元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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巡り合わせする因果

 

いよいよIS学園での学生生活初日だが入学式は執り行わないらしい。これは授業日数的な問題で他の高校に比べ一般教養の他にISの授業を入れなければならないためだそうだ。俺は山田先生からその話とISにおける法律、学校の校則が書かれている厚さ7cm位の冊子を渡され覚えなければならなかったがISに関する項目は全て知っていた・・・というよりよくよく思い出してみると転生した時に何を願ったかを思い出したら当然だと思う。この世界における知識とか言っていた記憶があるような無いようなだけど多分そうだと思う。そんなこんなで覚えることなんてあんまりなく無事初日を迎えることができた。ちなみに動けるようになってから歩行訓練を始めたがまだ人の手を借りないとろくに歩けなかったためまだしばらくは車椅子生活を余儀なくされそうだ。俺は本音と同じクラスになり1組に向かっていた

 

「同じクラスだよななみん!」

 

「本音が羨ましい・・・」

 

「こればかりは仕方ないだろう。こんなんでも男性IS操縦者は両方1組だからな」

 

ここに来る前に張り紙にてクラス分けがなされていたがその中に一夏と俺はどちらとも1組になっていた。保護のために一緒にまとめたと言えば簡単なのだろうがこちらとしては比較対象と取れるような組み合わせだと思う

 

「ここか。また後でな」

 

「うん、お昼に迎えに来るから」

 

1組の教室の中に入るがまだ時間が早いためか3,4人程度しかいなかった。俺らが教室に入ると嫌な顔をする奴や黄色い声をあげる奴といるが俺はただ暇を潰すか。俺の席は窓側の一番後ろの席だった。そこからはただ空ばかりを眺めていると徐々に教室内が騒がしくなり鐘が鳴ると山田先生が入ってくる

 

「おはようございます!私はこの1年1組の副担任を担当します山田真耶です。1年間よろしくお願いしますね!」

 

山田先生の紹介に誰も反応せずただ静かになった。先生は涙目になるもそのまま続行し始めた

 

「うぅ・・・そ、それじゃあ出席番号順に自己紹介をお願いしますね」

 

自己紹介ならある程度適当なのと自分の思いの丈を言うことにしよう。特にデマまがいの俺の情報についてだがな。簪には悪いが楯無からある程度は聞かせて貰ったが被害者である俺まで犯罪者扱いされてんだよ、あのクソ共が俺を殺そうとして逮捕されたようだがそのことを児童の殺害未遂した犯罪者の息子ということになっていたのは改変し過ぎだと思う

 

「織斑君?織斑一夏くん!」

 

「は、はいっ!」

 

どうやら一夏の番が来たみたいだ。あいつがどんな自己紹介をするのかが楽しみだ

 

「あ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね?で、でもね自己紹介が「あ」から始まって今「お」の織斑くんなんだよね。だからね、ゴメンね?自己紹介してくれるかな?ダメかな?」

 

いやテンパりすぎですよ先生。たぶん一夏は慣れない環境のせいで緊張してるだけだと思いますよ。俺にとっては緊張するだけ無駄だと思っていつも通りを貫いてますけど

 

「いや・・・そんなに謝らないでください。自己紹介しますから」

 

「本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ、絶対ですよ!!」

 

・・・本当にこの先生大丈夫か?

 

「織斑一夏です・・・以上!」

 

「お前は満足に自己紹介もできんのか!」

 

立ち上がって名前だけを名乗った一夏は織斑先生に背後から出席簿で頭を叩かれ快音が響き渡る。てかあれは体罰じゃないのか?

 

「げぇ!?関羽!?」

 

「誰が三国志の英雄か!この馬鹿者!」

 

再度出席簿で頭を叩かれる一夏。もしかしてあいつは学習しない馬鹿なのか?だとしたら馬鹿ではなく馬夏と命名しよう

 

「織斑先生、もう会議は終わったんですか?」

 

「あぁ無駄に長引かされたがな。それはともかくクラスの挨拶を押し付けてすまなかった」

 

織斑先生は山田先生と入れ替わり教壇に立つ

 

「諸君、私が織斑 千冬だ。君達カラ付きのヒヨコ共を一年で使えるヒヨコにするのが私の仕事だ。私の言うことは絶対だ。反論は許さん。返事はハイかYesのみだ。出来ない奴はみっちり扱いてやるからな?」

 

発現のそれがもう独裁者かなにかだった。いやおかしすぎるだろ。拒否権ぐらいは欲しいんですが織斑先生の紹介が終わると一斉に黄色い声が沸き立つ。さすがブリュンヒルデだとは思うがこれは流石におかしい。もうこの域は信者、狂信者の域まで達してると思う

 

「毎年毎年、よくもこれだけ似た様なのを集められるな・・・わざとか?」

 

「なんで千冬姉がぁ!?」

 

「織斑先生と呼べ馬鹿者」

 

3度目出席簿チョップ。二度あることは三度あるという言葉をこの目で確かに見た気がする。簪風に言うのであればフラグ回収乙だろう

 

「そういえばどこまで自己紹介が終わったのだ山田君?」

 

「一夏君のところまでです」

 

「分かった。鏡野自己紹介しろ」

 

ようやく俺ですか。俺は立ち上がることができないのでせめて分かりやすいように教壇の方に車椅子で移動した

 

「名前は鏡野七実。趣味は空を眺める事と天体観測。今はリハビリ中で車椅子を使っているがその内歩けるようになるとは思う。それとニュースで俺がどんな奴かを知っているかもしれんがあれは重要なところが改変されているということは覚えていて欲しい」

 

一礼するが特に声が上がることは無かったが本音や少数の人は一応拍手をくれた。俺は元の席に戻るなり重要なことを思い出した

 

「詳しい話を聞きたい奴は織斑一夏の二つ後ろにいる本音とやらに聞いてくれ」

 

「ちょ、ななみん!?」

 

これである程度は逃げることができるだろう。すまんな本音、いつも迷惑を掛けられている迷惑料()だと思って受け取ってくれ

 

「さぁ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからみっちりと基礎知識を頭に叩き込んでもらう。その後実機を用いた実習となるが、基本動作は半月でこなしてもらう。良ければ返事をしろ。まずくても返事だ。私の言葉は絶対だからな」

 

やっぱり独裁者なのか?

 

 

 

一夏サイド

 

こんなところ(IS学園)に来てこんなことになるなんて思ってもいなかったぜ。それにももう一人の男性IS操縦者の鏡野七実だっけか?雰囲気が千冬姉に似てるのはなんでだろう?聞いてみるか。俺は七実の元に向かった

 

「えっと鏡野七実でいいんだよな」

 

「ああ」

 

こいつはさっき言っていたように趣味である空を眺めることをやめずにこっちにそう言った。随分と失礼な人だな

 

「俺は織斑一夏だよろしくな」

 

「よろしく」

 

「もうななみん!酷いよ!」

 

多分七実と友達であるだろう袖がダボダボな女の子が顔は笑っているけど口では怒っているような言い方をして七実の背中を叩く

 

「いつも迷惑を掛けてるだろ。その嫌なお返しだ」

 

「ほえ?そんなことしたっけ~?」

 

「はぁ・・・」

 

「あ、いっちーもななみんの事が気になったの?」

 

いっちー?・・・あぁ俺か!初めて言われたぞそのあだ名

 

「んまぁそんな感じかな。えっとお名前は?」

 

「私はね~布仏本音だよ~のほほんでいいよ~」

 

「おう、分かったぜのほほんさん。それはともかく七実って俺とどこかであったことあったけ?なんか懐かしいというかなんというか千冬姉みたいな雰囲気を「無いと思う」だよな」

 

食い気味で返してくるがどこか声が弱弱しく感じたのは気のせいか?でもどこか懐かしいとは思うんだよな

 

「ちょっといいか?」

 

「ん?」

 

声の方に顔を向けるとISが開発されたことで転校せざるを得なかった篠ノ之箒がいた。身長から何まで成長していて少し分かり辛かったが面影があってすぐに分かった

 

「もしかして箒か?」

 

「此処ではなんだ、外で話したい」

 

「わかった。ごめんな七実にのほほんさん」

 

「大丈夫だってななみんは逃げられないもんね~」

 

「うるせぇ・・・まぁ行ったらどうだ?」

 

失礼な奴だけどなんだかんだで好感が持てるとは思う。これから2人しかいない男性IS操縦者として一緒に頑張ろうな!

 

 

 

七実サイド

 

正直気さくで良い奴だとは思う。ただそこで止まっている、確かにどこかであったと聞かれればはいと答えたいがその実、生まれてすぐなんて言えるわけがないし似た雰囲気だってするだろうさ。何せ本当はお前の兄なのだから

 

「はぁ・・・」

 

「また溜息ついてる~幸せが逃げちゃうよ~?」

 

「なら俺に平穏をくれ。それが今の俺が幸せと感じるものだ」

 

腫物を触るような目、奇異なものを見る目と様々な目で見られることには至極どうでもいいが正直うんざりはする。客寄せパンダじゃないんだぞ俺は

 

「ねぇ七実・・・君?」

 

「あ、まどっちだ。やっはろー!」

 

「?や、やっはろー?」

 

まどっちなるやつは俺に近づいてくるが正直あんまり興味は無い。それがもし絶世の美女でもたぶん変わらないとは思う・・・いやその時にならないとわからないな

 

「・・・なんだ?」

 

「こっちを向いて話してよ」

 

「はぁ・・・はいは・・・い」

 

一応要望通り振り向くがそこには織斑先生を小さくしたような感じの女の子がいた。予想だがこいつが円華か?

 

「ありがとうね。私は織斑円華、一兄さんとちー姉ちゃんの妹だよ」

 

「そうか。お前が・・・」

 

これで俺が知る限りの家族が全員揃ったのか。なんとも因果な世界だ。長女は世界最強の名を欲しいがままにした人で次男は最初の男性IS操縦者、次女は現日本代表候補生。最後に生き別れ前世での記憶を持つ憐れな長男か、もう何がなんだかわからなくなるな

 

「少し調べたけど七実君が関係ないのは知ってるつもりだから安心して」

 

「そうか」

 

確かにニュースは莫大な情報源となるが伝える側が意図して改変をしてしまえば真実は完全に闇の中になってしまう可能性だってある。だがこうして自分で調べてみる奴は本当に関心が高い

 

「これから兄共々よろしくね」

 

「こちらこそ。それと七実でいい」

 

「わかった。それと本音ちゃんくれぐれもお兄ちゃんを誘惑しようとしないでね!」

 

「ほえ?」

 

俺からは何も言わんぞ?確かに簪から聞いた通りにブラコン気質があるようだが一夏が誰と恋仲になるかなんてわからないのだからな

 

「このたわわと実った「貴様は痴女か!」いったぁい!」

 

鐘が鳴る寸前で教室に入っていた織斑先生によって魔の手(円華)から逃げることができた本音だが俺を楯にして後ろに隠れていた

 

「まったく男の前で貴様は何をしてるのだ」

 

「うぅ・・・だってのほほんがお兄ちゃんを誘惑しようとするかもしれないじゃん!」

 

簪が言っていたのはこういうことか。さすがブラコンだ。ほぼほぼ楯無と同じじゃないか、対象が違うだけでこうなるのか

 

「それだとしても鏡野の前でするのはおかしいだろうが」

 

「むー!」

 

ふくれっ面になる円華だがなんだこの状況。似た顔で呆れた表情をしているのとふくれっ面になっている2人が対面するまったくもって奇妙な光景である

 

「もうお姉ちゃんのお小遣いは減らしてやる!」

 

「ちょっと待て。それは勘弁してくれ、そうなったらどうやって私のストレスを解消したら・・・」

 

急に脱線し始めたぞ。まぁいいや授業が本格的に始まるまで外を見ていよう。余談だが何処かに行っていた一夏と箒は教室に戻って来たのは授業が開始した後だったので本日4度目の出席簿チョップを喰らっていたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

この作品だけなぜか筆が進む謎。他の2作品はもたつくのになんでだろう?

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