ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? 作:ark.knight
翌日私達は広場の噴水に腰を掛けてベルと一緒にアイズを待っていた。今日はフード付きのアークメイジのローブにモロケイを装備している、それ以外は革装備だ。武器は何があるかわからないがとりあえず顔だけは見せないようにしておく。それと酒を何本か手土産として持ってきているぐらいだ。しばらくするとアイズとティオナが遠くからやってくるのが見える
「お待たせ~」
こちらに来るなり私にボディタッチしてくるがやや鬱陶しいな。悪い気はせんが
「あのアイズさん、昨日は逃げ出してすみませんでした!」
「ん?・・・大丈夫だよ?」
だからなぜ疑問形なのだ?昨日といい今日といいアイズはこういう奴なのか?
「さて着いて早々だが案内を頼む」
「任せてハイド!それじゃあ出発!」
2人の案内の元に拠点に連れていかれるが通りすがりの人からは様々な目で見られた。嫉妬や嫌悪、羨望という目で見られることには慣れているが1つだけおかしい視線を感じながら歩いていた。しばらく歩いているとおかしい視線も消えていた、目の前には私の家よりも大きい館の近くで止まった
「黄昏の館はやっぱり大きいですね」
「・・・改装してこれ以上の大きさにしてやるか?」
「張り合うところはそこですか?」
「ここが私たちの拠点・・・中に入るよ」
門を通り館の中に入るなり正面の階段を昇り部屋の中に入るとフィンと女性2人に小さめの男性1人がいた
「ようこそロキ・ファミリアの拠点〈黄昏の館〉によく来てくれたね」
「招待ありがとう。これは餞別の酒だ」
「酒やて!?もしかして
橙色の髪をした細めの女は私の持ってきた酒を見るなり興奮するがお目当てのものが無かったらしく興味なさそうにした
「なんや神酒やあらへんやないか。ただの酒か」
「そういうな飲んでみればいい。私の知っている中ではそれ相応に美味いはずだ」
「ありがとうハイド君。これは後で飲んでみるとするよ」
「そうしてくれ。さて本題に入るがなぜ私を呼んだ?」
そう私はアイズに呼ばれたのだ。ベルも呼ばれたに等しいが本命は私にあるのは昨日の会話で知っていたのだ
「君はどこかファミリアに入ったのかい?もし入っていなければ僕たちのファミリアに入ってほしいんだけど」
「すまないが既に加入したところがあるのでな。ヘスティア・ファミリアだ」
「あのロリのファミリアやて?」
「あーすまないがお前は誰だ?というよりもそっちの2人も知らんのだが」
こっちの世界に来てからは何も知らないに等しいからな、今は情報収集したいところだ
「ロキや。ロキ・ファミリアの主神をしてるんや」
「私はリヴェリア・リヨス・アールヴだ。種族はあなたと同じハイエルフ、よろしく」
私と同じハイエルフか。ということはリヴェリアも相当な魔法を使うのだろうな、一度腕試しをしてみたいところだ
「儂はガレス・ランドロックじゃ。種族は
今ガレスは何と言った?ドワーフ!?何!?ドワーフは滅んだんじゃなかったのか!?流石異世界というべきなのかここだけはあのクソ爺に感謝せなばならんな
「今ドワーフと言ったか!?」
「そうじゃよ、オラリオじゃ珍しくないぞ?」
「いやすまない。初めてドワーフと対面して興奮しているのだ!」
「がっはっはっ!!世界中にいる種族なのにあったことが無いとは不幸じゃのう」
「んん!話はそこまでにしてくれハイドにガレス。話が進まなくなる」
これは失礼した。あの神を滅ぼそうとした種族に出会えるとは思わなくてつい興奮してしまったなぞいえるわけがないからな。話を遮ったのはすまなかった
「それで話を戻すけどベートの件で謝りたくて招待させてもらったんだ。当の本人は謝る気が無いみたいで」
「ほれベルこれはお前の話だ。フィンと話してこい」
私は後ろで固まっているベルの肩を叩き背中を押してやると驚いて変な声をあげる。緊張しながらフィンと話し始める
「ハイド1つ質問してもいいだろうか」
「なんだリヴェリア」
「あなたもハイエルフだそうだがどこの生まれなのだ?私がいたエルフの領地やその近くの領地でのハイエルフの名前はあらかた知っているがあなたの名前は聞いたことが無かったのだが」
「遠く遠く誰もが行ける場所ではないとだけ言っておく」
もしこちらの世界に異世界に行ける魔法があるのであればぜひ習得してみたいものだな。死後の世界には行ったことがあるがな
「それにハイドはなんで仮面なんてつけてるの?」
「・・・見られたくないからだ」
ここはあえて何がとは言わん。ただ気になるのはどうしてアイズとティオナが手を動かしながら近寄ってくるのだ?・・・まさかこの仮面を剥ごうとしてるのか
「この仮面を取ろうと考えるなよ。もし私に勝てたら見せてやっても構わないがな」
「ならやる」
「私も私も!」
そこまでしてみたいのか。この装備をしてきてよかったと常々思う瞬間だった
「ちょっと待て。ついこの間まで恩恵を受けていなかったのにどうして挑戦を受けようとする?」
「愚問だ」
そう何を勘違いしてるかわからないがここの世界においては最強なのだから私は挑戦を受けるまでだ。最もあっちの世界ではグレイビヤードの連中には敵わないのだがな
「私は強いからだ」
「かっこつけちゃって~それじゃあ訓練場に行くよ!」
私はティオネに手を引かれて部屋を出ていくが小さく華奢な体のどこにそんな力があるのかが不思議なのだがこいつを見ているとリディアを思い出すな。女性なのに異様に男っぽかったのを覚えている。そんなことを考えていると外にある訓練場に入るとティオナに似た女といつぞやの犬っころがいた
「なんでテメェがいんだよ」
「なら連れてきたティオナに文句を言え犬っころ」
「だから俺は狼人だっつーの!」
狼か、狼で連想できる人型はウェアウルフ・・・犬っころはなることができるのか?私もなることができるがハーシーンの指輪でほぼ無制限になった・・・かっこいいとは思うが正直、素の状態で戦った方が強いんだ
「早いよ2人とも」
「ごめんねアイズ。早く戦おうよ!」
「意外や意外に戦闘狂のようだ。仕方ない相手をしてやる」
ティオネは大剣を2本繋げたような木製で出来た武器を片手で簡単に振り回し始める・・・やっぱり
「なんか失礼なことを考えてない?」
「そんなことは無い」
勘が鋭いな。これだから女の勘というやつは侮れないのだ
「それでハイド君はどんな得物を使うの?」
ティオナは木製の武器をこちらに渡してくるが正直いらないのだ
「いやいらない」
「あら素手で十分というの?私の妹は強いよ?」
「何も素手でやるとは言っていない。こうするのだ」
左手にマジカを溜め1本の剣を創造する。形状はデイドラの片手剣、エンチャントこそ無いが武器を所持していない時には非常に便利なのだ
「まさか魔法!?しかも詠唱も無しに!?」
「さてやるかティオナ」
「そうだね!いっくよー!」
奇妙な大剣を振りかぶりながら私目掛けて突撃してくるが分かりやすい形状からして振りかぶって上段をこの剣で受け止めたところで下段で来るだろうな
私はハイド君に挑んでいた。彼と戦うようにしたのは少し気になったから、アイズが彼の事を気に入ったからという不純な動機だけど気になってしまった
「うらぁ!」
「その程度見えているぞ」
ウルガの上段攻撃を受け止めてくれたね!それじゃあ下段が飛んでくるよ!
「甘いよ!」
「だから見えていると言っただろう」
「え!?」
下段攻撃をしようとしたらウルガの持ち手を私の手ごと掴まれ防がれてしまった。私のステイタスなら普通はこんなことされてもごり押しできるんだけどどういうことなの!?
「そういえばルールについて聞いていなかったな。どういうルールでやるんだ?」
「え、ああ普通になんでもありで相手を殺さなきゃなんでもありなんじゃない?それよりも放してくれないかな?」
「断る、さて言質をとったことだし私の本領発揮と行くぞ」
「まだ全力じゃないの!?嘘だよね?」
彼は魔法で作った剣を消すと左手に光が集まりだす・・・あれこれってマズいんじゃない?
「受けきって見せよ。ファイアボルト」
「きゃぁ!」
普通だったら吹き飛ばされるぐらいの威力の火球を彼が私の手ごとウルガを掴んでいるから吹き飛ぶこともできず避けることもできず直に食らってしまった。火球が当たったところは燃えるように熱く焼け爛れ、視界が少し白くなってくるがそれでも立ち続ける
「ま、まだできるよ」
「脚と声が震えてるぞ。それにしても見習い魔法でもこのダメージか注意せねばならんな」
彼が何を言っているかはわからないけどまだ手の内を隠してるのは分かった。手も足も出なくて悔しい。こんな気持ちにさせられたのは初めてだよ!こうなったら今ある力を振り絞って全力を出す!私はスキルのおかげでハイド手を振りほどきよろめきながらも距離を取ることができた
「まだやるのか?」
「もうやめなさいティオナ!何もそこまでやる必要があるの!?」
「うるさい!これは私の戦いなの!模擬戦なんて知らない私はハイドに全力でぶつかるだけだよ!掛かってこい!」
彼は何も言わず魔法で両手に剣を生成し構えてくる
「貴様が全力を出すなら私も力を
彼が何かを叫ぶと室内にも関わらず風が巻き起こりバランスが崩れ尻もちをついてしまった。そんなスキを逃すわけもなく彼は私の喉元に剣を突きつける
「これで終いだ」
「あはは・・・負けちゃったか」
終始手も足も出なかったもしこれが本当の戦いだと思うとぞっとするけど私の身体は熱く火照ってきた。もしかしたら彼の事が好きになったちゃったのかもしれない
「少し待っていろ腹の火傷が見ていられん」
彼は剣を消滅させるなり両手で丸をかたどる様にすると強い魔力を感じそれを私に向けて放つ。すると火傷の跡が綺麗さっぱり消えてしまい傷がなくなるどころか力が湧いてくる程だった
「立てるか?」
「うん!ありがとうねハイド君!」
ハイド君の手を借りて立ち上がると外野にいた3人が近寄ってくる
「おい仮面野郎。お前の魔法はなんだ?詠唱無しの魔法自体ありえねぇのにあんな威力が出すとかありえねぇんだよ」
「誰が教えるものか犬っころ。それとお前の秤で私を測ろうとするな」
「言わねぇなら無理やりにでも聞けばいいのか?あぁん?」
喧嘩腰になる2人だけど訓練室の扉が開きベルとフィン達がやってくる。するとお姉ちゃんはフィンの方に走っていく
「団長!会いたかったよ~!」
姉のティオネが団長に近づくなり苦い顔になる。ごめんねフィン、止めたいのは山々なんだけど今はこっちで手一杯なの
「何やら不穏な空気だね、いったい何があったんだい?」
「ハイド?が魔法をいろいろと使ってティオナを倒したんだけどその魔法をベートが聞き出そうとしてるところです!」
「説明ありがとうねティオネ。ベートもダメじゃないかステイタスは機密情報なんだから」
ステイタスはその人の強さを示すもの、それを知ってしまえば相手にするかどうかも簡単に分かってしまう。逆に仲間にするかどうかも判断しやすくなる。だからステイタスを他人に知られるのはマズイという暗黙の了解ができている
「うるせぇ、俺はこいつにやられたまんまなのが嫌なんだよ。だから挑発してたんだっつーの」
「なら挑戦してみたらどうだ?その方がベートも気が楽だろう」
「やるか犬っころ?」
「上等だ。テメェの泣きっ面を仮面を剥いで拝んでやるよ!」
血の気の多いベートは本当は優しいんだけど挑発されるとすぐに乗る癖があるから馬鹿だと思う。だけど私が手も足も出なかったのを見てなかったのとは言ってやりたい
「そこのバカゾネスは手も足も出なかったようだが俺はそうはいかねぇ」
「うっさいわよ!どうせあんたも手も足も出ないわよ!ふん!」
私は団長たちの方に行くけどアイズが落ち込んでいた
「どうしたのアイズ、そんなに落ち込んじゃって」
「先に取られた・・・私も戦いたかったのに」
そういえばそういう目的でここに来たんだったっけ
「ドンマイアイズ。次があるよ」
「だといいけど」
またしても犬っころを躾けなければならないのかなら召喚で遊んでやろう。各属性の精霊?いやそれだと簡単に倒してしまう可能性があるからダメだ、ではどうしてやろう
「剣を出さなくていいのか?」
「貴様にはもっといいものを見せてやろう」
私は両手にマジカを集め始めると犬っころは走り出し私に左足で回し蹴りを入れようとするが後方に避け空振りをさせたがそれはフェイクだったようで本命は右足による踵落としだったが間に合った。私は犬っころの攻撃を受ける前にラスマンを召喚することに成功しそのまま右肩に踵落としを喰らったがあまりダメージと言えるものではないほどの蹴りだがな
「ぐっ!」
「んだぁ?こんな攻撃も避けられねぇなんてとんだ間抜けじゃねぇかよ!最悪な状況だな!」
「いや違うな。これは勝利のための致し方ない犠牲だ。それに状況が最悪なのは犬っころの方だがな」
黒い骸骨剣士が召喚される音を聞いた犬っころは後ろに蹴りをしながら振り向くが骸骨の持つ両手斧によって簡単に防がれてしまった
「はぁ!?なんなんだよこのモンスターどっから出てきやがった!」
「しばらくそいつの相手をしていろ。量と質を取りそろえた私の力を思い知るがいい」
次は普通の氷の精霊を召喚し壁役としておき私は念の為に回復魔法で蹴られた部分の治癒をした。しかしあれだな、この程度もっすぐに処理できんようではたかが知れるな。喧嘩を吹っかけておいて随分と弱いではないか
「なんなんだよ!?異様にかてぇ氷も出てきやがるし何をしたんだよテメェは!」
「教える義理は無い。面倒だからさっさと終いとしよう
左手にマジカを集め紫電を纏わせる。ここで放つ魔法はただ一つ壁があろうが簡単に避けながら攻撃できる魔法、チェインライトニングだ。一筋の光が犬っころの横の地面に放たれるとそのまま連鎖するようにヒットし膝をつき召喚したラスマンと氷の精霊は攻撃をやめ私の元に来る
「マジでテメェ何もんだ?こんな魔法は聞いたことねぇぞ!」
「だから言っただろう。貴様の秤で私を測るなと」
「勝負ありだね。見事だったよハイド君」
別に勝負をしたつもりはなかったのだが勝負ということになっていたらしい。最初から勝負と分かっていればもっと面白いやり方があったのだがな延々と背後を取り続け殴るとかな
「それにしてもこれはなんだい?どこからともなくモンスターが現れたが」
「教える理由はない。攻撃を受けたのもさほど痛くはないしな」
「念には念を入れてポーションを使うかい?」
「いらん、既に回復済みだ」
片手で素人レベルの治癒を使いもう片手で精鋭レベルの他者治癒を1回だけ使ってやると犬っころは立ち上がりどこかに行ってしまった。というよりマジカを使い過ぎて疲れたな
「次は・・・私」
「挑戦するのはいいが少し休憩させてくれ。今の状態ではろくに魔法が発動できん」
「魔力切れ?それならマジックポーションがある」
アイズは水色の液体が入った瓶のようなものを手渡ししてくるが正直疲れているのだ。連戦は流石にきつい
「そこまでして私と戦いたいのか。何がお前をそうさせるのだ?」
「ハイドが強いから?」
だからどうして疑問形なのだ。確かに私は強いかもしれないがそれは冒険の末に手に入れたものだ。私から強さを見出そうとしようがそれは私のいた世界であってこの世界のものではないから意味は無いと思う
「なら見せてやるが少し休憩させてくれ。これでも60を過ぎてる身なのだから徐々に体力が減っている」
「エルフの60なんてヒューマンの6歳ぐらいと同じだ。長く生きるエルフではまだまだ現役の範囲だ」
・・・少しは休みたいのだと気づいてくれ。どうしてロキ・ファミリアには戦闘狂が多いのだ?そのせいで疲れているのだが
「一旦落ち着いてアイズ。ハイドが疲れて力を出せないなんてことになって勝っても嬉しくないでしょ?」
「!・・・わかった。しばらく休んでハイド・・・さん?」
「だからなぜいつも疑問形で話しかける?それにさん付けはいらん。助かったティオナ」
「そうなった原因は私達にもあるからね。これくらいの事はするって!」
ほう・・・そういいながらなぜ私の腕に抱き着いてくるのだ?全くいつになっても女心とはわからんものだ。まさかとは思うまいが惚れられていないよな?
「がっはっはっ!!なんじゃティオナはハイドの事が気に入ったのか?」
「そ、そんなんじゃないってば!」
「あーなるほどね。頑張りなさいティオナ」
私からはティオナの顔が見えんのだが一体どういう状況なのだこれは?整理すると左隣に応戦準備万端なアイズがいて右隣にティオナが私の腕に抱き着いている。前方にはベルを含めたロキ・ファミリアの面々がいる・・・これって2つの意味で逃げ場が無いという都市伝説の修羅場というものか!?
「・・・助けてくれないかベル」
「ハイドさんが羨ましすぎて爆発すればいいと思います」
意味不明な言葉を掛けられ逃げ場無し。勝手に命名したが白兎ことベル・クラネルは今は黒兎に変貌したようだ
今回もお読みいただきありがとうございます
どうしても旗を立てたかったんです・・・そして空気になったベル君
追記:今回の話は修正しまくりでした。申し訳ありませんでした