ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? 作:ark.knight
ダンジョンの9階層に来て、目の前には10階層へ降りる道があるのですがハイドとは1度もすれ違う、会うことなくきている。いつもなら7,8階層で合流するはずなのだがそれすらなかった
「ねぇリリ、ハイドさんに会わずに9階層まで来ちゃったけど大丈夫かな?」
「そろそろ合流しても良い頃なんですけど・・・いませんね」
「この辺で一旦戻った方が良いかもな。旦那に心配させてもあれだしよ」
「そうだね・・・ってこれはマズくない!?」
一旦引き返そうとし振り返るがゴブリン、コボルトが数えるのも馬鹿らしくなる程に大量にいた。ここは戦うには狭くリリ達、3人では勝てない。いくらベルが魔法を使えるとしてもさすがに無理がある
「ここは一旦10階層に逃げましょう!」
「ここじゃあこの量は無理があるから仕方ないね!」
リリたちは10階層へと全速力で駆けていく。後ろからモンスターが追いかけてくるが10階層の入り口付近からは霧が発生しており視界が悪いが戦うスペースが確保できる。ベルとヴェルフは臨戦態勢に入る。リリは遠くからクロスボウで処理をしていく。ベルは的確に首や魔石が埋め込まれている部分を斬りつけ、ヴェルフは異質な素材で作られているであろう大剣で薙いでモンスターを圧倒している。お2人のステイタスも成長しているのがはっきりと分かる
「おらぁ!全然減らねぇな!」
「でもさっきに比べて数は減ってきてるよ!リリももう少し頑張って!」
「はい!」
リリのクロスボウだって無限じゃない。この数相手には数が足りない。魔剣もあるけどここで使うわけにはいかない。どこかで見切りをつけて逃げるしかない。1歩、2歩とゆっくりと後退しながら矢を放つ後方を確認するがモンスターの気配はない。逃げるなら今しかないと思い足音を立てずに10階層の中に入っていく。10階層から
「武器は手に入れられなかったけど、実入りがよかったので今回は見逃しましょう」
それにしても少し残念だ。本当に実入りがよくリリが必要としている金額に届きそうなくらいまでになった。でも今日、あの男がハイドに知らされた事を考えると手を引かなければならない。リリはとんでもない悪党なのだから
「【響く十二時のお告げ】」
フードを取り頭部に生えていた犬耳に尻尾が消え失せる。これでベルやハイド、ヴェルフの3人と接していたリリルカ・アーデはいなくなった。これであの人たちとの関係は断った。元々、冒険者なんて嫌いなのだから別に問題は無い
「っと・・・ここですね」
先ほどとは違う9階層へと昇る階段に続く通路が目の前にある。ここからだったら来た道よりも早く地上へと戻れるこの道はよく多用していたこの行く。あの人たちがどうなろうとリリは知らない。リリはこの道を進む。この道を進み、また新しく生まれ変わるために、あのファミリアから抜け出す為に
「嬉しいねぇ、大当たりじゃねぇか」
「えっ?」
突然の事で何が起きたのか分からなかった。床、天井が反転し転がった。何かに当たる感触はあったものの、なぜこうなったかは知らない。転がる視界にはいつぞやリリがお金を騙し取った男がいたのだ
「詫びを入れさせてもらうぜ、この糞パルゥムが!」
「ふぎっ!」
転がり終え背中に背負ったバックパックを背にして停止したところを顔面を蹴られ鼻血が滴る。その後、腹部を蹴られ吹き飛び、また1,2回転しながら地面をバウンドしていく
「ははははははっ!いいザマじゃねぇかコソ泥がぁ!今日俺があの仮面野郎に接触して、テメェが勝手に違和感を抱くんじゃねぇかと思って網を張って待ってたんだよ」
「あ、み?」
今日見たあれは只の囮、ハイドの言う通りだと言うの?
「とまぁ、そんなことはどうでもいい。ぶっ殺す前に俺のもんを盗った落とし前つけさせてもらうぜ」
リリのローブを剥ぎ、その中にしまっていた魔剣や金時計なんかが地面に落ちる。これでまたファミリアを抜けるまでのお金が目標まで遠のいた
「こんないいもん持ってたのかよ!魔剣まで盗み取ったってのかよ!」
「ぐっ!」
「これで手を打ってやるよ。俺の器がでかくてよかった・・・なぁ!」
再度、腹部を蹴られあまりの激痛に悶絶せざるを得なかった。何とかして逃げようと焦燥感にも駆られた。しかしそうは簡単に逃げられなかった
「派手にやってますなぁ、ゲドの旦那」
「おー、早かったな」
階段から同じファミリアの男が3人やってくる。もう逃げれない。このダメージが無くとも足の速さ、体格等で既に勝てないのだ
「こいつ金目の物だけじゃなく魔剣まで持ってやがったんだぜ」
「そうですかい。それはともかくとして上に行きましょうや」
「それもそうだな。ほれ、さっさと歩け!」
「ふぐぅ!」
今度は脚を蹴られ髪を引っ張られ強制的に立ち上がらせられた。これも仕方のないこと。リリがやってしまったことの始末は自分でつけなけらばならない。リリはこの4人についていき階段を上る。どこまで行くのだろう。延々と歩かされ階層を上がっていく。気分は最悪だ、これも今までしてきたことのツケだろう
「ここいらでちょっと休憩しやせんか、ゲドの旦那」
「それもそうだな。急いであそこまで降りたもんで疲れちまったよ」
そう言って同じファミリアの男3人が近くを離れる。しかしこの先に続く4つの通路の内3つに分かれて行くのが見える。逃げようにも道は1つ。だが監視もいてろくに逃げ出せる雰囲気ではない。でもこのまま蹲っても何も変わらない。ローブに入っていたのは奪われてしまったが、まだ何とかなる範疇だ。この胸元にしまった貸金庫の鍵さえ奪われなければどうということは無い
「逃げようとすんじゃねぇぞ。テメェの腱を削ぎ落してでも逃がさねぇからな」
「ひぃ!?」
そんなことされたらたまったもんじゃない!ここは大人しく待つことにしよう。逃げ出せるチャンスを見つけて逃げ出そう
「お待たせしやした」
「なんだその袋は?」
「まぁゲドの旦那への手土産ってやつでさ、ほれ受け取ってくだせぇ」
戻ってきた3人は足元に2つ、監視をしていた奴に1つ放り投げた。足元に投げられた袋の中身が露出し中からは瀕死のキラーアントが出てくる
「キラーアントじゃねぇか!」
「ゲドの旦那・・・瀕死のキラーアントは仲間を呼ぶ習性がありやすよね?このガキから貰ったもの全部置いていって貰えやしやせんか?」
「しょ、正気かテメェら!」
じきにここにもキラーアントが押し寄せてくる。正気とは思えない行動にリリは腰を抜かし体中から体温が抜けていく感覚を覚えた。監視していた男は地面にリリから奪った魔剣や金品を投げつけ通路に走り去っていく。だがその通路の方から男の断末魔が聞こえてくる。どうやら逃げ場が無いらしい
「さてアーデ、テメェが金をどこかに隠しているのは知っている。助かりたかったら・・・分かっているよな?」
もうキラーアントが通路の入り口付近まで迫っている。この鍵を渡せば、また1から始まることになる。死ぬか1から始めるか・・・答えは簡単だ。死ぬより生きている方がやり直せる可能性がある。仕方なく胸元にしまっていた鍵を取り出した
「保管庫にノームの宝石として保管してます・・・」
「おぉそうかそうか・・・それじゃあこれはいただいておく。それとな、逃げるのに囮になってくれや」
リリの首を掴みキラーアントの方に投げられる。はずだったがなぜか地面に落下した。目の前の男は肩から先を無くし血を噴き出す。突然の事でリリ達は茫然としていた。男の後ろには黒い装備をし仮面を着けた人物がいて、その姿には見覚えがある。噂の人、ハイド・クロフィの装備だ。
「がぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁ!」
「お前何者だよ!」
「今はこう名乗ろう
彼はそう言い黒い靄みたいなのに包まれ姿を消した。次に姿を現した時はリリの目の前でただ突っ立っていた
「
咆哮と似た何かは同じファミリアの男たちをキラーアントの群れに吹き飛ばした。まだ鍵を奪われていなかったのでよかった。でもなんでこのタイミングで彼が突入してきたのだろう?
「あ、あのハイド様?」
「話すのは後だ。立てるか?」
ここに来るまでの道を逆順し戻っていった。あの男たちの断末魔を聞きながら
「すまんな。ベルとヴェルフの奴がリリルカを探していたところに会ってな。それで探したら今朝の奴にいいようにされているのを見つけた次第だ」
そんな前から見られてたんですか!?
「それにあいつらを殺すための正当な理由が欲しかった」
「こ!?・・・せ、正当な理由ですか?」
この発言からして最初から殺す気だったのだろう。でもどうしてここまでするのだろう?
「今日言っただろうに。契約している以上、守ってやると」
「あ・・・」
そう契約は交わされている。まだ破棄されていないのだろう、だとしたら成立する。こんなリリなんかの為に……
「それにベルなんかは心配していたぞ。貴様が死んだのではと喚いてな」
「その・・・すみません」
「謝るな。貴様がしたてきたことには私が口出し出来たものではない」
そう目の前で間接的ではあるが人を殺したのだ。人殺しは重罪でギルドにブラックリストに登録されかねない行為であり、それを一切の躊躇いも無くやってのけた。
「大丈夫ですよハイド様。リリが黙っていれば問題はありません」
「ふん、そうだな。何を要求されるか分かったものではないがな」
暗に要求しろと言っているのだろう。だとしたらリリの事を知ってもらおう。それでこの事には決着をつけるとしよう。今度はベル様やヴェルフ様に迷惑を掛けた分精一杯頑張ろう。そして助けて貰ったこの命をハイド様に捧げよう・・・重いと思われるかもしれないけど、この
今回もお読みいただきありがとうございます
遅くなってすみません。今回の話は1度作り終えましたがやり直しました。(駄作ですが)