剣以外にも銃器もある。そこまで剣に固執するなら剣道だけやっていろ」

 

「貴様!」

 

「はいはい、2人ともそこまでよ」

 

箒が熱くなり肩を掴んでいる手の力が強くなるところを払い、そそくさとピットを出ていく。背後からは箒の声がするがどうでもいい

 

「助かった」

 

「いいのよ。それにしても災難だったわね」

 

「全くだ」

 

本来、俺は何も悪くないのに全て俺が悪いかのようになってしまったが、ちゃんと知ってくれる奴がいるだけで安心ができる。あとはなる様にしかならんしな。車椅子を押されながら保健室に向かうのであった

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

追加設定

七実のIS<M.M.>がダメージを受ければ同じように七実の身体にもダメージが入り痣なります

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