ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い? 作:ark.knight
今日もベルとヴェルフの2人はダンジョンに潜っている。しかし私は街の探索に来ていた。以前怪物祭の時に迷子になるという失態をしてしまったためだ。街の構造を知っていて損は無い。既に夕方になりそろそろ日が落ちるであろう時間になり今日開拓した家への近道に入るため路地裏に入る
「あうっ!」
「ん?」
路地裏に入るなりフードを被った人とぶつかってしまったようで、ぶつかってしまった相手は倒れてしまった
「すまない」
「追いついたぞっ!この糞パルゥムがっ!」
怒声が聞こえ後ろを振り向くと、そこには私とぶつかった少女を殺そうと剣を構え振り上げている男がこちらにやってくる。私は咄嗟に護身用に持ってきていたエルフのダガーを抜き、振り下ろされる剣と衝突した
「あ? 仮面野郎、邪魔だ退きやがれ」
「悪いが断る」
「テメェ、こいつの仲間か?」
「いや違う。だが目の前で人が死なれると目覚めが悪いだけだ」
ただし悪人や依頼の場合は除くがな。後ろにいる子供がどんな理由でこいつに追いかけられているかは知らんがされた方が悪いのだ
「そいつに金を盗まれたんだよ!」
「警戒できていない方が悪い、無様だな」
どうやら子供にスラれたらしいな。確かに子供の方が悪いのだが、盗賊ギルドのメンバーからはやられた方が悪いと言われたことがある私は苦い顔をせざるを得なかった
「テメェごと後ろの奴を叩き切ってやろうか?」
「貴様ごときにできるわけ無かろう」
「言ったなテメェ!」
男は剣を振り上げるがそこまで距離は離れていないため、接近し腹部を掠めるようにダガーの刃を当てる。このダガーには麻痺の付呪がなされているため男は身動きが取れなくなる
「て、テメェ!。麻痺毒でも塗っていやがったな!」
「さてな半刻程痺れていろ。さて子供よ大丈夫か?」
後ろに振り返り確認するとこのダガーに視線が注がれていた。もしかしてこれが欲しいのだろうか?。量産はできないし付呪を付けている以上は簡単にはやることはできない
「あ、はい。ありがとうございます」
「随分と手癖が悪いようだな、私から言わせるとやめておけと言っておくぞ」
スリは犯罪行為だ。金を奪おうとして何度もスリを仕掛けられたことがあるがその全員を憲兵に引き渡したこともあるくらいだ。まぁ盗賊ギルドでスリの技術を学んだことがあるからある程度は見抜ける。私はその場から立ち去り家に帰ることにした。家に帰り夕食の時に聞いたのだがパルゥムとは成人しても子供程度の姿にしかならないそうでロキ・ファミリアの団長を務めているフィンがそうらしい。
翌日、私とベル、ヴェルフの3人でダンジョンに潜ることにした。あくまでも私はベルの戦闘指導として来ているため魔石が欲しいわけではない。しかし敵が出る以上は武器や防具をつける必要がある。ちなみに今日はアークメイジのローブと革装備でデイドラ弓にデイドラのダガーだ。意外に便利な革装備
「今日も7階層に行くか!」
「私はどこへ行こうと構わん。ベルはどうだ?」
「僕もそれでいいと思います!」
念のため体力やスタミナ、マジカを回復するポーションは持ってきているのだが量が多くとてもではないが近接での戦闘はできそうもない
「お兄さん、お兄さん!。仮面を着けたお兄さん」
昨日聞いたような声が私の後方から聞こえてくる。振り向きその人物を見るが背丈が小さくフードを被って大きな荷物を担いでいた
「始めましてお兄さん方。突然ですがサポーターを雇っては見ませんか?」
「ベル、サポーターとはなんだ?」
「サポーターって言うのは冒険者に変わって荷物を持ったり魔石を回収してくれるお手伝いさんみたいなものです」
一緒に冒険をして私が持てなくなったアイテムや素材を持ってくれる従者みたいなものか。だとしたら頼もしいな。しかし気になることが1つある。昨日、私はこいつに会ったはずだ
「ちなみに昨日のパルゥムとやらか?」
「いえ・・・リリは獣人、
フードを脱ぐと頭の上に犬耳を生やしていた。これがシアンスロープというのか。まだまだ知らないことが多いな
「そういやお前、所属はしてんのか?」
「はい。ソーマ・ファミリアです。あ、遅れてしまいましたがリリはリリルカ・アーデという名前です」
「僕はベル・クラネルです」
「俺はヴェルフだ」
「私がハイド・クロフィという」
私の名前を聞くなり一瞬表情が険しくなるリリルカ。そういえばヘスティアが私の事をバラしたせいで、良い意味でも悪い意味でも噂が立っているのだったな。インチキや、チーターや! などとほざいているらしいが2,30年も冒険をしていればそうもなるだろうに
「あのハイド・クロフィですか!?。オラリオでレベル8になったって噂されている!?」
「信じるかは貴様次第だ、私からすると嘘はないのだが」
「誰だって嘘だって思うぜ。ハイドの旦那」
こっちの常識で測られても困るだけなのだがな、何せ元はこの世界の住人ではないのだから。
「それでベルにヴェルフ、どうする?」
「いいんじゃねぇの? こっちとしては万々歳だぜ」
「僕も賛成です。魔石を拾うのにも一苦労ですし」
「だそうだリリルカ」
さっきから何か考え事をし始めているリリルカはどうやら聞いていないようだった。仕方なく頭に手を置きこっちに気を向かせた
「んんっ・・・な、なんでしょう?」
「やはり聞いていなかったか。もう一度言うが雇うことにする」
雇うとなると金が要る。こっちに来たから私の金が羽をつけて飛んでいくな
「契約金はいくらがいい?」
「いえ、今日はいいです。信頼を得るためですので」
「・・・もし欲しくなったら言え。ある程度はくれてやる」
タダであることは嬉しいのだが信用を得るなら行動で示した方が早い。金で築いた信頼は脆いのは知っているがさすがに怪しいと思うのは気のせいだろうか?
「それじゃあ行こうぜ!」
「ああ!。待ってよヴェルフ!」
先にあの2人が行ってしまい2人きりとなる。私としては少し考えねばならんことが増えたがこいつに気付かれないように監視することにしよう
7階層まで潜りベルとヴェルフの2人は初心者殺しと呼ばれるウォーシャドウとキラーアントを撃退していた。初心者殺しと聞くとノルドの遺跡にある強烈な罠とドワーフの遺跡のトラップを思い出すな。どっちも1度触れてしまえば即死といって過言は無いからな
「そういえばベルは魔法を使ったか?」
「いえまだです」
「そうだな・・・あそこにいるキラーアントに向かって撃ってみろ」
正面の少し離れた場所に1匹のキラーアントがいた。狙うのには十分な距離だ
「アイススパイク!」
ベルが魔法を放つが軌道はズレていて直撃することは無く地面に突き刺さる。アイススパイクとアイスジャベリンは尖った氷を射出する冷気破壊魔法だが再利用されることは無い。あの氷自体、触れるだけで鈍足になる効果があるせいかかなり冷たいのだ。触れようものなら逆に手に張り付くそうだ
「おしいな、あいつを視線で標準を定めて少し上を狙ってみろ」
「はい!。アイススパイク!」
今度は見事に体を貫き魔石ごと消滅していく。アイスストームを覚えさせるだけのマジカを持つことができたら、ベルに覚えさせてみようか?。手数で攻めるベルには丁度いい魔法だしな
「ベル様おつよーい!」
「えへへー」
「あまり調子付かせるな。まだまだ未熟だ」
最初の1発目で外してなければ言うことは無かったのだがな。ヴェルフは私が制作したドラゴンの骨のグレートソードでウォーシャドウと戦闘をしているが苦戦しているようだ。速いし数もそれなりにいて攻撃力も高い相手にグレートソードではどうしようも無いみたいだ。
「ベル、見本を見せてやる。冷気属性の破壊魔法がどれくらい便利かを知るといい」
同じようにアイススパイクを当てるがそれでは死ななかった。しかし鈍足効果が効いているみたいで動きが遅くなりヴェルフがしっかりとどめを刺す。当てるだけで相手を鈍足にできる冷気系の攻撃は逃走の為にも使えるのだ。
「ヴェルフ大丈夫か」
「少し食らっちまったみてぇだ旦那」
「これでも飲んでおけ」
体力を回復させるポーションを渡し、飲むのだがはっきり言っておこう。錬金で作ったポーションはかなりの数がマズイのだ
「なんだこれ!?。ゲロまず!」
「しかし効果はいいだろう?」
「それは否定しねぇけどよ。これどこで買ったんだ?」
「自作だ」
「「「はい!?」」」
三人して大声を上げるな響くだろうが。普通に買うより安いし効果が大きいから自作しているだけだ。やり方さえ知っていれば誰だってできるぞ?
「ハイド様って・・・本当に何者なんですか?」
「鍛冶できる、ポーション製作できる、回復魔法使える、戦闘できる。なんじゃこりゃ」
「前衛後衛でカテゴリされるけど、ハイドさんは全衛になりそう」
リリルカ、ヴェルフ、ベルの順であることないこと言うが、やろうと思えば貴様らもできるのだがな。私とて最初から出来たわけではない。何度も失敗と成功を重ねた結果が今なだけだ。
「やかましい。長い時間ここにいるから今日はもう帰るとするぞ」
私達はダンジョンを後にした。余談だが今日のドロップアイテムは何も出ず、魔石を換金した金はきっちり四等分したのだが、1人当たり10000ヴァリスになった。私はその時何を思ったか忘れたが私の分をリリに上げて家に帰ってきた。今は金よりドロップアイテムが欲しいのだ!
今回もお読みいただきありがとうございます
今日のもすごく駄作感満載になってしまいました