ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? 作:ark.knight
今日から遠征が開始される。防具は軽装、フード付きのアークメイジのローブに消音と隠密を付呪した碧水晶のブーツ、炎、雷撃耐性を付けた指輪と冷気耐性と弓術上昇を付けた指輪を装備。その上に軽装上昇を付呪した碧水晶の篭手、モロケイを装備。ドラゴンスケールとこっちで悩んだが碧水晶の方が馴染んだのでこちらにした。武器は炎と麻痺のデイドラ弓、体力吸収と炎、スタミナ吸収と冷気、マジカ吸収と雷撃を付呪したデイドラのダガー1本ずつにメエルーンズデイゴンのカミソリ、ミラークの剣、鋼鉄の矢を300本程度身に付ける。多すぎと言われようがこれくらいないと安心できないのだ。自作のポーションを持ち、荷物置き場として最適な聖堂へ繋がる木の仮面を持ち用意万端だ
「前にも聞いてたけどよ・・・さすがに多すぎじゃねぇか?」
「各種、ちゃんとした使い道があるからそうでもない。本当にこれぐらい無ければ安心できないのだ」
今はダンジョン前にある噴水前に来ている。ベルたちは朝早くからダンジョンへ潜るらしい。今までは私を待っていて昼付近から出ていたそうだ
「3人とも、くれぐれも死ぬことの無いように」
「「はい」」
「はいよ」
「それでは私は行くが健闘を祈る」
私は3人をダンジョンへ向かうのを見送った後にロキ・ファミリアへと向かうことにした。必要最低限の装備とはいえ少々重い。だが仕方ないことだ。少々重い足取りでロキ・ファミリアの拠点へと向かっていくと拠点の方向から少々騒がしい声が聞こえてくる。既に集結を始めているのだろう。拠点の中に入るとそれぞれ隊列を組んでいるところだったようだ
「やぁ、遅かったね」
手に紙を持っているフィンがこちらに気付いたようでこちらに軽く手を振ってくる。挨拶も兼ねてフィンの近くによる
「見送りをしてきた後なんでな。遅れてきてすまない」
「いや、まだ集合時間前だから大丈夫。それよりも朝の訓練の時より重装備だ」
「それぐらい用心深いと言ってくれ。既に私の紹介はしてあるのか?」
「本人もいないのに紹介してもダメじゃないか。これからだよ」
フィンは手を叩き注目をこちらに向けさせる
「みんな、聞いて欲しい。今回の遠征に同行してもらう2つのファミリアの内、その1つヘスティア・ファミリアのハイド・クロフィだ。彼は現段階では不確定要素ではあるがレベル8ということで参加してもらった。どうか失礼の無いように。それじゃあ自己紹介を」
「ああ、改めて自己紹介だ。私はハイド・クロフィ、種族はハイエルフ。此度の遠征は手を貸すことになった。噂に聞いているとは思うがそれを確かめる機会だ。しっかりと目に焼き付けるといい」
盛大というにはおかしいとは思うが拍手は頂いた。中には嫌悪する奴もいるだろうが文句はフィンに言ってくれ。私は誘われた側としてやるだけのことはやるつもりだ
「それじゃあハイド君はベートの隣だ。後で最後尾に来てもらうけどくれぐれも仲良くね」
「ベート・・・あの犬っころか。まぁ仕方あるまい、ここは従うとしよう。それと1つ言っておくことがある」
「何?」
「あくまで今は雇われの身だ。遠慮なく容赦なく扱き使え、以上だ」
言いたいことだけを言ってその場を去り、あの犬っころの隣に立つ。不機嫌な犬っころは私に何か言ってくるが知らん顔でスルーさせてもらった。武器が多いやらなんやらで煩いので黙らそうと思ったがな。時間も過ぎダンジョンへと向けて出発する。道中で別のファミリアと合流したがまさかヘファイストスの所だとは思わんかった
「あらハイドじゃない。あなたもロキのところの
「ヘファイストスか、フィンに誘われて来ている」
「へぇ・・・」
ヘファイストスは私に物珍しい視線を送ってくる。確かに雇われるのはあまり気乗りしなかったが報酬がよくて参加しているだけに過ぎない
「話は変わるけどヴェルフの調子はどう?」
「良い傾向なんではないか?少なくとも私のセンスに合うような武器ばかり作るが」
「んー、性能的なのか形状的なのか。それは置いておくとしてやる気は出ているようね」
「そうだな。ベルにもよくしてくれている。こちらこそ助かってる」
「ならよかったわ。っと、そろそろ出発みたいね。頑張ってらっしゃい」
私達はヘファイストスと別れ、フィン、ガレス、リヴェリアが前へと出てこちらを向き直った
「階層を進むに当たって、今回も部隊を2つに分ける!最初に出る1班及びハイド・クロフィは僕とリヴェリアが、2班はガレスが指揮を執る!18階層で合流した後、そこから一気に50階層へ移動!僕等の目標は他でもない、未到達領域、59階層だ!」
誰も踏み入れたことの無い場所と言われれば興奮するな。スカイリムでは、全踏破してしまった故に家に篭る様になってしまった。一因ではあるが
「君達は『古代』の英雄にも劣らない勇敢な戦士であり、冒険者だ!大いなる『未知』に挑戦し、富と名声を持ち帰る!!犠牲の上に成り立つ栄誉は要らない!!全員、この地上の光に誓ってもらう、必ず生きて帰ると!!」
上空に鬨の声が響き渡る。だが、私は上げることができなかった。英雄は数多くの犠牲を払って名声を得るのを知っているからだ。身をもって経験しているからだ。とにかく私は1班ということで先陣を切ることになっているのだったな。どうやら腕利きしか集まっていないようだ
「おはよう・・・ハイド」
「いつにもなく平然としているなアイズ。ちゃんと朝飯ぐらいは食べてきただろうな?」
「・・・保存食で何とかする」
本当に大丈夫だろうか?とりあえずメンバーはフィン、リヴェリア、アイズ、ティオナ、ティオネ、ベートに私の7人構成で先行し後続を楽にしようということだろう。特に問題は無く階層を進んでいき現在は7階層へ来ている
「そういえばハイド君って、そんなに武器を持ってるのはどうしてなの?」
「けっ、どうせ意味もねぇんだろうが。俺が聞いたときは何にも言わなかったぜ?」
「すまんな。聞いてはいたがスルーしてた」
「んだとテメェ!?」
いちいち突っかかってくるな犬っころ。言っても面倒なだけだから言わないだけでちゃんとした意味ぐらいはある
「見たところ形状も一緒、素材も一緒。ならば使い捨てか?」
「着眼点はいい。だが各種で用途が違い、敵によって使い分けるだけだ」
「形状も一緒で用途が違うとか馬鹿じゃねぇのか。魔剣じゃあるめぇし」
魔剣の定義が分からんが、各種付呪が違うのであれば用途も違う。魔術師であれば雷撃、戦士であれば冷気とな。さすが万能炎だ。それはともかくこちらへと近づいてくる足音がある。弓を手に取り矢を構える
「4人」
「・・・4人だね」
アイズも分かったようで抜刀する。それにつられ他の奴らも戦闘態勢へと移るが徐々に近づいてくる人影は戦う様子とかではない。むしろ逃げるという感じだ
「あ、あいつが!ミノタウロスが来ちまう!あの
この瞬間、嫌な予感が全身に響き渡った。こういう時の勘は大抵当たってしまう。もし、白髪がベルで赤髪がヴェルフなんてことは無いと思いたい
「おい貴様ら、止まれ」
「なんだよ!?」
「そのミノタウロスとやらはどこにいる」
「9階層だよっ!俺らはもういくぞ!」
場所はなんとなく判明したならば行くしかない。何も伝えず、ただ9階層へとスタミナ回復のポーションを飲みながら全力で走っていく。後ろであいつらが走ってくるのも聞こえるがただひたすらに走る。道中の敵を全て無視してようやく到着した9階層。生命探知を使うと目の前の通路で誰かがこちらへとゆっくりとした歩みで近づいているのが2人と戦っている2人と1匹の様子が見て取れる。目の前の通路を進んでいくと頭から血を出しているリリルカがゆっくりと歩いていた
「冒険者、さまっ・・・どうかっ、お助けください!?」
どうやら私の姿すらまともに見えていないらしい。しかしリリルカがこうなっているということは白髪と赤髪はベルとヴェルフで間違いなさそうだ
「何があった!?」
「ベル様と・・・ヴェルフ様を・・・お助けください!」
「この先の通路か」
「は・・・い」
この先にベルとヴェルフがいるようだ。リリルカを肩に担ぎ、この通路を進もうとした時だった。「止まれ」と一声が投じられた
「その声は
「如何にも。その小娘を置いていけ」
「了承しかねる。こいつも家族なんでな」
「ならば殺すまでだ。あのお方のお気に入りになれるチャンスを逃すとはな」
オッタルは以前同様にグレートソードを構える。相手が殺す気でいるのであればそれ相応に答えねばなるまい。武器を構えようとした瞬間、後続から1人やってきた。それはアイズだった
「ハイド!・・・
「【剣姫】か、ただでさえハイドを相手取るのに一苦労だというのに増援か。まだ許容範囲だろう」
「アイズこいつを頼むぞ。文字通り、一撃で仕留めてやる」
アイズにリリルカを頼み2振りのデイドラのダガーを抜く。炎と冷気の2振り。こいつにはこれで十分だ
「【剣姫】の手を借りないのか」
「抜かせ。貴様程度に私が倒せるなんて希望は持たせん。勝負は1度だけだ」
両手にダガーを握りしめ歩く。目の前の標的を無力化するためにただ標的に向かって歩く。油断はしないだろうが歩いていく。間合いまで3歩、2歩、近づくがまだオッタルは動かない。そして間合いへと入る
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
間合いに入った瞬間、オッタルは私を殺す為に振り上げたグレートソードは振り下ろす。まるで片手剣を振り回すかのような速度で振り下ろされる。だが既に遅い。策に掛かっているのはオッタルの方だ。地を割り、地面に突き刺さるがそこには私は居ない
「なに!?」
「終いだ、オッタル」
こいつは確信しただろう。私を殺せた、と。しかしそんなことは無い。私の隠密は例え目の前に姿を晒しても、次にどこで姿を見せるかなんて誰にもわかりはしない。隠密の完成形、影の戦士。ただそれを使ったに過ぎない。締めに背後から2振りのダガーを背中に刺す。その瞬間、オッタルの身体は凍り付き燃え上がる
「があぁっ!?」
「これを受けてまだ生きているのか。大した奴だ」
「き、貴様・・・どうやって避けた」
「誰が教えるものか。私は行かせてもらう、行くぞアイズ」
この後オッタルがどうなろうと知ったことではない。家族を守る為にはこうするしかなかったのだ。アイズからリリルカを渡され、急いでこの先の通路進んでいく。するとベルが1人でミノタウロスと対峙していた。ヴェルフは負傷しており戦線を降ろされている。しかし、ベルも同じく左腕が負傷しているのが見える
「よくやったなベル。後は私に任せろ」
リリルカを置いてベルの前に立ち、対峙する。オッタルよりかは弱いだろう
「待って・・・ください」
ベルは私の手を弱弱しく掴んでくる。どうやらまだ戦う意思は残っているが行かせていいのだろうか
「もう誰かに任せたり助けられる訳にはいかないんです!」
徐々に掴んでいる手に力が入ってくる。力量差を物怖じせずに立ち向かおうとしているのだから応援することとしよう
「なら行ってこい。だがアドバイスだ、まずは奴の武器を破壊または奪取しろ」
念のため回復魔法の他者治癒でベルの回復をしてから送り出す。もし死に目に遭うようであればその時は全力で助けるようにする。後はベル次第だ、ここで悪夢から解放される時だぞ
やるしかない。目の前の
「勝負だっ・・・!」
これから始まる
「アイススパイクッ!」
見事に命中し腹部を貫く氷槍はミノタウロスの皮膚が凍りつき動きを少しだけ遅くなった。それに便乗するように連撃を仕掛けていく
「こ、こだぁ!!」
手の甲にダガーを突き立て捻る。動きが遅くなっているせいか攻撃は当てやすく先ほどよりも優勢と言える。だけど今度1撃でも貰ったら目も当てられないだろう。ミノタウロスは武器を落としたことで距離を取らざるを得なかった。大剣を手に取り、大剣とダガーの二刀流だ
『ウヴォオオオオオオオオッ!』
「あああああああああああッ!」
剣閃というには烏滸がましいけど大剣で牽制して攻撃の隙を伺う。片手で振るうには大きすぎて攻撃になっているのかさえ分からない。横薙ぎで払われるミノタウロスの右腕を寸でのところで躱し跳躍、その勢いを利用し背後に立ち回り背中に一閃。致命傷とはいかないけど硬い皮膚を裂き、血を被る。そこに魔法で追撃していく
「アイススパイクッ!」
さらに皮膚が凍り完全に動きが見切れる程まで動きが遅くなる。ゆっくりとこちらに向かってくるミノタウロスの左腕を大剣で切断し鮮血が撒き散る
「とどめッだぁ!」
動きが鈍くなったことと片腕が切断されたことにより隙が大きくなった。両手で大剣を持ち力任せでミノタウロスの首目掛けて振るう。その軌道は全てを捉えることは無く刃先で数
「これで、本当に、とどめだぁあああ!!」
納刀したダガーを喉を切った部分に回し思いっきり切断する。皮膚は硬かろうが内部はそうとも限らない。ミノタウロスの首を切断したことにより完全に動きが停止し灰となる。僕はそれを空中で見届け着地する。僕はやっと勝つことが出来た。最初から僕のトラウマとして存在していた敵を倒すことが出来た
「い、いやったぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁ!!」
ようやく僕はトラウマを克服出来たような気がする。僕にも冒険を達成することができたんだ!
「よくやったなベル」
「ハイドさん!」
急に力が抜け視点が下がる。それを察していたかのようにハイドさんは僕の手を取り立ち上がらせる
「あはは・・・力が抜けちゃいました」
「いいんだ。よくやったなベル。ヴェルフやリリルカを守ってあいつを倒したのはお前の手柄だ。今は喜んでいいんだ」
「はい・・・そういえばヴェルフとリリは!?」
「治療を受けている、だがこの様子では歩くことはままならないだろう。だから帰りの足は呼んでおいた。では頼んだぞドレ」
僕は簡単に担ぎ上げられていた。いつもの執事服を着ているドレさんにだ。もう片方の肩にはヴェルフが担ぎ上げられていて、リリはエンちゃんに背負われていた
「では、頼んだぞドレ」
「かしこまりました。ベル様はお休みになられることを推奨いたします」
「あ、はい・・・それじゃあ、僕は少し・・・寝ますね。疲れちゃったので」
その後の記憶は一切残っていない。緊張の糸が切れて、力も抜けて本当に疲れちゃったのかな?
ふぅ・・・危なっかしい戦いだったな。だが格上と思われる相手によく勝つことができたもんだ。私の弟子として家族として誇らしく思うぞ。ドレとエン、ヒョウ、ランを呼び寄せてあいつらに負傷者を運んでもらったんだが、後ろの連中からは説明しろ、との視線が送られてきている
「で、何が聞きたい」
「彼についてかな。どうしてあの時先に駆け出したのか、どうしてミノタウロスを撃破出来たのか、そういうの全部ね」
「意外に欲張りだなフィン」
全て、何から話したもんか
「それに魔法を無詠唱で唱えていたのも気になる。まるでハイド、お前みたいじゃないか」
「それについては簡単だ。私の持っている呪文書をベルにやった。こちらでは
その場が一瞬だけ凍り付き、呆れた顔になる。いや別にいいだろうが、私がしたくてやったことなんだが
「
「だいたい、ヘファイストス・ファミリアの一級品装備に匹敵・・・約1000万ヴァリス以上になるのかな?」
「お前、金銭感覚狂ってんのか?」
「家族の為に有効活用しただけだ。ただ複数持っているので1冊ぐらいはどうということは無い」
まだ5段階あるうちの下から2番目の階級の魔法だからな。コスト以外では上位互換のアイスジャベリンもあることだしな
「本当に規格外だと思うよ。まだまだ聞きたいことはあるから聞かせてくれないかな?」
「先に進みながらな。でないと後続に追いつかれるやもしれんからな」
質問責めにあいながら、道中を進むことにした。この時、私はまだ気が付いていなかった。神とはいついかなる時も気まぐれであるのを忘れていたのだ。だが、それを知ることとなるのはもう少しの話である
今回もお読みいただきありがとうございます
だいぶ長くなってしまいました・・・約6500文字
次回はこれの後日談+二つ名ですかね?