ドヴァキンがダンジョンに潜るのは間違い?   作:ark.knight

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幕間其の壱

 

 

ヴェルフがヘスティア・ファミリアに改宗して早くも1週間が経過した。ベルとヴェルフの仲もそれなりに進展したようで、よく一緒にダンジョンに潜っているみたいだ。私は誘われれば一緒に行くが基本的にミアハ・ファミリアのところに錬金素材の提供、販売やヘファイストス・ファミリアのところにドラゴンの骨や鱗を売りに行っている。その際にあっちの世界では無かった素材を提供されたりもした。さすが異世界というべきなのだろうか。さて今日は何をしているかというとベルとヴェルフの訓練だ

 

「いかせてもらいます!」

 

「いつでもかかって来い」

 

週1,2程度で訓練をつけて欲しいとの事で家の裏側に建てた訓練場で稽古をつけてやることにした。弓や魔法の射撃場なんかもあり中々に広いこの訓練場で1対1での模擬戦をしながら教えている。怪我をされても困るので形状は一緒だが木製の武器をそれぞれに持たせ防具を装備させている。私は仮面も防具もつけていないがな

 

「ここだ!」

 

「甘いぞ」

 

正面から真っ向に斬りかかるベルだが、足元ががら空きだったため足払いをしバランスを崩し後ろに倒れるベル。そこに追撃を掛けるように胴目掛けて木製のダガーを振り下ろすが、ベルは受け身を取って後転し回避した

 

「確実に隙は少なく、そして早く攻撃しろ」

 

「はいっ!」

 

駆け出してやってくるが何が来るのかがだいたい予想できる。刺突、武器投擲、当身が即席で思いつく。予想通りに刺突で来るが当たる直前で避け、ベルの手首を掴み地面に叩きつけ首元にダガーを当てる

 

「がぁ!」

 

「当たったと思ったか?」

 

「少しは・・・」

 

「ヴェルフは見ててどう思ったか?」

 

「んー、なんだろうな。ベルの攻撃はまっすぐというか素直というか」

 

ヴェルフの言う通りだ。私目掛けてまっすぐにしか攻撃を仕掛けてこない。それで力押しできるのであれば問題ないのだがそうじゃない。どっちかというとベルは持ち前の速さを生かして撹乱しながら確実に攻撃するというスタイルが似合っていると思う

 

「もっと動いてみろ。手本ぐらいは見せてやる」

 

「お願いしますハイドさん」

 

ベルの目はやる気で満ちており、如何にも私の技を盗もうと輝いて見えた。さすがに手加減は不要だと思った。距離を放し互いにダガーを構える。私は両手を下げゆっくりと歩きながら近づく。1歩、2歩と徐々に近づいていき互いの攻撃範囲内に入った途端、ベルは耐えきれなくなったようで右手に握られたダガーを水平に振ろうとするのが見えた。しかしそれが仇となるとは思うまい

 

「せいやっ!」

 

「だから甘いのだ」

 

ベルのダガーの先端が私に掠めるかどうかぐらいまで避け、背後に周り1度だけダガーを振るいベルの背中を斜めに線を入れるようになぞった。その後そのままベルの攻撃が当たらない位まで後退し振り向くのを待つ。ベルは自分の攻撃が私を通り抜けたかのように感じただろうな

 

「私なら後ろだぞ」

 

「っ!?」

 

急いでこちらを振り向こうとする前に私の身体は動き出しベルにブラフで上から斬りかかる。当のベルは受け流して攻撃に移ろうとするが私は勢いを利用し、その場で地面に手を着き1回転して踵を振り下ろす

 

「な!?」

 

反応が遅れそのまま右肩に踵落としを食らい武器を落としてしまったベル。回転の勢いでダガーを振り下ろすがとっさに半身で避けられてしまった

 

「と、まぁこんな感じだ」

 

「早すぎてわかりませんでしたよ・・・」

 

「慣れればこんなことができるようになるということだけは頭において置け」

 

別にここまでできるようになれとは言わん。私だってここまでできるようになったのは冒険を始めて5,6年はかかったのだからそう簡単に覚えられても困るのだ。この後も訓練を続けていきベルとヴェルフの2人を鍛えるのだった

 

 

 

訓練じゃハイドの旦那が手加減も無し、容赦無しでやってくるもんだから大変だったけど技術や実力はレベル通りのものだと思った。何しても当たんねぇし掠りもしねぇ。ましてやワザと隙を見せて突っ込んできたら容赦なくボコってくる始末。もうどうしろってんだよ

 

「ベル・・・生きてるか?」

 

「なんとかね・・・」

 

俺たちは訓練を終えその場に倒れていた。床がひんやりとして気持ちいいが汗でべた付いて気持ち悪い

 

「風呂入りに行こうぜ」

 

「僕もそう言おうと思ってたよ」

 

立ち上がって歩き出そうにも疲れていて脚が進まない。ゆっくりとした歩みで地下にある風呂場まで行くと服を脱いで浴場の中に入る。先に訓練場を出ていったハイドの旦那が既に風呂に入っていたが俺は驚愕した。旦那の身体は、ほぼ全身と言っていいほどに傷ができており焼け爛れたような跡さえもあった

 

「貴様らか」

 

「お、おう・・・旦那その身体、どうしたんだよ?」

 

「ん? これか」

 

俺たちは風呂に浸かりながら旦那の昔話を聞いた。いろんなモンスターにやられたり暗殺者と対峙したりドラゴンに焼かれたり凍えさせられたりと聞かされた。今日の訓練でも旦那の強さが目に見えて分かったが、その裏ではこんなにも傷ついて偉業を達成しレベルが上がったのだろう

 

「すげぇな。その身体の傷が物語っているぜ」

 

「こんなのは恥でしかないがな」

 

「それにしてもハイドさんがいたところって魔境って言ってましたけど、その傷を見たら納得できる気がします」

 

「その話か」

 

魔境って・・・ダンジョンの中だから階層を進んでいけば、みんなが対峙するんじゃないのか?

 

「デイドラの連中に愛される(振り回される)事が一番大変だったな。1歩間違えていたらこうして生きてはいないだろう」

 

「おいおい。それは言い過ぎじゃえねのか?」

 

「ヴェルフは何も知らないからな・・・これは実際にあった話だ。デイドラの()()ヴァーミルナという奴は堕落のドクロという武器を聖堂に置きその付近の1つの町に住む住人全員に毎夜悪夢を見させたという話だ」

 

はた迷惑すぎる話だ。毎日のように悪夢を見させるとか鬼のような所業だな

 

「1柱ですか? 人じゃなくて?」

 

「まぁあんなのでも曲りなりには神だからな」

 

「「はぁ!?」」

 

神がそんなことすんのかよ!? 無論追放されたよな!?

 

「そんな話が私のいた()()にはあったのだ。無事解決したがな」

 

「ん? 世界? どういう意味だよ?」

 

「ヴェルフは知らなかったんだ。ハイドさんはこの世界の人間じゃないんだよ」

 

「いやマジでどういうことだよ?」

 

ハイドの旦那からどういうことかを説明してもらった。さっきの話のデイドラって言う奴の中の1柱がこっちに飛ばしてきたというとんでもない話だった。信じたくは無いがこれを信用する他ない

 

「てことはさっきのモンスターも悪夢の話も異世界の話ってことか?」

 

「そういうことになる。さて話はここで終いだ、私はもう出る」

 

そう言いハイドの旦那は浴場を後にした。残された俺たちは今の話を忘れることは無いだろう。あんなにも傷つき、神に振り回された旦那がどんな偉業を成し遂げたのかも計り知れなくなったのだから

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

今回はいつにもまして駄作感が凄いです・・・

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