ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? 作:ark.knight
訓練開始から3日が経過した。ロキ・ファミリアでの訓練の後にベルたちとのダンジョン探索が続いているせいか疲れが溜まってきている。昔はこんなことは無かったのだが徐々に衰えを感じてきた、ということか?
「あのー、ハイド様大丈夫ですか?」
「リリルカか・・・」
今は自宅に戻って東棟にリリルカを連れてきているがそんなに分かりやすい物か?
「ここ2,3日、朝早くから家を出ているようですが、もしやそれが原因です?」
「原因とは少し違うな。ただの体力低下でしかない、と思う」
翌週になれば長期の遠征になるらしいからな。ドワーフの遺跡を思い出すな
「ちゃんと休息を取らないと後に響きますよ?」
「分かっているさ、それはともかくどの武器にするか決めたか?」
「これです」
持ってきたのはクロスボウだった。威力は高いが矢の射出に伴い、音が出るため私は敬遠していた武器だ
「弓でなくていいのか?」
「あの大量のバックパックを持ってるので弓だと辛いんです。かといってダガーやナイフみたいな小さいのも難しいです」
「そうか、ならばこれを作るとしよう。ここにあるのはだいぶ適当に作った奴だからな」
次は西棟に向かい鋼鉄のインゴット3つと鋼玉のインゴット2つを取りに行く。その後外に出て炉に行くのだが先にヴェルフが使用していたのだ
「ダメだ、上手くいかねぇ」
「どれ、見せてみろ」
ヴェルフの作ったダガーよりも長く、片手剣よりも少し短いブレイズ・ソードのような形状をした剣を手に取る。あの形状は既に1,2本はあるがこのサイズで振り回すのには最適な長さだ
「どうだハイドの旦那?ヘファイストスの所にいた時、椿から教えて貰ったんだけど、いまいちコツが掴めなくてよ」
「これはこれでいいのではないか?欲を言えば黒檀でこれを作ってもらいたかったが」
個人的には欲しいぐらいだ。というよりもドラゴンプリーストのダガーといい、これといいあっちの武器をよくも作れるな
「本当は物干し竿並みに長いやつを作ろうとしてたんだけどよ、ムズイわ」
どれくらいのものを作ろうとしてたのかは知らんが相当長いのだろう
「そういうのは、インゴットを繋げてやらねば難しいだろうな」
「そういうもんか?」
「そういうものだ、すまんが炉を使わせてもらう」
「おう、リリ助の武器を作るんだっけか?」
「リリ助じゃありません!リリにはリリルカ・アーデという名前があります!」
何度も見たこの光景だが、ほぼ毎日と言っていいほどこの会話が行われているような気がする。それはともかく作業に取り掛かる。クロスボウだったな。ボルトはそこまで生産していなかったような気がする
「リリルカ、以前はクロスボウを使っていたか?」
「使っていましたよ」
「ならボルト、矢はあるか?」
「今から持って来ます!」
リリは家の方に走って行った。もし家にあるサイズと同じなら爆裂系のボルトも使用できる。それ以外にも市販のボルトを使用しても構わないということになるし、制作もできる。資金運用も楽になるということだ
「ハイドの旦那、いいのか?あいつはうちのファミリアじゃねぇだろ?」
「今はまだな。その内、こっちに改宗する予定だ」
「マジか、でもなんだかんだでこっちも助かってるしな」
戦闘役と補助役が分かれているのはどちらにとっても有益である。戦うことに専念でき、回収は任せ体力の温存が可能であり、良いことづくめだ。私だって1人で冒険をしていた時期もあるが、早い段階で従者リディアを連れていたからな
「最近はベルもやる気出てるけど、なんか焦っているようにも感じるんだけどよ」
「焦っている?」
「ああ、なんて言えば分からんけど、より早く誰よりも早く強くなりたいって感じだ」
おおよそアイズや私からの刺激を受けすぎてそうなっているのだろう。やれやれ困ったものだ。急ぎ過ぎては身を滅ぼす可能性があるのだがな
「教えてくれて助かる」
「憶測に過ぎねぇけどな。でも注意しといて損はねぇと思う」
「そうだな。ヴェルフはベルのように早く強くなりたいとは思わないのか?」
「んー、たまに思うけどそこまでじゃねぇな。俺は俺のペースで強くなる」
ヴェルフは強くなることに対してそこまでの欲が無いと見える。無欲とは違うがベルに比べたらマシと言えるだろう。急いでも何の得にならない。錬金や鍛冶を鍛え、防具や武器、自身を強くしても元が育っていないからむしろ悪化する、昔の私がいい例だ。今では苦戦する相手などほとんどいないが冒険者になりたての頃は苦戦ばかり強いられていた。武器をいいものに変えようが自身の技が確立できていない状態だったから敵を倒すのにも一苦労だったな
「ハイド様ー!持って来ましたよ!」
リリルカが持ってきたボルトを見てみるとだいたい一致していた。ならば制作するものはいつものと同じでいいな
「では制作に取り掛かる。終わったら呼びに行くので適当に寛いでいろ」
「なら見てますね」
「・・・勝手にしろ」
見られていては気が散るのだが、まぁいいだろう。久しぶりに作るが原型は先ほど見たからうまくできるだろう
約3時間が経過しただろうか、無事に強化クロスボウが完成した。動作確認も済ませたので後は渡すだけなのだが肝心の本人はいつの間にか外に置いていた椅子で寝てしまっていた。リリルカも度重なる探索で疲れてしまったのだろう。仕方ない運ぶとしよう。腰にクロスボウを着け、リリルカを背負う。身長も相まって養子を背負っているような気分にさせられる
「ここだったか」
リリルカの部屋の前に立ち、部屋の中に入ると飾り気のないそのままの部屋だった。各自で部屋を飾っていいことにしているのだが、この部屋は一切ない。それほどに金を集めることに執着しているのだろう。少しぐらいは余裕を持ってもいいのだがな。私はリリルカをベッドの上にそっと置き、近くのテーブルにクロスボウと簡単な書置きを置いて部屋を出ることにした
「ベルの事と言い、リリルカの事もだが問題は積もるばかりか。遠征の準備もしなければならんしどうしたものか」
そろそろ考えねばならんな。ベルの事は話を聞かねばならんし、リリルカは対魅了に関しての調査が必要となってくる。まずはできることからするとしよう。北棟でポーション製作に取り掛かることにした
リリが目を覚ますと見慣れた空間、というよりも自室だった。確かリリはハイド様がクロスボウを制作している最中で、暖かい陽の光を浴びて眠気が来たんでしたね。ベットから起き上がるとベッド横のテーブルにクロスボウと手紙らしきものが置いてあった。手紙を確認してみる
『クロスボウは完成させ動作確認は済ませてある。自身で確認したい場合は家の裏手にある訓練場で射撃するといい』
そう書かれていた。早速、ハイド様が作ったクロスボウと専用の矢を持ち家の裏手にある訓練場へと向かった。家の裏手には大きめな建物があった。たぶんこれが訓練場なんだろう。中に入ると的と思われるサークルが頭部、胸部に張り付けられてある人型サイズの藁人形が3つ配置されていた
「あれに向かって撃てということなのでしょうが・・・少し遠すぎませんか?」
1体目は15
「もしかしてハイド様はあれを狙撃できるのでしょうか?・・・作った本人が練習するために作ったのであれば既にできるということに・・・と、とりあえず今はリリ自身です」
レベル8というハイド様ならできるのでしょうが、今は自分の事に集中しなければいけませんね。矢をクロスボウに番えるけど今までの物とほぼ同一の硬さに感じます。矢を番え終え構えて1番手前の藁人形の頭部目掛けて矢を放つ。するとどうでしょう、今まで使っていたものより矢の速度は速く直線で飛び、的のど真ん中を貫通し壁に突き刺さってしまいました
「・・・」
今までは的に突き刺さる程度の物でしたが、これは予想外です。連射はリリにはできませんがこの威力であればする必要は無いでしょう
「つ、次は真ん中の人形で試しましょう」
矢を番え2番目の藁人形目掛けて放つ。今度は胸部のど真ん中に的中した
「ふふん・・・これがあれば余裕ですね。最後の的も楽勝でしょう」
この時、リリは慢心していたのでしょう。2つは簡単だったので次も行けると。でも現実は甘くありませんでした。藁人形には当たりましたけど的に命中しません。何度も何度もやりますが当たる気配がありませんでした
「なんで・・・当たらないんですか?」
夢中になりすぎて、何発撃ったか覚えていません。次こそはと思い、矢に手を伸ばしますが感触がありませんでした。まさかと思い見てみると1本も残っていませんでした
「・・・明日、ハイド様にアドバイスして貰いましょう」
渋々、今日の射撃はやめて矢を拾いに行くことにしました。何本かは壁に当たった衝撃で壊れてしまった矢もありましたが、それぐらいの威力と衝撃が出るというのが分かりました。矢を拾い集め出ようとしましたが、ふと扉があることに気づきました。入ってきた扉とは別の扉。倉庫か何かだろうと思い、今日は訓練場を後にすることにしました
今回もお読みいただきありがとうございます
もうね、色々とやばいです。就活生なんで時には投稿できなくなる可能性があるのでご了承ください